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*せんこくげんしけん1 【投稿日 2006/02/27】 **[[せんこくげんしけん]] 合宿から数日が経ったある日の午前。 サークル棟を訪れた荻上は、部室のドアの前に立つ怪しい人影を見かけた。 物陰に隠れて様子をうかがう彼女の位置からは、男の背中しか見えない。背は低い。なで肩で猫背だ。 「何をやってるんだ……」 大野のコスプレ衣装が盗まれそうになった事件を思い出す。当時の犯人像はハッキリしていないので確証はない。 (大野先輩狙いの再犯? あのとき、朽木先輩が顔を覚えてくれていたら!) 笹原に電話しようと思ったが、彼は就職先の研修中であることを思い出す。迷惑は掛けたくない。ふと、笹原の顔が浮かぶ。最近脳内で再生されるのは強気攻めの顔だ。 唇を重ねた感触、肌のぬくもり……。 「いげね!」我に返って口元を押さえる。顔は紅潮しきっている。最近は多方面にワープできるイケナイ体になってしまった。 笹原以外に誰か呼ぶべきか、とも考える。 咲が相当忙しいことは知っている。大野は上野方面にある田中の家に入り浸りなので、すぐに来ることができない。仕事場が近い班目もお昼でないと来ない。朽木は知らない……というより、朽木や恵子が来たら事が悪化しそうで頼れない。 背中から感じる雰囲気では、悪い人ではないかもしれない。荻上は、勇気を振り絞って男の肩を軽く叩いた。 「あの……」 声を掛けたつもりが、その瞬間男の姿は消えていた。 「え、え?」 混乱しつつも、とにかく部室に入ろうとドアノブに手をかけた荻上は、はたと立ち止まった。妙な違和感を感じる……。 「何か」が違うのだ。 荻上が部室の前で怪しい人物を見かけてから約2時間後。時計の針は12時を指していた。 部室の昼間の主は班目である。 彼が訪れた時、部室には誰もいなかった。 「軽井沢の後も、みんなそれぞれに楽しんでいるんだろうなあ」 しかし、社会人である班目はそうはいかない。 コンビニで買ってきた弁当をいそいそと口に運びながら、テーブルの上に無造作に置かれていた最新号のマガヅンを読む。 「くじアンも潮時かなー」「ゆっくり読みてーな、社会人は辛いよ……」 誰もいない部室で独り言を繰り返す。静かすぎるからだ。 「……ま、合宿で遊んだ分は取り返さないとなー」 ここまでしゃべった後、独り言が止まった。 揚げ物をつまんでいた箸の動きも止まった。 沈黙。 遠くのグラウンドの方から、バットがボールを叩く乾いた金属音や掛け声だけが微かに響いてくる。 しばらくして、班目はぽつりと呟いた。 「俺は 遊んだ のか?」 何で参加したのか。何のために一緒について行ったのかを思い起こすと、咲の顔が浮かぶ。 (春日部さんはコーサカに付きっきりだった。そりゃ当たり前のことだ。俺も別にそんな気持ちで参加したわけじゃない……) がぶりを振って、「んなわきゃねーだろ~、ありゃオタクの敵……」と否定する言葉が口をついて出た。 が、それを覆すような記憶がすぐに蘇る。 『あ でもこないだ ちょっと一緒にゲームやったよ』 2人で寿司を食べたときのことが浮かんだ。 また、沈黙。再びグラウンドからの掛け声が小さく聞こえてきた。 過去の出来事がどんどん思い出されてくる。 卒業式でのやりとり。 「イバラの道」を自覚した夜。 行き詰まった同人誌作成会議を仕切ってくれたこと。 選んで金を出した服(=俺自身)を認めてくれたこと。 グーパンチを喰らったときの妙な幸福感。 不意に泣き出してしまったときの焦り。 そこで感じたコーサカとの「差」。 守り通した「最後の砦」。 学園祭の会長コスを見た時の……。 そういえばボヤ騒ぎの時に、初めて体に触れたっけか。拳以外で。 