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国会での審議の中継


山谷えり子議員/自民党所属(参議院法務委員会(2008/11/27))

山谷えり子 - Wikipedia
○山谷えり子君 自由民主党、山谷えり子でございます。

最高裁判決は司法権の逸脱ではないか?

 本年六月四日に出された最高裁判決は国籍法規定を違憲と判断したものですが、日本国籍取得までをも認めたのは立法措置に等しく、国籍取得までは認めないという最高裁裁判官が十五人中五人おられたわけですね。
 私もこれに対しては非常に違和感を持っておりまして、この国籍付与というのは司法権の逸脱ではないかというふうに考えております。立法措置に踏み込んでいることにもう当事者すら、五人の裁判官がおかしいと言っている。これ、法解釈の限界を超えているという意見を述べた裁判官もおられた。
 違憲状態の解消は国会にゆだねるべきだと思います。これ、三権分立を侵しているんじゃないでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) ただいま委員御指摘のとおり、その点がこの判決の大きな論点になりました。
 委員御指摘のとおり、裁判官十五人のうち十人が原告に日本国籍の取得をもう直接認めるという判断をしたわけですが、反対意見が五人ありまして、このうち三人は元々合憲だという、根っこからの反対でございます。残りのお二人の方は、立法不作為の状態が憲法違反になっているにすぎないんで、そこが憲法違反だとしても、新たな規定を創設するということは司法の役割を超えると、だから国会の立法措置にゆだねるべきだといたしまして、元々合憲だと言われた三人の方も、もし違憲だとすればそういうことになるんだと、だからその意味でも多数意見はおかしいという意見を述べておりまして、だから委員と同じ御意見の方が五人おられたということにはなりますけれども、ただ、最高裁の大法廷の判決は多数意見で形成されておりますので、法務省としてはこれを重く受け止めて、今回の法案の提出に至ったということでございます。

○山谷えり子君 国籍取得というのは本当に立法措置だと思いますので、私は、良識の府参議院としては、一体そのようなことが最高裁の判断でできるのかということを本当に問題にしていっていただきたいというふうに思います。ですからこそ、慎重審議というものを求めていきたいと思います。
 現行の国籍法では簡易帰化制度もあります。判決では、家族の生活や親子関係に対するその後の意識の変化や実態の多様化を考えれば、この要件は今日の実態に適合しないとありますが、そうなんでしょうか。そうじゃないという方も本当にたくさんいらっしゃるわけですね。
 違憲判断に様々な問題点が含まれている場合、慎重に審議すべきだと思いますが、刑法二百条の尊属殺規定については、違憲判決が出てから多数の反対もあり、三十五年間改正されなかった。今回の判決も多くの国民が懸念を示していると思いますが、その辺の状況をいかが思っていらっしゃいますか。

○政府参考人(倉吉敬君) 最高裁である条項が憲法違反だという判決が出た場合の効力の問題でございますが、これはもう委員が当然それを前提として議論されていることを承知しておりますけれども、その事件だけにしか効力は及びません。ですから、今回の国籍法の三条一項が婚姻と嫡出子という要件を付けているところは憲法違反だという判断が出たわけですけれども、そのことによってその要件が法律から消えてしまうというわけではないわけです。現行法としてまだ残っている。
 ただ、ですから、その意味ではあとは立法府でどう対処するかという問題が残るわけですけれども、今回の原告らと、最高裁まで上告人の皆さんと同じような環境にある人が裁判を起こせば、それは、下級審の裁判官はそれは独立でございますけれども、ついこの間、大法廷の判決が出たばっかりだと、これが覆るとは思えないので、同じ判断をするということが多いと思います。
 そうすると、結局、訴訟によって同じような判断をされて救済されていくということ、そういうことにしないといけないのか、それとも、やっぱり国会がそれを受け止めて、その最高裁の判決の言っている限度で条文を改正していく、これが三権分立の上では正しいやり方ではないかと、こう思っているわけでございまして、法務省としても、それを閣法として法案を提出するのは、これは当然の責務であると考えているわけでございます。

○山谷えり子君 ですから、国籍取得までも認めてしまったからそういうことが起こるわけで、私はこれはフライングだと思いますよ。三権分立を侵していると思います。
 国籍は国家の根幹にかかわることで、国の尊厳、国の重さにかかわることであることを考えれば慎重な審議が欲しいんですけれども、国籍の取得というのは、差別の問題ではなくて、主権の問題、統治権の問題、つまり政治的な運命共同体のフルメンバーになるわけでございますから、国籍というのは主権の問題というふうにとらえてよろしいでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) ある人に国籍を与えるかどうか、つまり国家の構成員を決めるその仕組みでございますので、言わば主権者を決めるということではないかという御指摘はそのとおりだと思います。

偽装認知対策を窓口でばらつき無くやれるのか?

