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*罪と罰 【投稿日 2006/08/26】
**[[カテゴリー-笹荻>http://www7.atwiki.jp/genshikenss/pages/47.html]]
「これは罰です。」
「全部忘れて浮かれてた私への これは罰です。」
もうあれから5年以上ががたとうとしている。
私は何か変わったろうか?
服装や髪型や言葉使いや、周りの環境のことを言ってるんじゃない。
私の中にある「核」のようなもの、本質の話だ。
何も変わっていない。
今でもオタクで。あんな事したのに、身近な人でやおい妄想をする癖が抜けなくて。身近にいる人をひどく傷つけたことを今でも忘れられなくて、心がいつも不安定で。
忘れない、と誓ったのに時折忘れて浮かれるようなおめでたい人間で。
オタクやめる、って何度も何度も何度も誓ったのにやめられない嘘つきで。
…これでも私は冷静に自分を見れてるつもりだ。
そうやって一人で自分を罵って、自分を貶めることに酔ってない?ともう一人の自分が囁く。そんなことはない。
これでも私は冷静に自分を見れてるつもりだ。
思考のベクトルが降下しはじめたら止まらなくなる心の中に拭いがたい嫌な感覚がいつまでたっても消えない
…でも逆に、そんな思いなど忘れて、つい笑ったり喜んだりしてしまうことがあるのだ。
……己の罪を忘れて。
笹原さんはどうして私なんか好きになったんだろう?
こんなに変わり者で、根暗な私を。
私はことあるごとに笹原さんに聞く。笹原さんは、ただ照れくさそうに笑う。
好きって気持ちをうまく言葉で言い表すことなんかできない、と、また別の私が囁く。
好きになったから、好きだ、としか言えない。
……わかってるでねか。聞くことじゃないんでねが。自分だってそうなくせに。
好きで、相手も自分を好きで、それだけで体があったかくなって心が軽くなって、この人のために何かしようと思って、
何ができる?と考えて、少しでも笹原さんの好意に応えよう、と思って後ろ向きで攻撃的な自分がなりをひそめる。
うまくいってるときは、本当に穏やかな気持ちで過ごすことができる。
……己の罪を忘れて。
どんどん気持ちが降下していくのがわかる。笹原さんには、本当には理解してはもらえないだろう理由で落ち込んで、困らせる。
そんな自分が嫌いだ。
どうしたら私は変われるだろうか?…自分を好きになることができるのだろうか?
『無理だ。変われない。だって今まで変われなかったんだから。』
『いや、変われるよ。だって現にもう変化が起きてるじゃない。』
…え?変化って何。
『だって今までは、「どうしたら自分を好きになれるか」なんて考え方はしなかったはずだから。』
……それって変化なのかな。
『そうだよ。』
私が一人で色々考えている間、笹原さんは黙って私の後ろで、ウチにあった漫画(BLではない)を読んでいました。
ふと笹原さんのほうを振り向くと、笹原さんもこっちに気がついて笑いかけてくれました。
私は…どんな顔で笹原さんを見ていたのでしょう?自分でもよく分かりません。
「…あ、あのさ」
笹原さんはいつもと変わらない困ったような笑顔で私に話しかけました。
「コミフェス落ちたのは残念だけど…。また他にも、今から参加申し込みできるイベント探してさ、そこで本出したらどうかな?
コミフェスはホラ、また来年もあるし、夏もあるし!ね?」
「………………」
「すごく残念なのはわかるけどさ…、ねえ?」
笹原さんにそう言われて、ようやく私は、サークル参加できなかったことが残念でこんなに思考が暗くなっていたのだ、と言う事に今さら気づいたのでした。
そうか。わたすはそんなにがっかりしてたのか。
我ながらオーバーなくらいの落ち込みっぷりだと思いました。
というか、何かあるごとに私は、あの出来事を持ち出してこんな風に思考が暗くなるんだなと思いました。
…これが罰なのかも知れません。自分をいつまでも縛り付ける罰。
わかっています。こんな風に後悔したからといって、巻田君や私が傷つけた、壊した、色々なものはもう元には戻らないんです。ただの自己満足です。
そのことを思うと、自分には笑う資格がないんじゃないかとか、楽しむ資格がないんじゃないかとか、悪いほうへ考えてしまうんです。
…だから笹原さんには申し訳ないことをしてると思います。
そうやって私が沈んで、意味不明の言葉を吐き出すのを聞いてなきゃいけないんですから。
私が「これは罰だ」と思って一人落ち込むのは私の勝手。
でも笹原さんまで巻き込むのはどうなんでしょうか。
……また私が思考を急降下させていると、笹原さんはまた私に話しかけてくれる。
「…漫画、もう描かないなんて言わないでよ。」
「え?」
私がびっくりして笹原さんの顔を改めて見ると、笹原さんは口元に笑みを浮かべたまま、真剣な目で言いました。
「俺、荻上さんの漫画好きだから。」
「………………………」
その言葉一つで、私は暗い思考から一気に開放されるのでした。
胸がどきどきして、嬉しくて、うまく言葉にできません。
「…やおい漫画をですか。」
でも私はまた、いつものようにきつい言葉を投げかけてしまうんです。
言った直後にいつも後悔するんです。後悔するくらいなら言わなきゃいいのに。
「…はは。」
笹原さんは困ったように笑います。本当は困らせたくないのに。
「いや、ね?やおいっていうか、なんていうか…荻上さんが漫画描いてること自体が好き、って言ったらいいのかな。」
「…ええ?」
「荻上さんが夢中で漫画描いたり、絵を描いたりしてるのが好きといいうか…。
俺は自分が絵が下手なもんだからさ、尊敬…っていうのもあるのかな?」
「えっ、や、ちょっと、やめて下さいよ!」
私は焦って笹原さんの言葉を遮りました。尊敬?こんな私を?
