第三話・迷子の兵士 【投稿日 2006/02/06】

第801小隊シリーズ


「早朝から大変ですね・・・。」
「まあ、戦争って言うのは相手の隙をついてこそだからね・・・。」
日課である早朝ミーティングが出撃のため中止になり、
持ち場に戻るため、二人で基地内を歩くタナカとオーノ。
「皆さん無事に帰ってきてくれるといいんですけど・・・。」
「新型がものすごい性能だから、きっと大丈夫だとは思うけどね・・・。
 だけど戦いって言うのは水物でね。どういう結果になるかはわからんよ。」
「それはわかってますけど・・・。」
「うん、無事でいてほしいと思うのは俺も一緒だ。」
ちょうどオーノの職場である医務室前に差し掛かる。
「では、またあとで。」
「ああ。」
医務室に入るオーノに軽く手を振り、整備場へと向かおうとするタナカ。
しかし、そこに後ろから声がかかる。
「タ、タナカさん!」
「え、なに、どうしたの?」
そのオーノのあまりに大きな声に、タナカは驚いた。
「あ、あの子がいなくなっちゃってます!」
「ええ!」


「そろそろだな・・・。」
マダラメはカラーリングを赤に変えたザクに搭乗している。
そのコクピットでぼそりと呟く。
『ですね。そろそろ警戒して進んだほうがいいですね。』
ホバートラックを中心にコクピットでの会話はすべて伝達されている。
その通信をこいにきらない限りは。
マダラメの呟きに反応したササハラがそう進言した。
「ん・・・。そうだな。各機、スピードを落とせ。」
きゅぅぅぅぅぅ・・・・ん。
「・・・どうよ?調子は。」
『ジムっすか?良いですよ。だけど、あのシステム、まだ理解できてませんよ。』
マダラメの問いの対象が自分だとわかったササハラが、率直な感想を述べる。
「ふーん。まあ、無理して使う必要もないわな。」
『ですね。でも、一応ためしにオンしてみますよ。』
隣に並んだ見た目は彼らにとってはおなじみのジム。
あらゆるところがさまざまなパーツで補修されているため、
ヘッドはジムスナイパ-カスタム、腕がジムキャノンといった、
つぎはぎMSと化していた。否、そうせざるをえなかった。
だが、昨日からその内部には実験用の最新システムが組み込まれた。
『成長型のAIだと聞いてるから、なるべく使ったほうがいいよ。」
その会話に割って入ったのはコーサカだった。
「へえ、AIね。」
マダラメが胡散臭そうに言葉を返す。
『ええ。空間知覚を拡大するためのデバイスになるらしいです。』
『?その辺がさっぱりわからないんだよね。』
昨日のミーティングにてタナカから説明されてはいたのだが、
いまいちササハラは理解できてなかった。
『早い話が、目で見る、耳で聞く以上の空間認識が出来るようになるってこと。』
『それって・・・。うわさに聞くニュータイプみたいになれるってこと?』
「そんな夢物語みたいな話・・・。」
ニュータイプ。うわさに聞く天才パイロットたちの逸話。
『まあ、それを目指してみたってことらしいですが・・・。」
「ふーん。まあ、うまく使えるならそれにこしたことはないわな。
 で?お前さんの乗ってるガンダムは大丈夫なのか?」
『もちろんですよ。』
裏表のなさそうなはっきりした声で答えるコーサカ。
「期待してるぞ。俺らの中じゃ一番性能はよさそうだからな。」
『了解しました。』
一歩後ろからマダラメ機とササハラ機に追従するコーサカ機。
見た目はうわさに聞くガンダムのそれとは違い、カーキー色のボディ。
肩や膝といった関節が黒で塗られたそのフォルムは、ゲリラ戦向きといえた。
「初陣、ってわけじゃないんだろ?」
『ええ、もちろん。一時期研究室にいましたが。』
『ちょ、コーサ・・・。』
サキがその言葉に反応して言葉を発した。
「ほーん。研究員だったわけだ。」
『ええ。まあ。』
「ほお。・・・そろそろだな。」
マダラメとしては少しその言葉に違和感もあったが、
現場に近くなってきたため、会話はそこで打ち切りとなった。
「クチキ一等兵、現場からの連絡は?」
『一切ないであります!』
「くそ・・・。」
マダラメの頭に最悪の予感が頭によぎる。監視部隊の全滅。
しかし、戦闘中のため発信が出来ない可能性もある。