○山谷えり子君 慎重審議を訴えますのは、今の改正案には懸念される事柄が多いからでございます。特に問題になるのは偽装認知をどう防ぐか、そのためにこの委員会のやり取り、随分ございましたけれども、偽装認知を防ぐために法務局の窓口ではしっかりといろいろなことをやるというふうに言っておられますが、ブローカー等が介在して組織的に巧妙に偽装が行われる心配がございます。
 全国に法務局どのくらいあって、窓口によってばらつきなくきちんとやっていくという担保を今どのような形で考えていらっしゃいますか。

○政府参考人(倉吉敬君) ばらつきのないようにと、それを一番我々も考えておりまして、もちろん今回の改正法に基づいてやるということになれば、私これまでもるる説明しております、法務局の窓口でこういうことをやりますというようなことを申し上げておりますが、今考えておりますのは、まず省令で窓口に来た人に提出してもらう書類というのをある程度明示していこうと。それから、通達を発しまして、このような調査方法を行うということを全国一律にやれるようにする、そしてこれを様々な研修の機会であるとか会同の機会等を通じて広く法務局の職員に徹底してまいりたいと思っております。

○山谷えり子君 法務局の窓口、幾つですか。

○政府参考人(倉吉敬君) 本局が五十ございます。そのほか支局が相当数、支局を入れて二百十四、そこが受付の窓口となります。

○山谷えり子君 手続の厳格化、法務省令が作られつつあると思いますけれども、可決されれば十日あるいは二週間後ぐらいにはもう省令ができてくると思うんですね。どんな書類が必要か、省令に盛り込むべきだと思いますけれども、いかがですか。

○政府参考人(倉吉敬君) 委員御指摘のとおりでして、どのような書類が必要かということを省令に盛り込んでいきたいと、こう思っております。

○山谷えり子君 申請の際に父親を原則同行させ、聴き取り調査をすべきではありませんか。

○政府参考人(倉吉敬君) 国籍取得届の届出人というのは基本は子供でございます。子供が十五歳未満であるときは法定代理人が届出人でございます。先ほど来申し上げておりますとおり、届出人は必ず窓口に来ていただきますが、普通は、認知をされただけだということになれば母親が法定代理人ということが多いと思います。父親は法定代理人ではないので、必ず来いということはそれは言えないということになるわけですが、法務局では父親に任意の協力を求めて、出頭してきてくれとか、それから、来れないということであればその父親のお宅にお邪魔をして、そして事情を伺うとか、いろんなことをしていかなければならないと思っております。

○山谷えり子君 過去に多数の認知した子供がいる場合のチェックのために、父の出生から現在までの父の戸籍謄本や父の住民票又はそれに類する父の住所を証する書面など必要と思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) ただいまの委員の御指摘もそのとおりでございまして、戸籍というのは古い戸籍は除籍ということになって表に出ないようになるわけですけれども、その父親がある年に達してから今までたくさん子供を認知しているというケースだとすると、これは非常に不自然だということになりますので、そこが全部分かるように過去のものも全部含めてそういう書類を出させるということは検討しているところでございます。

○山谷えり子君 認知に至った経緯の記述、聴き取りなど、調査の方法に万全な措置を講じてほしいと思いますけれども、現在どのように進めていらっしゃいますか。というのは、省令が出て施行日までそんなに間がないですよね。ということで、現在どうしていらっしゃいますか。

○政府参考人(倉吉敬君) 認知に至った経緯の記述それから聴き取り、これはきちっとやっていきたいと思っております。
 基本的には、これは余り内容を詳細に話すと手のうちを明かすということにもなりますのであれですが、かなり詳細な事項の質問事項を作ってそれを聴きながら、本人には申述書を出していただいて、それを照合して話がうまく合っているかというのが分かるようにしたいと。そして、その結果、例えば子供を懐胎した時期、例えば外国でお父さんと一緒になって懐胎したんだということであれば、そのときに父母が同じ国に滞在していたのかどうかとか、そういうことについて疑義が生じたというような場合には、先ほど来申しておりますが、関係機関とも連絡を密にして更なる確認をするというようなことをいたしまして不正の防止に努めてまいりたい。このことは通達にもできるだけきちっと書いていきたいと思っております。

