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*第十八話・地球(ホシ)へ帰る 【投稿日 2006/06/23】 **[[第801小隊シリーズ]] 俺は銃を握り締めながら考える。 ・・・人を殺すというのはどういうことなのだろうか。 今まで散々殺してきた俺がこんな事考えても意味はないのかもしれない。 だが・・・いや、だからこそか。 目の前の人間を殺せば、多くの人が助かることは間違いない。 それは、今までしてきた戦いだってそうだ。 ・・・・・・戦争なんてそんなもの。 しかし・・・そんな言葉だけじゃ納得できなくなってきている。 俺はこの引き金を引く事が出来るんだろうか? ・・・一人を殺して多くを助ける。 それが例え・・・悪人であっても許されることなのだろうか。 ・・・・・・答えは、もうすぐ出さなければならない。 「右舷、敵MSの攻撃が再開されました!」 サキが叫ぶ。振動が艦内を伝う。 「状況はどうなっているんだ!?」 そこにタナカとオーノが飛び込んでくる。 「・・・失敗したんですか・・・?」 不安そうな顔をするオーノに、皆答えることが出来ない。 「・・・・・・おそらくMAをとめることには成功したんだろう・・・。  後は・・・我々が持ちこたえるだけだ・・・。」 周りをドムが移動しているのが見える。 「タカヤナギ隊、攻勢に出ています!もうすぐ到着・・・。」 その瞬間。目の前でデッキに向かいビームバズーカを構えるドム。 「く、か、回避!」 クチキが叫び、舵を動かす。しかし、その砲撃は今まさに放たれようとしていた。 刹那。ドムの機体が破壊される。 「・・・何が起こったでありますか!?」 『よー、クチキ。無事だったか?』 「そ、その声は、サワザキ君?」 目の前にはライフルを構えたジムが一機。 『ドッグにいたらな、隊長がやってきてさ・・・。  一緒に行かないかって行ってくれたんだよ・・・。』 クチキがジムの後方に目をやると、一隻のサラミスが・・・。 『クチキくん、お元気?』 「は、はい!隊長こそお元気そうで!」 クチキが映し出された人物に敬礼をする。 「良く来てくれたね・・・。助かったよ・・・。」 大隊長がその人物に例を言う為に立ち上がる。 『いーえぇ。あと、お土産もお二人ほど連れてきましたよー。』 「お土産?」 サキがその言葉に不思議そうな顔をする。 『あなたにとって、一番の朗報かも知れませんねぇ。  お二人ともすでに前線へ向われました。』 そういって、にっこり笑った。 『ははは、何をしている!』 白い機体から放たれたファンネルは、ジムを執拗に狙う。 『上です!』 会長の言葉に反応し、オギウエはジムを動かす。 「く、反応が鈍い!」 先ほどの戦闘でのダメージが大きく、ジムの稼動部はまともに動かない。 だがそれでも、持ち前の反応力で切り抜けてはいた。 「・・・聞いているのより動きが遅い・・・?」 ファンネルはNT、もしくは強化人間の空間認知力を利用し、 操作するサイコミュ兵器である。 使う人間が使えば、接近を気付かれる前に敵を撃破することも可能といわれている。 「・・・使い慣れていないのか?」 オギウエは、一機のファンネルユニットをサーベルで切り払った。 『・・・やるな!さすがといえばいいのかな?オギウエェエ!?』 不敵な声が響く。ファンネルはまだ数多く残っている。 『・・・厄介ですね・・・。』 「でも・・・やるしかない・・・。」 ちらっと背中で気絶しているササハラを見る。 先ほどの痛みによって、意識が飛んでいるようだ。 『来ますよ!!』 「くっ!」 会長の言葉に反応するたびに徐々に空間が認識できてくる。 (これが・・・これがこのシステムの力・・・。) 元々、オギウエにはNT能力はない。 ただ、人体実験によって擬似的なNT能力──とはいってもの物凄く弱いが── を得る事は出来ていた。それが拡大されているのである。 感覚は分かるだけにこのシステムへの許容性も高いようである。 『右っ!』 「はいっ!」 また一機、ファンネルユニットを破壊する。 「このままファンネルだけを破壊できれば・・・!」 