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朽木 11:00  【投稿日 2006/01/01】

げんしけん24


クッチーは部室の窓から双眼鏡で向かいの部屋を見ていた。
部室と言っても、児童文学研究会(以下児文研)の部室である。
つまり、彼が見ていたのは現視研の部室なのだ。

クッチーは新人勧誘の日以来、部室に行く前に児文研の部室に寄るのが習慣になっていた。
あの日以来、彼と大野さんとの間には微妙な緊張関係が続いていた。
誤解が解けて笹原が間に入ってお互いに謝罪し、形式的には和解したものの、感情面でのわだかまりは当然残った。
そのわだかまりというのも、お互いに相手を責める気持ち半分、相手にすまないと思う気持ち半分の複雑なものだった。
だから2人きりになると、お互いに不自然な気遣いをし、腫れ物状態で接してしまう。
その緊張した空気に耐えられないクッチーは、なるべく大野さんと2人きりになることを避ける為に、児文研の部室から1度確認してから部室に行くことを思いついた。
(屋上からだと部室は見辛かった)

クッチーは児文研会長(5巻の冒頭で斑目たちに応対してた女性)に、正直に事情を話してお願いしたところ、快諾してくれた。
その代わりに児文研に名前だけ入会することをお願いされ、彼もまた快諾した。
その際に、現視研と児文研の古くからの関係について説明された。
この2つのサークルは、共に文化サークルの中では弱小で、古くから何度も解散の危機に見舞われてきた。
その度に両会は会員の籍の貸し借りを行なって乗り切ってきたのだ。
今年は児文研も入会ゼロだったので、クッチーの来訪は渡りに船だった。
と言うのも、この関係は誓約書を書くようなしっかりした関係でなく、恒例のドッキリ等のついでに代々の会員同志の口約束で行なわれてきた緩やかな関係だった為に、改まって請求しに行くのも気まずかったからだ。

実は児文研会長のそういった行動の背景には、もう1つ事情があった。
それは文化サークル同士の横のつながりだった。
文化サークルで1番女子の多い漫研は、文化サークル全体に対して大きな影響力があった。
そしてその漫研女子は、最大の反大野・反荻上勢力でもあった。
彼女たちは、新人勧誘の際の大野さんの、会長風吹かせた態度を快く思っていなかった。
だから今回の騒動に溜飲を下げ、文化サークル全体の女子の間に密かに「あそこには絶対救いの手は差し伸べるな」という暗黙の回状が口頭で回されていた。
だから個人的にはさほど悪感情を持ってない児文研会長も、表立って現視研に救いの手を差し伸べることは避けていたのだ。
その一方でクッチーについては、敵の敵は味方という毛沢東理論に基き、文化サークル全体の世論は同情的だった。
だからかつてのアニ研の仲間も「我慢出来なくなったら戻って来い」とまで言ってくれた。
もっともそれに対してクッチーは丁重に固辞した。
義理人情を重んじる男の中の男クッチーは、そうすることは受け入れてくれた春日部先輩や優しくしてくれた笹原先輩への義理を欠くと考えていたのだ。

朽木「うーむ大野さん1人だにょー」
大野さんはこちらに背中を見せて座っていた。
その周囲には様々なコスが広げられていた。
朽木「こりゃ当分部室から離れないな。それにコスだらけのとこに僕チンが突入したら、また機嫌悪くなるかも知れんし・・・」
腕時計を見るクッチー。
朽木「斑目先輩が食事に来るには、まだ時間があるにょー。仕方ない、ここでしばらく待つにょー」
児文研の会長がお茶を入れてくれた。
朽木「こりゃいつもすいません」
会長「いいええ」

朽木「あっ荻チンが来た」
現視研の部室の方には、荻上さんが入ってきた。
こちらから見て右側に彼女は座った。
背中を向けている大野さんの様子はこちらからは分からないが、荻上さんの口の動きと終始赤面してる表情から、何やら真剣な話し合いであることは推測できた。
いつの間にかそんな荻上さんの一挙手一投足に見入るクッチー。

やがて大野さんが立ち上がり、カーテンを閉めた。
朽木「にょにょにょ?」
カーテン越しに、大野さんと荻上さんの動きがぼんやりと見えた。
朽木「着替えてる?・・・コスプレ?」
すぐに見に行きたい衝動に駆られるクッチー。
だがあの2人だけのとこへ突入したら、また気まずいことになるかも知れない。
焦燥するクッチーだったが、常人より視界が広くオタクにしては目のいい彼は、視界の片隅で笹原がサークル棟に入っていくのを捉えた。
朽木「どうやらここが勝負どころにょー!」
クッチーは児文研部室から飛び出して行った。