……人を傷つけたことのある、この趣味を?
混乱していると、笹原さんはもっと優しい顔で私に笑いかける。
「…だからさ、漫画描かないなんて言わないでよ。」
……どうしてこの人は、私が一番楽になる方法を知ってるのでしょうか。
描きたいです。描きたいに決まってるじゃないですか。
だって、あんな事があってさえ、やめられなかったんですよ。
何度自分を詰っても、気持ちを抑え切れなかったんですよ。
「…アリガトウゴザイマス。」
ようやくそれだけ言えました。
「…じゃ、またイベント情報とか集めなきゃね。」
「そうですね。落ちたからって、落ち込んでるワケにはいかないですね。」
「…荻上さん…、それギャグ?」
「はい?」
「落ちて落ち込むって………」
「……は?」
私は呆れ顔で笹原さんを見ました。笹原さんはちょっと焦りながら私にこう言いました。
「いやー、ギャグだったらどんな風につっこもうか色々考えちゃったよ~。」
「…何言ってんスか」
「だってさ、つっこみたくても、最近斑目さんがなんだか覇気がなくてさあ…。」
「ああ、この前のくじvアンの対談ですか。『他にやるヤツいなかったんか』って、最後まで文句言ってましたねあの人。」
「そうそう、元気ないように見えて皮肉るトコはきっちり皮肉ってるし。んでまぁ、俺としても色々つっこんでみたけどさ」
「…笹原さんはツッコミがきびしすぎますよ(汗)」
「そうかなーーー?」
「せめて敬語使いましょうよ。タメ口でつっこんだときはちょっとヒヤッとしましたよ。でも、斑目さんも指摘する元気もなかったようですけどね…」
「せっかくつっこんだのにスルーされたね。スルーは駄目だよね。」
「…もういいです。」
「でも何であんなに元気ないんだろう?」
「ああ、それは、もうすぐかすか…………っっ」
私は言いかけた名前を慌てて飲み込んだ。
「え?今何て言ったの??」
「…いっ、いや!何でもねっす!!」
(わ、わたすの口から言うのはちょっと悪いっすよね、こういうのは…(汗))
「ええ~~気になるなあ」
「あ、え~~~と…覇気のない斑目さんも流され受けらしくていいかな、と」
「はは、そうなんだ?…う~~~ん、やっぱ眼鏡のほうが…」
「いやですから、斑目さんのやおい絵はあくまでキャラとしてなんで」
「いや、俺も眼鏡かけてみようかな、なんて」
「は?…でも笹原さん目悪くないでしょ?」
「う~~んでも、このごろゲームやりすぎて目がちょっと………」
「…なんのゲームですか」
「え?え?いや、えっと(汗)」
「…別にいいですけどね」
「いやそういうゲームばっかしてるわけじゃないよ?まぁ、してないワケでもないけど…」
「………………」
「…やっぱイヤ?俺がそういうゲームしてるの」
「別にいいですって。前にもそう言ったでねすか。」
「あ、ならいいんだけどね。」
笹原さんはちょっと照れくさそうに笑う。
私のすぐそばで。
………………………
荻上さんが横で寝息をたてている。
この人をみるたびに思う。いつも体を硬くして自分を守っているけど、中身はもろくて、ちょっとたよりなげで不安定で、でもけっこう芯の強い人だ。
荻上さんはよく深刻な顔をして考え込んでいる。そんなときは、後で何故か「スミマセン」と謝られる。
何でだろう?そんなに気を遣うことないのに。というか、そんなに気を張ってたら疲れるだろうと思うのに。
荻上さんはよく不機嫌になる。そんなときは、何で不機嫌かよく分からなくてドギマギしてしまう。
俺が鈍感だからいけないのかもしれない。言ってくれなきゃわからないからかもしれない。
でもそんなとき、荻上さんが照れながら、ツンツンしながら言ってくれる本音が好きだったりする。
『押し付けデートじゃなくて、笹原さんが考えて笹原さんに誘ってほしかったからです!』
…あの言葉に反省したけど、嬉しかったなぁ。
今日のデート楽しかったなあ。荻上さんの貴重な笑顔が見れたし。
…たとえいつもツンツンしてたって、荻上さんはいつもそんな感じだから気にしてないのに。
