国会質疑 > 国籍法 > 05

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国籍法改正案 質疑 民主党石関議員 法務委員会
http://www.nicovideo.jp/watch/sm5282200

衆議院・法務委員会(2008/11/18)/石関貴史議員(民主党所属)

石関貴史 - Wikipedia
○石関委員 民主党の石関貴史です。

 今、同僚の古本委員からの質問にもありましたけれども、だれが国民なのかということ、私は何人なのかというのは、ある意味、言語と同じように、国家とそれから国民や個人の根幹にかかわることですので、これはやはり大変な重要法案だというふうに私は認識をしております。

 古本委員おっしゃったように、もう少し慎重に、時間もとりつつやってもらいたいなというのが私の気持ちではございますが、とはいえ、稲田委員初め、さまざまな疑問や質疑がなされてまいりました。法改正がされるということを前提にすれば、ぜひ、大口委員もおっしゃっていましたけれども、虚偽の届け出をするとか、そういうことは本当に割に合わないと、この審議の内容も含めて、かみ砕いてわかりやすいように、しっかりと周知もしていただくことが大事だというふうに、今までの質疑を聞いていて強く思いました。

有権者からのFAXについて

 さて、少し違った観点から、この法案の関連で質問を申し上げたいと思います。

 稲田委員が二十センチぐらいというふうにおっしゃっていましたけれども、法務委員の皆さんのところに同じようにいろいろな陳情、御意見が来ているんだというふうに思いますが、私のところにも、この法案に反対する趣旨のファクスとか、電話も直接ありますし、電子メール、それからファクスについては数百枚も来ていますので、委員の皆さんのところへ同じように来ているのかなというふうに思っております。

 大変重要な御指摘ももちろんこのファクスや陳情、御意見の中にありますので、これはこれでありがたいことだなというふうにも思う一方で、法案に関係のないほかの業務のファクスなどがそれに紛れたりということにもなっておりますので、そういう意味では、これは大変な、尋常でない事態かなというふうにも思っています。

 先ほど申し上げたように、これは大変重要な法案ではあるのですが、同じように重要法案として審議をされてきました例えば共謀罪の審議の中で、私、この委員会に所属をしておりましたが、こういうことはありませんでした。私、まだ一期生ですので、そんなに長く衆議院にいるわけではありませんが、こういう陳情の仕方というのは余りなかったのではないかなというふうに思います。

 法務省としては、大量のファクスで御意見が各委員のところに来ているとか、役所の方にも来ているかと思うのですが、こういう事実は承知をされておられますか。

    〔委員長退席、桜井委員長代理着席〕

○倉吉政府参考人 ただいま御指摘のありました、国会議員の皆様のところに改正法案に反対する趣旨の電話やファクス、メール等が相当数寄せられているということはいろいろお聞きしておりまして、承知しております。同様のものは法務省にも寄せられているところでございます。

インターネットの影響について

○石関委員 これは本当に全国各地から御意見が寄せられているのですが、何か組織的な背景というものがあるのか、あるいは何々団体という名称のある団体が中心になって反対活動をされているのか。これについては、どのように承知されていますか。

 例えば、いろいろな法案ですとか陳情事というのは、何とか団体の方がおいでになったりとか、あるいは私どもの方でお伺いをして、そこの役員の方とか会長さんからお話を聞くというのが通常というか、よくあるスタイルだと思いますが、これは全く違いますので、そういった背景に何らかの団体とか、こういうものがあるのかどうか、把握をされていますか。

○倉吉政府参考人 インターネットによってこの国籍法案に反対しようという呼びかけがあった、どうもそれが最初だったようだという情報は得ております。その限度で情報として把握しておりますが、これについて、何か組織的な背景があるのかどうかとか、それから、あるかどうかは別として、どのような団体が反対しているのか、こういうことについては把握しておりません。

○石関委員 大変貴重な、もっともな御指摘もそれぞれの意見からいただいておりますので、この意見表明自体がいいとか悪いとか、私はそういうことを申し上げているのではないのですが、私のところについては今までになかった御意見の表明の仕方でありますので、実際そういうふうに書かれている方もいるのですね。我々の世代はこういう意見表明の仕方があるんだということをおっしゃって、ファクスに書かれている紙もありました。

