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*ヨモギ 【投稿日 2006/05/04】 **[[カテゴリー-笹荻>http://www7.atwiki.jp/genshikenss/pages/47.html]] 仕事を始めてすぐの、春の休日のとこ。 笹原が家で午後になっても昼寝をしていると、呼び鈴が鳴った。 しかし起きない笹原。鍵が開く音がして、荻上が入ってきた。 「笹原さん、お疲れですね………。」 布団の中の笹原をみて呟く。 その時、笹原が薄く目を開けた。 「あ…ごめん、荻上さん。おはよう。」 「―――!すみません、起こしちゃいましたね。」 布団から起き上がって、笹原は伸びをした。 「いや~、寝すぎても疲れるからね。………ありがとう。」 まだ少し寝ぼけ気味の笹原は、はっと思い出した。 「そういえば、おやつ買ってきてあるから一服しよう。」 「じゃあ今、お茶淹れますね。」 台所に荻上が向かうと、草餅の4個入りパックが放置されていた。 勝手知ったる笹原宅。やがて笹原のデスクの隅に、熱い緑茶の 湯呑み2つと、草餅のパックが置かれていた。 「ふぅ…お茶ありがとう。草餅って、春の味だねぇ。」 「そうですね、子供の頃、母が手作りしてくれてましたよ。」 そう言いながら、草餅をぱくぱくと食べる荻上。 「それはもっと、田舎っぽいというか、ヨモギの味が強かったですけどねぇ。」 「やー、これスーパーの特売品だから…。」 お茶をすすりながら、笹原は苦笑いだ。 「そうだ、天気も良いし、ヨモギ取りに行きましょうか。」 「え?今から?…っていうかヨモギって生えてるところ有ったっけ?」 「大丈夫ですよ、雑草が生えてるような所なら。」 大きな河の河川敷にやってきた荻上と笹原。 犬の散歩をしている人や、家族連れでやってきて走り回る子供も居る。 「いい天気だねぇ。」 「黄砂で遠くが霞んでて、なんか幻想的ですね。」 そんな会話をしながら、土手を降りて草地を歩く二人。 「あの辺の、整地されてないあたりが良いですね。」 指差して、綺麗に草が刈られてない辺りへやってきた。 「これ、ヨモギです。裏が白いんですよ。」 「なるほどねぇ。匂いも特徴的だよね。」 「あと、大きいのは固いので、若いのだけ取るんですよ。」 草むらの横の土手の、草丈の低い所のあちこちに、濃い深緑のヨモギが見える。 「ちょっと季節が遅かったですかねぇ。」 「そうなの?まだ春まっさかりだけど。」 そう言う笹原の視線の先には、草丈の高い草むらの中の黄色い小さな花を 転々と巡るモンキチョウが舞っている。 「土筆が終わっちゃってますから、そう思ったんですよ。」 「あー、あれ、大変だけど嵩が減るらしいねぇ。」 「そうなんですけどね(苦笑)。」 二人並んで、コンビニ袋にヨモギを入れる。 「笹原さん、それ大きいですよ。」 「あー、ごめん。」 「でもまぁ、かき揚げにでもしましょうか。」 草むらの向こうの灌木のあたりからは、ウグイスの声が聞える。 「子供の頃に山菜取りしたぐらいで、俺はヨモギを取って食べた事は無いんだよね。」 「私も大きくなってからは全然でしたよ。懐かしい感じでした。」 そんな調子で小一時間、二人はヨモギを摘み終えた。 笹原が荻上の部屋に座っていると、台所の方から電話をする声が 聞えてくる。普段聞くことが無いほどの東北弁だ。 「餡から作るのは、無理だっぺやー。」 「え?や!ちげぇって!そんなんじゃないさァ!」 やがて荻上が部屋に戻ってきた。 「実家に電話するの久しぶりでしたけど、母に作り方聞きましたよ。」 「盛り上がってたね(笑)。」 「いえ、そんなの作るの珍しいって吃驚されて……。」 と、赤面する荻上だった。 その日の夜は、ヨモギ入りのかき揚げと、食後に草の香り高いヨモギ餅。 翌日は春日部さんのお店をデートがてら二人で訪ね、お婆ちゃんっ子だった 春日部さんに、ヨモギ餅の手土産は絶賛されたのだった。 「いい奥さんになれるよ、というよりいいお母さんになれるねっ!」 褒め言葉なのかどうか微妙な台詞を受けて、笑顔も微妙な荻上であった。
