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*30人いる!その13 【投稿日 2007/10/08】 **[[・・・いる!シリーズ]] 第9章 笹原恵子の発動 夕刻、笹原は部室を後にした。 その後はB先生の入院する病院を訪ね、A先生との打ち合わせと夕食を済ませて、笹原は帰宅した。 A先生との夕食は、当然浴びるように酒を飲むことがワンセットになっていたが、この頃には笹原もすっかり慣れてしまい、普通のほろ酔い加減で帰って来れた。 「そう言えば、恵子から連絡無かったな。まだ寝てるかな?」 アパートの前に着くと、笹原の部屋の灯りは点いていた。 「どうやら起きたようだな」 部屋に入ると、恵子は体育座りの体勢で、膝を抱えて座っていた。 足元には、現視研の映画の台本が広げられていた。 「やっと起きたか。ん?恵子?」 恵子は微かに震えていた。 顔は青ざめて、大量の汗をかいていた。 「ああアニキか、お帰り…」 「…ただいま、まだしんどいのか?」 「変なんだよな。この台本読んだらさあ、頭ん中で全部のシーンが次から次に浮んで来ちゃうんだよ」 「そりゃ、凄いんじゃない?良かったじゃないか」 「良かねえよ!頭が回り過ぎて、考えんのが追っつかねえんだよ!だいたい1個のシーンに何個も別のパターンが浮んじゃ、どう撮っていいか分かんねえよ!」 「なあアニキ、あたしこんなんで監督務まんのかなあ?」 生まれて初めてフル回転する頭脳を制御出来ずに戸惑う恵子に対し、笹原は答えた。 「お前のやりたいようにやればいいさ。大丈夫だよ、お前には頼もしい仲間が付いてるじゃないか。彼らが何とかフォローしてくれるよ」 「仲間?」 「可愛い後輩が11人、スーとアンジェラも入れれば13人か。それに荻上さんに朽木君に大野さんと先輩たちも居るし」 「アニキ、あたしを現視研の会員と認めてくれるのか?」 「認めるも認めないも、もう立派に会員じゃないか、お前」 それを聞いた恵子、突然涙を流し顔を伏せた。 その恵子の肩を優しく抱いてやる笹原。 「泣くのは今日が最後だ。明日からは泣いてる暇は無いぞ、監督さん」 「アニキ…」 何年かぶりに恵子は、笹原の胸で声を出して泣いた。 翌朝、恵子が目覚めると、笹原はもう出勤した後だった。 置手紙と共に残してくれた朝食を食べ、シャワーを浴びた。 笹原の部屋に置いてある自分の服の中では最もラフな服である、Tシャツとジーンズを身に着け、髪はポニーテールにし、いつもに比べればノーメイクに近い薄化粧をする。 そして仕上げに、国松が台本と共に渡した腕章を左の上腕部に着けた。 腕章には「総監督」と書かれていた。 「ちゅーす!」 恵子が部室に入ると、会員たち(スーとアンジェラを含む1年生全員、ニャー子、荻上会長、大野さん、そしてクッチー)は一斉に「?」という顔をした。 「あのう、失礼ですがどなたですかな?」 就活中のせいかスーツ姿のクッチーにそう言われ、こけそうになる恵子。 「あのなあ…あたしだよ、あたし!」 言うなり恵子は眼鏡を外した。 そう、恵子は眼鏡をかけて部室に入ってきたのだ。 一同「恵子先輩(一部恵子さん又は恵子ちゃん)!?」 有吉「どうしたんすか、それ?」 恵子「今朝起きたら何か目がかすんでさあ。試しに医者に行ったら仮性…ほうけい?」 ガクッとこける一同。 沢田「あのう、失礼ですが、ひょっとして仮性近視では?」 恵子「そうそれ医者に言われたんだ。要は近眼だな(眼鏡をかけつつ椅子に座る)」 伊藤「まあこの10日ほど、ずっとテレビ見てたんですから、無理無いですニャー」 恵子「だな。昔学校の先生に言われたけど、やっぱテレビ見る時は3メートル離れないといけないな」 一同『そういう問題じゃないと思います…』 「ん?どうした?」 ふと恵子は、会員たちが自分に向かって異常に熱い視線を注いでることに気付いた。 恵子の頭の中で、ピンッという音が鳴った。 席を立つと、会員たちの方に近付く。 恵子の頭の中のイメージでは、漫画のように男子たちの頭上に雲型のふき出しが浮び、そこにはこう書かれていた。 『メガネっ子恵子さんって、けっこう萌えかも、ハアハア…』 「(男子たちの頭上を見つつ)まあお前らのは良しとしよう。だけど…」 続いて女子たちの頭上を見つつ、恵子は頭の中でイメージする。 イメージの中の雲型のふき出しには、こう書かれていた。 『女装メガネ君の笹原先輩とシゲさんで、ダブルメガネ君でリバ可でハアハア…』 恵子はイメージの雲型ふき出しをラリアットで薙ぎ払うかのように、女子たちの頭上でブンッと腕を振って叫んだ。 「お前らのは無し!却下!誰がメガネかけて女装したアニキだ、ゴラァ!」 荻上「(驚いて)何でそんな具体的に見破ったんですか?」 