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長い夜」(2005/12/31 (土) 22:02:24) の最新版変更点

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*斑目と高坂 【投稿日 2005/12/04~05】 **[[カテゴリー-斑目せつねえ>http://www7.atwiki.jp/genshikenss/pages/48.html]] 元は違う方の投稿でしたが、それをつなげてみました。 タイトルも管理人の自前です。何かあればスレッドでお願いします。 昼休み もう部室には行かないと決めてから職場で昼食をとっている 近くのコンビニに弁当を買いに行こうとすると、会社の入り口のところにコーサカがいた 高「こんにちは」 斑「あ、あれ、コーサカ? どしたの?」 高「ちょっとお時間いいですか?」 公園のベンチ 高「最近、部室に来なくなったらしいですね」 斑「あ、ああうんそうね いやー、いつまでも寄生してるわけにゃいかんだろ んで用はなに?」 高「……咲ちゃんのことですが」 斑「(ギクッ!) う、うん」 高「斑目さん……咲ちゃんに告白したんですよね」 斑「(キタ━━━━!!) あ、ああ、アレ? あ、あ、ああ、アレはギャグで……」 高「…とっちゃだめですよ」 斑「はぁ!? な、なにイッテンダヨ!オレは別に…」 慌てる斑目に高坂が微笑む。 高「最近ですね、咲ちゃんに会えないんです」 たわむれる子犬を見ながら高坂がつぶやく。 斑「…いそがしいのか?」 同じように子犬を見ながらたずねる。 高「そうですねー。 なかなか家にも帰れないんですよ」 斑「…」 高「いつも一緒にいてあげられないのはすごく申し訳ないと思ってたんです。   …でも、本当は一緒にいて欲しいのは僕の方だったのかも知れない」 斑目は横目でちらりと高坂を見る。 穏やかなの表情は相変わらず感情を読み取りにくいが、ほんの少しだけ寂しそうに見えた。 斑「勘違いしてるんじゃネーヨ」 斑「オレと春日部さんじゃ住む世界が違うっての。   オレはお前らの間に割り込む気はねーし、第一、春日部さんはお前にベッタリじゃねーか。   なに心配してんだよ。だいたいオレと会ってるヒマがあるんなら、部室へ行ってこいよな、まったく」 高「…ははっ。そうですよね。   じゃあ僕、今から部室へ行ってきます。咲ちゃんいるかな」 斑「おう、早く行けよ。オレも会社に戻るかな」 高「はい。それじゃあ、すいませんでした。変な事言っちゃって」 にっこりと微笑むと高坂はかるくおじぎをした。 斑「ん、ああ。じゃあガンバレよ」 斑「…まったく、しょーがねーなー」 高坂の去った後、ベンチにだらしなくもたれかかった斑目は空を見上げる。 斑「まったく…」 高い空が夏の終わりを告げていた。
*長い夜 【投稿日 2005/12/05】 **[[カテゴリー-斑目せつねえ>http://www7.atwiki.jp/genshikenss/pages/48.html]] 残業を終えて帰宅する斑目が、咲を見かけたのは師走のある夜のこと。 こんな時間にどうしたのだろう。 斑目「やぁ、春日部さん」 咲 「…ひっ!」 斑目「えっ!?」 咲 「あ、ああ斑目かぁ。ゴメン、ちょっと気付かなかった」 斑目「やー、ああ、そう?」」 咲 「残業帰り?なんかすっかり斑目も社会人だねぇ。」 斑目「はは…」 いつも通りの二人の会話。しかし咲は伏目がちだった。 斑目『なーんか、元気無くねぇ?』 斑目「んー、俺、晩飯まだなんだけど、どう?安いとこなら奢るヨ?」 咲 「えー?斑目が?どうしたのホントに社会人みたいじゃん。」 斑目「ふふん、サラリーマンの特権、ボーナス様の御威光ですよ!」 