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マダやん 【投稿日 2006/01/09】

カテゴリー-他漫画・アニメパロ


―――――彼女は、筺の中にみっちりと埋まってゐた。

斑目晴信(23歳・会社員)は戦慄した。
成人の日を加えた3連休に、冬コミで買い込んだ同人誌を分別整理しようと思い立ち、
読み返しては段ボール箱に入れ、オカズとしての実用度を分類の尺度にすべきか、
あるいは上手い下手にかかわらずジャンル別に分類すべきか、決まらないままに始まった
終わり無き選別作業を続ける中、押し入れの奥に記憶にないビッグサイズの段ボール箱を
発見したのが数分前。
人間の死体でも入っているのではないかという重さに荒い息をつきながら、ようやく床に
下ろした段ボールには、トンデモナイ代物が収まっていたのである。

そこにあるのは、見知らぬ女性の新鮮な死体だった。

年齢はおそらく20代、脱色したショートボブに一房伸びた前髪。ジーンズと、『はじめての
ブスコパン』とプリントされた、お世辞にも趣味がいいとは言えない白いTシャツ姿。

斑目の頭に「110番」「新聞沙汰」「猟奇殺人」「容疑者」「別件逮捕」「カツ丼」など
という単語が瞬いては消えるパニックの中、ようやく箱の中の女性が息をしている事に気付く
までには、心臓が数拍の鼓動を刻むまで待たねばならなかった。
何故、という斑目の疑問の回答が得られるよりも早く、箱の中の女性が伸びをするように
身体を動かし、段ボール箱を破壊して目覚める。
「ん~っ」
「あの……もしもし?」
カラカラに乾いた喉から、どうにか問い掛けの言葉を吐き出した斑目の首筋に、
「せいっ!!」
という掛け声と共に彼女の渾身のチョップが炸裂し、斑目の意識は即座に途絶えた。
「ヤバい! カンペキに首の骨外しちゃった! ちょっと大丈夫、知らないメガネ人(びと)!
 つーか何ページよここ? M上さんからもらった台割表だと、このページでいい
 ハズなんだけど……ええい、コマの中にいるとノンブルが見えないぃっ!」

「……つまり、話を要約すると」
どうにか蘇生した斑目が、彼女が勝手に入れたインスタントコーヒーを前に話し始める。
「この世界は実は漫画で、あんたは別連載の主人公で、雑誌の出てくるページを間違えて
 登場してしまったと、そういう事?」
「ついでにアタシが愛のキューピッドで恋愛成就率100%で愛に飢えたアナタの
 度重なるソロ活動のせいで引き寄せられてムリヤリこのページに登場してしまったと
 いう現実を直視して欲しいわネ」
「……。」
「…………。」
「……とりあえず名刺。斑目と言いまス」
「あ、アタシも」
そう言って彼女が差し出した名刺を受け取った斑目の眼前に、「ズゴゴゴゴ」という
書き文字が見えたよーな気がするのは、気のせいではなかった。

 ラブ時空ISO14001取得
 ラヴ組合所属
 キューピッド ブラックベルト二段

      ラブやん

 ラヴ電話(代)0120-XXX-XXX

「なんじゃこりゃぁぁぁ!」
「ああッ、初対面で名刺破り捨てるなんて、めっさ無礼ッ! あんたにはビジネスマン
 としての基本から叩き込まなきゃならないようね! 覚悟結構! 迎撃準備完了ォッ!」
「こんな無茶苦茶な名刺があるか!? つーかあんた、(ピー)病院から脱走してきたんだろ!
 この世界が漫画? 連載? ページ間違えた? 黙って聞いてりゃ無茶苦茶を並べて!」
「ふんッ。この部屋の、カズフサを凌駕するエログッズの数々! あんたの方こそ(ピー)
 病院がふさわしいと見た!」
「ンだとこのキチガ(ピー)!」
「エロメガネのオナニス(ピー)!」

(しばらくお待ちください)

「ぜーはーぜーはー」
「ぜーぜー……フフ、クチゲンカでブラックベルト二段に勝とうとは片腹痛いワネ」
「百歩譲ろう……疲れた。じゃぁ俺は引き立て役のかませ犬という役どころなんだな?」
「ようやく現実を受け入れるつもりになったカシラ?
 そんな貴方に救済と春をもたらすべく、このラブやん様が見~参! というワケよ」
 ビシッと決めポーズを取った彼女だったが、文章だといまいち決まらないのがイタい。