ようやく現場が視界に入ってくる。
『敵MS反応!八機いるよ!』
サキによる索敵レーダー反応の報告が伝わる。
「!よりによってドダイつきかよ・・・。」
墜落した大物の上空に、ドダイに乗った五機以上のザク。
大物の周辺にはガンタンクⅡが展開していたが、
撃っている砲撃はまるで当たらない。
すでに、二、三機が撃破されている様子だ。
「ホバーはここで待機!サササラ、コーサカ両少尉は突撃するぞ!」
『『『了解!!!』』』
「射程に入り次第各個撃破だ!ガンタンクのフォローも忘れるな!」
そういって早々に敵の射程の真っ只中へ進むマダラメ。
「ちい、遠距離は得意じゃねえんだけどな・・・。」
今回の補給で得たビームマシンガンを構え、
ガンタンクに注意を引かれているザクの一機に狙いを定めた。
ドダダダダダダダダダダ・・・・。
よもやその方向から攻撃が来ると思っていなかったのだろう。
狙われたザクはそれをかわしはしたものの、バランスを崩しドダイから落下した。
そこに間合いを詰めるマダラメ。ヒートホーク一閃。
武器を持つ腕を切り落とし、戦闘不能状態にする。
「これでもう戦えねえだろう!投降しろ!」
マダラメは外部スピーカーで投降を訴えるが、
かまわずそのザクはヒートホークを残った手に持ち、振り下ろしてきた。
「ちくしょう、やるのかよ!」
マダラメは間一髪それをかわし、もう片方の手も切り落とす。
ついに、ザクはその活動をやめた。

ササハラのコクピットでは、妙な機械音が鳴り響いていた。
「コレ・・・。本当に使えるんだろうな・・・。」
不安はあるものの、やってみない以上には仕方がないとササハラは自分を納得させる。
「・・・よし。」
ササハラはスイッチをいれた。カチ。
キュイー・・・・・・ン。
『始めるの・・・?』
「????声????」
聞いたこともない女性の声が頭に響く。
「え、え、なにこれ?」
頭に妙なビジョンが広がる。自分を中心に一帯の風景が浮かんでくる。
「これが、空間認識?目の前の光景とは別に、頭に浮かぶってことか・・・。」
しかし、その光景が不規則に変化する。
後ろが映ったと思ったら上、下。斜め前方、右斜め45度。
まったく関係ない輸送船の中。ホバートラックのアンテナ。
「うわ・・・。なんだこれ・・・。」
頭を抱えてしまうササハラ。ここが戦場にもかかわらず・・・。
『貴方が見たいものは何・・・?』
再び声が響くものの、そのビジョンに圧倒され、行動がままならなくなる。
マダラメの突撃によって援軍に気付いた皇国軍は、狙いを小隊の方に向けてきた。
「き、気持ちが悪い・・・。」
ササハラはもはや何も考えられず、何も出来なくなってしまった。
『ササハラ少尉!何をしている!』
マダラメの声にはっとするササハラ。
目の前上空には、一機のザクが迫って来ていた。
「く、くそ!」
スプレーガンを向け、応戦の体制をとるササハラ。
二連射するが、あっさりかわされる。
真上に来たザクはすぐさま落下しながら、
ササハラ機に向かってヒートホークを振り下ろしてきた。
「うわ・・・!」
間一髪かわすが、左の手が切り落とされる。
「うあ・・・。」
相変わらずビジョンは続く。
『私を必要としていないの・・・?』
声も響く。
「なんなんだよこれ・・・?」
『ササハラ君、装置をオフにするんだ!』
響くコーサカの声。
「わ、わかった!」
すぐさま装置のスイッチをオフにする。
すると、頭の中に起こっていたビジョンが嘘のように消えた。
しかし、目の前には追撃をしてくるザク。ヒートホークが迫る。
「うおーーーー!!」
ササハラは叫びながら、ビームサーベルを抜き放ち、ヒートホークを真っ二つにする。
「はあ、はあ。」
だが、これでは終わらない。次にザクは体当たりをしてくる。
「うぐ・・・。」
衝撃が体に響く。先ほどの嘔吐感も重なり、少し吐きそうになる。
「くそぉ!」
それも何とかこらえ、ビームサーベルでコクピットを貫く。
ザクの動きは完全に停止した。
「はあ、はあ・・・。やっちゃったか・・・。」
人を殺すのは別に初めてではない。それはマダラメもコーサカもだろう。
しかし、いまだにこの自己嫌悪感は拭いきれない。
「・・・まだ、戦いは終わっちゃいない。気を抜いちゃだめだな。」