「最初に妙に意識しだしたのはいつだっけ、この部屋で2人だけになったときかな……。あの時はハナ…(略」ずっと1人で呟いている班目。 しかし、さかのぼっていく記憶の中で、ある出来事を思い出した。 『おい高坂』『もう面倒くせえから こいつにはじめてのチューしたれ』 「あの出来事で成り行き上、コーサカが告白することになって……、まさかホントにやるなんて思わなかったもんなぁ、アハハハ」 ふいに笑いが止まる。 「あれ……、あの2人をくっつけたの、お 俺?」 ちょっと動揺した。当時は「乱暴女」としか思っていなかったから何とも思わなかったが、もしあのとき彼女を意識していたら……。 「いやいや、何考てんだ俺!」と叫び、がぶりを振る。 「なんだか、一人で楽しそうだね」 いきなりの声に、現実世界に引き戻され、班目は心臓が止まる思いがした。 いつの間にかテーブルの向い側に、長い間会う事のなかった初代会長の姿があった。 「うおっ!しょっ…初代! ぜんぜん気が付かなかったですよ」 「ずっとブツブツ独り言を言ってたからね君は」 聞かれたか。何かマズイこと言ったっけか。と頭の中で言葉を繰り返す。 「初代、どうして今ここに?」 「“二代目”こそ、卒業してもなぜここに?」 初代は、穏やかな口調で聞き返す。感情を表に出さない瞳から、何を考えているのかは読み取れない。 「班目くん、機会が過ぎたからといって悔やむことはないよ。時は流れ去るものではない。積み重なって今につながる財産だと思った方がいいね」 何のことだろう。思わず席を立ち、初代のそばまで歩み寄る班目。 「初代、いったい……」 「じゃあ僕はこれで……」 いつものように消え去るのか、班目は慌てて会長の肩を掴んだ。 「あ、ちょっと待ってくだ……」 瞬間はなぜか覚えていない。 視界がブラックアウトしたような感覚の後、気が付いた時には、班目は部室前の廊下に1人で立っていた。 「あれ、一緒に出たのか? また消えちゃったよ。初代って何者なんだ?」 しばらく廊下でぼう然としていた班目は、ふと我に帰った。 「あ、いけねぇ、会社に帰らなきゃな!」 部室に入って荷物を取ろうと思い、ドアの正面を見る。 「現代視覚文化研究会」のプレート下に、数年前のゲーム「サムライ・タマシイ勘九郎無法剣」のキャラ、ナコ○ルのピンナップが貼ってあるのに気付いた。 「……おい待てよ……」 最近は、ドアにこの手のもの貼ってはいなかった。 いや、班目が部室を訪れた数十分前も貼ってはいなかったはずなのだ。 混乱を鎮めたいという思いからまわりをキョロキョロと見渡す班目。 隣近所の部室のドア周りに目をやると、303号室「比較文化研究会」、305号室「環太平洋文化同好会」のプレートやポスターが目に付いた。 「……あれ、比較文化研究会は……」 班目は、現視研が自治委員会によって潰されそうになったことを思い出した。 その際、未活動サークルが整理されて、比較文化研究会は別の部屋へと移転していたはずだった。 不安が過る。さらに周りを見回す。 廊下の様子が来たときとまったく違って見える。 「つ、疲れたのかな。早く帰ろう」 部室に入った。しかし、持ってきていた荷物が無い……。 いやそれどころか、部室内も様相が変わっていた。 壁や窓のポスターが古い、最新刊だったはずのテーブル上のマガヅンは3年前のものになっていた。 班目は、「おいおい誰だよ趣味の悪いイタズラしやがって」と、窓を開け、顔を出し、向い側の棟にある児文研部室の窓を見た。 「ドッキリでも仕掛けてるんじゃないのか~?」 しかし、班目自身、本当にそうは思っていなかった。 心が正常を保とうとして、必死の思いで言葉を絞り出す。しかし、語尾が震えている。 班目がロッカーを開けてみると、エロゲーの古本が立てかけられていた。 1冊1冊を取り出して、表紙に目をやっては足下に投げやる。