「……で、このヘルメット被ったコスプレ写真の彼女がまだ忘れられないワケね」
「まぁ、高坂っていうちゃんとした彼氏がいるし、叶わない想いだってのは最初から……」
「違ぁウッ! そこはこう、『慌ててカルピスを溢したと言い訳したくなるホドに大量の』
 とか、『僕が夢中なフラグ立て・それ何てエロゲ?』みたいに、生々しく語るのが真の
 漢! っていうかあんたが変態じゃないともう仕事やりづらいからそういう感じで決定!」
「ヒデぇ!」
「早速、彼女とくっつく方法を受信してみようじゃないの……むンッ」
「あの……何を?」
「受信よ受信! キミん家に何かアンテナとかない? 作品違うから感度悪くって」
「あ、えーと、アニマックスとか見たいんでこないだスカパーに……」
「これね。ちょっと借りるわよ」
そう言って彼女はアンテナ線をひっこ抜き、トイレに駆け込んだ。
「いいわね? 終わるまで、ここを開けない! 聞き耳立てるのも禁止!」
「それどーするつもりだよ!?」
「私の身体にあるラブ穴にしっぽりと挿すの! このスレは18禁NGなんだから!」

彼女がそう言ってバタン、と閉めた扉の前で、
「あ、もしもし110番ですか。ちょっと頭のおかしい女が家に……ええ、はい」
と、落ち着きを取り戻した斑目が通報するまで奇妙な喘ぎ声とか発砲音とか轟音とか爆発
音が聞こえていたのは、彼の気のせいではない。安永航一郎の同人誌か、このSSは。

「そんなワケで、計画は万事遺漏無し! 早速実行に移るわよ!」
「いやもう警察来るし」
「国家権力のポリスメンなぞ無用!」
そんな調子で、斑目は母校・椎応大学の部室へと引きずられてゆくのであった、南無。

所は変わって現視研部室。
春日部咲は今日も独立開業に向けてお仕事の真っ最中であった。
自室でやればいいものをわざわざ部室でやっていると言うのは話の構成上……もとい、
高坂に会えるかもしれないという、淡い希望によるものなのが何とも涙ぐましい。
「や、やぁ春日部さん」
「……誰それ?」
普段なら無視されるところを、見知らぬ女性を斑目が連れてきたという国家非常事態
並みの驚くべき状況によって、ようやく返答がいただけるというのが実に哀しい。
「ラ……じゃなかった、ヤンさん。児文研のOGで、久しぶりに来たとか何とか」
「こんちはー。あなたが春日部さん? お噂はかねがね」
「そう……噂、ね。日本語上手ですけど、元留学生?」
「ええまぁ。半分永住しちゃってるようなモンですけど。今は餃子のお店を出してます」
お店、という言葉に反応した咲が、コロリと表情を変えてノートPCから向き直る。
「え、なになに? お店持ってるの? すごーい」
(作戦第一段階成功! ツカミはOKよ!)
と、斑目の耳元でラブやんこと自称『ヤン』は呟いた。

「お店は下北沢の外れにあるんですよー。斑目クンは常連さんで」
「あー、うん。そうそう」
「安く仕入れた韓国産の具だくさん餃子を美味しい美味しいって」
「えーと、まぁ、そう」
「その後、全身によくわからないブツブツができたり、下痢が止まらなくなっても
 週イチで通ってくれて」
「多分そうだったような気がしないでもない」
そこ、政治的にヤバい話はしない! Wikiに保存されて作者が日本海クルーズに連れ
出されたらどーするつもりだ!
「なんかずいぶん斑目と仲良さげじゃない。カノジョ?」
「いやいやいや、あくまでお客お客」
「そーですよー。私がオタクとなんかと付き合うタイプに見えますか?」
「そうよねぇ……苦労するもの。この四年間の茨道……二次元に負けまいという
 私の努力と涙とテクニックの数々……くゥっ、振り返るだけで涙が」
「こ、高坂とは、最近どう?」
「ご無沙汰。なんか会っても立ち絵がどうとか、オブジェクトがどうとか、ライセンス
 とか『ソフリン』とか、仕事の話ばっかり。嫌になっちゃう」