咲 「ありゃ~、じゃ、遠慮なく!」 咲に笑顔が戻る。 斑目『うむ!この笑顔なんだよな。だいたい強気じゃないと…』 咲 「ねえ、寒いし、そこに見える焼き鳥屋なんてどう?安そうだし。」 斑目「あ~、そうね。」 ガラリ… 店員「へらっしぇ!何名さまですか?」 鳥の焼ける煙と臭いを少し感じる。平日なので満席ではないが賑やかだ。 カウンターではなく、こじんまりとしたボックス席に通される。 焼酎ブームなのでこの店でも豊富だ。焼き鳥のセットを頼むと 咲は、黒じょかという土瓶で水割り焼酎を七輪で温めるものを頼む。 斑目「へ~。俺、こういうの初めて見るよ。」 咲 「なんかこんな小さな焼き鳥屋でも凝ってるもんだねぇ。」 斑目「じゃ、まぁ、まずは一献。」 まずは突き出しと、すぐに出てくる角煮で熱い焼酎を飲む。 咲 「あったまるねぇ。」 斑目「いやー、しかし会社の人以外と呑むのも大事だね。気が抜けるよ。」 咲 「なーに言ってんのよ、あんだけ部室に来てるくせに。」 斑目「はは…。」 やがて焼き鳥も運ばれ、次の焼き物や湯豆腐なんかもオーダーする。 斑目「しかし、最近冬コミ前だからなあ、笹原も荻上も全然見ないなぁ。」 咲 「一時はどうなるかと思ったけどねぇ。ヨロシクやってるみたいね。」 湯豆腐を取り分けて貰い、少し斑目が赤らむのは酒のせいではない。 斑目『うわー取り分けて貰うのって、なんか家庭っぽいんだよなぁ。』   『しかし、やっぱり元気ねぇなぁ…。高坂となんか有ったか…何も無さ過ぎか?』 斑目「後輩に先を越されちまったなぁ。って今更だけどな。」   「高坂と春日部さんなんて初っ端からだもんなぁ。」 咲 「はは…うん、そう…だね。でも………。」 斑目「あら?あらら?どうよ…!?高坂、ついに別の星に帰っちゃうの?」   「やー、そうですか、特撮ものでもSF映画でも宇宙人は最後に別れるもんだしね!」 斑目『よーし、これでガーっと俺に怒れよー!』 咲 「SF映画でもって!そんな言い方ねーだろ!」 斑目「いっつも言ってるじゃん…って、あれ?」 咲 「………。」 咲の目に、ちょっと涙が浮かんでいる。 斑目『えぇぇーーー!!ちょ、やべぇー、失敗(しく)ったーーー!!』 斑目はやはり斑目だ。泣きそうな、いやちょっと泣いている咲を しばしアタフタと眺めることになってしまう。 斑目「いやいやいや、いやゴメンって!」 咲 「………。」 今日の咲はいつもと違う。いくらなんでも何かしら喋るだろう。 答えずに、咲はバッグからハンドタオルを取り出して目元を拭く。 斑目「なんかあった?俺で良ければなんかアドバイスするよ?」   「ほら、恋愛はともかく、オタクのことはオタクに聞くのが一番っしょ。」 咲 「………泣かしといてひでぇな。」 ようやく、咲が口を開いた。 咲 「オタクだからってんじゃないけど…。」   「まだコーサカ学生なのにさぁ。もう働きすぎなんだよね…。」 斑目「あー…。つまりアレだね、逢える時間が無い、と。」 咲は落ち着くためだろうか、ぬるくなった杯に少し口をつける。 咲 「そうなんだけど、これから先、どうなるんだろってさ…。」 斑目「まあ、ゲーム業界は忙しいんだろうけどねぇ。」 咲 「コーサカがあたしから離れないでいてくれるか、いつまで惚れて貰ってるか…。」   「もう、自信無いんだよ…ね………。」 斑目「う…そんなこと無えよ、春日部さん。4年も持ったのに…。」 咲 「うん…。」 うん、とは言ったものの、斑目の言葉は響いてない。とりあえずの相槌だ。 斑目「いつまで惚れられるかって…そんな…。だってそもそも俺がこんなに―――。」 斑目『あれ?あれ!?俺、何を言おうとしてるの???』 斑目「俺だって、春日部さんが好きなんだから…!!」 斑目『えーーー!言っちゃったの、俺??なんでだー!?』 咲 「…ぷっ!!」   「あは、あはははははははは!!」 