恵子「こちとら長い付き合いなんだ、姉さんたちの妄想しそうなことぐらいお見通しさ」 スー「ヨクゾ見破ッタ!コレデモウオ前ニ教エルコトハ何モ無イ。サア、山ヲ降リルノジャ!」 荻上「あのスーちゃん、勝手に忍者の修行にしないように…」 スー「押忍!」 恵子「まあそんなことより、お前ら映画の用意どんくらい出来てんだ?」 恵子の問いに応えて、1年生たちは1人ずつ各自の準備状況を説明し始めた。 1年生たちの報告がひと通り終わると、しばし恵子は何か考え込んでいる様子で沈黙する。 やがてこう切り出した。 「なあベムとアルってさあ、この話だと巨大化しないんだよね?今から巨大化して町壊して暴れる話に出来ねえかな?」 思わぬ提案に固まる一同。 恵子「どうよ?」 伊藤「うーん…話は書き換えれんこともないですが…台場さん、予算どうかニャー?」 台場「うーん…多分大丈夫だと思うし、足んなきゃスポンサー増やすけど…千里、技術的には出来そう?」 国松「うーん…ミニチュアは作って作れないこともないけど…ただ、リアルに壊れるように作る技術は私には無いから…」 恵子「千里、お前ミニチュアの作り方は知ってんだろ?この間ゴジラ見てた時、あたしに説明してたじゃん」 国松「知識としては知ってますよ。ただ、あれは経験が必要ですから…」 一同「経験?」 荻上「国松さん、それも含めてミニチュアについて先に説明してくれる?」 国松「分かりました。特撮の建物のミニチュアは、通常木や紙などで大枠を作り、表面は石膏で仕上げて着色します。ただ、これを壊すとなると、また別の工夫が要ります」 恵子「工夫も何も、着ぐるみ着てぶん殴ればいいじゃん」 国松「それだとただベシャッと壊れるだけで、監督が望むような画にはなりません」 恵子「じゃあどうすんだ?」 国松「ミニチュアを作る段階で、予めミニチュアに割れ目を付け、割れ目が目立たないように表面を仕上げるんです」 巴「へえ、そんな風になってたんだ」 恵子「そんだけか?」 国松「あと細かいとこでは、壊れた時に土ぼこりが舞い上がるように粉仕込んだり、爆発させるなら火薬仕込んだり、そういった処置をします」 豪田「何か手間そうね」 国松「知識としては知っていても、実際にやる場合の具体的なノウハウやコツを知らないですから、正直言って1発勝負でオッケー出せる自信は無いです」 神田「となると、スケジュール的に難しいですね」 恵子「うーん…そんじゃしょうがねえな。今のは無しでいいよ」 そう言いつつも、恵子はどこか寂しそうだった。 「ちょっと待って下さいニャー」 伊藤はそう言うと、自分のノートパソコンを何やらいじり始めた。 恵子「どした?」 それには応えずに伊藤は猛スピードでキーを叩き続け、やがて手を止めた。 時間にして30秒も経っていない。 伊藤「国松さん、壊す仕掛け無しならミニチュア今から作れるかニャー?」 国松「どのぐらいのレベルのやつ?」 伊藤「家とかビルとかが10軒程度でいいニャー」 国松「それぐらいなら1週間も要らないと思うけど。日垣君やニャー子さんや蛇衣子にも手伝ってもらえれば、2日もあれば出来るかも」 (注) ニャー子は夏コミで同人誌を売る際に、ハチクロの青春の塔のミニチュアを作成して展示している。 恵子「どういうことだ伊藤?説明しろよ」 伊藤「監督ご要望のベム巨大化シーンを冬樹のイメージとして出すんですニャー」 恵子「どうやって?」 伊藤「冬樹とクルルがベムの脅威について語るシーンで、最悪の場合ベムが巨大化する可能性をクルルに示唆させるんですニャー」 沢田「なるほど、その手なら建物壊さずに、町中に巨大化ベム出現の画が作れるわね」 有吉「さすが、この手のこじつけさせたら上手いな」 恵子はちょっとイメージしにくそうだった。 「誰か絵描けるか?描けたらちょっと描いてみてくれよ」 豪田「私描きます」 豪田はスケッチブックを出して、鉛筆でイラストを描き始めた。 ほんの2~3分で仕上げ、恵子に手渡した。 数軒の家屋やビルが並ぶ町並みの向こうに、巨大化したベムが立っているイラストだ。 恵子はイラストを見て、ようやく伊藤の意図を実感出来た。 「よし、これで行こうや。千里、ミニチュア頼むぞ」 国松「GIG!」 次回予告 「円卓会議は踊る」なんてサブタイトルの話が原作にありましたが、こちらも次回の制作会議、さらに踊り狂う「ええじゃないか」状態が続きます。 何かが発動したかのように、次々とアイディアを連発する恵子監督。 そして次回、新たなスタッフが導入される! さらにいよいよ次回、遂にケロロ小隊コスのお披露目も! [[30人いる!その14]]に続く

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