ひととーり咲が愚痴を並び立てた所で、部室のドアがガチャリと開いた。
「ハローハローご主人様~、私アナタのガッツさ~ん♪」
「あっ、コーサカぁっ▽(←ハートマークの代用。)」
トンデモない替え歌と共に登場したのは、咲の彼氏である高坂だった。
もっとも高坂にしてみれば、咲は『三次元の彼女』であって、咲にとってはナチュラル
ボーンエネミーである二次元の恋敵が多数存在するというのは、本編を読んでいる人なら
ご存じの通り。エロゲ好きがこうじてエロゲーメーカーのプシュケに就職が内定した高坂
は、まだ在学中であるにも関わらず、プログラマーとしてこの2週間駆り出されていた。
ところでプシュケの元ネタって『lain』ですよね?(SS内で訊くんじゃない)
「咲ちゃん久しぶりー▽(←ハートマークの代用。) 元気してた?」
「んー元気元気。今さっき元気になった!」
「良かったね(高坂スマイル)。……あれ、斑目先輩、その人は?」
「実はかくかくしかじか」
「へー。『かくかくしかじか』な事情なんですね。よくわかりました(高坂スマ(略))」
「……コーサカ、おまいは本当に意味わかってんのか?」
わかっていよーといまいと話は進む。それが2ちゃんねるSSスレクオリティ。

(どーすんだよ、自称キューピッド。コーサカ来ちまったら春日部さんの眼中に俺なんか
 見えなくなっちまうぞ。つか、俺らが席外した途端にガチにパツイチおっ始めると見た!)
(エエ。そのヨォね。しかしながら、私の灰色ラヴ脳細胞は一波乱起きると予測してるワ)
(一波乱って何だよ?)
(アレよ)
そう言って彼女が指さした先には、見慣れないニット帽を被った高坂のドタマがあった。
「あ、初対面の人がいるのに帽子被ったままじゃ失礼ですね。はじめまして、有限会社
 プシュケ開発部の高坂真琴と言います。これ名刺です。まだできたてなんですけど」
名刺を取り出しながら帽子を取った高坂の姿に、咲が凍り付く。
そこにあるのは、数週間前までイケメンスタイルであった綺麗な金髪に代わって、坊主
ヘアに鞍替えした高坂の姿ッ! 英語で書くとすれば、それはそれは見事なBOUZU!
「人間、スタジオに缶詰で十日ぐらいお風呂入らないと、知らず知らずのうちに頭かき
 むしって血だらけになっちゃうんだね(筆者の実体験による)。キーボード叩いてるだけ
 でフケがパラパラ落ちて気持ち悪いから、咲ちゃんが教えてくれた美容院でバッサリ
 切ってもらっちゃった。どうかな、似合う?(高坂スマイル)」
「いやお前、普通美容院で坊主頼んだら止められるだろう!」斑目がツッコむ。
「えー、でもスッキリしていいですよー? ……あれ? 咲ちゃんどーしたの?」
「ボーズ……あたしのコーサカが丸坊主……若さ故のあやまち……坊主だからさ……」
そこには、エクトプラズムを吐き出しながら椅子の上で脱力に脱力しまくる咲の姿。
嗚呼、運命なんてしらない。

「咲ちゃん咲ちゃん? 大丈夫だよ。今度の休みで演劇用のカツラ買うから、付き合って」
「お前はサミュエル・L・ジャクソンかーっ!」
斑目のツッコミが虚しく響く部室。残るは怪しく目を輝かせる自称キューピッドと、
あまりのショックで臨死体験真っ最中の咲。
(マダやん、マダやん)斑目の耳元でこっそりと自称キューピッドは呟いた。
(誰がマダやんか)
(余りのショックで春日部さんはグロッキー状態よ、畳みかけるなら今!)
(畳みかけるって、どーやってだよ?)
(むう、カズフサと勝手が違うから困るわね。屁理屈でねじ伏せなさいッ)
「二人で何話してるんですか?」
「幻覚……今のは幻覚よ……」
ニット帽を被り直した高坂の姿を見て、徐々にあっちの世界から帰ってきつつある咲に
向かって、斑目一世一代の大演説が始まった。
「あー、春日部さん? 誠に残念ながら、コーサカが春日部さんに無断で坊主頭になった
 のは、悲しいけどコレ現実。問題はさ、四年も付き合ってて髪型の変化ぐらいでショック
 受ける春日部さんのほうにあるんじゃないかな? 君らの絆はそんな脆弱だったのか?」
「だってボーズじゃない、ハゲじゃない! 嫌ァァァァッ、私のコーサカがーっ!」