『そうはいくかっ!』 そこにナカジマのMSが接近する。 『直々に切り落としてやる!』 「くっ!!」 ビームサーベルが閃く。ぶつかり合うエネルギー。 「・・・う、動けない・・・!」 このタイミングでファンネルで狙われたら終わりである。 『・・・後ろ!』 「やはりきたかっ!」 切りあいながら後ろから放たれる粒子砲を避けようと、 機体を上方に浮かせる。 放たれた粒子砲は、ジムに当たらず、そのままナカジマの機体に当たる。 『くぅ・・・!やってくれるじゃないかぁ!』 「・・・何を焦ってるの?」 『焦ってる?私が・・・?』 「らしくないじゃないか!いつも冷静でみんなの相談役で!  誰よりも頼りになったあんたが!地球殲滅作戦からして!らしくないよ!」 オギウエが叫び、ナカジマに同様が走る。 『・・・うるさいうるさいうるさい!私にはもうこれしかないんだ!』 ナカジマの悲痛な叫びに、オギウエは思う。 (・・・止めてあげなきゃ・・・。・・・彼女が歪んだ原因は・・・私にも・・・。) サーベルを構えなおし、ジムは再び接近する。 ファンネルは一段と動きを早めているようにも見えるが・・・。 『動きが・・・単調です!』 「・・・周りが見えなくなってる・・・。・・・でも!」 ファンネルユニットをかいくぐり接近し、再びサーベルを切り合わせる。 「今度こそ・・・止める!」 『・・・嫌な感じ・・・!逃げて!』 「えっ!?」 会長の叫びを聞いて、オギウエは怪訝な顔をする。 『ははははっ!おしまいだぁ!』 ナカジマのMSの胸部が開く。光が閃く。 「うわぁああああああ!!」 ジムの各所が破壊される。胸部拡散ビーム砲である。 『・・・おしまいだ、おしまいだよ!』 体がのけぞり、動けないオギウエに向って、サーベルを振り下ろすナカジマ。 『・・・ダメ!』 その瞬間。オギウエの手がぎゅっと握られる。 操縦桿を、力強く動かし、回避行動をとる。 「ササハラさん!」 『ごめん!』 そのまま、ジムはサーベルを操り、ナカジマのMSの脚部を切り払う。 『うぐぁあああ!・・・まだだ!』 『それはこっちだって同じ事だっ!』 サーベルを構えなおし襲い掛かる相手に、ジムは隙を突き後ろを取る。 そのままファンネルポッドにサーベルを突き立てる。 『これでおわりだっ!』 「・・・ナカジマ、もう終わりだよ!・・・でも・・・  何で最後ファンネルを使わなかったの!?」 最後、サーベルでなくファンネルで勝負を挑まれていたら・・・。 さらに機体にがたが来ていたジムでは一たまりもなかっただろう。 『・・・重力圏じゃ・・・ファンネルはあまり使えなんだよ・・・。』 オギウエの問いに、ササハラが苦しそうに答える。 『・・・それもあるさ・・・。だけど・・・。私は・・・。  フフフ・・・楽しかったよオギウエ。あんたと・・・最後に触れ合えた気がした・・・。』 不敵な笑みを浮かべながら、ナカジマはジムを引き剥がし上方へと移動していく。 『それと・・・あんたの愛した人は・・・。強いね。  バイバイ、オギウエ。幸せにネ・・・。』 そのまま姿が消えていく。 『・・・これで・・・よかったのかな・・・。』 「・・・分かりません・・・けど・・・。」 ナカジマの去ったほうに視線を追いながら、オギウエは自然と涙を流した。 「・・・疲れた・・・。」 誰もいなくなった基地の中で、ナカジマは一息つく。 「・・・らしくない、か。」 先ほどオギウエに言われた一言を考える。 「ちがうよ、オギウエ。一番弱かったのは私。これが私。  みんながいなければ何も出来ないのが私・・・。」 故郷を壊されてみなのいる場所がなくなって・・・。 また互いに笑い会える日がきてほしい。そのために戦ってきた。 「・・・やり方、間違っていたかな?でも、それもこれで終わり。」 いいながら、ここで死のうと決めたその時。 『・・・ナカジマ。』 振り向くとドムが一機、目の前にいた。 「その声・・・!まさか!・・・マキタ・・・。何で・・・。」 『あはは・・・幽霊じゃないよ?』 言いながらドムは壊れたナカジマの機体を抱え、移動する。 『君の執事さんがね。助けてくれたんだよ。』 「・・・じいが・・・。」 