そのうちの1冊を手にしたときに、急に動きが止まった。 「この本は棄てた……いや、春日部さんがボヤ騒ぎで燃やしちゃったハズの本だ!」 汗がダラダラと流れて止まらない。 頭の中で、ホワ●トベースのサイレンが鳴りっぱなしだった。 ゆらゆらと後ずさりする、トン、と軽くテーブルにぶつかり、「はうっ!!」と、うろたえて後ろを振り向いた。 テーブル上のマガヅンが目に入った。奪い取るように手にしてページをめくる。「くじびきアンバランス」を探した。  「だから…」「姉さんの5年間の想いだけは…」「わかって下さい…」  「うん…」 マガヅンを持つ手がわなわなと震え出す。なぜだか、細かい記憶が鮮明によみがえってきた。 班目は、この号のマガヅンを3年前にコンビニで買い、午前中にこのテーブルに置いておいた。その日の午後に読み返した。 そこには田中、久我山、笹原がいて、「第256回 今週のくじアン面白かった会議」を招集した……。 ここで班目の思考は「面白かった会議」の内容を振り返っていた。気持ちが妙に落ち着いてくる。さすが班目である。 「あんときゃアニメ化もしてなかった。あんな出来になるなんて、あの時は思わなかったよなあ」「エロゲー化したらどうなるかって話にまで進んで……その時に……、ん?」 細い目がぐっと見開かれた。 「そうだよ、その日は!」 ガチャ! ドアが開く。 そこには見慣れた奴がいた。 「班目」はいつものように「やあ」と、軽く声をかけたが、瞬間、動きが止まった。 「あれ?」出会った2人は同じ事を考えていた。  知ってる人がいる。  でも何か変だ……いや、変ってもんじゃあない!  いま目の前に立っているのは……  「班目晴信」ッ……俺自身だッッッ! <つづく>
*せんこくげんしけん1 【投稿日 2006/02/27】 **[[せんこくげんしけん]] 合宿から数日が経ったある日の午前。 サークル棟を訪れた荻上は、部室のドアの前に立つ怪しい人影を見かけた。 物陰に隠れて様子をうかがう彼女の位置からは、男の背中しか見えない。背は低い。なで肩で猫背だ。 「何をやってるんだ……」 大野のコスプレ衣装が盗まれそうになった事件を思い出す。当時の犯人像はハッキリしていないので確証はない。 (大野先輩狙いの再犯? あのとき、朽木先輩が顔を覚えてくれていたら!) 笹原に電話しようと思ったが、彼は就職先の研修中であることを思い出す。迷惑は掛けたくない。ふと、笹原の顔が浮かぶ。最近脳内で再生されるのは強気攻めの顔だ。 唇を重ねた感触、肌のぬくもり……。 「いげね!」我に返って口元を押さえる。顔は紅潮しきっている。最近は多方面にワープできるイケナイ体になってしまった。 笹原以外に誰か呼ぶべきか、とも考える。 咲が相当忙しいことは知っている。大野は上野方面にある田中の家に入り浸りなので、すぐに来ることができない。仕事場が近い班目もお昼でないと来ない。朽木は知らない……というより、朽木や恵子が来たら事が悪化しそうで頼れない。 背中から感じる雰囲気では、悪い人ではないかもしれない。荻上は、勇気を振り絞って男の肩を軽く叩いた。 「あの……」 声を掛けたつもりが、その瞬間男の姿は消えていた。 「え、え?」 混乱しつつも、とにかく部室に入ろうとドアノブに手をかけた荻上は、はたと立ち止まった。妙な違和感を感じる……。 「何か」が違うのだ。 荻上が部室の前で怪しい人物を見かけてから約2時間後。時計の針は12時を指していた。 部室の昼間の主は班目である。 彼が訪れた時、部室には誰もいなかった。 「軽井沢の後も、みんなそれぞれに楽しんでいるんだろうなあ」 しかし、社会人である班目はそうはいかない。 コンビニで買ってきた弁当をいそいそと口に運びながら、テーブルの上に無造作に置かれていた最新号のマガヅンを読む。 