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五月雨(さみだれ) 【投稿日 2006/01/13】

カテゴリー-笹荻


梅雨入りの長雨に笹原と荻上の二人はどこにも出かけられず、せっかくの休
日なのに荻上のアパートで、何をする事無く過していた。
シトシトと霧雨のような雨が降っていた。雨だれがアパートの雨どいをつた
って、ピチャリ、ピチャリと音を立てている。荻上はぼんやりと机に座って、
窓から見える滴り落ちる雨だれを眺めていた。

荻「さっぱりやんでくれませんねー。笹原さん・・・」
荻上は描きかけの漫画の原稿の下書きの上に、エンピツを遊ばせながらつぶ
やいた。

笹「んー、そうね」
笹原はテーブルで漫画を読みながら答えた。

荻「これじゃあ、洗濯もできないし・・・どこにも行けないし・・・、滅入
ってきます・・・」
笹「・・・原稿・・・進まないの?」
荻「はあ、まあ・・・」
笹「気分転換にゲームでもする?」
荻「でも古いのしかないですよ。最近新しいの買ってないですし・・・」
笹「俺もだよ、えーと、プレステ2だよね。あっこの格ゲー懐かしい!」
荻「あー、それ・・・買ったもののあんまりやってないんですよね、得意じ
ゃないし・・・」
笹「いいよ、教えてあげる」
荻「・・・そうですね、ヒマだし・・・」

二人はテレビの前に並んで、格ゲーを始めた。
荻「・・・で・・・やっぱり巨乳女性キャラなわけですね(怒)」
笹「いや(汗)、習慣で・・・はは(汗)」

荻「あれ・・・、こうか!」
笹「そうそう、このコンポはそのボタンで!」
小1時間が過ぎる・・・

荻「やった!また勝った!笹原さん?初心者だからって手をそんなに抜かな
くても・・・」
笹「はは、そうね!でも上達早いよ(強え・・・)」
荻「そろそろ、お昼近いですね、食べるもの何も無いですね。買い物に行き
ましょうか?」
笹「そうだね」
荻「この前食べたタンドリーチキン美味しかったですよね」
笹「うん、でもあそこ今日は定休日だしなあ」
荻「じゃあ、足りない食材だけ買い足して、簡単にすませますか?」
笹「そうだね、スーパー行ってから決めようか?」

アパートの外は雨足は穏やかであったが、長雨で湿った空気が包んでいた。
荻「やみそうもないですね。しばらく・・・」
笹「梅雨だしね・・・」
二人は五月雨がシトシトと降りつづける中を、近くのスーパーまで、一緒の
傘で歩いていった。アスファルトが濡れ、むせかえる雨の匂いが二人を包ん
でいる。

荻「ナスとタマネギとひき肉買い足せば、買い置きのトマトピューレとコン
ソメで、ミートソースとオニオンスープ作れますね」
笹「でも、二人だと野菜余っちゃわない?」
荻「大丈夫デス。使い足せますから」
笹「そうそう、ついでにレンタルでDVD借りていこうよ」

帰り道、公園のそばの紫陽花に目が止まった。
荻「ああ、綺麗ですね!わたしアパート決めるときに、近くに紫陽花のある
事を理由に決めたんですよ!故郷にも紫陽花が綺麗なところがありました
から・・・」
笹「そうなんだ・・・」
荻「雨に打たれながらも、深いあざやかな藍色の色をたたえて耐え忍ぶ姿が
けなげで儚げ(はかなげ)で好きなんです。」
笹「・・・・うん、俺も好きなんだ・・・」

アパートに着くと、二人で台所に立ち、料理を始めた。
笹「俺、何すればいいかな・・・」
荻「うーん、そうですね、じゃあ、水につけたタマネギを切ってもらえます
か?その後でスパゲティー茹でてもらえます?」

笹「んー、分かった!スパゲティーはアル・・なんだっけ?」
荻「アルデンテですね、芯が残るくらいがちょうどいいですよ」

料理が出来上がると、二人は一緒にテレビを見ながら、ミートソーススパゲ
ティーとオニオンスープを食べ始めた。
笹「どんなもん?うまく茹でれたでしょ?」
荻「そうですね!初めてとは思えませんね」
笹「いやだなあ、料理くらい(インスタントラーメンとか・・・)」

笹原は荻上がスパゲティーをその小さい口に運ぶしぐさをぼんやりと眺め
ていた。
荻「どうかしました?」
笹「・・・いや、なんでもない。ところで洗濯物どうしてる?俺はもうまと
めてコインランドリーに持ってくよ」
荻「わたしもですね。こんなんじゃ洗濯できません。家の中になんか干せま
せんし、梅雨は嫌ですね」
笹「気にしなくていいよ・・・俺も淡いブルーは好きなんだ・・・」
荻「なっ何の話してるんですか!いやらしいですね!」
笹「えっ!いや、紫陽花の話!(うっかり口がすべった・・・)」

食後、二人は荻上がレンタルで借りてきた『スクラムダンク』のDVDを一
緒に観た。
笹「最終回の話だよね」
荻「ええ、そうです」
笹「やっぱり主人公のライバルがお気に入りなわけ?」
荻「わたしはそれほど・・・その・・・どちらかと言えば副キャプテンの・・・」
笹「ああ(汗)大野さんはやっぱりキャプテンだろうね」
荻「そうなんですよ!しかもわたしにキャプテンと副キャプテンの話描け描
けって・・・やっぱ趣味合いませんね!あっいやその・・・」
笹「まっまあ、そういうこともあるよね!」
荻「おっお茶入れますね」
笹「うっうん!」

荻上は中国茶の道具を用意し始めた。
笹「へえ、本格的だね」
荻「そんな本格的って言うほどじゃないですよ。・・・酒はコリゴリなんで・・・こういうのに少し興味が出ただけで・・・」
笹「ああ(汗)」

荻上の動作によどみは無かった。言動は相変わらずだったが、以前に比べて、
荻上のしぐさに険しさは無かった。ゆっくりとした手つきでお湯を茶壷に注
ぐ姿にはむしろ穏やかささえ感じさせた。あたりにお茶の芳香が溢れかえる。
笹「ああ、いい香り!」
荻「キンモクセイの花の香りがするお茶なんだそうです」
笹「こういうのもいいよね、空気がゆるりとした雰囲気かもし出してるよ」
荻「・・・そうですね。スクラムダンクの最終回ですけどね・・・」
笹「うん」
荻「主人公って、最初は好きな子の為にバスケ始めるじゃありませんか。」
お茶を入れながら荻上は話続ける・・・。
笹「そうだったよね」
荻「でもバスケが出来なくなって初めて自分にとってバスケが大事なものだ
って気付くんですよね。」
笹「・・・うん、そうだね」
笹原は荻上に入れてもらったお茶をすすりながら話を聞いていた。
荻「大好きで、大好きで・・・そのシーン好きなんですよね・・・」
笹「・・・うん」
笹原は荻上の目が少し潤んだような気がしたが、黙って気付かないふりをし
た。
笹「スクラムダンク見終わったら、また漫画の原稿始めようか!」
荻「そうですね」
と荻上はそう言って、にこりと笑った。

窓から見える雨はやむ事無く降り続け、遠くの景色をかすませていた。