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*碧目のすう 【投稿日 2007/01/15】
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それは、昔の何処かでの話。
昔々、あるところに小さな村がありました。
村人は貧しいながらも何とか生活をしていました。
そんな村の中、一軒の家に目の色が皆と違う、碧い色をした少女がいました。
名前を「すう」といいました。
目玉の柄の綺麗な着物をいつも羽織っていました。
「やーいやーい。青目の鬼子~。お前なんか出て行け~。」
村のほかの子供たちから、いつもそんな風に言われていました。
でも、すうは、何もいわずにせっせと野良仕事に打ち込んでいました。
そんなすうを見て、村の心優しい青年「晴信」は、どうにかならんものかと思っていました。
「あの子は普通の頑張り屋さんだ。」
「しかし、あの目は鬼の目だ。」
「鬼なんているわけないだろ?迷信を信じて・・・。」
「馬鹿!そんな事いうな、村長の耳に入ったら・・・。」
村長は非常に迷信を信じており、すうに対して一番厳しく当たっている人の一人でした。
「・・・彼女はいつから村にいたんだっけか・・・。」
「・・・確か、前の村長が連れてきたんじゃなかったか?」
「あ、そういえば・・・。彼がいなくなってから彼女は・・・。」
「・・・そうだな・・・。」
晴信はやりきれない思いで一杯でした。
しかし、彼は臆病な性格もあってか、助けに出ることもままなりませんでした。
他の人に相談しても、同情はするが無理だの一点張り。
一人、彼が憧れる商人の娘、咲だけは、彼の話に耳を傾けてくれました。
「でも、私の力だけじゃどうしようもないよ・・・。」
「うん・・・。わかってる。すまなかったな。」
「・・・きっと、いつかなんとかなるよ。気を落とさないでね。」
「ああ・・・。」
そうは言うものの、無為に時間は過ぎていきました。
ある年のこと。
村が災厄に見舞われるという占いが出ました。
通りすがりの占い師によるその言葉を、村長はすっかり信じてしまいました。
「どうしたらいいんでしょうか?」
「ひとり、生贄を山に捧げなさい。そうすれば・・・。」
「なるほど・・・。んー、いいのがいますな。」
村人達の前で、大きな体を震わせ、憎らしい声で村長はこういいました。
「すうを生贄にするのだ。そうすれば村は助かる。」
「な・・・!」
村人達は一斉に騒ぎました。
すうを生贄にするのは忍びない。しかし、彼のいうことに逆らうわけにもいかない。
「・・・だれか、すうを連れて山までいくのだ。」
「・・・僭越ながら私が。」
そういって名乗り出たのは晴信でした。
「晴信・・・?」
その言葉に、咲は不審に思いました。いつも彼女を気にかけてる彼が何故?
「・・・そうか。よろしく頼むぞ。これをな。」
「はい。」
晴信は、村長から薬を受け取りました。
村人達がざわつく中、晴信はすうの家に向いました。
「よう、元気か?」
「・・・。」
黙って頷くすう。
「まぁ、一緒に食事でもしようじゃないか。」
そういって、彼は食事の準備を始めました。
彼は、彼女が食べる食事に、先ほどもらった睡眠薬を入れました。
食事が終わり、よく眠ったすうを背負い、山へと向いました。
「不憫な娘だ・・・。なぁ、すう。こんな村嫌だろう?
何処か逃げなさい。荷物は、あとから持っていくから・・・。」
そういう晴信の言葉を聞いているのか、すうは安らかな寝顔でした。
山まで行くと、すっかり暗くなっていました。
「よし、ほら、起きなさい。」
すうを優しく起こす晴信。すうは目を覚ますと、日頃見せないように戸惑っていました。
「あ・・・。」
「よし、ちょっとここで待っていなさい。後で荷物持ってくるから。」
「・・・村!」
「ああ、村にいるのは嫌だろう?」
「違う!村があぶない!」
「な・・・?」
丁度その頃、村では地震が起きていました。
「なんなんだ、この振動・・・。」
咲は、不振に感じていましたが、今は晴信とすうのことが気がかりでした。
思い立って山へ行こうと外へ出たそのとき、
村の真ん中から、何かが生まれ出たのを見ました。
「な、なんだ・・・、あれ・・・。」
村の人の多くがそれに気付き、村の中は混乱に包まれました。
見た目は大きな蛇・・・それが八つの頭を携えて。
「おろちだ!伝説のおろちだ!」
「こ、これが災厄なのか・・・。」
村長が呆然としていると、おろちは、彼に目をつけ一口。
「ああ、村長が!」
「ど、そうすればいいんだ・・・。」
そこに丁度、すうに引っ張られ村に戻ってきた晴信が現れたのです。
「・・・おい、あれはなんだよ!」
「・・・おさまれ・・・おさまれ・・・。」
すうが念じると、おろちは少しずつ動きを弱め、元の場所に戻っていきました。
「なんだったんだ・・・。」
「わたしは、ここにいる必要があるの。」
「・・・よくわからんが、そういう事だったのか・・・。」
何とか騒動の収まった村で、晴信は事情を説明して回りました。
平和が訪れた村。結果として、予言は的中したのです。
すうは、村に残ることになりました。
そして村長のいなくなった村で、次の村長を決めることになりました。
「晴信でいいんじゃないか?」
「ああ。」
「え、おれ?まじで?」
晴信は、村長になりました。すうも、それを喜んでくれたみたいでした。
晴信はすうを村の守り神とし、末永く村は幸せになりました。
ちなみに憧れの商人の娘、咲は、隣村の高坂家に嫁入りしたそうです。
晴信は、すうを見守りつつ、のんびりと暮らしたそうです。
めでたし めでたし