『相方も生きてる。みんな、ナカジマの事待ってるんだ。行こう。』 その言葉に、驚きながら首を振る。 「私は・・・あんた達を殺そうとしたんだぞ・・・!?」 『・・・生きてるからいいさ。やり方をちょっと間違えただけだろ?』 そういって、マキタは笑う。 『思いは一緒さ・・・。死んだら何も出来ないじゃないか。生きよう。  いきて、連盟の連中に一泡吹かせよう。』 「・・・分かった。オギウエは・・・。」 『・・・彼女は違う道を見つけたんだろ?  こんな道、行かなくて済むならそれに越した事はないさ。』 少し寂しそうな、しかし優しい笑顔をたたえ、マキタは言う。 「・・・ああ。そうだな。それじゃ、行こう。」 ナカジマは、笑う。まるでつき物が取れたような顔をして。 「本当にさよならだね、オギウエ。また・・・会えたらいいな。」 二機は宇宙へと飛び出す。その先には、彼らの脱出艇が見えていた。 銃口を握る手に汗が滲む。 『・・・撃たんのか?』 蔑むような声。その間も、老人は操作を続ける。 『発射5分前です。』 無常にも、発射の点呼が響く。 「・・・くっ。」 歯を食いしばるマダラメ。 いまだに気持ちが定まらない。 「くそぉおおお!」 銃声が、部屋に響いた。 『貴様!』 老人が、目を剥きマダラメを睨む。 銃声がさらに数発響く。金属が壊れるような音が響く。 「・・・これで発射できねえだろ?」 ニヤリと笑うマダラメ。銃弾は、コントロールパネルを貫いていた。 『馬鹿者!これではエネルギーが逆流するぞ!?』 「・・・生かせるものなら生かしてえ。お前が大量殺人鬼であってもな。  甘い考えかも知れねえけど・・・。」 『そんな事は聞いていない!ここはすぐに爆発するぞ!』 その声と共に、爆発音が辺りを包む。 「分かってたさ。でもよ、逃げれば済むことだ!」 言って、マダラメは老人に駆け寄り、抱える。 『は、離せ!逃げられるものか!』 「うるせーよ爺さん。あんたには生きて償ってもらう。  多くの人や物を消した罪をな。・・・だから生きろ!」 マダラメは駆け出した。元来た道を走り、MSの元へ戻る。 「よっし、さっさと脱出だ!」 その瞬間、爆発が目の前で広がった。 「くぅ!」 間一髪その炎から避ける事が出来た。 「こりゃ、本気でやべえかもな。」 『・・・だから言ったではないか。お前も死ぬぞ。』 皮肉な声を出し、マダラメを嘲笑する老人。 「あー、うるせえな、俺は自分が死ぬのは怖くねえんだよ。  他の連中が死ぬ方がずっと嫌だ。今もお前が死なねえかとヒヤヒヤしてるぜ。」 そういってニヤリと笑うと、ゲルググは駆け出した。 「・・・ちぃ、所々壊れてやがる・・・。」 再び小規模な爆発が起こる。 その爆発のために、大きな塊が上方から降ってくる。 「く、避けきれねえか!?」 必死にブースとを閃かせるが、間に合わないと考えるマダラメ。 大きな砲声が響く。 「なに!?」 その瞬間、塊は壊れ、四散していく。 『間に合ったね!隊長さん!』 目の前には、半壊したジムが、両肩のバズーカを構えていた。 「アンジェラ!?何で来た!?」 『何言ってんの!助けられそうな仲間をほっとくことは出来ねえって言ったの誰?  私はあんたに死んで欲しくない、それだけだよ!』 「・・・すまん。」 思わず涙が出そうになる。 『・・・誰だって死んで欲しい人なんていない。』 ふと見ると、その後ろにスーのジムもいた。 「お前ら・・・命令違反で修正だからな・・・。」 『望むところよ!』 アンジェラの声に、笑うしかないマダラメであった。 「よし!さっさと脱出するぞ!」 『こっちだよ!』 三機のMSは最速で移動を再開する。 「急げ・・・急げ・・・!」 爆発はその間も所々で起こっている。 まだ、小規模なものが多いが、後に大爆発に繋がるのは否定できない。 『この先を抜けたらもうすぐだよ!』 アンジェラの声にマダラメは操縦桿を握る手に力が入る。 しかしその瞬間、目の前でかなり大きな爆発が起こる。 「アン!スー!」 『大丈夫!それより!』 二機のジムは停止し、その進行方向を呆然と見る。 爆発の影響で道が塞がれているのが見えた。 「くそ!マジか!」 