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薄明かり」(2006/05/28 (日) 00:13:26) の最新版変更点

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*「ありがとう」 【投稿日 2006/05/25】 **[[最終回に寄せて]] もう外は明るくなり始めてきた。 荻上さんの家に到着。部屋の鍵を開けた。 当の家主は背中の上で寝息を立てている。 すっかり酔っ払ってしまったみたいだ。 かくいう自分も足取りが心もとない。 玄関に入り、荻上さんをおぶった体勢のまま靴を脱ごうとすると、 「あっ、も、もう大丈夫ですっ」 「…あ、起こしちゃった?」 背中から荻上さんの声が聞こえてきた。 「いや、…ゴメンなさい、寝ちゃって…」 「大丈夫、大丈夫」 ふと部屋の中の時計を見ると、針は五時を指していた。 「もうこんな時間か……」 二人とも部屋に入って、このまま眠りにつこうかと思っていた矢先、 手に何も持ってないことに気付く。 「あああっ!!」 「ど、どうしたんですか?」 「忘れたぁぁ!!」 「へ?」 「同人誌…」 「…そんなんどうだっていいじゃないですか!!」 「いや、…そうね…、う~んでも…」 かなりお気に入りだったんだよなぁアレ。 「…寝ていいですか」 呆れた様子で、荻上さんはソファに寄りかかる。 「…でもまさか、あんなになるとは思わなかったなぁ」 「まだ同人誌ですか」 「いや、…それもあるけど、そうじゃなくて、  女性陣は随分盛り上がってたなあって思って」 合宿の時は仕切られてたからどんな話をしてたか全然分からなかったけど、 知らない間に随分と仲良くなってたんだな、と思った。 無理矢理ついてきた恵子とも、それなりに打ち解けてたのが、 ちょっとした驚きだったり。 「笹原さんこそ、おとなし過ぎですよっっ!」 「チラチラ見てても、酒呑みながらいつものオタク話  ばっかりだったじゃないですか!」 「んー…  でも俺達いつも、あんな感じだしなぁ…」 男性陣は男性陣で、まったりといつものオタク話。 斑目さんと高坂くんの仕事話や田中さんの衣装話も 軽く話したりしたけど。 でもそんな話を気兼ねなく話せる人たちだし、それだから 楽しく続けていられたんじゃないかと、今になって思う。 「それにしたって!!」 「最後なんですよ!もっと色々  話す事とかあったじゃないですかぁっ…ヒッ!…ク」 息を吸い込みすぎたのか、しゃっくりが出てきた。 「……まだ酔ってる?」 「酔ってないです!!」 「水、持って来るね」 「大丈夫です!…話聞いてますか笹原さん!?……ブツブツ」 ソファーに座りながら煮え切らない様子の 荻上さんを尻目に、台所から水を取りにいく。 …コンパの後は二次会、三次会、カラオケとオールナイト。 久我山さんも残業後にかけつけてくれた。 全員が久しぶりに集まる。お酒も随分空けたし、 朽木君が例によってハメを外したりしたけど、 それも含めて凄く楽しい夜だった。 多分もうこんな機会はないだろうなと思う。 「…荻上さんさ、」 汲んできた水を渡す。勢い良く水を飲む荻上さん。 「どこか大野さんに似てきたよね」 「!!」 驚いたように水をこぼす。 「ど、どこがですかっ!!」 「…いや、良い意味でだよ」 「似てませんよっ!!」 「でもさ、」 服の上に零した水を拭いてあげながら、言葉を続けた。 「以前の荻上さんだったら、あんな風に泣いたりしなかったよね」 「………」 入学当初、誰も寄せ付けないような感じだったのに。 …別れ際、春日部さんと話してて涙ぐんでた荻上さん。 酔っ払って、タガが外れたのだろうか。 春日部さんも大野さんも困ってたな。 荻上さんが感情を表に出すのって珍しいから。 春日部さんは荻上さんを落ち着かせようと 頭を撫でながらよしよしやってたけど。 大野さんは貰い泣きしちゃってたみたいだ。 「…だって、……卒業しちゃうんですよ……」 急に声が尻すぼみになる。 「大野先輩達はまだ居るし、笹原さんは傍にいますけど…」 「もしかしたら、もう会えないかも…」 そういって荻上さんの目が潤む。 「荻上さん…」 「春日部先輩や、大野先輩にっ……。現視研に…私…、どれだけっ……」 そのまま言葉を詰まらせてしまった。 「……大丈夫だよ」 「……っく……ひぐっ…」 荻上さんの隣に座る。 