……いやむしろ、普段そっけないから、デレになったときや、不意打ちの言葉や表情がすごく嬉しいのに。
深刻に考え込んでるときは、心配にはなるけど、何ていうか…。それも含めて、荻上さんなのに。
荻上さんは口元に少しだけ笑みを浮かべた顔で、寝息をたてている。
俺のすぐそばで。
END
*あつい話 【投稿日 2006/08/26】
**[[カテゴリー-笹荻>http://www7.atwiki.jp/genshikenss/pages/47.html]]
「あつ…」
夏のとある日、荻上は自分の部屋の床の上で溶けていた。
外から聞こえるかすかなセミの声。
テレビの中ではアナウンサーが「今日も暑くなりそうです」などと、わかりきった事を喋っている。
(そんな事!言われなくても!今現在!ものすごく!暑いのですが!)
(むかつく!むかつく!)
(地球温暖化なんてだいっきらいだ!!)
理不尽に怒る。
だがその怒りも暑さに溶けていく。
恨めしげにエアコンを見上げる。
うんともすんとも言わないエアコン。
故障しているのだから、当たり前なのだが。
理由はわからないが、エアコンが壊れたのは一昨日のことだった。
大家を通じて電気屋に連絡を取ったところ、この暑さでエアコンの売れ行きが好調で云々、とさんざん言い訳された上に、「3日ほど待って下さい」という一方的な通告をされてしまった。
(忙しいのはわかる。土日を挟むから3日待て、と言うのもわかる)
(でもこっちは客だべ?客のためなら多少の無理をしてくれたっていいでねェか!!)
再び理不尽に怒るが、それさえ暑さに溶けていく。
テレビの中のアナウンサーは涼しげに、「この先一週間はとても夏らしい暑い天気が続きそうです」などと謳う。
(…)
荻上はもう怒る気力も出ないようだ。
「シャワーでも浴びよ…」
よろよろと風呂場へ向かう。
冷たいシャワーで汗と熱を流すと、いくらか気力を取り戻せた。
(だめだ。このままこの部屋にいたら、きっと死んでしまう。何とかしないと)
荻上は避暑地を検討し始める。
(部室は…あそこは冷房の効きが悪いし…この暑さじゃたどり着く前にやられてしまう)
(某漫画家のようにファミレスで粘る…そんなことできるかー!)
(図書館とかは…近くに無いし…)
(買い物、という名目でショップ巡り…人ごみ嫌い)
そんな中、この前笹原のアパートにお泊りした時のことを思い出した。
『汚い部屋だけど、何かあったら自由に使って』
そう言われて、合鍵をもらったのだ。
財布に大事にしまっておいた鍵を取り出す。
(迷惑かな…でも、鍵をくれたってことは迷惑じゃないってことだよね…)
(それに部屋を片付けてあげて、料理なんか作って、『お帰りなさい、笹原さん』なんて…)
(それくらいやってもいいよね…)
その時の笹原の顔を思い浮かべて、荻上はにへらと笑った。
「よし!決まり!」
そう宣言すると、幾ばくかの荷物と供に、荻上は部屋を飛び出した。
…実は笹原の部屋は、部室以上に遠いのだが。
買い物袋を携え、荻上は笹原の部屋の前にいる。
高鳴る胸を押さえながら鍵を差込み、回す。
軽い金属音と供に、鍵が外れる。
荻上は一つ深呼吸をすると、ノブを回した。
「お邪魔します…」
小声で呟きながら部屋に入る。
この時間に笹原がいない事がわかっていても、やはり緊張する。
人気の無い部屋はしんと静まり返り、…そして暑かった。
ズカズカと部屋を横切り、エアコンのスイッチを入れる。
かすかな音とともに冷風が吹く。
ほっとした表情でしばらく風に当たった後、買い物袋の中身を冷蔵庫にしまうと、荻上はようやく安堵のため息をついた。
ベッドに腰掛ける。そのまま横になる。
急に眠気が押し寄せる。
(あ…そうか。夕べも熱帯夜でほとんどねむれなか…った…んだ…)
(笹原さん…の匂いが…する…)
(笹原…さん…)
部屋に穏やかな寝息が響きだす。
「ん…?」
荻上が目を覚ますと、すでにだいぶ日は傾き、夕方特有の赤い日差しが差し込んでいた。
(うわ!寝ちゃった!今何時?もうこんな時間!?)
