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If I ever hear you knocking on my door 【投稿日 2006/01/13】

カテゴリー-笹荻


「さいんぷりーず。」

見られた。一番見られたくない人に見られた。

「い、いや、俺は平気だよ・・・。見ちゃいけないと思って・・・。」

そうは言っても、どう思っているのか。
それを考えるだけで、心が痛む。


If I ever hear you knocking on my door


「・・・。」
誰もいない部室。最近はこういうことも多い。
少しため息をつくものの、どうしようもないことも知っている。
9月に入って、人が集まりにくくなっていた。
高坂先輩はすでに働いていて、缶詰だって言うし、
春日部先輩はあっちこっちで人脈作り。
大野先輩はコスプレのためにいろいろしなきゃならないし・・・。
まあ、そこまでいないっていうわけでもないんだけど・・・。
朽木先輩は知らないし・・・。普段何してんだろ?あまり興味もないけど。
そう、笹原先輩も・・・。

ガチャ。
ビクッ!
「こんにちは、荻上さん。」
大野先輩だ。
「こんちは。」
笹原さんのことを考えてたせいか、彼が来たのではないかと思った。
正直、違ってて良かった。二人きりには耐えられない。
「合宿の話聞きました?」
「・・・ええ、まあ。」
恵子さんがいってたのは知ってたけど、まあ兄のことも良く考えない人だな。
「笹原さんが早く決まるといいんですけどねえ。」
「・・・そうですね。」
今現状としては笹原さん待ちのような状況らしい。
「でも、それで無理して決めても意味がありませんし・・・。
 笹原さんがいるときはこの話題は無しで・・・。」
「・・・はあ。」
とはいっても、コミフェス以降、まともに話してない。
だって・・・。

特にすることも無い私は、そのまま買ってきていたコミックを読むことにした。
デスブック。最近ジャプンでネームの深さと美麗な絵によって人気の漫画。
私も好きなんだけど・・・。惜しくらむはメガネがメインであまり出てこないこと。
まあ・・・。それだけで漫画読んでるわけじゃないからいいんだけど・・・。
しかし、読めば読むほどどう締めるのかが気になる。
これ誰もが納得いくエンドにするのって大変そうだ。
Kとロウの話で最後まで突き抜けたらすごいんだけど。
本誌の連載じゃそうはなってないらしい・・・。って笹原さんが話してた。
笹原さん・・・。あれ以来話してないけど・・・。
やっぱり、引いたよなあ・・・。あれはなあ・・・。
・・・それでいいじゃない・・・。そうは思う。
このまま離れられれば私は・・・。諦められる。
諦める?何を?私は・・・。そういうことを考えちゃいけないはずなのに。
でも、そうなったらいいなって考えてた自分は否定できない。
だからかな・・・。本心が見えてしまいそうで・・・。
話しかけられない・・・。

ガチャ。
ビクッ!
「よ~~。あっついなあ・・・。」
入ってきたのは春日部先輩。Tシャツ一枚というあまり見ないラフな格好。
「・・・こんちは。」
またも笹原さんのことを考えてたときに扉の開く音。
何でこうも驚かなきゃいけないの・・・。
「こんにちは~~、どうですか、調子のほうは。」
「そうね~、まあまあかなあ。もう少しってところ。」
「そうですか~。」
私には良く分からないけど、店を開くっていうのは大変なんだろう。
あんなに大変そうにしててもいまだにもう少しってぐらいにしかならないのか。
二人はそのまま会話を始めてしまった。

漫画を読み続けながらも私の思考は別のことに向かってしまっていた。
それでもなるべく平静を装うためにも手放すことはできなかった。

でも、何でああも笹原さんは私の面倒を見てくれるんだろう。
それはサークルの後輩だからなんだろう。優しい人だから。
それ以上は無い。・・・無い。
だから、私が離れておけば、きっと問題は無い。そう、無い。
私が、これ以上そうなりたいって思わなければ・・・。
優しい人だから、私の気持ちを知れば付き合ってくれるのかもしれない。
でも・・・。それは違うんだ。私はそうなっちゃいけないんだ。
結論は出た。これ以上近寄らないこと。
まあ、就職活動で忙しそうだし・・・。このまま卒業してくれれば・・・。
卒業?そうか、あと半年で卒業なんだ・・・。

