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*笹荻の帰省 【投稿日 2005/12/03】 **[[カテゴリー-笹荻>http://www7.atwiki.jp/genshikenss/pages/47.html]] 東北新幹線は年末の帰省客の混雑で押し合いへし合いのありさまであった。 指定席の取れなかった笹原と荻上は早朝から上野駅に向かい、自由席に乗り 込んだが、その混雑ぶりに疲れきっていた。外の景色をかえりみる余裕さえ なかった。乗換駅で鈍行列車に乗り換えて座席に座る事が出来て、ようやく 二人はほっとして微笑んだ。 荻「すみません、こんな慌ただしい帰省に付きあわせてしまって・・・」 笹「いや、とんでもない。それにしても綺麗な雪景色だよね。山も綺麗だ。  修学旅行以外で関東平野から一度も出た事無い俺には新鮮な光景だよ。こ れが見れただけでも・・・」 荻「逆に東京に出てきた時、私には山が無い事が驚きでしたよ」 笹「そんなもんか。でもこれが荻上さんの『風景』なわけだ。」 鈍行列車はゴトゴトと音を立てながら、二人を荻上の生まれ故郷まで運んで いった。ダイヤは大幅に狂い、予定よりも遅い時間に二人は到着駅についた。 古びた駅の構内。まばらな人。笹原は慣れない寒さにブルッと震えた。 荻「寒いですか?もっと厚着してくれば良かったですね」 笹「いや、大丈夫。でもすごい雪景色だね」 荻「これでも昔ほど降らなくなったんですよ。温暖化の影響で。今年は珍し くこの時期から降ったみたいですね。何も無くて恥ずかしいです・・・」 笹「じゃあ、行こうか!」 荻「すみません、車を運転できる父が用事で迎えにこれねくて。でもタクシ ー使うほどの距離でもねし。」 笹「いいって。タクシー代がもったいないよ。それに荻上さんの生まれ故郷  ゆっくり見たいしね」 二人はゆっくりと歩き出した。笹原の目からも荻上の表情が段々生き生きと していくのが分かった。会話も自然にお国言葉になっていった。笹原は荻上 の嬉しそうに話す表情を見るのが心から楽しかった。 笹「けっこう、傾斜が多いね。あれが荻上さんの通ってた中学校?」 荻「ええ、山沿いの町の上、地形が入り組んでて曲がり道も多い上、平地も 少ないんです。寂れて全然変わってません。」 笹「駅前にはコンビニも無かったよね?」 荻「あるにはありますけど、駅前より、街道沿いの方が開けてます。車が無 いと東北の生活は不便ですから」 笹「ふーん」 二人はどんどん歩いていったが、神社の前に差し掛かると、荻上は急に黙り こくり、足早にその前を通り過ぎようとした。笹原はその理由がわからなか ったが、何も聞かずに黙って従って荻上について行った。 笹「けっこう思ったより歩くね。」 荻「ええ、でも自転車だとそんなに遠くは感じませんでした。高校はとなり 町の公立女子高でしたから。駅まで毎日・・・始発で・・・」 笹「うわっ、すごいね!」 荻「これでも皆勤賞もらったんですよ。雪が降ると父が送り迎えしてくれま した。本当に毎日、毎日・・・」 とうとう二人は荻上の実家までたどり着いた。二人は緊張の趣きで顔を合わ せ、意を決して玄関を開けた。 荻「ただいま!!」 母「はーい、あら千佳ちゃん!遅かったね。悪りかったね、迎えにいけねく て!ああ、よくいらしゃった。御疲れでしょ!さあ、どうぞ汚いとこです けど!」 笹「とっ突然押しかけて申し訳ありませんでした!笹原完治と申します!」 母「あんまし、固くなんねで、ゆっくりなすってください」 弟「いらっしゃい!ねえちゃん!土産は?」 笹「??こんにちは!(ええっ、ほんとに弟さんいたんだ!