笑い始めた咲を見て、しばし呆然とする斑目だったが、はっと気付いて一緒に笑う。 斑目「はは…!!ははは………!!」 咲 「あーーー、もう、ありがとうね、斑目。」   「捨て身のギャグがこんな時に出るとはねぇ!」 斑目「やー、まあねぇ。」 斑目『やっべー!っていうかアウトだよアウト!………助かった…のか?』 そこへ前掛け姿の若い店員がやってくる。 店員「申し訳有りません、ラストオーダーのお時間ですが、何か御座いますでしょうか?」 咲 「んー、や、良いや。お勘定して。」 店員「かしこまりました。」 財布を準備しかかる咲だが 斑目「あー、いいって春日部さん、今日はマジで全部払うから。」 咲 「えー、年末にまた散財すんでしょ?大丈夫?」 斑目「ほんと、解ってきてるねぇ、春日部さん。」   「そんだけ解ってるなら、もう馴染み過ぎでしょ!大丈夫だよ。」 咲 「あんがとね。」 結局、この日は本当に斑目の奢りとなった。 外に出るとかすかに雪が降っていた。 斑目「こりゃー明日も早起きだなぁ。あ、駅まで送るよ。通り道だし。」 咲 「なんだか今日は、何から何まで悪いねぇ。斑目じゃないみたい。」 雪は積もる感じではなく、服に触れるとすぐに溶ける。 しかし今度は、咲が斑目を見て怪訝な表情だ。 斑目の背中には哀愁が漂い、何よりさっきから咲の方も見なくなっている。 斑目『捨て身のギャグねぇ。助かったけど、やっぱり俺って…対象外過ぎるんだなぁ。』 そんな斑目を眺めながら歩くうちに、やがて咲はハッとした表情になる。 思わず立ち止まる咲。 斑目「あれ?どうしたの春日部さん?」 斑目が咲に振り返ると、驚いたような…、そして眉が軽くハの字になり 済まなさそうな表情でこちらを見ている。 斑目『…!!まさか、さっきのが今更マジだとバレちゃった!?』 斑目「あ、あのー、春日部さん?」 咲 「え?」 斑目「さっきの話だけど。」 咲 「え?さ、さっきの話って…!」 斑目「高坂とうまくやっていけるかって話。マジで大丈夫だよ。」 咲 「あ、ああ…!」   「…うん、うん。」 斑目「ああ見えても、俺らにもノロケてくるぐらいだし、心配要らないって。」 咲 「あ、そうなの?それって初耳だなー。」 斑目「やー、まあほとんど何考えてるかわからんけどね。」 咲 「ははは…!でもけっこうわかってくるもんだよ。」 斑目「その調子だよ。」 斑目『うーん、なんとかなってないけど、なんとかなったな。たぶん…。』 少し歩くとすぐに駅に着いた。駅前には足早に帰る人、タクシーを拾う人が数人。 斑目「じゃ、気をつけて。」 咲 「うん。」   「………色々、ほんとにごめんねー。としか言えないけど…言えないけど。」 斑目「いや、いーって。」 斑目『春日部さん、それ以上は言わないでくれ…。』 咲 「うん、ありがとう。だな。それと、これからもヨロシク!」 斑目「はは、こちらこそ。じゃ、おやすみ。」 咲 「うん、おやすみ…コミフェスはコーサカと行くからね。」 斑目「あー、なんか卒業記念大会だなぁ。」 咲は駅の改札に入り、斑目は駅前通を逆方向へ歩く。 遠ざかる二人は振り返ることは無かった。 斑目『なんだか、けじめが付いたような、何もかも失ったような…。』   『いや、俺の方が何も無かったように接さないと…。』 コンビニのドアをくぐり、寝る前の飲み物と明日の朝食を買う。 斑目『春日部さんに、これ以上は気を遣わせないのが、男の美学…ってか。』 雪はもうやんでいた。水道管が破裂したりすることも無いだろう。 植え込みに少し載っている雪も溶け始めている。 斑目『何年経てば、今夜のことも笑って話せるようになるんだろうな。』 なかなか家に向かって歩きだせない斑目の姿が闇に溶けていった。

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