半年ごとに統計を委員会に報告する事について

○山谷えり子君 国籍は大変重うございます。日本には簡易帰化制度があります。国民の心配、懸念は本当に大きいものでございます。悪意か悪意でないか、認知がですね、見極めるのも難しい。組織的犯罪が起こる心配があるわけですから、半年ごとに委員会に、どのぐらいの届出があったのか、件数やケース、どこの法務局の窓口でどうだったと、こういう報告はしていただけますか。

○政府参考人(倉吉敬君) 半年ごとということでございますが、委員会の求めがあれば、それは当然にやるべきだと思っております。

○山谷えり子君 是非、ではそのようにしていただきたいというふうに思います。
 国籍がなくても現在は生活保護を受けることができますけれども、国籍を取った場合のプラスというのはどういうことでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) 例えば、国籍を取るか取らないかで変わるというのは、公的資格を得られるかどうかというような問題があります。公務員になるためには日本人でなければならないとか、そういう要件が定められている場合とか、それから選挙権等、そういうところが大きく変わってくるだろうと思います。

○山谷えり子君 私がさっき三権分立を侵しているのではないか、司法権の逸脱ではないかと言ったのは違憲判決に対して言っているのではなくて、国籍取得という、それが立法措置に踏み込んでいるというような考え方も成り立つのではないかということを言ったんですね。
 なぜそのようなことを言ったかというと、報道によれば、フィリピン人と日本人の間の子供が五万人ほどいると言われております。しかし、今回の改正で対象となる子は年間六、七百人ぐらいとも言われています。そしてまた、訴えを今起こす、あるいは起こしている可能性がある人が百人以上いると言われているんですけれども、これはそれぞれのちょっと数字がよく、本当に事実かどうか分からなくて、その辺を教えていただけますか。

○政府参考人(倉吉敬君) まず、六月四日に最高裁の判決がありまして、それから昨日までに、この国籍法が最高裁の判決に沿って変わるであろうということを期待して既に届出が出ております、全国の法務局、地方法務局に。この届出については取扱いを留保した形にして置いてあるわけですが、それがたしか昨日までで百二十七件、最高裁の判決後ですよ、新しく出ている届出がたしかそれだけあったと思います。
 それから、あと具体的にどれくらいこういう届出をするという人が出てくるのであろうかと。これは推計によるしかないわけですけれども、日本国民である父と外国人である母との間に生まれて、生まれた後に父親から認知された子がどのくらい存在するのかという話になりまして、これを正確に把握することは困難でありますけれども、本年の六月以降、日本人男性が外国人である二十歳未満の子を認知した旨の届出がされた件数を調査したものから年間の件数を推計いたしました。それから年間の、夫婦になってしまう、結婚して準正が起こる、準正による国籍取得者数を引き算をしてやれば、残りがその対象者ということになります。その残りの数は年間六百名から七百名という、概算でございますが推計値が出ました。この人たちが要するに国籍取得届出まで行くかどうか分かりませんけれども、対象者となり得るということでございます。

施行はいつになるのか?

○山谷えり子君 本当に、現実はそういういろいろな数でいろいろな申出が行われていると。
 そうしますと、可決されて、公布されて、省令が出て、施行されると。これは可決されてから何日後ぐらいになるんですか。

○政府参考人(倉吉敬君) 施行期日は、公布から二十日後を予定しております。

偽装認知ビジネスへの罰則はどうなっているのか?

○山谷えり子君 そうしますと、この委員会でも、本当に偽装認知防止の担保が十分かどうかというまだまだ不安があるわけでございますから、やはりまだまだ早いと思いますので、慎重審議を引き続きお願いしたいというふうに思います。
 個人ではなくて組織的に偽装認知ビジネスをしているような者、ブローカーなど悪質な者に対してはどのような罰則規定ございますか。

○政府参考人(大野恒太郎君) 個人的な場合であれ組織的な場合であれ、市町村役場に虚偽の認知届をした場合、これを例に取りますと、刑法百五十七条の公正証書原本不実記載罪が成立するということでは変わりはありません。
 ただ、実際の刑事手続の運用について申し上げますと、一般的に申し上げて、組織的にこれが、犯罪が行われた場合には、量刑に当たりまして悪質な犯情というようなことで考慮されることになることが考えられます。したがいまして、検察としては、組織的に偽装認知のような事案が行われた場合には、そうした犯情を踏まえて法と証拠に基づいて厳正に対処するというように考えております。

○山谷えり子君 申請の際に父親を原則同行してほしいと思うんですけれども、これ認知してから行方不明になっている父親は無理ですよね。そういう場合はどのような書類、また写真という話もありますけれども、どのようなことを考えていらっしゃいますか。

○政府参考人(倉吉敬君) 認知した父が行方不明というのはかなり我々にとっても深刻な問題ではございますけれども、その場合には、どうして行方不明になったのかというその理由等について関係者から事情聴取を行うと。行方不明であるということが本当に事実かどうか確認をしていく、そして必要に応じて、先ほど来の繰り返しになりますが、関係機関とも連携をして不正の届出の防止に努めたいと思っております。
 いろんなケースがあると思うんですけれども、例えば、まず認知をしているわけですから父親の戸籍謄本が出ます。その付票を見れば最後の住所が分かるわけですね。そこの住所の方を当たってみると。そして、その住所地にひょっとしたらいるかもしれませんから文書を送ってみる。それが転居先不明で返ってくるということであればその周辺のところを聴いてみるとか、あるいは親戚の人がいるかもしれない。それから、その御本人、母親に、行方不明になったというのは何か事情があるのかとか、今まで文通をしていたんだけれども急に手紙が来なくなったとか、いろんな事情があるかもしれません。そういうことを聴き取りながら対処していきたいと思っております。

○山谷えり子君 国民は、国の尊厳、国籍の重さ、尊いものと思っている、そしてまた、虚偽認知、どのように担保されるのかと、防ぐために、心配しているわけでございます。その辺の委員会のやり取りをお聞きになられまして、森大臣から御所見を伺いたいと思います。

○国務大臣(森英介君) ただいまの問題につきましては、衆議院でも参議院でも法務委員会で大変多くの方から御懸念が示されました。法務当局としても、調査というか、そういうことが起こらないように万全を尽くすということを申し上げておりますけれども、いずれにしても運用が極めて大事だと思いますので、そういったことを含めて、皆様の御懸念が払拭されますように督励をしてまいりたいと思います。

○山谷えり子君 終わります。
 ありがとうございました。

木庭健太郎議員/公明党所属(参議院法務委員会(2008/11/27))

木庭健太郎 - Wikipedia
○木庭健太郎君 一昨日に引き続いての質疑になります。
 法案について様々な心配もあるようですが、いろんな点も含めて、確認の意味も込めて質問をしていきたいと思います。

公明党の要望と法務省内での議論

 まず最初に、当局に御確認ですが、最高裁判決を受けて、当時の保岡法務大臣に、八月七日の日でございましたが、公明党として特に留意すべき点の要望をいたしました。その中の一つが、国籍法第三条第一項の要件から父母の婚姻、これが削除する、削除した場合、更にこれに代わる新たな要件を設けないことを私どもは要望いたしました。
 これは、新たな差別なり、そういう問題も含めた意味での御要望でございましたが、今回の法案を見ますと、まさに新たな要件を設けない方向でやられているようでございますが、このことについて、どう要件を設けるか設けないかを含めてどのような検討がなされたのか、議論があったのか、そして最終的に設けないこととした理由について御説明をいただいておきたいと思います。

○政府参考人(倉吉敬君) 御指摘のとおり、新たな要件を設けるかどうかということは一つの論点になりました。
 これは、もう委員は御承知のとおりでありますが、最高裁判所の十五人の裁判官のうち、多数意見を形成しております十人の裁判官のうちのお一方の裁判官が、立法政策として、日本国内において一定期間居住していることや、あるいは日本人の父親が扶養している事実といったことを我が国の密接な結び付きの指標となる要件だということで、婚姻に代わるものとして国籍法三条一項に設けることということも選択肢になり得るんだと、こういう意見を述べておられます。
 そこで、法務省においても、そのような要件を新たに付け加えるということはどうだろうかということを検討を行ったわけでございます。
 しかし、最高裁判所の多数意見を精査してみますと、生まれた後日本国民から認知された嫡出でない子と父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した子との間には、我が国との結び付きという点において差異があるとは言えないというくだりがございます。
 そうすると、そのようなほかの要件を設けるということになれば、改めてその子供たち、つまり準正されていない子供たちだけに設けるということになると差別だということになりかねないので、それじゃ両親が結婚している子供たちにもそういう要件を付けなきゃならなくなる。そういう要件をそちらにも付けるということになると、今まではそんなものなくて届出で国籍取得できたのが、何でそんな要件が要るんだという新たな議論を呼ぶということで、これは大方の理解を得にくいであろうというふうに考えたわけでございます。
 そこで、単に準正の要件を削除するにとどめたということでございまして、なお、多数意見を形成しております裁判官の中の一部の方の中には、そういう要件を付けることはやはり選択肢としても相当ではないんだという趣旨の意見を述べておられる方もおられます。

仮装認知防止としての届出後の調査

○木庭健太郎君 仮装認知の防止についても、罰則の新設の問題、実務の運用面における防止策、重要になるということはもう論議をまたないんですけれども、法務局での受付状態等は前回お聞きしましたが、実際に運用をしていく際には国籍取得に関する基本通達によって取り扱うということになってくるんだろうと思います。
 その中でこういうのがあります。届出を受け付けた後に、届出書というんですか、又はその添付書類の成立又は内容について疑義が生じたときは、届出人若しくは関係者に文書等で照会し、又は届出人若しくは関係者宅等に赴いて事情聴取する等して、その事実関係を調査するものとする、いわゆる受付後の調査という問題でございます。
 そこで、どのような場合にこのような調査になっていくのかということなんです。全件についてこれを行うのかどうかということもあるんだと思います。この辺どうなのかということをまずきちんと御説明をいただきたいし、さらに、先ほどから御指摘があっておりましたが、十一月二十五日の読売新聞の夕刊で省令改正や通達の方向が書かれておりました。このとおりなのかどうか、どんな方向でその省令改正、通達というのを考えていらっしゃるのか、この際御説明を委員会でいただきたいというのが二点目。
 そして、三つ目ですけれども、先ほどこれも御指摘をいただいておりましたが、この届出人、本人又は本人が十五歳未満の子である場合にはその法定代理人、つまり、必ずしも国籍取得の届出には父が同行することにならないわけですよね。ただ、局長は答弁では認知した父に協力を求めたいということを何度もおっしゃっている。じゃ、この求めたいということについて、これどんなところで担保をしようとなさっているのかということ。
 以上三点、局長から伺っておきたいと思います。

○政府参考人(倉吉敬君) まず、先ほど来の読売新聞の記事ですが、あれは、私どもも、省令に添付すべき書面をちょっと書いていく、それから通達にも調査の方法を、様々の最近の議論、先生方の議論を踏まえまして書いていくということを検討はしておりました。しかし、ああいうふうに決まったとかどうこうであると断定的なことは全くございません。今も検討しているというところでございます。
 それで、一番最初の御質問で、基本的な通達に今書かれている疑義が生じたときというのはどういうときだということでございますが、これは一義的に書くのは非常に困難でございます。
 それで、委員の皆さんに御参考になるかと思いますが、これまでの例でどんなものがあったかということをちょっと御紹介いたしますと、届書の添付書類の記載から、どうもほかの男性が父親なんではないかということが疑われたと、こういう事案がございました。それから、提出された書類にちょっと筆跡の違うところがあって、改ざんの痕跡があったというようなものがございました。そのほか、私が幾つか申しております、同じ人が何回もやるとか、それに近いようなケースもあるようでございまして、そういうような場合には疑義が生じたということになります。
 そこで、そのような場合にはきちっと基本通達にあるような対処をしていきたいと。それを踏まえた上で、先ほど来から答弁しておりますような、今回の届出に伴うものとしてもう少しきめの細かいことを決めていこうと思っているわけでございます。
 その具体的な内容については現在まさに検討中でございまして、省令に一定の書類の提出を求めるというようなことを書けないかということを検討しております。それから、父親が届出人になっていない場合にもその協力を求めるというもう方針は既に決めておりますが、それを通達に規定するか、どういうふうに決めていくかということについても現在検討しているところでございます。

○木庭健太郎君 是非、これ省令含めてこの後きちんと最終的に出てくるんでしょうが、きちんとそういうのが決まり次第、皆さん御心配されているわけでございまして、今回の場合はそういったことが決まるなら決まったことをきちんと皆さん方に通知を分かるようにしていただきたいということを思っておりますが、いかがですか。