『早く他の脱出口を!』 『ククク・・・間に合うものか・・・。』 老人の哄笑が響く。 「・・・ここまでか・・・?」 『・・・聞こえる・・・。』 諦めを感じたマダラメ。しかしそこにスーの声が聞こえた。 「・・・どうしたんだ!?」 『・・・そう・・・ここ・・・。お願い!みんな、避けて!』 叫びと共に、三人が中心に空間を作るように広がる。 その中心を狙うように、メガ粒子砲の光が飛び込んできた。 「なんだ!?」 『・・・これで外に出る道が出来た・・・。』 言いながらスーはその光が作り出した穴に進んでいく。 「・・・よし!いくぞ!」 全速力でその穴を進んで行く三機。 『・・・このスピードじゃ間に合わない?』 「・・・かもな・・・。爆発はもうすぐだ・・・。」 奥歯をかみ締めるマダラメ。 『・・・これに捕まって!』 スーが指し示したところには、チェーンがぶら下がっていた。 「なんなんだよ?こりゃ!」 『今はスーを信じましょ!』 何がなんだかというマダラメに、アンジェラが叱責する。 三機がチェーンに捕まると同時に、それは高速に引き上がりだした。 「うおおおおお!?」 強烈なGを感じながら、あっという間に外が見えてくる。 宇宙に、放り出される三機。 「・・・まさか!?」 チェーンに捕まりながら考えたのは、奴の事である。 目の前に、二機のMSか佇んでいた。 一機はメガランチャーを構えたジム。 一機は、黒い塗装が施された・・・チェーンを引っ張るガンダムであった。 『早く!ここから離れましょう!』 聞き覚えのある声にマダラメたち三機と、その二機は移動する。 その瞬間。 後ろから大きな光が放たれる。 『わ、私の夢が・・・!』 「爺さん、諦めて人々の為になるもんでも研究するんだな、この先。  ・・・よう、遅かったじゃねえか、二人とも。」 爺さんに皮肉を浴びせながら、斑目は二機のMSに向けてニヤリと笑う。 『・・・ま、待たせたな。ち、ちょっと撃たれちゃってさ・・・。』 『・・・・・・あの時はすみませんでした・・・。』 「・・・まあいい。クガヤマ、コーサカ。帰還ご苦労。」 その言葉を行った後、ふう、と溜息をつきながら天を仰ぐ。 「そうだ!ササハラ!?」 ばっ、っとササハラの侵入した基地の方を見るマダラメ。 「・・・あれは・・・地球に向っている!?」 基地は徐々に地球のほうへと引き寄せられていく。 『今の爆発の影響で地球の重力圏に入ってしまったんですよ!』 コーサカの言葉に、唖然とするマダラメ。 「ばかな!あの中には二人がまだ!」 『しかし、今行くと我々まで大気圏に突入する事に!』 「ち、ちくしょう!」 手を握り締め、二人の安否を思うマダラメ。 その間も、徐々に地球へと向って基地は降下していた。 「この爆発音は!?」 丁度マダラメたちが脱出を果たした頃。 二人は壊れた基地の中で脱出を試みていた。 しかし、すでに先の戦いでMSはほぼ大破。 移動するのも困難な状況であった。そのため、脱出が遅れた。 右往左往しているそのときに、大きな爆発音が響いたかと思うと、 基地の内部は大きく揺れた。そして、ある異変に気付く。 『・・・基地が・・・加速している・・・!』 オギウエのその言葉に、最悪の事をイメージするササハラ。 「ま、まさか・・・地球に近い位置にあったとはいえ・・・。  大気圏に・・・突入しようとしてるのか? 」 『・・・重力に惹かれている感覚があります・・・。  間違いないようです・・・。』 会長の言葉に、顔を青くする二人。 「くそ・・・。どうすれば・・・。」 大気圏への突入。それは、空気の摩擦により加熱し、燃え尽きる事を意味する。 たとえ燃え尽きなくとも、高温が基地内を覆い、そうなれば死・・・。 『・・・方法はあります。』 『え?』 会長の発言に、オギウエは聞き返す。 『・・・先ほどの分身を利用した防御法です。  あれは表面の塗装を剥離させることで生み出した質量のある幻影です。  降下寸前にそれを行う事で一種のフィールドを生み出せば・・・。」 「・・・では、それを行うしかないって事ですね!?」 『それには完全な同調が必要・・・それに・・・。』 少し寂しげな表情を浮かべる会長に、二人は不思議な顔をする。 