「甘いッ! 彼氏が仕事に生きようと断腸の思いで(推測)非モテの道に半分踏み込んだのを、
 キミは否定するのか? 暖かくネオ・コーサカを受け入れてあげる寛容さなくして、これ
 から病めるときも健やかなる時も愛し続ける、その自信無くして何が愛か! 外観と職種の
 変化だけで拒絶反応を示すとは言語道断! キミの愛情はそんなにペラいものだったのか?」
「うっ……だけどだけど、何か今まで飲み干したり体内で吸収したコーサカ成分がヤな汗と
 共に拒絶反応でダラダラと排出されてゆくのよーッ! とにかくボーズだけは駄目!」
「ムぅ……その『コーサカ成分』とやらが何なのかはツッコまないでおこう。アフタヌーン
 愛読者のオタク予備軍……もといお子様チルドレンもこのスレを見てるかもしれんしな」
「どう考えても精子ですね」コーサカが笑顔と共に云う。
「本当にありがとうございました……アンタ相当なワルね」と、自称キューピッド。
「そこ、ガ板でしか通用しないネタを開陳するな! とにかく春日部さんは特訓が必要だな」
「と……特訓?」
「そう。コーサカがどんなキモメンになっても受け入れられる心の準備をすべきだ!」

そして三ヶ月の時が過ぎたッ!

「えっと……ヤンさん、これでいいんですか?」
戸惑いがちの高坂が、自分の姿を見ながら言う。今は専門学校に居る田中のコネクションを
フルに使い、『防衛出動すら予測される最悪の服装』をコーディネートし、更に特殊メイク
まで駆使して今や別人となったコーサカの姿は、弁髪付きのコボちゃんヘアーにニキビブツ
ブツのツラ、スネ毛ボーボー半ズボン七分袖、背負ったリュックにエロゲポスター満艦飾、
ワイルドさを演出するために片手錠足枷首輪付きという、無茶苦茶なキモメンと化していた。
「スパシィヴォ……キモすぎて私ですら吐き気が止まらないわ。そして決めゼリフ、GO!」
「えーと……『オ、オデは中国株に手を出したのが没落の始まりだったんだな』って……?」

一方その頃、北朝鮮と中国の国境では(ぉい)。
「探せ~っ! 男女二人組のイルボン人だ! 人民の太陽・将軍様の直命である! 死んでも
 脱北を許すな! なるたけ殺すなっ! 片方は痩せた眼鏡姿、もう片方は長い金髪だっ!」
ワールドワイドに特訓をプチかました斑目と春日部の二人が、何故か朝鮮人民軍と国境警備隊
に追われていた。お前ら一体何やらかしたんだ?
「……行ったか?」
「OK! 一気に川を渡ってこの国をオサラバするわよ!」
「しかし何だな、俺たちのこの三ヶ月はまるでメタルギ(ピー)ソリッドだったな……」
「蛇があんなに美味しいとは思わなかったわ。ありがとう、斑目。今の私なら、全てを愛せ
 そうな気がするの……行きましょう。コーサカが日本で待ってるわ」
「よし、3・2・1の1を言い終わった所で……」
「行きましょう」
「ああ……春日部さん、この三ヶ月、苦しかったけど、楽しかったぜ。ありがとう」
「私もよ」
全く芸風の変わってしまった二人が走り出す。そう、それは自由への疾走。

「……で?」
「三ヶ月も一緒に過ごせば、フラグの一つぐらいは立つと思ったんだけどね……」
「国連の輸送機ハイジャックして平壌にまで放り込んだアタシの苦労は?」
「全くの無駄だったんじゃないかと……コーサカ恋しさで春日部さん頑張ったみたいだし」
「はぁ……」
「ふゥ……このヘタレ~ッ! ラブ時空道場直伝ラブ固めッ!」
「あ痛たたたた! 手首の古傷がァ~っ! タップ、マジでタップ!」
それなりにお似合いのお二人になってしまった自称キューピッドとダメ社会人は、実はまだ
斑目宅で暮らしているのです。

そして一方、椎応大学キャンパスでは。
「コーサカぁ▽(←ハートマークの代用。)」
「咲ちゃ~ん▽(←ハートマークの代用。)」
全く変わらないバカップルぶりを披露する春日部さんと高坂の姿があったとさ。
どっとはらい。

ンゴゴゴゴゴゴゴゴ……
さらに一方、大阪府平方市、大森カズフサさん(28歳・無職)のお部屋。
「ま、お茶でも」
「……す、すいません」
「で、主人公らしいキャラになりたいと、そォ言う事で?」
「ええ、まぁ……」
完全にこのSSでは無視された主人公・笹原くんがコタツでミカンを食っているのでした。
おちまい。