 今後も、こういった形でネット上での反対活動とか、こういうものが起こってくるという可能性がますます高まっているのではないかなというふうに思いますが、今回の法案については、法務省のホームページではどのような説明をされているのか、またコメントを求めるようなことというのはされているのでしょうか。

○倉吉政府参考人 まず、ホームページでございますが、現在、法務省のホームページにおきましては、一度ごらんになった方は御承知かと思うのですが、「所管法令」「国会提出法案など」というところがございます。ここをクリックいたしますと「国会提出法案など」というのが出まして、さらにクリックすると「国会提出主要法案第百七十回国会(臨時会)」というページが出てまいります。そのページの中で、今回御提出しております法律案要綱、法律案、理由、そして新旧対照条文について紹介している。ホームページでは、現在はその限度でございます。

 ただいま、もう一つ、コメントですか。今いろいろな御意見が出ている、そのことについてのコメント……(石関委員「ではなくて、ホームページ上で、この法案について特に御意見紹介等をしていますか」と呼ぶ)それは、幾つかは来ているかもしれませんが、私、ホームページ上では十分に把握しておりません。

○石関委員 特に、例えばこの法案についてコメントを求めるようなことをしているのかということでございます。最高裁の判決が出てから随分短時間でここに至ったということはさっき古本委員も指摘したところでありますので、皆さんからの御意見を求めるようなことは、この法案についてされているのかということです。

○倉吉政府参考人 失礼いたしました。質問を誤解いたしました。

 コメントを求めるようなことはしておりません。

○石関委員 していないということなんですが、それもあり、こういうまた違った手法でそれぞれのところにも来ているというのもあるのかなというふうに思います。

FAXやメールについて大臣はどう思うか?

 ただ、今後も、これに限らず、いろいろな法案について、こういう手法で、特にネットを通じて賛否の運動が展開されるというようなことも、ますます機会がふえていくのではないかなというふうに思うのですが、こういった状況に、大臣としても、あるいは役所としても、どのように対応されていくのかということについて、大臣のお考えをお尋ねしたいと思います。

○森国務大臣 こうした法案についての一般の方々の意見表明がインターネットを通じて行われるというのは、法務省、法務委員会の法案だけじゃなくて、これからすべての案件について予想されるというふうに思います。

 しかしながら、審議は国会において行われるべきものですから、それは粛々として委員会なり本会議なりの場で行われるべきものと考えますけれども、別にインターネット上でいろいろな意見表明がされることは妨げられるものじゃないと思うのです。

 ただ、このたびのようなファクスの雨あられのように送られてくる手法というのは、相手の迷惑を顧みず、そういうやり方でもって、しかも来たものが、私は一々見ておりませんけれども、私のスタッフに言わせますと、内容はほとんど同じだ、かつ手書きで書いたものも内容は同じだというようなことで、こういった手法はやはり余り芳しくない、それは他の業務の妨げにもなりますし、紙ももったいない。

 ですから、やはりこういう手法をおとりになる方は、余り好ましからざる人物だというふうに私は思います。

○石関委員 これは御意見を下さっているわけですから、なかなか私もそうですねと言うつもりはございませんで、ただ、こういった手法で御意見を表明される方がふえていくということが十分予想されますので、それに対応する工夫はやはり必要ではないかというふうに思います。真摯に御意見はいただきながら、審議は審議でやる。いかがですか、もう一回。

○森国務大臣 恐らく、かなり皆様方が、私も含めて、これによってここ数日間のいろいろな他の業務に差しさわりが出たとか、そういう意味で、やはり相手の迷惑を考えてもらいたいということを申し上げたかったわけでございまして、若干行き過ぎがあったことは撤回をさせていただきます。

○石関委員 はい、わかりました。これについては、これぐらいにしたいと思います。

国籍問題によって影響を受ける子供の実数について

 ちょっと具体的な、この国籍問題の実態といいますか、先ほどサンプル調査で六百人ということがあったんですが、私の理解では、これは認知をされている方々なのかなというふうに理解をしたんです。報道等によると、これは推しはかるしかないんですが、同じような問題を、国籍問題ですね、抱えている子供の数というか、さっきフィリピンの子供の例が古本委員からも出されましたけれども、国内と海外を入れると、これは想像するしかないんですが、どれぐらいの数になるというふうに想定をされているんでしょうか。数万というふうに報道している紙面もございますけれども、いかがですか。

○倉吉政府参考人 日本国民である父と外国人母との間に生まれて、生まれた後に父から認知された子というのが今現在どれくらいいるかということについては、私ども承知しておりません。これは何万とか、いろいろな推計を使っているんだろうと思うんですが、その根拠がいま一つよくわかりませんので、わかりません。

 ただ、先ほど私、前の古本議員に対してお答えいたしました。あのときは記憶だけでお答えしたんですが、今ちょっと資料が出てまいりましたので、それを御紹介したいと思います。

 本年六月以降、日本人男性が外国人である二十未満の子を認知した旨の届け出がされた件数を調査したわけでございますが、その調査したものから年間の件数を推計し、年間の準正による国籍取得者数を引き算する、そうすると残りがそれになるということで、そういう推計をいたしました。その結果、対象者は年間六百名から七百名くらいいるようだと推定されます。

○石関委員 今、推計でそのぐらいの数だということなんですが、同様の事情を抱えた子供さんとかお母さんからの最高裁の判決が出てからの問い合わせというのは実際来ていますか。来ているとすれば、何件ぐらい来ているか。

○倉吉政府参考人 問い合わせは、それほど多い件数ではないようでありますけれども、来ております。

○石関委員 数もなかなかわからないということでありますので、改正されるとすれば、可決されるのであれば、やはりしっかりこれは考えていかないと大変なことになると思います。

出入国の自動化ゲートについて

 もう一つ、出入国の記録についても場合によっては調べるということであると思いますけれども、ちょっと入管行政について、以前に通告をしていて少し積み残しになっておりました、出入国の自動化ゲートについてお尋ねをしたいと思います。

 時間もないので端的にお答えいただきたいと思うんですが、ビジネスマンで、海外によく行かれる、中国と取引なんかする友人や知人がいるんですけれども、自動化ゲートが導入されたときに私はこの法務委員会にいたんですけれども、今度こういうのが導入されますよという話をしていたら、たびたびその自動化ゲートが作動していないのを見た、何なんだということを言われましたので、お尋ねをしております。

 まず、この自動化ゲートというのが、時間がないので端的にお答えいただきたいんですが、どういうもので、それから何台設置をされていて、幾らかかっているのかということと、これまでの稼働日数、休止日数、利用者数について教えてください。

○西川政府参考人 お答えいたします。

 まず、自動化ゲートというのは、あらかじめ利用希望者登録を行った日本人または一定の要件を満たす外国人の出入国者について、出入国審査の待ち時間の短縮等負担軽減を目的として、入国審査官から出帰国の証印や上陸許可証印を受けることなく、ゲートを通過することによって出入国手続を完了するというものでございます。

 これは、円滑かつ迅速な出入国審査の実現ということで、一昨年入管法の改正を行いまして、昨年の十一月二十日から成田国際空港の一部に合計八台、日本人用四台、外国人用四台が設置をされております。

 現在までの利用状況でございますが、同日から本年十月末までの間に合計四万八千人の方に登録をいただいている。その内訳は、日本人約三万五千人、それから外国人約一万三千人ということでございます。合計約十七万回の出入国に利用されているというのが状況でございます。

 それから、稼働状況でございますが、導入当初、昨年の十二月に十日間、それから本年十月に五日間、十五日間、実は作動の不良というのが生じました。その間使用できなかったという状況が生じましたが、現在はすべて直っておりまして、正常に稼働しております。

 それから、問題点といたしましては、現在は成田国際空港の一部に設置されているだけでございますが、今後、成田国際空港に増設がされるほか、中部国際空港、関西国際空港にも設置されるということが決まっております。

 今後、自動化ゲートを御利用いただくことによって一層円滑化が図られるよう努力をしてまいりたいと……(石関委員「幾ら、幾ら」と呼ぶ)失礼いたしました。

 平成十九年度予算における機器の借料、電気料、据えつけ調整のための費用、すべてで一千二百万円、それから二十年度予算における機器の借料及び電気料として一千七百二十九万円、これが措置されているということでございます。

 以上でございます。

    〔桜井委員長代理退席、委員長着席〕

○石関委員 これは高価なものですから、そうやってまたふやしていくのであれば、効率的にしっかり稼働するように、また利用者をふやすように頑張ってください。

ペルーでの事件に関して

 次に、個別の事件のことをお尋ねいたしますが、地元の群馬県太田市の公園で二〇〇一年に木村さんという日本人の方が刺殺をされた事件、これについてお尋ねをいたします。

 犯人とされる被疑者がペルーの方で、ペルーに帰ってしまったということで、ペルーに帰国後に殺人容疑でこの方は国際手配をされた。ペルー人の元建設作業員のモイセス容疑者でありますが、警察庁は、私、ここでたびたび質問させていただいておりますが、ペルーの捜査当局にいわゆる代理処罰を求める方向で協議を進めてきたということで答弁をいただいております。

 逃げ得を許さず厳正な処罰を求めるべきというふうに警察庁の方もしっかりとおっしゃってくれているわけですが、前回質問を申し上げたのが十九年二月二十一日、ことしの二月二十一日でありますので、それから随分な日数がたっておりますが、その後の進捗についてお尋ねをします。

○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 政府としては、不処罰は許さないとの観点から、ペルー人逃亡犯罪人の問題を重要課題と認識しており、国外犯処罰規定の適用に関し、ペルー政府と鋭意協議を行ってきております。

 委員御指摘の件に関しましても、ペルー国内法による国外犯処罰規定の適用を目指し、ペルー当局と鋭意調整を行ってきております。

 個別具体的な進捗状況については、犯罪捜査に影響がありますので、現時点で公表することは差し控えさせていただきますが、ペルー側の協力を得て着実に進展しているところでございます。

○石関委員 私、さっきことしと言いましたけれども、十九年だから、去年質問しているんですね。だから、もう二年近くたつわけですよ。着実というのは、どういうふうに着実に進んでいるんですか。いつになったらこれは解決しそうなんですか。全然わけがわからないですよ。何年待ったら進むんですか。

○佐藤政府参考人 我々としては、ペルーの政府それから司法当局と鋭意協議をしておりまして、それなりの進展は見られているところでございます。

 ただ、先ほど申しましたように、捜査にかかわることでございますので、具体的にここまで進展しているということは申し上げられませんが、事実の問題として、着実に進展しておりますことをここに申し上げたいと思います。

○石関委員 それは全然わからないですね。捜査に関係ないですよ。

 では、例えば何回、向こうの外務省からペルーの当局に働きかけをして協議を持っているんですか、この二年近くの間で。

○佐藤政府参考人 具体的に何回ということは申し上げられませんが、さまざまな機会にこの件については協議をしてきております。

○石関委員 さまざまというのは、全然わけがわからないですよ。鋭意とか着実にと言って、着実とか鋭意がわかるものを何か教えてください。

○佐藤政府参考人 手元にございます資料によりますと、一年間の間に十回から十五回ぐらい先方と協議をし議論をしてきております。

○石関委員 最初からそう言えばいいじゃないですか。着実とか鋭意とか、役人のよく使う言葉ですけれども、わけがわからないですよ。

 遺族とか関係者にとってみれば、どうなっているんだと。ちゃんとこれは処罰してくれるんだろうという期待を持って待っているわけですから、進捗ぐらいは今みたいに具体的に教えてもらわないと。頑張っているんだな、もっと頑張ってくださいという気にさせるかどうかというのも大事ですよ。広報する内容じゃありませんけれども、そうやって十回も何回もやっているんだったら、そういうふうに言えばいいじゃないですか。

 だから、今後もそういうつもりで、しかし、解決と処罰に向けてしっかりとやってください。応援いたしますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

衆議院・法務委員会(2008/11/18)/保坂展人議員(社民党所属)

保坂展人 - Wikipedia
○保坂委員 社民党の保坂展人です。

 国籍法という大事な法案の審議で、本来なら、この最高裁判決が出た後、法務委員会で、政府が立法するのか議員が立法するのかまだわからない段階でも議論すべきだったと思いますし、午前中だけということで、いろいろな意見が消化不良で出るような中で審議するのは、私としても、本当に徹底的にやるべきだという意見は申し上げておきます。それを言った上で、森大臣にお話を聞いていきたいと思います。

最高裁判決の画期的側面

 私は実は、六月四日の最高裁判決はやはり画期的な判決だったというふうに思っています。鳩山法務大臣は翌日の参議院で、ありとあらゆる意味で衝撃であった、国籍法第三条が憲法違反だとされたことについては、これを厳粛に受けとめなければならない、こういうふうに答弁されているんですね。恐らく、森大臣も認識は変わらないものと考えるわけなんです。さらに、鳩山大臣はその参議院の委員会で踏み込んで、親の事情で子供が強い影響を受ける、罪のないお子さんが親の事情によって不利益をこうむる、あるいは立場が不明確になるということのないよう、これは戸籍、国籍を扱う法務省として基本の精神として持っていなければならない、こう言われているんですね。この認識も同じでしょうか。

○森国務大臣 同じです。

○保坂委員 八四年改正、これは私の大先輩である土井たか子議員がずっと、女子差別撤廃条約を受けて国籍法の改正にかつて取り組んだという話を何度か聞いてきた経験がありまして、「父が」というところを「父又は母が」と、要するに、父系の血統優先主義から、父母両系主義ですか、父も母もということに変えるに当たって相当大変な議論があったというふうに聞いています。

 今回の最高裁判決は、三条一項に記されている婚姻を要件として国籍を取得するという規定は憲法十四条が定めている法のもとの平等に反すると判示したということだと思います。

子供の人権について

 ここで法務大臣に伺いますが、今回の最高裁判決は、子供の人権にかかわる国際条約を我が国が幾つか批准してきた、これが背景にあると言われています。かかる条約とはどの条約なのか、その条約のどの部分を指していると法務大臣としてとらえているのか、これを答えていただきたいと思います。

○森国務大臣 市民的及び政治的権利に関する国際規約、いわゆるB規約及び児童の権利に関する条約というふうに考えております。

○保坂委員 そのいずれも、どの部分についてなんでしょうか。

○森国務大臣 まず、先ほど申し上げた市民的及び政治的権利に関する国際規約、B規約第二十四条、「すべての児童は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、国民的若しくは社会的出身、財産又は出生によるいかなる差別もなしに、未成年者としての地位に必要とされる保護の措置であつて家族、社会及び国による措置について権利を有する。」それから「二 すべての児童は、出生の後直ちに登録され、かつ、氏名を有する。」「三 すべての児童は、国籍を取得する権利を有する。」です。

○保坂委員 ありがとうございました。

 その後に批准された子どもの権利条約、児童の権利条約では、今言われたことと非常に重なりますが、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を締約国は尊重しなければならないと言った上で、「児童は、出生の後直ちに登録される。児童は、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、」とあります。また、世界人権宣言は、すべての者は国籍に関する権利を有する、こうあるんですね。

 ここでちょっと法務大臣に伺いたいんですが、国籍というのは、その国の政府がその自国民を、どういう人が自国民だというふうに国内的に決定する、いわゆる国内事項であるわけですけれども、他方において、こういった国際人権上の議論は、やはり子供の権利としてのその国籍ということをうたってきているように思うんですが、その点の認識はいかがですか。

○森国務大臣 この最高裁判決については、国籍法三条一項が憲法に適合する内容となるよう、補足意見等についても検討した上で、届け出による国籍取得の要件を削除することを内容とした改正法案を国会に提出したものでございまして、委員が言及されておりますいわゆるB規約等については、確かに言及はされておりますけれども、国籍法第三条第一項の規定がこれらの条約に反しているとの判断が示されたものとは受けとめておりません。なお、その前提で、私は、やはり子供の権利というか子供の立場で考えた改正であるということは間違いないというふうに思います。

無国籍児について

○保坂委員 では、民事局長、これはそもそも論になりますが、国籍というのは権利なんでしょうか、それとも国による恩恵なんでしょうか。大きく整理するとどうなりますか。

○倉吉政府参考人 恩恵というのはちょっと違うと思いますが、国家の構成員たる資格でございます。ですから、その国家の人民、国家に帰属する人民というのがだれになるのかということを決定する資格、これが国籍でございます。そして、その国籍があることによって、さまざまな国内法によっていろいろな法律効果が与えられる、選挙権があるとか、そういうことがある、そういうものだと考えてございます。