ガチャ。
ビクッ!
「やあ・・・。」
「おー、笹やんじゃーん。」
「お久しぶりです~。」
ついに現れてしまった。どうしたらいいのか分からない。
「・・・こん・・・。」
挨拶ぐらいしっかりしなきゃ逆にやばいだろって!
そうは思っても声が出ない。どうしよう・・・。
「えーっとですねえ・・・。決まりました・・・。」
「えっ?」
彼の口から出たのは思いも寄らない言葉。
視線は顔の方に持っていけない。
「ウン・・・。内定・・・でましたよ。」
内容のわりに気弱な声が、彼らしいと思った。
「えー!すごーい!おめでとうございますー!」
「へー、おめでと。」
あ、そうか、こういうときにはおめでとうか。
「どこ?」
「お・・・。」
「編集プロダクションっていってね・・・。」
「おめ・・・。」
やっぱり声が出ない・・・。うう・・・。

何やかんや話をしたあと。
どうも大野さんのあの友達二人に前作った本を送るらしい。
ビクッ!
しまってあるロッカーが私の隣なんだからしょうがないんだけれど。
笹原さんが私の横に移動してきた。
顔はやはり向けれない。
顔が、赤くなっているのが分かる。
逆に、普通にできなくなっている。
「これ・・・、二人に送ってあげてくれる?」
懐かしい表紙を見て、思い出すのはあの数日の出来事。
私がはじめて現視研の一人だなって思えたあの日々。
完成した本を売っていた先輩たちの・・・。
いや、笹原さんの顔はすごくうれしそうだった。
だから、私もやりたくなったんだ。
あれだけ突き放してたことを、いまさらやろうなんて思ったのは。
その後の冬コミでも色々あったしなあ・・・。

と、ここまで考えているうちに、違う話題になっていた。
「じゃあ、すぐに企画たてれそうだね、合宿。」
「ああ・・・。一応あいつにもメールしといたんだけどね。
 まあ、おめでとうも無しにいきなり合宿いつにする?
 だもんな・・・。」
「あはは・・・。お兄ちゃんはあいかわらずだねえ。」
「まあね・・・。」
「荻上も行けるんでしょ?」
ビクッ!
いきなり話が振られて驚いてしまった。
「え?ええ、ま、まあ・・・。」
「?ま、わかった。でも、高坂行けるのかな・・・。」
「マスターアップがもう少しらしいから・・・。何とかなるんじゃない?」
「え、何で知ってるのそんなこと?」
「メールが来てね、マスターアップが今日から数日後で
 締め切りやばいみたいなことが書いてあったんだよ。」
「あ、似たようなの来てた。そういう意味だったんだ・・・。」
「うん、その日までにあげなきゃどっちにしろ出せないから終わりだよね。」
「そっか、なら大丈夫かな。」
「多分ね。」

そんな会話を聞き流していたんだけど、視線がたまにこっちに向いてるのがわかる。
ずっと俯いたままなのはいつものことなのに、何を気にしてるんだろう。
「じゃあ、俺はいったん帰ります・・・。」
「え、早いじゃん。」
「ちょっとやらなきゃいけないこともあるしね・・・。」
「ふーん、おつかれさん。ま、よかったじゃん。」
「あはは。そうね・・・。」
「おつかれさまです~。」
「おつ・・・。」
ああ、また声が出ない・・・。
「それじゃあね・・・。」
そのまま扉を開けて出て行ってしまった。
二人とも私のほうを見てる・・・。やっぱり不自然だったかな・・・。
それでも何もできず、私は漫画を見てるフリを続けるだけだった。

でも・・・。もし、もしかしてだけど・・・。
笹原さんが私のこと好きだっていってきたらどうする?
考えたことが無かったけど・・・。絶対ありえないから。
あれを見てまでそういってくれるなら・・・。
いや、それでもきっとだめなんだ。
でも、もしそうなったらどうなってしまうんだろう、私は。
考えても結論は出ず。
どうしようもないので、考えるのをやめた。


~帰り道の笹原~
はあ・・・。
荻上さん何も話してくれなかったよ・・・。
やっぱり本見たのが原因か?
あれは事故だしなあ・・・。
でもあれ以来だし・・・。
嫌われてたら嫌だなあ・・・。
こっちからは声かけずらいしなあ・・・。
合宿で何かできるといいんだけど・・・。
なんか考えてることがゲームの主人公っぽくなってるなあ・・・。
はあ・・・。