『コーサカ少尉、今日のエースだな。』
ササハラがザクを一機撃破したころ、コーサカはすでに三機ザクを撃破していた。
「いえいえ。運が良かっただけですよ。」
『謙遜は良くないな。しかもうまく動きを止めるようにしている。』
事実、コーサカに相対したザクは、すべて手や足がもがれた状態で、パイロットは無事だ。
「まあ、気分の良いものではありませんからね・・・。」
『・・・それはそうだな。』

マダラメも、ドダイを奪い、空中戦にて二機目を撃破したところだった。
「ち・・・、やっちまったか・・・。」
今回はうまくとめられず、相手のザクのコクピットを切り裂いてしまった。
「いまだに・・・。思い出しちまうな・・・。」
『隊長!あと二機ですか!』
「おうよ!」
少し感傷に浸りそうになったマダラメの意識を、、ササハラの声が現場に戻した。
しかし、その二機が見えない。見える範囲にいないのである。
『たいちょお~~~!大きな識別反応が!』
「なんだと!?・・・あれは!」
クチキの報告から例の大物のほうを見やるマダラメ。
その周辺には先ほどの二機のザクが。
そして、空中にいるマダラメは見ることが出来た。
超巨大な、ハラグチの乗って来たものよりも、
数倍はあろうかという輸送船が近づいていることに。
「・・・うそだろ?流石にあれは落とせんぞ!」
ちょうど上空にきた輸送船は、ワイヤーを下に落下させる。
残った二機のザクによりワイヤーがくくりつけられる。
『あのワイヤーさえ切れば!』
叫び、狙いを定めようとするササハラに対し、
「・・・いや、やめとこう。俺らの任務は、監視隊の防衛だ。
 下手を打って反撃されたらかなわん。」
そういって、その光景を眺めるマダラメ。
徐々に引きずり上げられていく大物。
『・・・あとで少将に怒られませんかね?』
そういったのはコーサカ。
「・・・しょうがあるまい。出来ないことをやるわけにもいかん。」
輸送船は空中に大物をぶら下げたながら、皇国軍のエリアのほうへと去っていった。
『貴様ら!何をやっている!』
そのタイミングで通信に入っていたのは、大きな怒声であった。