「くじアンも潮時かなー」「ゆっくり読みてーな、社会人は辛いよ……」 誰もいない部室で独り言を繰り返す。静かすぎるからだ。 「……ま、合宿で遊んだ分は取り返さないとなー」 ここまでしゃべった後、独り言が止まった。 揚げ物をつまんでいた箸の動きも止まった。 沈黙。 遠くのグラウンドの方から、バットがボールを叩く乾いた金属音や掛け声だけが微かに響いてくる。 しばらくして、班目はぽつりと呟いた。 「俺は 遊んだ のか?」 何で参加したのか。何のために一緒について行ったのかを思い起こすと、咲の顔が浮かぶ。 (春日部さんはコーサカに付きっきりだった。そりゃ当たり前のことだ。俺も別にそんな気持ちで参加したわけじゃない……) がぶりを振って、「んなわきゃねーだろ~、ありゃオタクの敵……」と否定する言葉が口をついて出た。 が、それを覆すような記憶がすぐに蘇る。 『あ でもこないだ ちょっと一緒にゲームやったよ』 2人で寿司を食べたときのことが浮かんだ。 また、沈黙。再びグラウンドからの掛け声が小さく聞こえてきた。 過去の出来事がどんどん思い出されてくる。 卒業式でのやりとり。 「イバラの道」を自覚した夜。 行き詰まった同人誌作成会議を仕切ってくれたこと。 選んで金を出した服(=俺自身)を認めてくれたこと。 グーパンチを喰らったときの妙な幸福感。 不意に泣き出してしまったときの焦り。 そこで感じたコーサカとの「差」。 守り通した「最後の砦」。 学園祭の会長コスを見た時の……。 そういえばボヤ騒ぎの時に、初めて体に触れたっけか。拳以外で。 「最初に妙に意識しだしたのはいつだっけ、この部屋で2人だけになったときかな……。あの時はハナ…(略」ずっと1人で呟いている班目。 しかし、さかのぼっていく記憶の中で、ある出来事を思い出した。 『おい高坂』『もう面倒くせえから こいつにはじめてのチューしたれ』 「あの出来事で成り行き上、コーサカが告白することになって……、まさかホントにやるなんて思わなかったもんなぁ、アハハハ」 ふいに笑いが止まる。 「あれ……、あの2人をくっつけたの、お 俺?」 ちょっと動揺した。当時は「乱暴女」としか思っていなかったから何とも思わなかったが、もしあのとき彼女を意識していたら……。 「いやいや、何考てんだ俺!」と叫び、がぶりを振る。 「なんだか、一人で楽しそうだね」 いきなりの声に、現実世界に引き戻され、班目は心臓が止まる思いがした。 いつの間にかテーブルの向い側に、長い間会う事のなかった初代会長の姿があった。 「うおっ!しょっ…初代! ぜんぜん気が付かなかったですよ」 「ずっとブツブツ独り言を言ってたからね君は」 聞かれたか。何かマズイこと言ったっけか。と頭の中で言葉を繰り返す。 「初代、どうして今ここに?」 「“二代目”こそ、卒業してもなぜここに?」 初代は、穏やかな口調で聞き返す。感情を表に出さない瞳から、何を考えているのかは読み取れない。 「班目くん、機会が過ぎたからといって悔やむことはないよ。時は流れ去るものではない。積み重なって今につながる財産だと思った方がいいね」 何のことだろう。思わず席を立ち、初代のそばまで歩み寄る班目。 「初代、いったい……」 「じゃあ僕はこれで……」 いつものように消え去るのか、班目は慌てて会長の肩を掴んだ。 「あ、ちょっと待ってくだ……」 瞬間はなぜか覚えていない。 視界がブラックアウトしたような感覚の後、気が付いた時には、班目は部室前の廊下に1人で立っていた。 「あれ、一緒に出たのか? また消えちゃったよ。初代って何者なんだ?」 しばらく廊下でぼう然としていた班目は、ふと我に帰った。 「あ、いけねぇ、会社に帰らなきゃな!」 部室に入って荷物を取ろうと思い、ドアの正面を見る。 