「みんな荻上さんの気持ち、分かってると思うよ、きっと」 なかなか素直にはなれないけど、 本当の荻上さんは真っ直ぐな気持ちを持っているってこと、 現視研のみんなはもう知ってる。 「それに…卒業したって、また会えるし、ね」 「……」 「だから、…大丈夫だから、ね?」 そういって、目の前の彼女を抱き締める。 「………ハイ……」 こうしていると、根は本当に良い子だよなあと、改めて思う。 「かわいいな、荻上さんは」 「……どさくさに、何言ってるんですかっ……」 「…ハハ」 荻上さんにとって、いつのまにか現視研が かけがえの無いものになっていたんだな、と思う。 もちろん、自分にとっても同じだ。 何となく、嬉しい気持になった。 「ありがとう」 「……」 誰に向けるでもない言葉が、自然と自分の口から出てきた。 いや、目の前の人に向けた言葉には違いないんだけど、 それだけじゃなくて。 酔っ払ってるせいだろうか。 「そんな…まるで、これで終わりみたいな風に言わないで下さい」 「そんなんじゃないよ」 「分かってます…ケド…」 「…ずっと一緒ですよ」 そういいながら、彼女が抱き付いてきた。 「うん」 返事をしながら抱き返す。 しばらくそのまま、目を瞑ってみる。 すると、さっきまで一緒にいたみんなの顔が浮かんできた。 本当に、四年間…色々あったな…… …気がつくと、傍から寝息が聞こえてくる。 あれだけハシャいだもんなぁ。 …自分も眠くなってきた…… カーテンの隙間から差し込む明かりと 隣に感じる温もりを感じながら、 ゆっくりとソファーに身体を預けていく。 こんな感じで、僕達の卒業式は終わっていったのだった。
*薄明かり 【投稿日 2006/05/25】 **[[最終回に寄せて]] 大「え~それではっ! 笹原さん、咲さん、高坂さんの卒業と、荻上さんの会長就任を祝して!」 「かんぱ~~~~~い!!!!!」 グラスを合わせる音が響く。 田「や、おめでとう」 笹「ありがとうございます」 恵「おめでとうゴザイマス、コーサカさん!」 高「ありがとう」 咲「あーこらこら。あんまくっつくな」 恵「えーいいじゃん、今日くらいさー!」 咲「…ま、いいけどね。今日くらいは」 恵「うわ、余裕?なんかむかつくなー」 咲「何でよ(苦笑)」 荻「笹原さん、そっちお皿あります?」 笹「え?ああ、ありがとう」 恵「うっわ、お姉ちゃん、何だか新婚さんっぽ~~~w」 荻「な、何言ってんですか!(///////)」 恵「もーずっとお兄ちゃんの部屋行き来してるしー、新婚同然?」 荻「変なこと言わないで下さい。ていうかお姉ちゃんはやめて下さい。」 もうすでに賑やかな席になってきている。 …いや、隅のほうで、朽木君が珍しく静かに飲んでいる。 朽「…次期会長はワタクシだと思ってましたのに。シクシク………」 斑「まー、そんな落ち込むことないって。会長なんて面倒くさいだけだぞ?」 朽「…斑目先輩も会長デシタよね?面倒くさいって思ってたんデスカ?」 斑「むう、フォローしてんのに。何でそんな質問振るかなー…」 久「よ、よう。盛り上がってるなあ」 田「よう!」 斑「ようやく来たな」 笹「あ、お久しぶりっす。久我山さんも来てくれたんですねー」 久「し、仕事があったから、来れるかどうか分からんかったんだけどな。何とか時間内に終わらせられたからなあ」 斑「はー、大変なんだなー営業ってのも…。」 久「…お、お前は大丈夫なんか?この不況下でそんなヒマそーにしてて」 斑「う、うるせーな。事務はそんなもんなんだよ」 田「はは、久我山も言うようになったな」 大「すいません生大追加~」 咲「早っ!しかももう大ジョッキかよ!!」 大「中ジョッキじゃおっつきませんよ♪」 高「うわばみだね」 大「あら(汗)高坂さん、今日はツッコミ厳しいですね」 高「あまり出番ないからねー(ニッコリ)」 大「え、えーとえーと…そんなことは………(汗)」 朽「アレ、斑目先輩どこ行くんデスカ?」 斑「んー?ああ、ちょっとトイレ行ってくるわ」 そう言って斑目は席を立った。 トイレから出るとすぐ、裏口につながる通路がある。 少し外の風にあたりたくなり、なんとなく裏口から外に出た。 上を見上げると、建物の隙間から四角い星空が見えた。 春でも、夜はけっこう冷える。 でも酒の入った体にはむしろ気持ち良いくらいだった。 裏口を背にして、建物の壁にもたれかかる。 「………………………」 何だかあの賑やかな雰囲気の中にいるのが苦しかった。 最近ずっと感じていた。でも表には出さないようにしていた。 (何でかね…。一人でいるときよりも、皆といるときのほうが寂しく感じる。) (…疎外感?