○保坂委員 私の理解は、今民事局長が前段に言われたことを踏まえた上で、しかし、無国籍児などがどんどん生まれてきたりして、他の子供と明らかに違う、権利を奪われた状態にあるということはやはりなくしていきますよというのが国際人権上の、B規約なり子どもの権利条約なりでうたわれている精神じゃないですか。そこはどうですか。

○倉吉政府参考人 そのとおりでございまして、例えばB規約の二十四条三項に、「すべての児童は、国籍を取得する権利を有する。」とあります。これは何も特定の国の国籍と言っているわけではありませんで、どこかの国の国籍の意味でございまして、無国籍者をつくらない、無国籍ということになるといろいろなことで不利益をこうむるので、児童にとってそういうことはしないようにしようというのが国際上の人権関係の条約の精神であろうと思っております。

○保坂委員 森大臣、今回の最高裁判決の内容は、婚姻をしていることを要件に定めた八四年の改正の部分を、婚姻外の認知というところを区別しないところにやはり一番のポイントがあるように思うんですね。簡単に言えば、婚姻による法律婚の子供と婚外子とは、権利の面で制約されたり差別はされませんよということだと思うんですが、それでよろしいですか。

○森国務大臣 この改正案については、そういう趣旨と考えます。

○保坂委員 そこで、これはまた大きな議論にこれから、実は十二年前に民法改正案が出され、我々野党からも同様の改正案を何度も出して、この衆議院法務委員会で議論したこともありましたが、主に選択的夫婦別姓の話題というか、このことで相当議論はされた内容の、法制審答申に基づいたものですが、十二年塩漬けになっている、この中に婚外子の相続差別の撤廃ということが入っていますね。

 これは今、B規約とか、B規約に基づく自由権規約委員会の総括所見とか、繰り返し、あるいは子どもの権利条約に基づく子どもの権利委員会とか国連の機関からも、いわゆる婚外子の相続二分の一規定というのは差別であるから撤廃をするべきではないかということを盛んに言われてきたんですね。こことの整合性は考えられませんか。つまり、課題であるという認識は私は法務大臣には持っていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○森国務大臣 法律上の配偶者との間に出生した嫡出である子の立場を尊重するとともに、嫡出でない子の立場にも配慮して、嫡出でない子に嫡出である子の二分の一の法定相続分を認める、こういうことによって法律婚の尊重と嫡出でない子の保護との調整を図っているということでございまして、特にこれは憲法第十四条に照らしましても不合理な差別ではないというふうに考えますが、委員の今御指摘になった問題についても、しっかりと耳を傾けて検討していかなければならないというふうに感じております。

○保坂委員 十月の末に出た、この前死刑のことで大臣にお伝えをしたいわゆる総括所見の中にも、戸籍法四十九条二項一号、国籍法三条、民法九百条四号に、嫡出子でなければならないことを記載することを求めている部分をやはり削除すべきではないかという意見が、つい先日の、国連の各国の意見を踏まえた我が国に対する勧告でも出ているということも紹介をしておきたいと思います。

 では、次に民事局長に伺っていきますが、最高裁判決で救済をされた原告と同様の境遇にある子供たち、先ほど六百人という数字も出ましたけれども、これをもうちょっと確認したいんですが、婚姻をせずに認知を得た子供たちの数、あるいは新聞記事を見ていると、これから手続に行きたいなんということも書いてあるので、では、この原告同様の立場にある方で、手続をもう既にとった方がどのぐらいいるのかということをお願いします。

○倉吉政府参考人 ことしの六月四日に最高裁の判決がありまして、あれを踏まえて国会で法改正が行われるであろうということを期待してのものだと思いますが、その翌日以降きのうまでに百十二件の届け出が出ております。だから、この人たちは、もしこの法改正がなければ簡易帰化の方に回った人かもしれません。そこのところはよくわかりませんが、そういう人たちが百十二件来ているということです。

 それから、先ほど来サンプル調査ということを申し上げているわけですが、もう一度繰り返しますと、本年六月以降に日本人男性が外国人である二十未満の子を認知したという旨の届け出がされた件数、これを調査したものから年間の件数を推計いたしまして、年間の準正による国籍取得者数を引き算する、そして残りを出すという形で推計をしてみました。全くのあらあらの推計ですが、これによりますと、対象者は年間六百名から七百名ぐらいいそうだということでございます。

 ただ、今現在何人ぐらいいるのかというのは、それはちょっと把握ができておりません。

○保坂委員 先ほど鳩山大臣のかなり踏み込んだ、いわゆる子供自身にどうにもできない、変更ができない事情を子供の責任に帰すべきではなくて、差別や区別あるいは不当な待遇に置くべきではないという責務を法務行政としてはこれから考えていくんだということだと思います。

 今回の国籍法改正は評価するんですが、中には、かなり多いらしいんですが、日本人の男性と外国人の女性との間で子をもうけて、胎児認知などはされずに、出生をするとそこで男性の方がいなくなってしまう、あるいは連絡がとれない、当然ながら、これは確認ができないわけですから認知もできないということで、国籍取得はできない。国籍取得ができないというと、これまで私どもに入った声ですと、出生届がないとなかなか住民票作成なども進まない。したがって、いろいろな点で社会生活上不利益を受ける。

 先ほどの、子供にとってみずからの責任がない境遇であることは間違いないわけで、国際人権法上の規定からいっても、これは何とかならないのかというふうに思うんですが、その点の問題意識はいかがですか。

○倉吉政府参考人 これだけは言っておきたいんですが、日本人父親の所在が不明である場合には、現在の民事訴訟法のもとで公示送達という手続がございます。それでそれなりの立証をしていただければ、いわゆる強制認知ですが、裁判による認知を求める訴えができますので、恐らくそれで解決するはずだと思っております。

○保坂委員 では、大臣にお答えになっていただく前に、総務省に来ていただいているんですね。

 総務省では、私の聞いているところによると、一九八九年以前は自治体の判断で無国籍のお子さんの住民票も作成をされていたと聞いているんですが、その後に自治省の通達で、やはり出生届を出してから住民票を作成せよということになって、なかなかこれは難しくなりました。そういった住民票作成はできない状態にかなり長いことなっていたが、この議論を通してなのか、つい最近、七月七日に通達を出して、少しその扱いを変更すべく考えられているのか、実務があるのか、その辺について。

○佐村政府参考人 先生御指摘の点ですけれども、現行の住民基本台帳法上は、住民票の作成を行うためには日本国籍を有することが必要とされておりますので、御指摘のような場合については住民票は作成されないということになります。(保坂委員「何にも工夫はないんですか」と呼ぶ)前提たる国籍がないということです。

○保坂委員 それで、本当に大臣に真剣に考えていただきたいんですが、先ほど言ったように、子供が生まれてくる、生まれてくる子供は親がだれかとか選べませんね。そして、父親の方がいるのかいないのかとか、今訴訟の話もしましたけれども、そういう状況の中で、実際、無国籍児の子供たちは日本にかつていたし、今もいるわけですよ。そしてその中で、今回の改正によって、今百十二人の方がお待ちになっているということで、その方たちにとってはいいと思いますけれども、一方、その枠の外に漏れてしまう子供たちがいて、国籍はにわかに無理でも、住民票の作成などについてはよりスムーズに子供の権利保障ができないのかということについて、総務省とも協議をしたり相談をするということをぜひやっていただきたいということなんですが、いかがでしょうか。

○森国務大臣 まさに子供は、生まれる場所もだれのもとに生まれるかも選べません。そういうことで、やはりすべてに優先して子供の立場で考えてあげるべきであるというふうに考えます。

 ただ、社会なりあるいは日本のさまざまな事情もいろいろ勘案して、子供たちにとって差別が生じない、また不利益にならないように最大限の人道的な配慮を加えていくべきであるというふうに考えております。

○保坂委員 大変重く受けとめましたので、法務省の局長も総務省も、ぜひきちっと相談をして、条約を批准しているのが全然違うななんということにならないようになお努力をしていただきたいと申し上げて、終わります。

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最終更新:2009年01月09日 06:36
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