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その一 未来【投稿日 2006/01/27】

カテゴリー-4月号予想


カチカチカチ・・・・。
携帯をいじる音が聞こえる。
笹原が道を歩きながらメールを送る。
『そろそろ着きます。』

『明日私の家に来てくださいませんか?
例のものをお見せしようかと思うのですが。』
保留にしてから次の日に、荻上から来たメール。
少々驚いたものの、早いほうがいいとは思っていた。
しかし、彼女がこうもすぐに見せようとするとは。
(どういうことなんだろうな。)
笹原は合宿から帰ってから一人家で考え込んでいた。
少し、長引くと思っていた。
すぐに見るなんて無理なんだろうとは思っていた。
(少し日を置いてこっちから切り出そうと思ってたんだけど・・・。)
しかし、こうなった以上、悩んでいてもしょうがない。
彼女の真意がどこにあるのか考えるよりも、行動するのだからいいと思った。
(しかし、また・・・。どんなもんなんだろうな・・・。)
多分、いや十中八九大丈夫だろうとは思っている。
見たことがないわけではないし。
しかし、顔が変わらないかといわれれば、変わってしまうかもしれない。
(難しいよな・・・。きっと、ちょっとした変化も見逃さないよ・・・。)
はあ、とため息はついたが、もはや、やるしかない。
受験前の学生のような気分で、寝ることにした。

荻上も、一人家で考えていた。
(あそこまでいっても笹原さんは私と付き合おうと・・・。)
保留にはしたものの、実は心の中では決まっていた。
しかし、やはり自分がしてきたことに対する罰は受けなければならないだろう。
今目の前にあるスケッチブック。
これを見て笹原が目の前からいなくなるというのなら、それは自分のせいだ。
その時は、潔く、自分から離れよう。現視研もやめて。
(大丈夫っていってたけど・・・。無理だよな・・・。)
少し、期待はある。だけど、期待していいものなのだろうか。
それは、押し付けになるんじゃないだろうか。
(笹原さんは優しいから・・・。)
嘘をついてまで引きとめようとするかもしれない。
それが彼のいいところでもある。でも、それはよくないから。
(少しでも、駄目だと思ったら・・・。)
すべては明日だ。大きな不安と、小さな希望を胸に、眠ることにした。

そして、次の日。
笹原はすでに荻上の家の前にいた。
旅行の疲れもあり昼までは寝ていたため、時間はすでに夕方。
ピーンポーン・・・。
チャイムを鳴らす。
少しの間のあと。
扉の開く音。
「やあ・・・。」
「・・・どうぞ・・・。」
笹原は少し微笑んで、荻上はいつもの仏頂面。
しかし、二人の顔は微妙に浮かないのがわかる。
前来た時とそう変わってない部屋。
笹原はテーブルの前に座る。
「・・・何か飲みますか?」
「ん、じゃあ、お願いします・・・。」
荻上は台所のほうに向かう。
そわそわして落ち着かない笹原。
荻上も同様である。
お茶を持って戻ってきた荻上。
「ありがとう・・・。」
「いえ・・・。」
お茶を受け取りながら、視線を泳がす笹原。
妙な沈黙が続く。

「じゃあ・・・。見ようか。」
数分後、笹原が切り出した。
「本当に・・・、見るんですか?見せるっていって呼んだのは私ですけど・・・。」
「うん。そうじゃなきゃだめなんでしょ?」
「いや・・・。そういうわけじゃ・・・。」
「大丈夫大丈夫。」
そういわれて、荻上はおずおずと机の上にあるスケッチブックを渡す。
ページをめくる笹原。
(な、なるほど~~~。)
そこには元気よく二人で絡んだりつながったりしている自分と斑目。
(うは~~~。でてくるでてくる。すごいな~~~。)
その描写は今まで見たことのある荻上の絵とは数ランク上に感じられた。
数もすごいが、描写力もすごいと思った。
(逆に、気合が入るっていうやつか?久我山さんのように・・・。)
思ったほどの気持ち悪さは感じられなかった。しかし、一つ気になることが。
(しかし・・・。俺こんなかっこよく描かれてるのか・・・。)
攻めである笹原は全般的にかっこよく描かれていた。見た目もそうだが、考え方も。
まるで、自分ではないように。
(もし仮に・・・。荻上さんが俺のことこう見てるとしたら・・・。
 付き合ったら幻滅するんじゃないか?)
自分がこんなにかっこよく描かれているとは思わなかった笹原。
自分に自信がなくなってきた。顔が少し曇る。
その顔を荻上は見逃さなかった。

「・・・モウイイデス。」
荻上はスケッチブックを笹原の手から引き抜く。
その目には少し涙が浮かんでいた。
「え・・・?」
「やっぱだめだったんですよね?そうだろうと思ってましたから・・・。」
「そんなことないって・・・。」
「嘘はやめてください。顔が変わったのがわかりましたから。」
「いや、それは・・・。」
「もう、帰っていただけますか。私は、大丈夫ですから。」
立ち上がってうつむく荻上を見上げる笹原。
「違うんだって・・・。」
「大丈夫です・・・。笹原さんは優しいから・・・。そういってるんですよね・・・。」
「話聞いてよ・・・。」
そういいながら笹原も立ち上がる。
「もう、大丈夫ですから・・・。」
立ち上がった笹原を玄関のほうへ押していく荻上。
「え、ちょっと待ってって・・・。」
「・・・。」
もう言葉も返さず、押す荻上。
無理に立ち止まることも出来ず、押されていく笹原。
ついに玄関の外まで押しだされてしまった。

「・・・ありがとうございました・・・。もう、現視研もやめますね。」
「本当ちょっと話聞いてよ。」
「いいんです。本当、いい人ですよね、笹原さんは。」
「だからさ・・・。」
「私なんかにかまわなくても、笹原さんならもっといい人に会えますよ。」
「いや、あのさ・・・。」
「それじゃ・・・。」
そこまで捲くし立てたあと、玄関のドアを閉じ、鍵を閉める荻上。
少し呆然とする笹原。しかし、すぐにはっとなり、玄関をたたく。
「荻上さん!違うんだって!そうじゃないんだよ!
 あまりに自分がかっこよく描かれてたから、びっくりしちゃってさ!
 荻上さんが考えてる俺と実際の俺は違うんじゃないかって思って凹んでたんだよ!」
笹原がいつも出さないような必死な声で荻上に向かって声をかける。
「それでも嘘だと思うのかもしれないけど!
 もし仮にそれに引いてたとしても!
 俺は荻上さんの前からいなくなったりはしないから!
 それだけは信じてよ!」
しかし返事はない。この笹原の言葉を聞いていたかどうかもわからない。
「荻上さん・・・。」
笹原は落ち込んだ表情でうつむいた。

二時間ほど経っただろうか。もうすでに周りは暗くなっていた。
電気もついていない部屋で、荻上は一人塞ぎ込んでいた。
(やっぱりだめだったな・・・。期待しちゃいけなかったんだ・・・。)
しかし、これは自分の罪。
笹原の声は聞こえていた。しかし、それも嘘にしか聞こえなかった。
やさしい嘘。でも、それに甘えちゃいけないんだ。
(でも、これで吹っ切れた。私は一生男の人とは付き合わないんだ。)
少し、心が落ち着いて、買い物でもいこうと考えた。
財布を持って、玄関に向かう。
玄関を開けるとそこには。
「やあ・・・。」
笹原がそこには立っていた。少しの笑みをたたえて。
目を見開き、呆然とその姿を見る荻上。
「な、何で・・・。」
「言ったでしょ、いなくなったりしないって。これで帰ったら俺嘘つきじゃん。」
「で、でも・・・。」
「あはは・・・。言ったこと嘘だと思われたままなんて嫌だからさ・・・。」
「本当、なんですか・・・?」
こくり、と頷く。
「よかったよ~、このくらいで出てきてくれて。一晩とかなってたらさすがに辛かったかも・・・。」
視線を少しそらしたあと、荻上のほうを見る笹原。
「また、入ってもいいかな・・・?」
「は、はい・・・。」

先に入り、電気をつける荻上。続けて笹原が入ってくる。
「・・・続き、見てていいかな?」
「え・・・。本気ですか・・・?」
「だから言ったでしょ、引いてなんかないって。たださ・・・。」
「あ、それはそれ、これはこれですから。」
笹原の言っていたことを思い出して、答える荻上。
「なら、なおさらだよ。それ、俺には見えないもん。」
「はあ・・・。」
「あそこまでかっこいい俺を期待されると、
 付き合いたいなんていえなくなっちゃうなあって・・・。」
「いや・・・。十分笹原さんはかっこいいっていうか・・・。」
「へ?」
「やさしくて、いつも気を使ってて、でもいざとなるときに頼りになって。」
顔が真っ赤になりながら、荻上は言葉を並べ立てる。
「私、何か間違ってますか。・・・私、そんな笹原さんが好きです。」
目を見て告白を返されて、笹原は、顔を真っ赤にした。
「もう、逃げません。ここまでしてくれて逃げたら私は馬鹿だ。」
「え、と、そ、それって言うのはつまり・・・。」
答えを聞きたいのだが、どうも言葉がうまく紡げない笹原。
「・・・私、笹原さんと付き合いたいです。」
「・・・本当?」
「・・・嘘ついてどうするんですか・・・。」
恥ずかしさのあまり、視線を落とす荻上。

「・・・は~~。」
長いため息をつく笹原。
「よかった・・・。」
そのまま座り込む笹原。近寄って隣に座る荻上。
「笹原さん、苦労しますよ?」
「ん、いいんだ、一緒にいたいと思っただけだから。」
笹原はにこりといつもの笑みを浮かべて、荻上を見る。
視線が交わる。
(え、えっと、こういう時ってもしかしてとは思うんだけど・・・。)
視線をそらすわけにもいかず、見つめる笹原。
(あ、そっか、こういう時は・・・。わかんねけど。)
とりあえず、目をつぶってみる荻上。
その行動に、もはや答えは見えた笹原。
二人の顔が近づいて・・・。
やることは一つなので、以下略!