「なぜ、見逃した!あれは皇国の機密であり、
 わが軍にとってあれを逃すことは大きな損失なのだぞ!」
基地に戻ってきた801小隊の面々は、ハラグチ少将の怒声を浴びることとなった。
今彼らがいるのは司令室。出撃隊に加えて、大隊長も同席していた。
「・・・われらの任務は監視隊の護衛でしたから・・・。」
「理由になっとらん!」
マダラメの言葉に怒りをさらに膨らませる少将。
「ですが、あれを取り戻そうとしたらこちらにも甚大な被害が・・・。」
「そんなもの知るか!あれには兵100人以上の価値がある!」
マダラメとの問答を続ける少将の言葉にカチンと来たのはササハラ。
「な、なんてことを言うんですか!人の命のほうが軽いですって!?」
「馬鹿、やめろ、ササハラ・・・。」
同じく頭には来てるものの、軍属として上官に反論はしてはいけないと
考えるマダラメは、ササハラの言葉に冷や汗ものだ。
「その通りだ!それによってわが軍が勝利し、
 さらに何十万という命が助かるのならば、それも致し方あるまい!?」
「それは詭弁でしょう!」
「貴様!上官に逆らう気か!」
にらみ合う二人。そこに、大隊長が声をかけた。
「・・・まあまあ。落ち着きなさい。」
「はあ・・・。」
「しかしですな。上官への口の利き方も知らんような兵士は切るべきですぞ。」
その言葉にさらににらみを利かせるササハラ。
「それはそうとハラグチ少将。こんなものが出てきたんだがね・・・。」
一つの封筒をハラグチに向かってヒラヒラさせる大隊長。
「はあ?なんですか、それは。」
近寄り、封筒を受け取り、中を見るハラグチ。顔が変わる。
「・・・これ、どこで・・・。」
「ん?たまたま、ね・・・。」
「コピーのようですが・・・。」
「原本はボクの信頼してるある人に預けてあるよ。」
そういってにこりと笑う大隊長。
「・・・何がお望みで・・・。」
ハラグチが、今までにないくらいしおらしい表情を見せる。
「ん。この部隊への補給を忘れないようにしていただけるかな。
 今までずいぶんと・・・。」
「はい、はい!わかっております!」
「あと、ガンタンクⅡとジムキャノンあったよね、置いてってくれる?」
「わ、わかりました。で、では、私はこれで。」
そういいながら、足早に立ち去ろうとするハラグチ。
「ん・・・。そうだ・・・。報告書、まだ出てないようだな。
 あと、パイロットが脱出したような形跡、
 いや外からこじ開けたような形跡があったんだが、
 何か知らないか?」
出ようとした瞬間にハラグチは出撃隊の面々に向かって質問した。
「・・・われわ」
「いーえ、何も知りません。
 皇国がパイロットだけ先に救出しにきたのではないですか?」
バカ正直に答えようとしたササハラの言葉をさえぎり、マダラメが答えた。
「そうか・・・。では報告書だけは頼むぞ・・・。」
そういって、ハラグチは面白くなさそうに出て行ってしまった。

「隊長・・・。」
「まー、そういうことにしとこうぜ。俺らしか知らないわけだし。」
「すいません、先ほどはついかっとなって。」
「頭に来てたのは俺もだしな。」
「ったく、嫌なやつだね。ああいうのがいるから軍は嫌なんだ。」
サキがようやくいえると言った様子で文句を並べた。
「ササやんはかっこよかったね。まあ、隊長さんもね。」
「へ。軍属って言うのはいろいろ大変なんだよ。」
サキのほめ言葉も、皮肉で返すマダラメ。
「またそういう言い方をする・・・。」
ササハラが苦笑いをする。
「しかし、大隊長、あの封筒って・・・。」
「ん、気にしないで。これでずいぶん君らにも楽をさせて上げられる。」
(き、気にしないでっていわれてもな~~~。)
そこにいた全員がそうは思ったが、突っ込まないことにした。
「では、解散!ササハラ、報告書、うまく書けよ。」
「了解!」
笑顔でそこから飛び出し、気になっていた医務室へと向かうササハラ。
その途中でオーノと出会う。
「あ、ササハラさん!いいところに!」
「え、あの子目が覚めた!?」
「そうだと思うんですが、行方不明に!」
「ええ!?」

「じゃあ、朝から見つかってないわけね?」
サキがオーノに向かって聞く。
「ええ。皆さんが出撃されたあとに・・・。」
「かー、厄介だねえ。まがりなりにも敵国の兵士だろ?」
そのことをオーノから聞いたササハラはすぐさま皆に捜索の手伝いを依頼した。
「ええ・・・。ですけど、片手骨折してますから、
 たいしたことは出来ないとは思いますが・・・。」
一応の装備を固めながら、オギウエの捜索をしている二人。
「ここの連中はお人よしだね。軍人らしくないよ。」
「ええ。だから私はここが大好きなんです。」
「ふーん。まあ、私としても居心地は悪くないかな・・・。」
「そういえば、カスカベさんとコーサカさんはどういったご関係なんですか?」
「サキで良いよ。一応恋人ってことになるのかな?幼馴染でね。」
「へーえ。」
「研究所に勤務してたときに再会してね。まあ、そのままって感じ。」
「え、じゃあ元は軍属じゃなかったんですか?」
「まあ、いろいろあってね・・・。」
「あ、あそこに動く影!」
前に見えた影を追って、サキとオーノは話を中断して影を追った。が。
「なんだ。クガヤマ・・・だっけ?」
「な、なんだよ。み、みつかったのか?」
「いえ・・・。クガヤマさんの影がそうなのかなっておもって・・・。」
「そ、そっか。じ、じゃ、俺あっち見に行くよ。」
「うん。じゃあ、私らはあっちね。」

