「遠い海からきたスー」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

遠い海からきたスー」(2006/01/01 (日) 00:27:48) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*天使達の午後SS版 【投稿日 2005/12/27】 **[[カテゴリー-斑目せつねえ>http://www7.atwiki.jp/genshikenss/pages/48.html]] 部室の扉のドアノブに手をかけて回すと、鍵がかかってることに気付いた。 斑「ありゃ、今日はまだ誰も来てないのか!」 部室のスペアキーをポケットから出し、部室の鍵を開けた。本当は卒業の時 点で保安上の為、大学に返却しなければならない事になっている。当然、ス ペアキーの事は部員全員知っている。知っているがまあ・・・。 (誰もいない・・・) あたりまえの事を考えながら、一番奥の席に座った。そこは無言の約束で会 長の席と決まっている。かつては初代会長の席だった。それが斑目の席とな り、笹原の席となり、今では大野さんの席になっている。そしてまた無言の 約束で、現会長が不在の場合には前会長が座る事になっている。そして現会 長が来れば、やはり無言の約束でその席を現会長に譲る事になっている・・・。 コンビニで買った弁当を袋からガサガサ音を立てて出し、バクバクと食い始 めた。弁当箱のへこむ音、箸を鳴らす音、そして弁当を噛む音、それらだけ が静寂の部室に鳴り響く。 やがて食べ終わり、やはりコンビニで買ってきたお茶を一服し、フーと大き く息を吐き、窓際に目をやった。 (今日は席を移動する必要はなさそうだな・・・・) 物思いにふけりながら、ぼんやりと窓からの景色を眺めていた。遠くでは昼 休みの時間を割いて球技に熱狂する人たちの歓声が聞こえてくる・・・。春 の日差しは次第に強く感じられるようになってきた。部室の側の木々には小 鳥たちがさえずって、巣づくりをしている。 (我らが雛鳥たちはどうしてるかな・・・朽木君は知らない・・・) ふと、反対側の校舎に目をやると、児童文学研究会の部室が目に入った。 (そういえば今年も新人ゼロって言ってたな。しばらくあの『儀式』もやっ てないな・・・。児童研の知り合いも卒業したし、もう廃れちゃうのかな・・・。 荻上さん以来か・・・その前が笹原・・・。) 斑目はあの二人の『儀式』の光景を思い出し、一人クスクス笑った。 急に雲間から強い日差しが斑目に差し込み、思わず斑目は目がくらんで立ち すくんだ。キーンと耳鳴りがして目眩(めまい)がした。はっと部室を見る と、大勢の部員たちのにぎわう姿が目に浮かんだ。耳鳴りがやみ、静寂から 外の球技に興じる人たちの歓声が再び聞こえると、その残像は消えた。 斑「まあ、そういう日もあるさ・・・」 と斑目は一人言をつぶやき、ごみを片付け、誰もいない部室を後にし、再び 鍵をかけて職場に戻っていった。
*遠い海からきたスー 【投稿日 2005/12/27】 **[[カテゴリー-斑目せつねえ>http://www7.atwiki.jp/genshikenss/pages/48.html]] こんな事を考えるのは自分だけだと思っていた。 世界中で一人だけ。私だけの、誰にも言えない秘密。 女の子なのに、男同士の恋愛に心躍らせるなんて―― カナコには感謝している。その妄想が、私だけのものではないと教えてくれたから。 私は突然変異の怪物じゃない、仲間は世界中にいる。 トウキョウでは年二回、仲間達が集まってお祭りを楽しんでいる――。 スーは夏コミ以来、荻上の同人誌を何回も何回も読み返していた。 すごい。自分の考えるYaoiなど児戯に等しかった。 オギウエはきっと狂気に近い才能を持った天才に違いない。 近くの図書館で、アンジェラと一緒に日本語を必死に調べた。 原本を手に入れた時の、いつもの作業だ。 わからない単語は、図書館のパソコンで何日もかけて検索した。 全てのセリフを記憶し、そらで言えるようになった。 手持ちの同人誌を堪能しつくした時、彼女の中に人生の悩みが一つ生まれた。 日本に住みたい。でも、今すぐ行けるはずもないし、どうしたらいいのかもわからない。 親友のテディベアを抱きながら、毎日考えた。 そのせいで宿題を忘れて怒られたが、それでもずっと考えた。 日本の男性と結婚すれば、ずっと日本にいられるだろうか? でも、日本ではOtakuは迫害されていると言う話を聞いた。カナコもいやな経験をたくさんしたらしい。 女の子の恥ずかしい写真を撮って喜ぶような悪い男性もいるという。 あてもなく探すというのはあまりにも分の悪い賭けだ。 …ゲンシケンの仲間なら、どうだろう。少しは…いや、だいぶリスクを回避できるのではないか。 一番感じが良かったのはササハラだけど、彼はオギウエのものだという。自分も二人はお似合いだと思った。 カナコはタナカサンに夢中だけど、自分には何がそんなにいいのか全く理解できない。 コーサカはハンサムだけど、サキを毎晩のようにいじめるらしい。そんな怖い男性は嫌いだ。 あとは…Sou-Ukeの彼。私がアニメのセリフを言ったら、すごく緊張して真っ赤な顔をしてた。 よくわからないが、自分に好意を持ってくれたのだろうか?悪い気分ではない。候補に入れておこう。 他には…思い出せない。誰か気持ち悪い人が視界の隅をうろうろしてたような気がするけど。 どうしようか。おそらく、今は人生の分岐点だ。 日本に行ってOtaku生活を満喫するか、それとも故郷で生涯を過ごし、 遅れた情報と限定された作品との出会いで我慢するか―― 行動しなくては。 彼女はベアを放すと、両親のいるリビングに向かう。 決断は早い方がいい。 「あなた、スーは日本語を学びたいんですって!」 「おお、そいつはいいアイディアだ。本人のやる気は上達への近道だからな。」 これでいい。障害を1つ1つとりのぞき、日本の大学に入るのだ。 今から周到に準備すれば、計画は必ず成就するに違いない。 「ソシテ タンキュウノタビハ ハジマッター!!」 「まあ!もう日本語を憶えてるのね、スー!」 「ははは、これは将来が楽しみだな!」 地球の裏側で、スーの物語…もう一つの「ゲンシケン」が幕を開けたのだった――

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: