国会質疑 > 国籍法 > 11

国会での審議の中継


白眞勲議員/民主党所属(参議院法務委員会(2008/11/27))

白眞勲 - Wikipedia
○白眞勲君 民主党の白眞勲でございます。
 この法案を審査するに当たりまして、私は、この法律の改正自体というものは、国籍って一体何なのと、国籍自体の在り方とかあるいは考え方、さらには婚姻、結婚についての認識の変化というものがやはり根底にあるような気がしているわけなんですね。特に現在、日本には二百万人以上の外国籍の住民が居住しているわけですし、また、この前新聞に出ていて私びっくりしたんですけれども、今生まれてくる赤ちゃんの両親のうちのどちらかが外国人の親だというのが三十人に一人になっていると、こういう、実際、現実があるわけなんですね。
 そういう考え方からしますと、今回の判決というのは言わば現実を見据えた判決とも言えなくはないんじゃないんだろうかというふうにも私は思えるんですけれども。つまり、日本の国際化とともに、この国にいる外国人とどう付き合っていくのかということもそろそろ真剣に議論していかなければならない時期に来ているんではないかというふうに思っております。

日本にいる外国人とどう付き合っていくか?

 そこで、大臣にまずお聞きしたいんですけれども、この国籍法を改正するに当たりまして、日本における外国人とどのように付き合っていくのかということも併せて考えていかなければならない。つまり、当たり前のように隣に外国人がいる国にもう日本というのはなっているんではないんだろうかという中で、外国人に対する政策をどうするのかという基本的な問題もそろそろ認識していかなければいけないんではないんだろうか。この国における外国人政策って一体どうしていくんだ、外国人に対してどう接していくんだということもそろそろ、もちろん考えてはいるんだろうけれども、より真剣に考えていく必要性もあるんではないかと思うんですけれども。この我が国の法律に従って住んでいる外国人と共生していくことこそ、というのが私はこの国の国益にもなるというふうに思っているんですけれども、その辺のまず大臣としての認識をお聞きしたいと思います。

○国務大臣(森英介君) 私も白委員と全く認識を共有するものでございますけれども、まず、そういう日本の法律に従った在留資格のある外国人につきましては、彼らがより日本で住みやすいように、また不当な差別がないように、そういった環境条件をつくっていくことが日本政府としても肝要だろうというふうに思います。一方で、不法滞在の外国人も随分といるものですから、こちらにつきましては今年度末に半減計画ということで今対処しているところでございまして、やっぱりそういった不法滞在者についてはなるべく出ていっていただくと、こういうことでございます。
 もっと、将来的には外国人をどういうふうに日本で受け入れていくかということは、移民政策と申しますかそういったことは、私自身は、私見を申し上げるならば、やっぱり余り無制限なというか、余り、何といいましょうか、開放的に受け入れるということにはいささか消極的なものでございますけれども、いずれにしても、そういった移民政策あるいは難民政策とかそういったことについては国民的な議論を深めていくことが大事だと思いますので、国会の場においても大いに議論をさせていただきたいと思います。

○白眞勲君 まさに大臣おっしゃるとおりだと思うんですね。やはりめり張りの利いた、外国人の人たちとどうこの国で共生をしていくか。つまり、もう法律違反してここに住んでいる人たちというのは、これは出ていってもらうと、これは当たり前だと私は思っているんですね。ですから、それも法律に従ってきちっと。しかし、ここできちっといわゆる外国籍の住民として生活している人たちに対しては、どう差別的な対応をしないでいかにこの国で住みやすく生活してもらうかということも重要な位置付けだと。
 そういう観点からすると、移民政策をどうしていくんだとかいうことも、国民的な議論として、外国人だから気に食わないから出ていけとかそういう話じゃなくて、どうしていったらいいのという部分の議論というのはこれから本当に私はもっともっと活発化させていかなければいけない、そういうふうにも思っているわけなんですが。

重国籍容認と外国人参政権について

 そこで、事務方の方で結構ですが、ちょっとお聞きしたいんですけれども。現在、先進国、つまりOECD加盟国において、いわゆる重国籍を認めず、さらには、いわゆる血統主義ではなくて生地主義というんでしょうか、で、なおかつ永住外国人の地方参政権を認めていない国は何か国あるのか、お話しいただきたいと思います。

○政府参考人(倉吉敬君) 実は、地方参政権については当省の所管ではございませんので調べておりません。私も、EU諸国においては、EU諸国相互では地方参政権を認めるというような話があるということは聞いたことはありますが、定かな情報ではございませんので、ここでは差し控えさせていただきたいと思いますが。
 なお、諸外国の中で、原則として血統主義を採用し、出生における重国籍を基本的に容認していない国としてはドイツ、ルクセンブルク、中国、韓国、インドネシア、ベトナムがございます。それから、原則として血統主義を採用し、帰化により外国国籍を取得した場合には自国の国籍を保持することはできないと、こういうふうに定めている国はデンマーク、ノルウェー、韓国、インドネシア、ベトナムがございます。

○白眞勲君 私はいわゆる出生地主義を採用しろということを言うつもりは全然ないんですけれども、ただ、今いろいろな話がありましたけれども、諸外国も少子高齢化が進行する中、実際流入してくる外国人とどう付き合っていくのかということを考えて、結局その実情をある程度受け入れながら、また悩んでいる、そして手直しをしながら共生の道を歩んでいるような気が私はしているんですね、それは日本も例外ではないと思うんですけれども。もちろん、その国にはその国の実情に合わせて絶えず変化していかなければならないわけですし、日本も歴史的に見た場合には、多くの外国人を受け入れて、それをうまく活用しながらこの国の活力をもって発展してきたという歴史も私はあると思うんですけれども。
 そういう観点からすると、もう一度ちょっと大臣にお聞きしたいんですけれども、そういう外国人の、こっちにいる外国人、つまり住んでいる外国人、それも、ちゃんと法律に従って住んでいる外国の人たちといかに共生していくかという部分においては大臣はどういうふうにお考えになっているんでしょうか、それをお聞きしたいと思います。

○国務大臣(森英介君) 外国人が日本に住もうと思っていただくというのは、これはやっぱり日本がいい国だからにほかならないわけでございまして、そういう外国人が多いということは日本としては歓迎すべきことだと思います。したがって、先ほど申し上げましたように、ちゃんと法律に従って在留資格を持って日本で生活していただく外国人の方には、それはやっぱりなるべくコンフォタブルに、かつ日本人と同様に過ごしていただくのが望ましいと考えます。
 もちろん、私どもも、これは島国ですからね、日本は、どうしても閉鎖的になりがちですから、やっぱりそういう日本にいる外国人の方を通じて世界を知るということも大切でしょうから、そういった意味において、やっぱり日本における外国人とのお付き合いというのは極めて大切なことであるという認識を持っております。

偽装認知のリスクの法務省の見通し

○白眞勲君 ここで今回の国籍法について、改正のポイントの一つについてちょっとお聞きをしたいと思うんですけれども、恐らくここにおられる委員の皆さんも、この法案には基本的には賛成だけれども、いわゆる偽装認知について心配をしていることの部分があるんではないんだろうかというふうにも思います。
 実際今までの議論を聞いていまして、これ法務省にお聞きしたいんですけれども、いわゆる偽装認知、簡単に言えば、そのリスクってどれぐらいあるんだということなんですね。それについてどういう判断を今法務省としてされているのか、まずお聞きしたいと思います。

○政府参考人(倉吉敬君) これまでは届出によって国籍を取得する人というのは、認知を受けた上で、日本人の男性から認知を受けた上で、それでその父と外国人女性である母親が結婚していることが要件でございました。仮にこれを偽装しようといたしますと、偽装の認知届を作ってうまくやって、しかも婚姻も偽装しなければいけないと、二重に偽装しなければならないということになります。
 今度は、婚姻は要らないよということになるので認知だけになりますから、抽象的には偽装認知で国籍を取得するということがやりやすくなってくると。そういう意味では偽装認知対策が必要だ、偽装認知があり得るという懸念が生ずると、こういうふうに考えております。

○白眞勲君 やはり偽装認知の懸念が生じるということを法務省自身も認めて、その対策をするんだということもお話は聞いているんですけれども、じゃここで、私、今日は本当、実は法務委員会は今日初めてこうやって質問に立たさせていただいて、驚いたのは、本当に多くの弁護士の皆さんがいらっしゃって、非常に専門的な、さっきも民法九百条とか言われても私は何だろうということで分からなかったところもあるんですが、ちょっと素人的な考えかもしれません、認知って何というところから私ちょっと聞いてみたいなと。これは本当、本質的な問題だと思うんですね。

「好意認知」と「偽装認知」の関係について

 例えば日本人同士の場合、女性の子が父となる人との血縁関係がなくても男性が認知している例もあると聞いたんですけれども、その辺り一体どうなっているんでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) それは昔からあるということが言われておりまして、極端なことを言うと、弟が何かほかの女性と子供をつくっちゃったと。それで、弟の子供だということになるといろいろまずいからお兄さんが認知してしまって、そして自分の子供として育てるとか、そういうことはあったんだと聞いております。
 それで、生物学上の父子関係がなければ、たとえ認知すると認めても理論的にはその認知は無効であります。しかし、そういう日本人同士の今のケースでいけば、家族もみんな分かっている、で、そのお兄さんがちゃんと育てている、弟もそれを認めて、みんなそれで相続でももめないということでだれも異議を唱えなければ、親子関係不存在だとかそんなことを、訴訟を起こすということを言わなければ、そのまま円満にいってしまう。そんなことについてまで国家権力が介入していって、おまえ、この認知おかしいじゃないかと、そんなことは言わないということでございます。
 これが事実上、今までの親子法制としてやられていた面はあると。それが望ましいかどうかというのはまた別のいろんな考え方があろうかと思いますが。

○白眞勲君 そうしますと、今回の件において、この国籍取得をするしない、これはちょっと別問題としまして、認知するという時点では外国人でも同様のケースが生じる可能性があるということですね。

○政府参考人(倉吉敬君) まさにそのとおりでございまして、よく好意認知という言い方をするんですが、外国人の女性が既に子供がいると、自分の子供ではないと分かっているけれども、分かっているけれども自分の子供として育てたいと、その愛する女性と一緒に育てたいというようなことがあり得るわけです。そのときに認知をするという例はあるということは聞いております。ごくわずかだと思いますが、もちろん。

○白眞勲君 つまり、その女性が外国人の場合でも同様のケースがあるということを聞いていらっしゃるということでよろしいですね。

○政府参考人(倉吉敬君) はい、そのとおりでございます。

○白眞勲君 そうしますと、認知された子が国籍取得の今度は届出を出す際に、法務局等に対して出すわけですよね、届出を。で、今までの御答弁では、相当厳格に認知に至る経過などを確認するということなんですよね。
 そうすると、ちょっとその辺りで、今言った、そのいわゆる好意的な認知があるんだということになりますと、本人は、いや、もういいんだよ、認知なんだと、好意的なんだけど認知なんだよといった場合に、いや、あんたたち、これ親子関係じゃないでしょう、本当の血縁関係じゃないでしょうといって国籍を出さないということになってしまうんでしょうか。その辺はどうでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) もし法務局の調査により血縁上の父子関係がないということが分かれば、国籍を与えるわけにはいきません。で、ここからでございます。そういうときにどうすればいいんだと、こういうことでございますが、そのお父さんは日本人として育てたいということを考えているんでしょう。それで、法務局としては、そういうことが分かった場合には、あなた、これは駄目なんだ、国籍を与えるわけにはいかないと、だから国籍取得証明書なんというのは出しません、国籍は与えられないという通知を出しますが、これは養子縁組しなければ駄目ですよと、こういうことを言います。そうして、本当の自分のお子さんにしたいんだったら養子縁組をしてくださいと、そして恐らく多くの人はそれに従うだろうと思います。
 実は、先ほどそういう例があるということをお話ししましたが、過去の例で、まだこの三条一項の届出の事例、現行法の届出の事例ですが、御本人の方から、実は自分の子供じゃないんだけど認知したんだよねと、こう言ってしまうというようなケースもあるんですね。そういうときはもう必ず、それは駄目ですよと、養子縁組をしてくださいということを言うというようにしております。

○白眞勲君 そうしますと今度は、今までの御答弁ですと、いわゆる相当厳格に認知に至る経過を調べるんですよ、国籍の取得の届出をする際にと。要するに、それは調べるというのは何を調べるかというと、いわゆる本当に血縁関係があるかどうかを調べるという、その一点ですよね、つまり認知という部分においては。それ、ちょっとお聞きします。

○政府参考人(倉吉敬君) もちろん、国籍取得の場面でやるのは、血縁上の父子関係があるかという、その一点でございます。

法務事務官との面接

○白眞勲君 そうすると、いわゆる法務事務官の方が国籍取得の際にいろいろヒアリングをするということで、今までの書類上のものとかいろいろなものを調べるという作業をして、今までは国籍を与えるかどうかをある意味事務官の方である程度の書類をそろえていくという作業をしていらっしゃったと思います。
 いや、実は私も父親が韓国籍で母親は日本籍でしたから、一九五八年生まれですから、当時は私の父親の国籍に自動的に入って韓国籍だったんですね。それで、その後、日本国籍を取得する際に法務事務官の方と、実際私も面接を受けまして、それで国籍取得をしたわけですから、その法務事務官の方、よく知っていると言っちゃなんですけど、本当に一生懸命やっているなというのが実感としてあったわけなんですね。非常に優秀ですよ。これプロとして優秀な方々が本当おそろいだなと思って、本当これは私、立派だなと思って、こういう作業をされている方もいるんだなということを思ったんですが。
 今回、そうはいっても、法務事務官さんが幾ら面接をしろと言っても、この認知という部分だけの認識、つまり血縁関係をどう判断するのかというのは、同居の有無とか扶養しているかどうかというのは別に関係ないんじゃないかというふうに思えるんですね。これは、判断材料とは血縁関係だけで、だけって言っちゃいけない、まあそれが重要な要素、重要って、それだけだということであるならば、扶養だとか一緒に住んでいるとかなんとかという、これは幾ら法務事務官が優秀でも、いや、していないって言われたらどうにもならないんじゃない、でも血縁関係あるんだよって言われたらどうにもならないんじゃないかなと思うんですが、その辺どうなんでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) まず、先ほどの答弁をちょっと訂正させてください。血縁関係一本だと言いましたが、それだけではありませんで、もちろん、虚偽の認知かどうかというのを見るのと、三条一項の要件を審査いたしますので、本当に二十歳未満であるかとか、そういう審査はもちろんいたします。そこを訂正させていただきます。
 その上で今の御質問ですが、もちろんです。普通は、ちゃんと認知してその子供を一緒に育てようとしているんだったら扶養していることが多いだろう、あるいは同居していることが多いだろうという観点から聴くわけです。それで、扶養料もらっていますかとか一緒に生活していますかと聴きます。すると、いえ、そんなことしていません、えっ、どうしてですかと聴くわけです。そして、いや、それはこういう事情があってといろんなことを御説明されるだろうと思います。その中で、事務官が今までの自分の知識と経験に照らしてこう言っているうちにだんだんしどろもどろになっていくな、そういうところからおかしいなと疑念を抱くと。そういうところを見ていこうとしているわけでございます。
 もちろん、事情を聴くだけではなくて、いろんな客観的な公的な書類、それは、外国で生まれたお子さんだったら外国でのいろんな書類とかそういったものも出していただきます。そして、そういったものを見ながら御本人の供述を聴き、そしてその御本人が言っていることと客観的な書類とが、日時とかなんとかが符合しないなとか、そういうことがあればそれを聴いていく。
 もちろん、関係者が遠くにいるというようなことであれば、そこまでお宅にお邪魔して聴きたいと思っていますし、父親がこの国籍取得届の届出人ではないということがむしろ多いわけでございます、法定代理人は母親ということが多いもんですから、そのときは父親にも協力を求めていろいろ事情を聴いていこうと。そういうことを総合してやっていこうということでございます。
 それで、法務事務官、優秀だと。非常にありがとうございます。やっぱりいろんな研修を積んでおりまして、仕事の上でも、帰化の手続とかいろんなことをやりながら、いろんなことを、知識、経験がございます。そういうことを踏まえてフルにやっていこうということで、我々組織全体懸けてこのことをきちんとやり遂げていこうと思っております。

日本人男性が嘘をついていた場合に偽装認知を見破れるか?

○白眞勲君 今局長さんがおっしゃった部分というのは本当にそうだと思うんですけれども、いろいろな様々な私はケースが、今回もいろいろな認知から国籍取得に至る経過であるんではないかなという中で、私が心配しているのは、今おっしゃったように、いわゆる相当優秀だとしても、面接調査やあるいは事情を聴いて、具体的に出ている書面と話していることが矛盾していないかとか、あるいは関係機関からのいろいろな収集した資料と矛盾はないかと、これ御答弁でそうおっしゃって、今も同じようなことをおっしゃったんですけれども、これ、当たり前の通常業務でやっているというその法務事務官の皆さんが大丈夫だと強調もしていらっしゃるんですけれども、今回の国籍取得というのは赤ちゃんだけの場合もあるわけですよね、赤ちゃんが国籍取得の対象者であると。
 例えば、こういう例もあるかもしれないという例で言うと、例えば日本人の男性が一回だけ外国人女性と会って意気投合してこの赤ちゃんが生まれたんだと、それで、それ以降もう会っていないといった場合に、これ、事務官は正しい判断下せますか。ただ、本当に血縁関係があるということだってないとは言えないと思うんですけれども、その場合、事務官としては、これ、正しい判断下しようがないんじゃないかというふうな、私はそういう感じもするんですけれども、それどうでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) それは、おっしゃることは一般論としては非常によく分かります。同じようなことは裁判の場面でもいろいろ起こるんですね。裁判所の事実認定というのも似たようなところがございます、こんなことがあり得るだろうかどうだろうかと。でも、両方の言い分を聴いていると、あっ、やっぱりこういうこともあるかなと。これはもう経験的なものでして、何とも言えませんが、その中でおかしいと感じるものが出てくれば、そこでいろいろ聴いていくと。
 確かに、委員おっしゃるように、一回こっきりのことでできたんだよといって、それでも、じゃ何でそれで日本国籍の届出までするんだろうと。どういうふうに育てようと思っているんですかとか、それはいろんなことを聴けるわけで、そこは、その場合だって、ぴしゃっと全部一〇〇%分かりますなんて断言するつもりはもちろんございませんが、そもそも世の中の起こったことの事実認定というのはそういうものだと思っております。

○白眞勲君 いや、私は心配しているのは、世の中そういうものだって言われたらそのまま、何というんでしょうね、それ以上先へ進まなくなっちゃう部分が私はあると思うんですけれども。
 私が気にしているのは、その法務事務官の皆様に過度な負担を与えるんではないんだろうかということなんですよ。これはやっぱり非常に大きい問題だと私は思うんですね。本当にこの赤ちゃんが、お子さんが本当にそのお子さんだった場合に、これ、この判断を下すというのは非常に重い判断だと私は思うんですね。
 今いろいろな、本当にもうそうだという、ほぼ間違いないだろうという人もいるだろうけれども、そういう場合に、事務官の皆様のやっぱり過度な負担というのがあると果たしてどうなるんだという部分が私は心配。いや、それは心配に及びませんよ、そんな、それが仕事ですからと言われたらそれまでかもしらぬけれども、それはどうなんでしょうかね。

○政府参考人(倉吉敬君) 大変つらい重い問いかけでございまして、それは、個々の事務官はケースによって非常に苦労するというケースがあるだろうということは、もうもちろん承知しております。

任意でのDNA鑑定を入れれば、法務事務官の負担も減るのでは?

○白眞勲君 やはり非常に国籍取得というのはその方の、その子の、お子さんの人生にもう大きな影響を及ぼす、まさにもう転換点にもなりかねないという大きな判断であるというものを認識して法務事務官の方もやっていらっしゃるとは思いますけれども、だったら、だったらやっぱり任意でDNA鑑定、強制じゃなくてDNA鑑定をもしその方が書類で持ってきてもらえば、よりその辺はクリアになるんではないんだろうかという部分において、こっちの方がよっぽどすっきりしているんじゃないかなという感じもしなくはないんですけれども、その辺はどういうふうに御認識されていますか。

○政府参考人(倉吉敬君) DNA鑑定を入れるべきだという御意見はいろんなところで伺っておりまして、その御意見もよく私ども分かるわけでございます。
 しかし、まず一般論なんですが、DNA鑑定を取り入れるということは、今任意でというお話なんでそれはちょっとおいておきまして、取り入れるということは家族法の体系と相入れないのではないかという、そこはどうしても引っかかるわけでございます。
 例えば、それまで築かれてきた親子関係それから家族関係をいつでもDNA鑑定ぽんと出ちゃうとひっくり返せるということになりますと、今民法に嫡出推定の規定とございます。あれは何であんな規定を置いているかというと、婚姻期間中に生まれた子供というのは、実際は分からないけれども、その御夫婦の子供だと推定するということによって、子供が生まれたときから子供の地位を安定させ、そこで確定させようとしているわけです。だから、それを覆すには裁判手続によらないと大変ですよとしている。それが、ある日どこかでDNAの紙が出て、あれが行政機関に届け出られてぽんぽんぽんとなったら、あっ、親子じゃなかったんだよねなんてなるようなことになってはいけないと。心配し過ぎだと言われる方もあるんですが、そういう風潮になってはいけないと、こう思っているわけでございます。
 さらに、今のは私は主として法務局に国籍取得届が出てきた場合のことをお話ししましたが、認知そのものということになれば、一般論としてですよ、最初の市区町村に認知届をするときにやっぱりDNAを入れないとおかしいんじゃないのという議論にはなってくるだろうと思うんですね。もし、それをやるということになりますと、外国国籍の子を認知する場合にはDNAが要るというようなことになりかねません。そうすると、それは新たな差別を生むというような議論にならないかとか、それからDNA鑑定には相当の費用も掛かる、そのような負担が掛かるということで日本の国籍を取得する機会を奪われる人が出てこないかと、こういうことも問題になろうかと思います。
 そこで、確かに、DNA鑑定が任意に出たらいいじゃないかというお話でございますけれども、それは、それでそのDNA鑑定が絶対間違いないということであれば事務官は楽だろうなと思います。でも、任意にそれが出てきたら、それがやっぱり本当かなということを考えざるを得ません。本当かなということを考えるためには何をするかというと、やっぱりいろんな書類を見て、事情を聴いて、そしていろいろ聴いて、あっ、この人はもう大丈夫そうだなと、だったら、このDNA鑑定も確かにお父さんと子供が業者のところに行ってちゃんと検体を渡してやったんだろうなと認定できると、こういうものではないかと思っているわけでございます。

○白眞勲君 今局長さんから、外国人だからといって差別するわけにいかぬじゃないかと、DNA鑑定を外国人のみに課すわけにはいかぬじゃないかという話なんです。まあこれは、お言葉ですがと言っちゃいけないのかもしれませんけれども、だったら指紋ですね、入国のときの指紋なんかも外国人だけに課すのは差別じゃないかというふうにも思えなくはないんですね。それはやっぱり個人情報ですよ、究極の個人情報ですよ、指紋も。
 ですから、そういう部分においては、こっちでは何か、いや、これも差別だよと、で、こっちは大変だということ、いや、これはいいんだということというのはどうなのかなという、これは今日の話とはちょっと話が違いますけれども、やはり論理的に考えた場合には、じゃ、そっちはどうなんだというふうにもなりかねない部分が私は御答弁の中にあるんではないのかなというふうに思うんですね。

法務省が認定したDNAの鑑定機関でやれば、市町村の負担も減るのでは?

 また、今おっしゃった中に、恐らく父子関係の、科学的な証明だけで親子関係を決めるといった誤った風潮になっちゃいかぬじゃないかというお話だと思うんですね。
 もう一つ、市町村の問題もあったんですが、その市町村の問題で、窓口でということであるかもしれませんけれども、例えば任意で、私もう一度、何かくどいようで申し訳ないけれども、任意で鑑定結果を出していただくと。それも、例えば、これ今後の課題でしょうけれども、法務省が認定したDNAの鑑定機関みたいなところでやるならば、ある程度その辺は市町村の負担なんかも減るんではないんだろうかということもあり得るんではないんだろうか、今後の課題として。その辺については、大臣、どうでしょうか。大臣、ずっと腕組んで考えていらっしゃるので、ちょっと一回この辺でお答えいただきたいと思うんですが、どうでしょうか。

○国務大臣(森英介君) 今局長から御答弁したことが基本的なところだと思いますけれども、これは、やはり私どもの家族においても、別にDNA鑑定してこの子供が我が子だと思っているわけじゃなくて、女の人は自分の子だ、確かに自分の子供だって分かるでしょうけれども、男は分からないわけですね。だから、そういったことで、うちの子供なんかも、お父さん似ですねと言われるので、ああ、やっぱりおれの子供かなと、こう思ったりするわけですけれども、いずれにしても、そういったやっぱりお互いの合意みたいなことで家族が成り立っているんだと思うんですね。
 ただ、この場合は、国籍を付与するという特別な条件下ですので、やはりそれなりに法務局においていろいろな聞き合わせをして、血統主義にものっとっているということを確認した上で国籍を付与するということですから、私は、若干そういうお互いの合意に基づいた、要するに、民法は必ずしも親子関係というのは生物学的親子じゃないということと、それから血統主義のその微妙なところですから、私はこの法律で定めているところが割合程々なんじゃないかと思っているんです。それで、それは、何というか、疑いを持てばどこまでも疑えるけれども、白委員も私も元々工学部の出身ですけれども、科学が万能じゃないということは私どもはよく分かっているわけですから、私はやっぱり、DNA鑑定ということを任意にしても持ち込むということは私自身はちょっと余り賛成しかねるところでございます。

○白眞勲君 大臣の認識というのも私も同じ、共通認識な部分が私はあると思うんですね。
 ただ、もう一つポイントになるのが、法務事務官の方がいろいろお聴きになるという部分、これも非常に微妙な部分があるんじゃないのかなというのも、私、逆に感じるときがありまして、相当詳しく、場合によっては相当プライバシーに関する事項なども当然聴かざるを得ないんだと思うんですね。機微な部分、そういったものも聴かなければならない。聴く側も、別に聴きたくもない話だと思うけれども、やっぱり仕事柄聴かなきゃいけないけれども、聴かれる方も、何でそこまで聴くのというふうに不快な気分を味わう部分もあるかもしれないんですね。
 もちろん、プライバシーという部分では、法務事務官の方は本当にこれは口の固い方々だなという感じは私は印象として持っておりますから、その辺は大丈夫だと思うんですけれども、ただ、それだったらば、もう何でもかんでも聴いてほしくないんだったら、DNA鑑定とか何かで科学的に証明されたデータだったらそこまで聴かなくたってぽんと分かるんだったらそれでも、今は裁判の部分においてはそういったこともある程度取り入れられているというんであるならば、そういったこともよっぽどいいんじゃないかというふうにも思えなくはないんですね。

認知の段階ではなく、国籍付与の段階でDNA鑑定を入れれば上手くいくのでは?

 もちろん、DNAというのは、私、本当に今おっしゃったように、家族って何だというところにまで行っちゃうんでやるべきじゃないんですけれども、ただ外国人、いわゆる家族の、何というんでしょうね、つまり外国人が日本国籍を取得するための必要な書類、つまり認知の届出でDNA鑑定をしろというんじゃなくて、もう一段階、つまり国籍を取得するときの届出の際にそういった書類があったら割とすんなりいくんだけどなみたいな部分の考え方というのもあるんじゃないかなというふうにも思えなくはないんですけれども、その辺は局長さんとしてどうでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) 大変よく分かります。それで、DNA鑑定が出たらそれでいいんだということになれば、恐らく全国の法務局の職員は楽だと思います。しかし、楽しちゃいけない仕事だと思っているんです。どうしてもDNA鑑定で、それはうそついているかもしれないんです、検体をすり替えているかもしれない、あるいはいろんなことがあるかもしれないと。そうすると、それが出たからといって、じゃ、後の調査をしなくていいということにはやっぱりどうしてもならないので、それじゃ、どういう経緯でこうなったのかというようなことはやっぱり聴かざるを得ないということになるだろうなと思います。
 ですから、任意でDNA鑑定書が出たとき、それを突き返すと言っているわけじゃありません。それは見させてもらいますが、やっぱり一応の認定作業というのはやらざるを得ない。その間で、むしろそれを受ける方が非常に不快な思いをする、DNA鑑定の方がよっぽど楽でいいよということを言われるかもしれませんが、やっぱりどうしても細かいことを聴かれたくないんだとすると、それは純粋にプライバシーで知られたくないということなのか、本当に知られては困ることがあるのかということもございますので、一応は今のやり方を考えております。
 もちろん、衆議院の法務委員会で、施行後の附帯状況を踏まえて科学的な証明方法の導入について要否と当否を検討しろと言われていることは重く受け止めておりまして、今後の状況を見て、それは真摯に検討しなければならないと思っております。

認知に伴う扶養義務がある事を申請書類に明記する事による偽装認知抑止効果

○白眞勲君 認知というのは、まあ今日はずっと認知って何という話になっちゃったんですけれども、扶養の義務があり、そして遺産相続の際に第一順位の相続人になるというものである。そして、なおかつ、一度認知してしまったら取り消すことができない制度だということ。私、これ、一般の方々は知らないんじゃないかと思うんですね、特に最後の取消しできないというところですね。
 ここでちょっとお聞きしたいんですけれども、いわゆる役所で認知の届出があった際に、役所はそういったことを説明していますか。

○政府参考人(倉吉敬君) 常にしているわけではないと思います。ただ、認知ってこういうものですよということは、相手を見ながら説明するということはあるわけで、そのときには委員が御指摘のようなことも話している場合もあるだろうとは思っております。

○白眞勲君 結婚の場合は離婚はできるわけですよね。一回結婚したら二度と取消しできないということはない。そういう役所に届出というのは、住民登録でも引っ越すときにはいつでも変えられるというか、そういうこともできるし、名前だって場合によっては変えることもできるし。要するに、届出というのは変える届出をするんだという考え方でやると、一般の人って認知を取り消すこともできるんじゃないかというふうに安易に考える、特に私は、偽装認知をしようとする人たちというのはその部分が本当に認識しているのかなというのは私はあると思うんですよ。
 ですから、例えばの話ですけれども、認知の届出をする人には、例えばその認知の届出の用紙とか何かに認知というのはこういうものですよということをちゃんと書いておく。それによって、本当に自分が、この子は自分の子だと思えば取消しなんかしっこないわけだから、ああ認知、当たり前だと思ってやってくれると思うんですよ、私は。何かそこに偽装とか何かの考えがあるとやっぱり、取消し、えっ、できないのといってそこでちょっとひるむというかね、後ずさりするような。あっ、そういうものなんだということを何かこれから分かってもらうような形によっての抑止効果というのも私はありじゃないかなというふうに思っておるんですね。
 これについて、法務省としてどうでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) 本当に違法に国籍を取得してやろうというワルがそんなことを考えるかなという、たじろぐかなというところはちょっとあろうかとは思いますが、ただ、御指摘の点はなるほどと思うところも多いわけでございまして。ただ、今の市町村の窓口でいろんな仕事をしています。そんなときに一々そういう説明をする余裕があるかなというようなことも、対応の余裕ということも考えなきゃいけないと思いますが。
 そういうことで、可能かどうかということも含めまして、ちょっと慎重に検討させていただきたいと思います。

○白眞勲君 いや、本当のワルは自分で認知はしないんですよ。ワルがだれかに金出して、いわゆる何の知識と言っちゃ失礼な言い方かもしれないですけれども、そういったことに対しての関心のない人たちに、おいよっていうふうにやってもらうわけですから、そういう面でいうと、何というんですか、そのワルの先にある人たちに対してどうなんだというところでストップ掛けるということも私は一つの案だというふうに思います。
 もちろん、お役所のいろんな煩雑なことになるというのをどういうふうにするか。それは、でも逆に言えば手間、手間といえば法務事務官の手間のことを考えたらそれも一つの手間ですから、私はそういったことも一つのアイデアとして考えていただいてもいいんじゃないかなと思うんですが、大臣、どうでしょうか、その辺について。

○国務大臣(森英介君) 非常に重要な御指摘というか、傾聴に値する御意見だと思います。

○白眞勲君 私は、これ別に外国人の子供の親の認知だからというよりも、やっぱり認知というものというのはそういう責任が伴うものなんだと、子供の扶養だとかあるいは遺産相続の際にもそうなんですよということをやっぱり知るということも必要だと思う。これは日本人自身も知るということ、僕は必要だと思っているんですね。
 そういった観点からすると、認知というものがこうなんだよ、特に今家族制度がこうなっている、ああなっているという中で、認知というものについてのやはり一般的な認知ですね、それこそ。私は、この認知というのをグーグルとかヤフーで調べてみたら、認知症とかあっちの方ばっかりになっちゃうんですよ。認知と子供とやっても、なかなか法的な子供を認知する方じゃない方の、認知症とか、そっちの方の認知になっちゃっていたり。なかなか一般の国民にはその辺の考え方をもう少しやっぱり認知させることも必要なんじゃないかなというふうに思いまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

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最終更新:2009年01月09日 06:48
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