「現代視覚文化研究会」のプレート下に、数年前のゲーム「サムライ・タマシイ勘九郎無法剣」のキャラ、ナコ○ルのピンナップが貼ってあるのに気付いた。 「……おい待てよ……」 最近は、ドアにこの手のもの貼ってはいなかった。 いや、班目が部室を訪れた数十分前も貼ってはいなかったはずなのだ。 混乱を鎮めたいという思いからまわりをキョロキョロと見渡す班目。 隣近所の部室のドア周りに目をやると、303号室「比較文化研究会」、305号室「環太平洋文化同好会」のプレートやポスターが目に付いた。 「……あれ、比較文化研究会は……」 班目は、現視研が自治委員会によって潰されそうになったことを思い出した。 その際、未活動サークルが整理されて、比較文化研究会は別の部屋へと移転していたはずだった。 不安が過る。さらに周りを見回す。 廊下の様子が来たときとまったく違って見える。 「つ、疲れたのかな。早く帰ろう」 部室に入った。しかし、持ってきていた荷物が無い……。 いやそれどころか、部室内も様相が変わっていた。 壁や窓のポスターが古い、最新刊だったはずのテーブル上のマガヅンは3年前のものになっていた。 班目は、「おいおい誰だよ趣味の悪いイタズラしやがって」と、窓を開け、顔を出し、向い側の棟にある児文研部室の窓を見た。 「ドッキリでも仕掛けてるんじゃないのか~?」 しかし、班目自身、本当にそうは思っていなかった。 心が正常を保とうとして、必死の思いで言葉を絞り出す。しかし、語尾が震えている。 班目がロッカーを開けてみると、エロゲーの古本が立てかけられていた。 1冊1冊を取り出して、表紙に目をやっては足下に投げやる。そのうちの1冊を手にしたときに、急に動きが止まった。 「この本は棄てた……いや、春日部さんがボヤ騒ぎで燃やしちゃったハズの本だ!」 汗がダラダラと流れて止まらない。 頭の中で、ホワ●トベースのサイレンが鳴りっぱなしだった。 ゆらゆらと後ずさりする、トン、と軽くテーブルにぶつかり、「はうっ!!」と、うろたえて後ろを振り向いた。 テーブル上のマガヅンが目に入った。奪い取るように手にしてページをめくる。「くじびきアンバランス」を探した。  「だから…」「姉さんの5年間の想いだけは…」「わかって下さい…」  「うん…」 マガヅンを持つ手がわなわなと震え出す。なぜだか、細かい記憶が鮮明によみがえってきた。 班目は、この号のマガヅンを3年前にコンビニで買い、午前中にこのテーブルに置いておいた。その日の午後に読み返した。 そこには田中、久我山、笹原がいて、「第256回 今週のくじアン面白かった会議」を招集した……。 ここで班目の思考は「面白かった会議」の内容を振り返っていた。気持ちが妙に落ち着いてくる。さすが班目である。 「あんときゃアニメ化もしてなかった。あんな出来になるなんて、あの時は思わなかったよなあ」「エロゲー化したらどうなるかって話にまで進んで……その時に……、ん?」 細い目がぐっと見開かれた。 「そうだよ、その日は!」 ガチャ! ドアが開く。 そこには見慣れた奴がいた。 「班目」はいつものように「やあ」と、軽く声をかけたが、瞬間、動きが止まった。 「あれ?」出会った2人は同じ事を考えていた。  知ってる人がいる。  でも何か変だ……いや、変ってもんじゃあない!  いま目の前に立っているのは……  「班目晴信」ッ……俺自身だッッッ! <つづく> <次回予告> 「歴史は俺たちに、何をさせようとしているのか!」 2005年就職後の班目が、2002年のギラついた班目と対峙する! 次回、第二部「オタク超時空決戦 マダラメ対マダラメ」に、ご期待ください。 「班目のマネはアブないから、マネしないように生きようね!」

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