いや、それよりも、やっぱ……。) (もう部室に行く意味が、今日でなくなろうとしてる…。多分そのことが………。) 咲「こんなトコで何してんの?」 斑「うおっ!?」 急に後ろから声をかけられ、びっくりする。 咲「何、酔い覚まし?もう回っちゃったの?」 斑「え、いや、まーね…」 咲「フーン。はー、外けっこう涼しいね。気持ち良いかも」 斑「………………」 店の中から皆の騒ぐ声が聞こえる。薄暗がりで、裏口から少し光が漏れている。 春日部さんが、酒が入って少し赤くなった顔で笑っている。 急にこの空間が特別なもののように思えた。 斑「あ、えーと、卒業おめでと」 咲「何、今さら?」 斑「んー、まぁ一応ね」 春日部さんは呆れた顔で笑った。 咲「ありがと」 斑「…春日部さんも丸くなったよなあ………」 咲「ん?」 斑「いやね、昔はしょっちゅう怒ってたのに。最近穏やかになったよな」 咲「んー、そうかな。…そういやコーサカにも最近、そんなこと言われたよーな気がする」 斑「そーなん?…じゃあやっぱ穏やかになったんだな。高坂がそう言うくらいだから」 咲「そうかもねー」 なんだか、こうしていると落ち着かない。 腕を組んだり、また下ろしたりしていると、それを見て春日部さんが言った。 咲「ん、寒い?じゃあ中に入ろうよ」 斑「え?あーいや、寒くは…」 咲「じゃ、先入ってるよ」 斑「あ…」 咲「ん?」 春日部さんがこっちを見て、「?」という顔をする。 斑「いやその、えーと…(汗)」 何か言いたいのだが、言葉が出てこない。 …もう当分、こうして二人で話すことなどできないかも知れない。いやもしかしたら、もう一生………。 斑「いや、今日さ、春日部さんと喋れて良かったよ…」 咲「はあ?大した話してないじゃん」 斑「うん、それでもさ…」 言いながら、かなり自分にしては大胆なことをしてるなと思った。 気持ちがバレるかもしれないのに、大丈夫なんか? …でもそれでもいいかな、と思っていた。少し気持ちが投げやりになっているのかも知れない。 斑「…少しでも話せて、嬉しかった」 咲「………酔ってる?」 斑「うん、そうかも知れねー」 咲「元気ない?」 斑「うん………」 咲「元気出せよ。アンタらしくもない」 斑「ハハ、そーだな…」 春日部さんが、軽くこっちの胸の辺りを叩いた。びっくりしたので少しよろける。 斑「………………」 咲「頑張れ」 斑「え、あ…うん。か、春日部さんも」 咲「うん」 少し沈黙があった。 急に春日部さんが笑い出す。 咲「アハハ!なんか変、こんなかしこまっちゃってさ!」 斑「え?あ、アハハ…。そうだな」 咲「じゃ、そろそろ戻るね」 斑「うん…酔ってる?」 思わず聞いてしまった。春日部さんの顔がさっきより赤い気がしたから。 咲「あー、ちょっとね…」 そう言って春日部さんは店の中に入っていった。 「……………………………」 しばらく放心していた。 薄闇の中、春日部さんが今までいた空間が、少し暖かいように感じた。 すぐに夜風が吹いて余韻をかき消してしまう。 「………………………………」 今はまだ何も考えられない。未来のこととか、いや、明日からのことでさえ、考えられない。 ただ立ち尽くしている。 俺はまだ迷っている。標識のない暗闇の中を、道を探してもがいている。 でも。 一人一人があの部室から旅立っていくように、自分も何かしらの「道しるべ」を見つけて進まなければならないのだ。 「光」を見つけだして、進まなくては…。 店の中から皆の騒ぐ声が聞こえる。薄暗がりで、裏口から少し光が漏れている。 不意に皆の中に戻りたくなった。 ……………………… 278 :薄明かり8 :2006/05/25(木) 22:59:48 ID:??? 朽「遅かったですにょ、斑目先輩!!うんこでしたかにょ?」 斑「あ?あー…、まーな…」 言い訳を考えるのも面倒くさかったので、適当に相槌を打った。 高「…いいですよ、今日くらいは」 高坂が斑目のほうを向いて言った。鉄壁の笑顔で。 斑「!!!!!」 高坂が何を言おうとしてるか、ものすごく身に覚えがあるのでびびった。 斑「は、ハイ!!!(激汗)」 朽「ん?どーしたんデスカ斑目先輩??汗びっしょりにょ~。」 斑「いっ、いや何でもねーし!!!(汗)」 高坂、今日はツッコミ厳しいな!!と焦りながらも思う斑目であった。                         END

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