次の日。
「やあ・・・。」
「こんにちは・・・。」
二人して部室に登場の笹原と荻上に、にこりと微笑む大野。
「こんにちは~。
 ええーと、見ればわかるんですけども、保留はどうなりました?」
「ま、何とかね・・・。」
「ご迷惑おかけしました・・・。」
その言葉に大野は満面の笑みになる。
「そうですか!よかった・・・。」
「ふーん、よかったね、二人とも。」
咲も、笑顔になって、祝福の言葉をかける。
「そほか、そほか。ムシャムシャ。よかったん、うぐんぐ。」
「先輩、しっかり飲んでからしゃべってくださいよ。」
「んぐんぐ、ぷは~~~、スマンスマン。」
お茶を一気に飲み干して、斑目も少し皮肉な笑顔を向ける。
「まあ、なんだ、よかったじゃねえか。」
「まあ、そうっすね・・・。」
笹原が自然に会話をしてるのを見て、胸をなでおろす荻上。
しかし、笹原も平静を装いつつも、あの描写が浮かんでないことはなかった。
(あれはファンタジー、そう、ファンタジー。)
そうは思っても、受け斑目はかわいく描かれていて・・・。
(いやいや、何を考えてるんだ俺は・・・。)
頭をぶんぶん振って、目の前の斑目とあの斑目を重ねるのをやめようと必死だ。
「?なんだ、どうかしたのか?」
「い、いえ!なんでもないっすよ・・・。あはは・・・。」

そこで朽木がCDROMの束を出しながら発言した。
「あのですね、先輩方。一応合宿で撮った写真をCDROMに焼いてきたので、
 お持ちくださいませ・・・。」
「お、クッチー気が利くじゃん。」
「いえいえ、これがまかされた仕事ですから、不肖朽木、全うさせて頂きました。」
「あはは・・・。なんかカッコいいじゃない。」
「朽木君も、本当、丸くなったもんだ。」
束になって置かれたCDROMを、一枚ずつ持っていく皆。
「いやー、いろいろあったけど、楽しかったねー、合宿。」
CDROMを持った手をヒラヒラ動かしながら笑う咲。
「ですねえ・・・。ああいう合宿ならまたやりたいですね・・・。」
「私は嫌ですよ!二日酔いなんて・・・。もう二度と酒なんて飲みません!」
「まーまー、そのおかげで・・・、ね?」
抑える咲に対して、むすっとした表情になる荻上。

「あはは・・・。まあ、来年か。でも、俺行けそうにないなあ・・・。」
「あー、編集だと難しいだろうなあ。」
いいながら斑目が残っているお茶を一気飲みする。
「うーん、私らもどうなるかわからんもんねえ。」
「来年、新入生多く入れませんと、サークル自体立ち行かなく・・・。」
朽木は自分がした発言に、しまったという表情をする。
「・・・来年は、大人しくさせていただきます・・・。」
「まあ、まあ、大丈夫大丈夫。」
「・・・ですね。なんとかなりますよ。」
朽木を慰める笹原、そのあとに、荻上が自信を持った顔で言った。
「・・・なんか今までにない前向き発言。」
「・・・荻上さん、成長しましたねえ・・・。」
咲と大野から口々に感心したような言葉を出され、顔を赤らめる荻上。
「な、なんですか・・・。まったく・・・。ぶつぶつ・・・。」
その恥ずかしがっている荻上を横目で見ながら、笹原は少し微笑んだ。

オマケ
半月後ぐらいの現視研部室にて
「で?もうやったの?」
「は?いきなりなに聞いてくるんですか。」
「だってさ、あんたらなかなかそういうのしそうにないもん。
 だからさ、一応アドバイスでもしてやろうかなーって。」
「大きなお世話です!」
「え、じゃあもうやったの?」
「なんでそうなるんですか!」
「荻上さん・・・。素直になりましょう・・・。」
「大野先輩まで・・・。笹原さんがいないときを狙ってましたね!」
「ニヤニヤ」
「ニヤニヤ」
「・・・じゃあ、やったってことにしときます・・・。
 だからアドバイスなんていりませんよ。」
「「ええー!!」」
「え、いつ、いつ?」
「そんな・・・。」
「いや、なんでそんなこと言わなくちゃいけないんですか!」
「読者サービスって言うか、ほら、知りたい人たくさんいるし!」
「嘘・・・。私たちよりも早いだなんて・・・。」
「おー、大野傷ついとる、傷ついとる。」
「いや、だから、嘘ですから!」