てっきりあの時 の苦し紛れのウソだと思ってたのに)」 荻「(だから本当にいるって言ったじゃありませんか)」 ヒソヒソと二人は話し合った。 荻「おとさんは?」 母「まだ、けえってこねよ。」 荻「んだか、したらあたしたちおとさん帰るまで自分の部屋さいていい?」 母「ええよ、けえってきたら呼ぶから、疲れてるべからゆっくりなさい」 荻上と笹原は自室に入って、荷物をどさっとおろしてようやくハーと安堵の 声を上げた。 笹「いや、疲れた!いや緊張した!会社の面接より緊張したよ!あとお父さ んへのご挨拶も残ってるよね!はー。持つかな俺・・・。」 荻「ちっ父は無口ですけどそんな気難しい人ではありませんから」 笹「うん・・・それにしてもなんか落ち着くねー、ようやくゆっくりできた  よね。」 荻「全然女の子らしい部屋じゃなくて恥ずかしいです。本ばかり・・・」 笹「いや、荻上さんらしいよ」 しばし、沈黙が続く。二人の顔が赤らんだ。 弟「ねえちゃん!かあちゃん呼んでるよ!」 荻「!ノックしなさい!」 弟「ごめん、なして顔赤いんだ?」 荻「うるさい!」 母「あんた、元旦だけ隣町の宮司やってる伯父さんの手伝いに巫女さんして ほしいんだけど」 荻「巫女?なして?」 母「当てにしてたバイトの子に逃げられたんだって!」 荻「んーわがった」 母「あと、夕食の支度手伝って。おとさんも今帰ってきたから」 荻上が家事の手伝いが終わり、居間に戻ると、笹原がすでに父親の酒の相手をさせられていた。山盛りに盛り付けられた味の濃い田舎の料理と酒を、勧められるままに苦笑いしながら食べていた。 笹「もう限界です!!」 父「若いもんがだらしない!ささ!!」 そう言いながら先につぶれたのは父の方であった。荻上は笹原に正月 の元旦だけ、隣町の初詣の大きい神社の手伝いに行く事を告げた。 母「したら、父さんに送ってもらうかね。朝早いんだべ、年越しそばはもう 少ししたら、食べるかね。んで笹原さんにはどこで・・・」 荻上は顔を赤らめる。 荻「そしたら、笹原さん・・・」 笹「もも勿論、弟さんの部屋で!!いいよね!!君!!」 弟「せまいけど、どうぞ。うれしいな、兄貴が欲しかったんですよ、俺。」 笹「頼りないお兄さんかもしれないけどね。」 弟「そんなこと無いですよ。編集の仕事されるんですって?いいなあ、俺も  東京に出たいんですけどね。姉貴も地元にいるよりは東京の方がいいでし  ょうし。」 笹「それは例の中学の時、好きな人に同人誌を見られたって話と関係が?」 弟「ええ、俺も小学生だったから、当時。また聞きですけど。親父もお袋も その件は口を閉ざすし。なにしろネタにされた本人が登校拒否・・・」 笹「いや、ちょっと、具体的な話は聞いてないんだ。根堀葉堀聞く事じゃ無 いし。」 弟「やべ・・・」 笹「大丈夫、詳しく・・・」 笹原は弟の部屋を出て、廊下の窓辺の側を流れる小川を眺めた。 笹「俺って薄っぺらいな・・・」 その晩、荻上は夢を見ていた。 幼い頃、東北でも有名な雪祭りに家族で旅行した光景だった。 夜、無数のかまくらから光がこぼれる。自分はその側にあるかがり火を見つ めている。その焔は闇夜をこがすかのように夜空に向かって燃え上り、火の 粉は闇夜に吸い込まれて行った。不思議な興奮と畏れに襲われ、不安にから れて、家族のもとに駆け出した。大きめのちゃんちゃんこと藁の長靴が体に からまり、トテッと転んだ。父親が自分を抱きかかえ、そして父親にしがみ つきながら震えていた。 荻上ははっと目を覚ました。両の目からは涙がこぼれている。あの時、あの 時の私が許されない罪を自分自身に対してしたとすれば・・・、あの時私は 罪の意識をしっかりと感じて、畏れを抱きながら同時に身も心も喜悦に包ま れていた事を自覚していた事だろう。荻上はベットから起き上がり、廊下に 出ていった。すると笹原が窓辺にたたずんでいるのに気付いた。 荻「眠れないんですか?」 笹「ああ、荻上さん・・・。そうだね」 荻「私もです。明日は早いのに・・・。」 笹「俺ねえ、荻上さんのコスプレ姿にいやらしいこと考えたことあるんだよ」 荻「・・・そうですか。私も笹原さんと斑目さんとでいやらしいこと考えた 事ありますよ」 笹「どうしようもないねえ、俺たち」 荻「どうしようもないですね、私たち」 お互いに微笑み合い、自然に二人は手を取り合って握りしめあっていた。 明け方前、父親の車で笹原と荻上は隣町の稲荷大社まで連れて行ってもらっ た。 伯父「待ってました!!じゃあ千佳が着替えている間、笹原さんにはお守り とか破魔矢とか業者が搬入してくる奴を運んでもらおうかな!!」 荻「うわっちゃっかりしてるー」 伯父「まあまあ、ささ、こっちこっち!」 父親は一旦家に帰り、笹原は神社の職員の言われるままに社務所で手伝いを していた。そうこうしているうちに、巫女姿に着替えた荻上が現れた。その 姿に茫然自失となり、白無垢と袴姿に我を忘れ、声をかけられてはっとする まで気がつかないありさまだった。 笹「・・・綺麗だ・・・天女様かと思った・・・」 荻「馬鹿ですね!」 荻上は恥ずかしそうに小走りに立ち去っていった。 昼頃に、ようやく二人は開放され、帰途についた。正月の残りの日は何をす ることもなく、ゆっくりと過した。雪かきをして、転んで荻上に笑われたり、 二人でゴロゴロとみかんを食べながらコタツに横になった。 また正月番組のハードゲイの芸人の登場に咳き込んだり、荻上の買いためた 漫画を二人で読み返したり、おもちや雑煮をたらふく食べたり、荻上の体重 計の数字を覗き込んで怒られたり・・・。そうして過している内に帰る日に なった。 荻「じゃあ、『帰り』ます」 その言葉の真意を両親は悟った。 母「送ってかなくていいのかい?」 荻「しばらくこれないと思うからゆっくり景色を目に焼き付けていきたいか ら」 父「まあ、がんばんなさい」 笹原も深く会釈して礼を言った。帰り道、再び神社の前に差し掛かった。 荻「ここに少し寄っていきたいんですが」 笹「ここに?」 荻上の弟から詳細は聞いていたが、弟もくわしくは知らなかったので、神社 が何を意味するかは分からなかった。 荻「キスしてください」 笹「ここで?」 荻「ええ、神前で心にやましいことなど一つとしてありませんから!!」 荻上の毅然とした態度に気おされたわけではなかったが、素直に荻上にキス をしてあげた。 荻「じゃあ『帰りましょう』」 いつもの荻上に即座に戻った。笹原はこれからもこの子には振り回されると 思ったが、それが大変だとこれっぽっちも思わなかった。
*巫女神楽 【投稿日 2005/12/07】 **[[カテゴリー-笹荻>http://www7.atwiki.jp/genshikenss/pages/47.html]] 管理人注:これは「笹荻の帰郷」のサイドストーリーとなります。 そちらを読まれてからのほうが楽しめると思いますよ。 昼近くになった頃、伯父が荻上を呼び止めた。 伯父「お疲れさん、そろそろ交代のバイトが来るはずだからお昼にしなさい」 荻「ええ、わかりました」 伯父「どうだね、千佳、久しぶりにわしに巫女神楽見せてくれんかね?」 荻「えっ、久しぶりだし、自信無いから、嫌です!」 笹「えっ、荻上さん、巫女神楽って舞でしょ!踊れるんだ!すごい!」 荻「むっ昔少し教えてもらっただけです!」 伯父「ケホケホ、めったに帰ってこんのじゃろ?老い先短いわしに酷い仕打 ちじゃの、この先、いつお前の姿を見れるか・・・頼むよ、千佳・・・」 荻「ええ・・・伯父さんがそこまで言うなら・・・」 渋々と荻上は社務所の稽古場ひかえに向かった。 笹「お加減、悪いんですか?」 伯父「いや、全然」 笹「(汗)・・・」 伯父「全然、変わっとらんな!あの調子じゃ、東京でも巧い事丸め込まれて、 高い物買わされたり、騙くらかされてんじゃないのか?」 笹「(汗・・・図星です・・・)」 伯父「そんなことだから・・・ああいや・・・もう知っとるか?」 笹「・・・ええ」 伯父「まあ・・・ゴタゴタあって、親も心配してな、わしが勧めたんじゃ、  神楽舞を。ほれ、出てきた。演目は『三姫舞』の『多紀理姫命(たぎりひ めのみこと)』正式な装束とは違うがな」 三人の巫女の中に荻上がいた。正式には天冠に直垂を着るが、今回は手に榊 (さかき)と鈴を持つだけの簡単なものだった。荻上はゆっくりとした動作 で舞い始めた。最初はぎこちなかったが、しだいに体が覚えていたらしく、 柔らかに舞始めた。 笹「綺麗ですね、でもこんな特技があるなんて初めて聞きました。」 伯父「少しの間だけだったしな。それに勧めたのもわしだが、止めさせたの もわしなんだ」 笹「えっそれは何故・・・」 伯父「あまり熱心に習いすぎて、見てて痛々しすぎたからな。舞は心を表す。  結局、あの事件は大事になって、関係者は逃げる、知らぬ存ぜぬ、心無い   輩は陰口をたたく。謝る相手もどこかに消えた。誰を責めていいかも分か らない。」 笹「・・・・」 伯父「そんな中で、誰を責めるでなくあの子は学校に通いつづけた。それこ そ、休まずにな。自業自得とは言え、登校拒否してもおかしくなかったか ったのにな。意地もあったのかもしれんが、人の心はそんなに強いもんで はない。とても神様に捧げる舞とは言えん」 笹「でも今の舞はそんなふうには見えません」 伯父「それはあんたに捧げる舞だからじゃよ。本来神楽は『生の悦び』を神 に捧げるもんだ!見なさい!あのしなやかに伸びきった手も!足も! あんたに捧げられたもんだ!」 荻上の舞は伯父の言うとおり次第に艶やかさを増していった。 おしろいを薄くぬった透明な白い顔にひかれた口紅が、煌々(こうこう)と 輝く。 楽曲の鳴り響く中、なめらかに舞おどり、その動きに合わせて白衣が波打つ。 肩までおろした黒髪がなびく。 足の運びに合わせて紅い袴がゆらめく。 榊の葉がさらさらと音を立てる。 金色の鈴の音がシャン!シャンと単調なリズムを繰り返す。 漆黒の漆(うるし)のような荻上の大きな瞳が笹原を見つめる。 なめらかな舞の動きの中にあって、その瞳はけっして笹原から離れない。 笹原はその瞳と官能の美しさに激しい動悸(どうき)に襲われる。心臓の鼓 動がドキドキと音を立てる。 やがて、舞の動きは止まり、寒い稽古場の中で、荻上は白い息をふーと吐き、 荻上の薄く透明な白い肌は次第に紅色に上気していく・・・。 笹「・・・素晴らしかった!」 荻「馬鹿ですね・・・」 荻上を含めた三人の巫女が控え室に戻って行くと伯父が再び笹原に話し掛 けた。 伯父「ところで同人誌ってそんなにエロイのかね。今度わしにも見せてくれ」 笹「いや、趣味に合うか分かりませんが・・・(ホントに神職か?)」 伯父「趣味と言えばヤオイってのも分からんな。感受性と想像力が強いのは うちの家系かの。親父はカタブツなのに・・・」 笹「(あとエロイのも間違いなく・・・)」 伯父「なのに何であんなに胸が小さいんだろな、うち多産系なのに。笹原君、まだ間に合う!!君の努力があれば!!」 笹「へっ?いや、それは・・・、はっ!背後に殺気を感じるんですが・・・」 伯父「わしも今それを感じた・・・。」 荻「・・・・・・・・・」

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