*らびゅーらびゅー 【投稿日 2006/05/04】 **[[カテゴリー-笹荻>http://www7.atwiki.jp/genshikenss/pages/47.html]] 秋も深くなり、徐々に寒さも厳しくなってくる10月。 大分厚着の人も目立ちだし、寒さが目に見えて分かってくる季節である。 しかし、ここは全くそれも関係ないほど暖かい。午後の光のせいだけではない気がする。 場所は小さめのカフェ。ミントティーの香りが漂うオシャレな場所だ。 「面白かったですね・・・。」 そういいながら映画のパンフをうっとりするように眺める頭を後ろに縛った女の子。 荻上千佳さんである。 「だね。でもやっぱり端折り過ぎかな・・・。もっと色々描いて欲しかったけど・・・。」 今日は二人で映画を見に来て、その帰りに、カフェに寄ったのだ。 「ですね。フォウは・・・あれでよかったんですかね?  私としては結構好きなキャラだからもっとスポットを当てて欲しかったような・・・。」 「うーん、まあ、そのあたりは分からないけど・・・。  原作を見てない人なら問題ないんじゃないかな?」 「原作ファンがどう思うか、って所ですね。」 「うん。そのあたりは斑目さんにでも聞かないと分からないよ。」 「あはは・・・。そうですね~。」 場違いのようにも思えるオタ話に花を咲かせながら、荻上さんは口をあけて笑う。 フォウは陰のあるキャラだからそんな笑い方はしないだろうけど・・・。 うん、やっぱりこの方がいいな。 「それじゃ、出ようか。」 「え・・・?」 不安そうな顔をする。・・・ああ、そういうことか。 「帰るにはまだ時間があるから、ちょっと色々見て回ろうよ。」 「あ・・・。そうですね!」 顔がぱぁっと明るくなる。最近の彼女は良く笑う。 その顔もまた、いいなと思うんだ。 町を歩く。荻上さんが、横にいる。 彼女の歩幅は少し小さいから、それに合わせるように少し遅く。 「あの・・・。」 「え?」 手をもじもじさせながら荻上さんは少し顔を赤らめている。 あ・・・。でも、ちょっと恥ずかしいなあ・・・。 手を繋ぐなんて・・・。 そうやって俺がためらっていると、荻上さんは少しむくれた顔をした。 「・・・手を繋ぎたくないんですか。」 「や、そういうわけじゃないんだけど・・・。」 「だって・・・私たちは・・・。」 言わんとしている事は分かる。分かるよ、荻上さん。 「そういうことをしなくなるのは、  関係が壊れるきっかけにもなるって言われてるんですよ!」 そういいながら少し怒った調子で言葉を紡ぐ。 ああ・・・。やばい。スイッチ入っちゃった・・・。 かれこれ、十分間、事の重大さを説かれた。 「・・・というわけです!分かりましたか!」 「・・・ハイ。ハンセイシマス。」 そういいながら、俺は笑って荻上さんに向かって手を伸ばした。 表情をあっという間に変えて、荻上さんは手をとる。 なんか、最近表情が良く変わるなあ。いい傾向だよね。 すごく、一生懸命生きてる気がする。 手を繋いで道を歩く。周囲の寒さに対して、手の暖かさが心地よかった。 道すがら、ちょっとしたカジュアルショップがあった。 荻上さんはその方向を少し眺めている。 「入る?」 「え!・・・いいっすか?」 「何言ってんの。そういうもんでしょ。」 