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*荻上 10:00 【投稿日 2005/12/15】
**[[げんしけん24>http://www7.atwiki.jp/genshikenss/pages/63.html]]
荻上は憤慨していた。
(朝一からの講義だから早めに起きたのに、何で休講になってんだぁ!)
口を尖らせ、心の中で叫ぶ。言葉が口をついて出ていないところが唯一
の救いだろうか。
(前々から思ってたけど、あの教授って急にってのが多いよなぁ。急に休
講とか、急にレポートとか。やってらんねぇっつーの、まったく)
荻上は嘆息した。
(やることねぇし、現視研でもいくかなぁ。でもなぁ、うーん)
その時、荻上の腹が可愛らしい鳴き声を上げた。
(あーそういえば朝ご飯、食べて来なかったなぁ)
荻上は腹を押さえてしばし考え込んだ。
「学食、行ってみっかな……」
そう言うと、荻上は学食に向けて歩き出すのであった。
*朽木 10:00 【投稿日 2005/12/18】
**[[げんしけん24>http://www7.atwiki.jp/genshikenss/pages/63.html]]
「ハラショーッ!!!」
勝利の雄叫びを上げるクッチー。
朝っぱらから2ちゃんねる漫画板の某漫画スレを舞台に繰り広げたクッチーVS暇なヒッキーの対決は、遂にクッチーに軍配が上がった。
執拗なクッチーのレスの猛攻にヒッキーが音を上げたのだ。
クッチーがそこまでその漫画とスレに入れ込んだのには訳があった。
その漫画とは、ある架空の大学のオタク系サークルのぬるい日常を描いた作品だった。
同じ様なサークルに所属するクッチーは、その漫画を気に入って我がことのように感情移入していた。
中でも彼がご執心なのは、特徴は無い(強いて言えば平凡なことが特徴)が真面目で心優しい主人公と、その相手役とされているロリ顔ロリ体型ツンデレのヒロインだった。
その漫画のスレでは、この2人のフラグが立ってる派と立ってない派の2派に分かれて、日夜熱い論争を繰り広げられていた。
クッチーはフラグ立ってる派の急先鋒だった。
だから立ってない派のヒッキーに執拗に噛み付いたのだ。
クッチーがその漫画のスレに入れ込んでいるのには、もう1つ大きな理由があった。
それは最近のげんしけんの雰囲気だった。
かつてクッチーが入会した頃のげんしけんは、ぬるいオタクが集ってぬるいオタ議論を繰り広げるぬるいサークルだった。
だが斑目たちの代が卒業し、笹原たちの代が就職活動に入り、現役会員が大野会長、荻上さん、クッチーだけになると、その雰囲気が変った。
(クッチーにとっての恵子は、時々遊びに来る先輩の妹という認識だ)
大野さんと荻上さんという、表現する側・作る側のオタが主流派になった為に、げんしけんはぬるオタサロンというよりガチオタ製作現場に近くなったのだ。
それはそれで嫌いじゃないが、かつてのようにぬるいオタ議論が延々続くげんしけんが消えつつあるのは寂しかった。
そんな彼が、2ちゃんねるの自分の好きな漫画のスレに活路を求めるのは、当然の帰結だった。
一通り関連スレに目を通して、ようやくクッチーはパソコンの電源をオフにした。
そして出掛ける用意を始めた。
リュックサックの中をざっと見て、枕元の携帯を取る。
メールの着信があったようだ。
2ちゃんねるに夢中で気付かなかったらしい。
「おー斑目さんからだにょー。何々・・・今度の0時売り・・・他のみんなは来れないから2人だけだけど一緒にどう?、か」
いつ、何処でも、誰の挑戦でも受けるをモットーにしてるクッチーは、敵に背を向ける訳には行かなかったので「ラジャー!!!」と返信した。
一通り用意が済むと、昼の講義にも昼休みにも間があり、中途半端に時間が空いてることに気が付いた。
そこで先程2ちゃんねるでの死闘の原因になった漫画の掲載されてる、分厚い漫画月刊誌の今月号を読み始めた。
改めて読んでみて、彼は自分のフラグ立ってるという主張は正しかったと確信した。
そしてふと、ご執心の漫画内のカップルに似た、現実の男女に思いを馳せた。
『春日部さんはあの2人フラグが立ったみたいに言ってたけど、どうなんだにょー?まあ確かに、あの2人ならお似合いだとは思うけど・・・』
『でもあの2人って、カップルと言うより血のつながってない兄妹みたいな感じだからなあ。カップル成立するには、何て言うか、お互いに異性だということを意識するような、そういうイベントが必要な気がするにょー』
「さて、出掛けるかにょー」
自分自身に言い聞かせるように呟いて、立ち上がってリュックを背負う。
「電気も窓もオッケーと」
部屋を見渡して、ふと壁を見つめた。
壁にはたくさんのポスターがあった。
萌え系女の子キャラと硬派系男キャラのポスターが混在する壁の一角に、パネルにした写真が貼られていた。
被写体の女の子は、斜め後方からというアングルのせいで、横顔しか見えない。
その写真を見るクッチーの顔付きは、普段ほとんど見せることのない、優しさに満ちた柔和なものだった。
「ちっとはお洒落して、ニコニコしてれば可愛いんだから、もっと素直になるにょー。そうすりゃ笹原さんなんてイチコロだにょー」
かつて携帯で盗撮したものを引き伸ばした、イベントの行列に並ぶ筆頭の少女の写真にそう呟くと、クッチーは部屋を出た。
「昼の講義まではヒマだから、とりあえず部室に行くにょー」