○政府参考人(倉吉敬君) 御指摘のとおりにいたしたいと存じます。

偽装認知に絡むドイツの例

○木庭健太郎君 ドイツの話が衆議院でもありましたし、また、これ一応確認の意味で、どう考えるのかというのをお尋ねしておきたいと思うんです。
 ドイツの例というのは何かというのは、偽装結婚で戸籍を売ったりというようなブローカーがいるという問題にかかわる問題なんですけど、ドイツが一九九八年、これは親子法というんですか、親と子供の法、この改正によって、父親の認知宣言と母親の同意だけで父子関係の認知が成立することになりました。ところがドイツでは、この制度を悪用して滞在法上の資格を得ようという事例が現れてまいりました。不法就労のための問題なんだろうと思うんですけど。
 例えば、滞在許可の期限が切れて出国義務のある女性がドイツ国籍を有するホームレスにお金を払って自分の息子を認知してもらう、この認知によって息子は自動的にドイツ市民となって、その母もドイツに滞在できることになる、こんな問題が現実に起きたわけでございまして、ドイツでは、こういう制度の悪用を防止するために、今年の三月、親子関係の認知無効のための権利を補足する法律といたしまして、その認知そのものを認めないといったわけじゃないんです、何を変えたかというと、民法を変えられまして、民法改正によって、父と子供の間に社会的、家族的関係が存在しないのに認知によって子や親の入国、滞在が認められる条件が整うケースに限って父子関係の認知無効を求める権利が所轄官庁にも与えられるというような、こういう制度をつくられたと伺っております。
 こういった事例を、まあある意味じゃドイツではこういう方策をその後お取りになられたということですが、こういった問題について法務省としてどう認識をするかという見解を伺っておきたいと思います。

○政府参考人(倉吉敬君) ドイツの法制の詳細については実はきちっとは把握していないわけでありますけれども、御指摘のような改正法が既に施行済みであるという情報には接しております。
 もちろん、各国の法制度というのは各国の実情に応じて設けられるべきものでございまして、現時点で我が国に同様の制度を設けようという考えは持っておりません。と申しますのは、我が国では現在でも、偽装認知であるということが刑事手続ではっきりすれば、認知についての戸籍の記載を訂正するという実務的な対応をしております。つまり、改めて民事の手続を取ってそれを取り消して、あるいは無効であることを確認してというようなことはするまでもなくやっておりますので、我が国ではそれで十分に対処できると考えているわけでございます。

○木庭健太郎君 是非、先ほどもちょっと御指摘があっておりましたが、今後いろんな問題でこの海外の動きというのは、まさに最高裁判決であったときのように、つまり世の中の状況の変化、国際関係の変化の中で様々こういった問題もいろいろ指摘をされているわけであって、特に国籍とか基本にかかわる問題のいろんな国際間の動き、そして各国はどういう対応をしているかということについては様々な面で、それが日本にすべて適用しろとは私も申しません、日本は日本としてできることもあるわけですから、しかしやはりそういったことも掌握をしておいていただきたいという要望でございます。
 次に、認知の件でお伺いするんですが、日本人の父親が外国人の母との間に出生した子を認知する場合、認知の要件を満たすことを証する書面の提出を求めるわけでございますが、この外国人の母の本国が公的証明を発行しない場合もあるということも伺っております。このような場合においても、法務局が市町村の戸籍窓口と連携して認知要件の有無の判断を適切に行うということが必要なんだろうと思いますが、この辺、なかなか難しい問題ですが、当局の見解を伺っておきたいと思います。

○政府参考人(倉吉敬君) 民法七百七十九条の規定でございますが、「嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。」とされております。つまり、認知の対象となる子供が嫡出でない子であることが必要になるわけでございます。
 認知される子供が外国人である場合に、嫡出でない子であるということの要件審査のためにいろんな書類を提出していただくわけですけれども、この場合、原則として母親の本国の官憲が発行した、実務上、独身証明書と呼んでおりますが、この独身証明書等が出していただきまして審査を行っております。母の本国に独身証明書の発行制度がないとか、それから独身証明書を入手することができないやむを得ない事情があるというような場合もあるところでございまして、このような場合については、その独身証明書が得られない理由であるとか、それからその子供は嫡出でない子であるという旨を明らかにした申述書等を出していただきまして、当該認知届の受否を総合的に判断しているところでございます。

「好意認知」の問題について

○木庭健太郎君 もう一つ、これも好意認知という問題、先ほど白眞勲君からお話があって、認知の問題でお話があっておりました。僕らもこんなことがあるのかなというのをよく知らなかったんですけれども。
 つまり、これは日本の民法では、自分の子供でなくても認知をという男性が出てきたら、血縁のない父親であってもその子供に養育責任を持つ父親に与えた方がいいという政策判断からこういう認知を認めているというか、こういう可能性が生じるということなのかどうか。その辺をちょっと御説明をいただきたいのと、外見上ですよ、そうすると、そうやって好意認知というものがあるとするなら、外見上だけ見ると、虚偽の認知と外見上は全く一緒でしょう、全く。その辺、どんなふうにしてこれ考えればいいのかということをもう一回ちょっと御説明をいただいておきたいと思います。

○政府参考人(倉吉敬君) 先ほどの私の説明が不十分だったのかもしれませんが、好意認知であろうといわゆる偽装の悪意の認知であろうと、父子関係がないのにそういう認知をするというのは無効でございます。無効でございますが、いわゆる普通の日本人同士の間でそういうことが行われた場合というのは、およそ国がそういうことを知るなんてことはあり得ないわけでありまして、しかも親族間でそれでいいでなあなあでやっているんだったら、だれも文句を言う人がいないのでそのままになっていくと。法律的にそれが非常に望ましい状態だと考えているわけではございません。しかし、それはそれで一つの家族のありようなのかなと言っているだけのことでございます。
 しかし、国籍取得の場面になれば違います。幾ら好意認知で、本当にその子を自分の子供ではないんだけれども育てたい、そして日本国籍を与えたいという本当の熱意があったとしても、それは血の関係がないんだったら駄目ですよということを、国籍取得届が出してきたときに法務局に分かった場合にはそれを言います。そして、そういうときはちゃんと本来の養子縁組の手続を取ってくださいと、このように指導しているということでございます。

○木庭健太郎君 分かりましたというか、なるほどそうなっているんですねとこれは言うしかない問題でございまして、いずれにしても、そういったいわゆる血縁関係というか血統主義でいくと、そういうのがなければそれは認知としては認めていないんだということを明確にした上で、そういったケースが出た場合、好意認知のような話が出た場合はそれが分かるわけですから、先ほどおっしゃるように養子縁組の話をするんであり、それが虚偽であれば、まさに虚偽の認知であれば、それはそれで調べた上で適切に処分するなりという方向になっていくというふうに区別というか認識をしておけばいいということなんだろうと思います。

経過措置の周知徹底について

 そしてもう一つは、この問題でずっと御指摘されている中で大事なのは、周知徹底の重要性なんだろうと思います。その意味で、先ほどこれは松野委員の方から御指摘があった経過措置の問題含めて整理してもう一回その経過措置についての御説明を伺うとともに、この改正法が施行するに当たって、実際に届出が行われる方々の立場に立った場合、とにかくこういう改正法ですよということを徹底して知らせるとともに、法を知らないということから届出期間を経過してしまうというようなことが起こる危険性もあると思うんで、このためにどのようなことを検討しているか、この辺も含めて、どうこの法が成立した場合周知徹底していくのかということについて当局に確認をしておきたいと思います。

○政府参考人(倉吉敬君) まず、経過措置の内容について御説明申し上げます。
 先ほどもお答えしたところですが、最高裁判所の判決において、平成十五年当時には違憲であると、こう判断されたわけでございます。それを踏まえて適切な経過措置を設けたということでございまして、まず附則第二条において、改正法施行日の前日までに現行法第三条一項の要件のうち父母の婚姻の要件以外の要件を、これをすべて満たして国籍取得の届出の行為をしていた方、これを従前の届出と呼んでおりますが、それをしていた方については改正法の施行日から三年以内に届け出ることにより日本国籍を取得することができると、これが原則でございます。特に、最高裁判所判決後の六月五日以降ですが、届出をしている方がいるというお話しました。この人たちはもう日本国籍を取るという意思が明確でございますので、改めて届出をする必要はないと、こうしているわけでございます。
 それから、国籍取得の時期についてでありますが、最高裁判決により違憲とされた平成十五年以降に従前の届出をしていた方については、この事件の原告の方々と同様に、当該従前の届出のときにさかのぼって日本国籍を取得するものとする必要があります。そこで、そのように処置をいたしまして、そして逆に平成十五年より前に従前の届出をしていた者は改正後の再度の届出のときに国籍を取得することとして分けたわけでございます。
 それから、国籍法三条の届出は二十歳までにしなければなりません。改正法施行前に二十歳に達するまでに認知された方のうち、改正法の施行時に既に二十歳に達してしまっている方、それから施行日後三年以内に二十歳に達する方であっても、改正法の施行の日から三年以内は届出により日本国籍を取得することができるというふうにしてあります。
 以上のように配慮をしているということでございます。
 今回の改正法の周知についてでありますが、もちろん広く一般に改正法の趣旨、内容を周知しなければいけません。具体的な方法としては、法務局、地方法務局や地方自治体にポスター、リーフレットを配付すること、それから、もちろん法務省のホームページに掲載いたします。政府広報も利用したいと思っております。それから、外国の方にも制度を知っていただく必要があるということになりますので、外国語のポスターやリーフレットも用意すると。それから、外国在住の方に対しても同じでございますので、これは外務省に協力をお願いいたしまして、在外公館を通じて周知が図られるようするということにしております。
 経過措置によって届出による国籍の取得が認められる方の届出については、これらの届出がいずれも国籍取得という重大な効果を生じる、それから、国籍法第三条第一項が違憲であったという状態を解消することなどを目的として設けられることを考慮いたしまして、附則の第六条におきまして届出期間の特例を設けまして、届出人の責めに帰することのできない事由により期間内に届出ができなかった場合には、その届出をすることができるようになった後三か月の猶予を認めると、こういうふうにしております。

○木庭健太郎君 例えば、これ、局長、従前に届出をしている人は認めるわけですよね、従前に。例えばこんな方でどれくらいの方がいらっしゃって、掌握をしていて、そういう意味ではこうやって周知徹底ができるんだというような体制はおありになるんですかね。

○政府参考人(倉吉敬君) 私どもの方で把握している限りでは、平成十五年より前ですね、前の方にこういう届出をしていたという方は三名おられるようでございます。それから、平成十五年以降、この前の、十五年以降の人は一人でございます、最高裁の判決がされるまでの間ですね、そこには一人こちらで把握している限りではおられます。だから、それほど多くの方はいないのではないかというふうに考えております。

○木庭健太郎君 そうすると、逆に言うと、松野委員が指摘されたように、届けなかったという形になったと、結果的に。こういう人たちがいるという問題につながっていくところもあるんですね。その辺は是非いろんな意味で、まずは最高裁判決に従って、それに基づいていろんな手段をなさるわけですが、その辺、本当に救済の方法はないのかどうかも含めて少し御検討をされたらいかがでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) 先ほども申しましたように、経過措置でどこまで認めるかというのは、これはもうすぐれて立法政策の問題でございます。どの時点で切るかということは、先ほど御説明したとおり、いろいろなことを考えて決めたわけでございまして、あとは実質的な問題でございますけれども、それほど古い方であれば、日本にいれば当然簡易帰化の要件が整って帰化しているだろうし、外国にいれば某外国の生活になじんでいて新たに日本国籍ということもないのではなかろうかということもるる考慮いたしまして、今度のような改正の経過措置の仕切りとした次第でございます。

○木庭健太郎君 最後に、大臣にお伺いしておきたいと思います。
 私は、この最高裁判決を受けたこの改正は、国内にとどまらず国際的にも非常に大きな意味が私はあると思っておりますし、これからの法務行政においても重要な意味があると思っております。ある意味では、適法にこの国籍を取得すべき方の妨げにならないようにきちんとした処置もしていただきたいし、また逆に、不法に国籍を取得しようとする者を許さないという、こういうこれからの国籍の事務が求められると考えておりますが、その実現へ向かって法務省全体を挙げて是非お取り組みをいただきたいし、大臣としてその決意を伺って、質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(森英介君) 委員御指摘のとおり、極めて大きな意味を持つ改正案であると思います。
 今お話しのとおり、その趣旨を生かし、かつ不正を許さないように、法務当局を督励いたしまして、皆様方の不安が払拭できるようにきちんとした国籍事務を実施させたいと思いますので、また今後ともよろしくお願い申し上げます。

○木庭健太郎君 終わります。

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最終更新:2009年01月09日 06:51
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