ササハラはMS整備場に来ていた。
普段はタナカとクガヤマが機械をいじる音を全開にしてるものだが、
今はみなで捜索してるので静かなものだ。
「・・・おーい!でてこーい!!」
一応声を出してみる。
しかし、それで出てくるようなら、もう見つかっているはずだろう。
そうは思いつつも、声を出してしまった。
ガチャ・・・。
音がした。その方向を向くと、廃パーツの山が動いていた。
「そこか?」
ササハラは静かに近寄り、その山を動かしていく。
「ひい・・・。」
そこには、恐怖におびえ、身を丸くしたオギウエの姿があった。
「・・・よかった。意識戻ったんだね・・・。」
満面の笑顔を、オギウエに向けるササハラ。
「!なんで、笑うんだ・・・。私とお前は敵なんだろう!?」
「でも、人の命にはかわらないよ。」
「私は・・・。私は・・・。」
わなわな震えるオギウエ。それを見て、ササハラは言う。
「いろいろあったんだろうとは思うんだけど、聞いたりしないからさ。
 ひとまず医務室に戻らないかな?」
「・・・わかった。」
ササハラは、しゃがんでる荻上の手を引き、立ち上がらせる。
「・・・そうだ、名前は?」
「・・・オギウエ。チカ・オギウエ少尉。」
「へー。俺と同じ階級なんだ。」
「・・・別に、気を許したわけじゃないぞ。」
「はは。わかってるよ。じゃあ、いこう。」

「オギウエさんていうんですね。いいですか、オギウエさん。
 あなた、一応体弱ってるんですからね。
 動いてさらに悪化したらどうするつもりだったんですか?
 そういうの、甘く見てる人私とっても腹が立つんです。」
笑顔ではいるものの、棘のある言葉をオギウエに並べ立てるオーノ。
あのあと、ササハラは医務室にオギウエを戻し、みなに発見を報告した。
「別に助けてくれとはいってない・・・。」
「やかましいですよ?腕も骨折してるというのに廃パーツの中ですって?
 もしかして持ち上げたんですか?そういうのが良くないんですよ?
 いいから助かった命、大切にしてゆっくり治してくださいね。」
あいかわらず笑顔でいるものの、言葉にさらに棘を含ませるオーノ。
「ぐ・・・。」
口では勝てないと思ったオギウエは、布団にもぐりこんでしまった。
「あはは・・・。」
「まったく人に迷惑かけといて・・・。」
「まあまあ。俺らのこと信用はまだ出来ないでしょうから。」
オーノに近づき声を潜め話すササハラ。
「それはそうですけど・・・。」
「元気になるまでは一応そっとしといてあげてね?」
そういって手のひらを縦にして口の前に置き、片目をつぶるササハラ。
「はい、わかりました。
 でも、元気にさせるためのことはいろいろしますよ?」
「あはは・・・。お手柔らかに頼むね・・・。」
時間は夕暮れ。第801小隊は、死者を出すことなく今日を終えることが出来た。

「パイロットの生死不明・・・?」
皇国軍基地にて、先ほど回収された兵器の報告書を見たナカジマが眉を顰める。
「ええ。死体はなく、外からこじ開けた形跡が・・・。」
「!?まさか、連盟軍に囚われたのではないのか??」
「その可能性も否定は出来ません。」
「困ったことになったな・・・。大したことを知ってるわけではないが、
 やつらに良いサンプルを渡すことになる・・・。」
地図が映し出された大型のディスプレイを見るナカジマ。
「・・・一番近い連盟の基地は?」
「B-801地区の基地ですね。」
「・・・工作員を潜入させてみるか・・・。時間はかかりそうだがな・・・。」

次回予告

新システムの基盤はある少女の思考パターンが元になっているという。
システムになれるために日々特訓を繰り返すササハラ。
一方で敵国の少女・オギウエと交流するごとに、
戦争がさまざまなものを失わせることを再認識する。

次回、第四話「二人の少女」
お楽しみに。
最終更新:2006年02月10日 04:09