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笹原きょうだい - (2006/03/27 (月) 00:32:24) のソース

*笹原きょうだい 【投稿日 2006/03/19】
**[[カテゴリー-その他>http://www7.atwiki.jp/genshikenss/pages/52.html]]

それはまだ二人が幼かった頃の出来事。 

朝食の後片付けをすませて玄関に向かう笹原に、後ろから恵子が忍び寄る。 
「お兄ちゃん」 
「何だ」 
猫なで声に嫌な予感を感じてぶっきらぼうに返す。 
「自転車乗せて?」 
「いやだ」 
即答。取り付く島もない態度に恵子は頬を膨らませる。 
「えー、いいじゃない」 
「自分のに乗れよ」 
「学校に置いてきちゃった」 
一言文句を言ってやろうと振り返ると、全然反省も後悔もしていないような満面の笑み。 
大げさにため息をつくと、笹原は無言で登校の準備をする。 
じー。視線を感じるが、無視する。 
じじー。さすがに鬱陶しくなるが、まだ無視する。 
じじじー。笹原の動きが止まる。 
「わかったよ!後ろに乗れ!」 
「ありがと、お兄ちゃん!」 
恵子の勝ち。 

二人を乗せた自転車が道を駈ける。 
日差しは暖かくても、風はまだ少し冷たい。 
「アハハ、気持ちいー!」 
後ろに乗った恵子がはしゃぐ。 
「黙って乗ってろ!」 
少し息を荒くした笹原が後ろを向いて文句を言う。 
「えー、もう疲れたのー?毎日テレビやマンガやゲームばっかやってるからだよー。少しは鍛えたらー?」 
「…」 
図星を指されて沈黙する笹原。 
「それ行けー!もっと速く、もっともっと!」 
「無茶言うな!!」 
笹原は怒鳴り返しながらも足に力を込める。 
自転車は加速して二人を運ぶ。 

「ありがとー、お兄ちゃん!じゃあねー!」 
息を切らせ言葉も無い笹原を尻目に、恵子は足取りも軽く教室へ向かう。 
とりあえず息を整え、ふと気が付くと自分に集まるたくさんの好奇の視線。 
笹原は全速力で逃げ出した。 
(二度と、絶対に、金輪際こんなことしない!冗談じゃない!) 
固く心に誓いながら。 

…このささやかな出来事は、ちょっとした波紋を呼び、校則に「自転車での送迎禁止」という項目を付け加える事になったとさ。 

それはまだ二人が幼かった日々の出来事。