『・・・いえ。タイミングを考え全力で行います!』 「はい!」 破壊が進む基地の中で、心を落ち着かせながら時を待つ。 一時間ほどたった頃だろうか。周囲の温度が上がってくる。 「そろそろか・・・。」 『・・・それでは・・・。行きますよ!』 光を放ち始めるジム。綺麗な・・・光が広がる。 『・・・うう・・・!』 『会長さん!?』 「どうかしましたか!?」 苦悶の声を上げる会長に、二人が心配した声を出す。 『・・・いえ・・・。こうなる事は分かっていました。  私の力が最大限に引き出される時・・・それは私とあなた方との別れだと。  このシステムから、私の意識は解き放たれるでしょう。』 寂しげな笑みを浮かべ、会長は二人を見る。 『・・・お会い出来てよかった。また・・・会えますよね?』 「・・・会長!今までありがとうございました!」 『・・・また会えますよ!いえ、会いましょう!』 その言葉に、会長は笑顔になり、手を広げる。 『・・・・・・きっと!また!』 一段と光が広がり、周囲からMSが隔絶される。 そして、光と共に、加速していく基地は、大気圏へと降下していく。 『・・・・・・さよなら・・・。』 システムから、会長の意識が解き放たれていくのが分かる。 「さよなら・・・。」 『さよなら・・・また会える時まで・・・。』 地球への降下はますます加速を強めていく。 「・・・オギウエさん。」 『はい?』 今までで一番と思えるくらい優しい声をササハラはオギウエにかける。 「・・・・・・どこに落ちたい?」 ドキッとするその声。優しい目。首を振りながら、オギウエは言う。 『どこでも。あなたと一緒なら。』 光が基地から放たれるのを、マダラメたちは見た。 「・・・あれは・・・?」 基地への突撃を敢行しようとするマダラメを止めていた皆が、その方向を一斉に向く。 『光・・・?ササハラ君たちか?』 「・・・だろうよ!きっと、きっと無事さ!勝手に死ぬなんてそんな事・・・ゆるさねえ!」 叫びながら、マダラメは泣きながら笑う。 「地球で・・・また会おうぜ・・・、ササハラ!オギウエさん!」 地球のとある場所にある豪邸の一室。 「ん・・・。」 一人の少女が目を覚まし、体を上げた。 「・・・夢・・・?いや・・・違う・・・。ササハラさん・・・オギウエさん・・・また・・・。」 食器を落とす音が響く。 「・・・リツコ様?」 ふと見ると、手に持っていた食器を落とした黒髪の少女が目を見開いていた。 「・・・カスミ。いままでありがとう。」 にっこり笑うリツコ。そこにカスミは駆け寄り抱きつく。 「よかった・・・本当によかった・・・。」 涙を流し、嗚咽を漏らす。 「・・・チヒロたちは?」 「・・・はい。いま第100特別部隊は『サン・シャ・イン』のほうへ侵攻中。  あともう少しで戦闘に入るそうです。」 「そう・・・。みんな・・・無事でいて・・・。」 窓に映る夜空には、一筋の流れ星が見えた。 「・・・あれは・・・きっと・・・。」 そういって、リツコはにっこりと笑った。 戦いは終わった。 第801小隊はドッグへと帰還した。 戦争はこの後1週間後に終結する事となる。 だが、この部隊の戦いの記録は、残る事はなかった。 危険性の高いこの事実を無視した無能を政府高官が認める事になるからだ。 都合のいい事に証拠は全て消滅していた。 ・・・しかし、彼らにとってそんな事はどうでも良かった。 肝心なのは、皆生き残った事。 また、笑いあえているという事。 軍を大半が辞め、皆思い思いの地へと旅立つ。 ・・・いつかまた会えるときを信じて。 あの二人にもまた会えるときを信じて。 「ササハラさん?」 「なに?」 「・・・もう戦わなくて、いいんですね。」 「・・・・・・うん。そうだね。」 次回予告 リツコは、あのときの約束を果たそうとする。 戦争から一年。 元第801小隊のメンバーにめぐり合いながら、 地球にいるはずの二人を探す。 案内役は、臆病者の元隊長。 外伝「リツコ・レポート」 お楽しみに

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