言いながら、手を引いて店のほうへ向かう。 店内は完全に女性向けの作り。まあ、正直、興味はあまりない。 っていうかあったら怖いよね。 荻上さんが一生懸命ウインドウショッピングをしている間、 ぼんやり考え事をしてみた。 明日からの研修、何すんだろうなあ・・・。 最初はミスをすることが仕事とはいえ、プレッシャーはある。 好きなこと、興味のあることを仕事に出来たのは良かったけど、 自分に対しての自信と言うか・・・。そういうものが足りてない気がする。 と、ここまで考えたところで、目の前に荻上さんがいた。 ・・・すごく深刻そうな顔をしてるけど、なんかあったのかな? 「・・・どうかした?」 「・・・笹原さんこそ、何かあったんですか?すごく深刻そうな顔してましたけど・・・。」 プッ。少し噴出してしまった。 「何で笑うんですか!」 「いや、なんでもないよ。ちょっと考え事してただけ。  荻上さんがこの世の終わりみたいな顔してるからさ・・・。」 「だって・・・。笹原さんが・・・。」 「ごめんごめん。」 そういいながら、彼女を再び買い物に促す。 本当に、愛されてるんだなあ。なんて、恥ずかしくて口には出せないけど。 荻上さんと付き合うようになって本当に良かったと思う。 帰りはすでに日も落ちかけ、夕闇が迫っていた。 「夕方、ビルの合間に出来る情景が好きなんですよね・・・。」 そういって、荻上さんは電車の窓から見えるビル郡を見つめる。 作家さんならではなのかな。感受性が高いというか、見る目が違う。 一緒にいると、新しい視線が見えて来るんだ。 いままで、感じたことのない感覚で、とても楽しい。 これが付き合うって事なんだろうか?教えて、春日部さん!(笑) とか言ったら、多分、ぶん殴られるかもな~。 『新しいけど、楽しくなんかないわ!わたしゃ!』とかいって。 そう思いながらぼうっと窓を見る荻上さんを見て少し笑った。 俺が最初に付き合った人だけど、この恋は、一生物になるのかな? 正直、この未来がどこに繋がってどうなるかは分からないけど・・・。 今は。この先も一緒にいてくれたらなって思う。 俺の憂鬱を吹き飛ばしてくれる唯一の人だから。 夜になって、帰り道を共に歩く。 三日月が綺麗に浮かぶ日が落ちたばかりの時間。 「今日の月は・・・。なんか目みたいに見えますね・・・。」 なんと。また面白いことを言うなあ。 「何の目かな?」 ちょっとからかうつもりで聞いてみた。 「うーん・・・。神様の目とか・・・。」 「何の神様?」 「恋の神様とか!」 ぶっ。また噴出してしまった。 「何で笑うんですか~。」 今まで見たこともないような変な顔をして、荻上さんは俺を見る。 「いやいや・・・。そんなことも言うんだね・・・。」 少し恥ずかしそうに顔を赤らめる荻上さん。 「い、いいじゃないですか!聞いたのは笹原さんですよ・・・。」 「いや、ごめん、ごめん。」 謝ってばかり。でも、楽しいからいいんだ。 「・・・笹原さん。」 そういって、少し真面目な表情をして俺を見つめる。 これは・・・。キスの合図ですか?でも・・・。少し・・・。 「やー、今日は楽しかったねえ。」 話をしてはぐらかしてみようとする俺を見て、荻上さんは。 「・・・ハイ・・・。」 何か大きなショックを受けたように打ちひしがれる。 あー、しまった!少しからかおうと思っただけなのに!! ばっと荻上さんの体に近づき、顔と顔を寄せる。 恋の神様(荻上さん曰く)の見てる下、キスをする。 本当に、愛されてるなあ、俺は。それ以上に、大切にしなきゃ。 そう思った、秋のある日。月は神々しく輝いていた。

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