荻上は飛び起きると、忙しく動き出す。
脱ぎっぱなしの笹原の服を洗濯機に突っ込み、思い切って窓を開け、夕方になってもちっとも涼しくならない空気に不機嫌になりながら掃除機をかける。
そして荻上は、ベッドの下から、いわゆるエロ同人誌を見つけた。
(笹原さんこんなトコに隠してたんだ)
妙に微笑ましく思いながら、とりあえず机の上に置く。
好奇心から2・3冊ほど流し読みする。
(ふうん。こういうのが趣味なのか…んん?)
何かが荻上の脳裏に引っかかった。
全部に軽く目を通す。
机の脇に積まれたゲームの箱を見る。
くじアンのDVDや格闘ゲームに混じって置かれた、いわゆるエロゲーの箱を引っ張り出す。
(…やっぱり)
荻上は確信した。
そこにあったのは、背が高くて巨乳でグラマーでナイスバデーで年上な女性がたくさん。
つまり、自分とは正反対の…
(むかつく)
(むかつくむかつく、ムカツクーーー!!!)
荻上はそれらを机の上にきれいに積み上げると、怒りを胸に秘めたまま、家事の続きを始めた。
「つかれた…」
家路をたどりながら、笹原は呟く。
今日は定時に帰れたものの、一筋縄ではいかない漫画家とのやり取りは酷く疲れる。
(荻上さんの声が聞きたいな…)
そんなことを思いながら鍵を外し、ドアを開けた。
「ただいま」
投げやりに呟く。しかしその声に答えるものがあった。
「おかえりなさい」
慌てて顔を上げると、そこには微笑む荻上がいた。
一瞬幻覚か?と思ったが、それは間違いなく現実だった。
笹原は疲れが一瞬にして吹き飛ぶのを感じた。
「どうしたの?荻上さん。急に…」
「来ちゃいけなかったですか?」
「そんなことないよ。嬉しいよ!」
「そうですか」
そんな微妙にテンションの違う会話をしながら、笹原は鞄を机に置こうとして…固まった。
ゆっくりと振り返る。そして気付く。
荻上が微笑みながら、その背後に真っ黒なオーラを背負っている事に。
冷房の効いた部屋の中で、笹原の全身に汗が滲む。
「あの…荻上さん?」
「何ですか?」
「見ましたか?」
「見ましたが、何か?」
荻上の放つ圧力がさらに強まる。
「いや、その、確かにこういうのが好きなのは確かだけど、それは決して荻上さんを嫌いだ、なんて事じゃなくて!」
「…」
「こういうのはあくまで二次元として好きなのであって、二次元と三次元は全然別物で…」
「…」
「でも、前にこういうのの話をしたときには、荻上さんも時間制限つきならいいって…」
「…」
「だから、その…」
「…」
「…ごめんなさい」
笹原は深深と頭を下げる。上目使いに荻上を見る。
荻上は顔を伏せている。よく見ると、肩が小さく震えている。そして。
「クスクス…」
「?」
「アハッ、アハハ!」
「ど、どうしたの?」
「アハハハハハハハ!」
「荻上さん!」
ひとしきり笑った後、荻上は笑いすぎて流れた涙を拭きながら、笹原に話し掛けた。
「ごめんなさい。笹原さんがあんまり必死なんで、ついおかしくなって…」
「…」
笹原は憮然としている。
「わかりました。許してあげます…って、笹原さん?」
笹原は無表情のまま近づくと、
「そんなに笑いたいなら…もっと笑え~っ!!」
そう叫んで荻上をくすぐり出した。
「ちょっと、笹原さん!やめてって、くすぐった、あは、あはは、あはははは!」
「もう、調子に乗らないで下さい!それならこっちだって!」
「まだまだ!ここならどうです!?」
笑い疲れ、くすぐり疲れた頃、二人は互いに見つめあうと、どちらからとも無く唇を重ねた。
「「ん」」
おまけ
「あの、荻上さん。よければこれからもお願いできるかな?」
「何をですか?」
「あの、『おかえりなさい』っていうやつ。本当に嬉しかったんだ。疲れが吹き飛ぶくらいに」
「いいですよ」
「ごめんね、面倒かけて。たまにでいいから」
「たまに、でいいんですか?」
「…できれば毎日」
「わがままですねえ」
「だめかな?」
「そんな訳ないじゃないですか」
おまけ2
大野・咲「「それって遠まわしなプロポーズじゃないの?」」
笹・荻「「あ」」