国会質疑 > 児童ポルノ法 > 1999-06

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衆議院・法務委員会(1999/05/12)/保坂展人議員(社民党所属)

保坂議員についてのWikipediaの解説
○杉浦委員長 次に、保坂展人君。
○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。
 今回の発議者の皆さんの御苦労に大変敬意を表しながら、この法案審議に当たって、幾つかの点、やはり確かめておきたいということで、質問させていただきます。
 まず、児童ポルノということが規定されているわけですけれども、一方で、芸術作品という概念がございます。例えば、不思議の国のアリスの作者であるルイス・キャロルという方がいらっしゃって、写真の技術が始まったばかりの一八六〇年代に、当時では珍しい写真術を駆使して、そのモデルであるアリス・リデルの写真をたくさん撮った。その中には、妖精に扮装させたり、あるいは裸に近い、もしくは裸の写真も撮った。実際、オックスフォードの上司で彼女の親が、これは危険だということで、交際を禁止されるということがあったようです。そのときの写真が、ロンドンのナショナルポートレートギャラリーに現在展示をされて、芸術作品として、いわば長きにわたって評価を得ているということが事実としてあります。
 これが、彼の少女愛なりプラトニックなものであるとしても、そういう嗜好によってつくり出された芸術ということが明らかなわけで、こういうものが現在また写真集などによって出てくる、あるいは今後似たような形で出てくるという問題については、この法案ではどういうふうに考えておられるんでしょうか。
○大森参議院議員 児童ポルノに当たるかどうかにつきましては第二条第三項各号に規定しているとおりでございまして、あとはその判断ということになると思います。
 それで、そのような御質問の意図はわかるんですが、こんな場合にはどうなるかと言われましても、一概に、私どもそれを個別具体的に判断しないとお答えしにくいというものがございます。
 一般的な言い方をしますならば、この法案の関係では、それが芸術作品に該当するか否かという観点ではなく、これは一つに、では芸術作品の定義といったら何かという、これを法律か何かで決めることもできませんので、そういう問題もあるわけですが、当該描写に係る児童の姿態がこの法案の要件を満たすものであるか否かによって判断されるとしか、ちょっと現時点ではお答えのしようがございません。
○保坂委員 恐らく、長きにわたって芸術作品という評価を受けている写真が我が国において流通した、現にしているわけですけれども、それを児童ポルノというふうにはなかなか解しにくいだろうとは思います。
 もう一つ境界例としましては、衣服をつけている幼児の写真であっても、例えばこれも大変有名な写真家でアラーキーと言われる荒木経惟さんが撮られている写真の中で、例えば衣服をつけていてもエロチックに見えるというような写真も現存するわけですが、これは当然該当しないということでよろしいですか。
○大森参議院議員 具体的なものがわかりませんのでまた同じことになるのですが、少なくても三号ポルノ、衣服の全部または一部を脱いだ、これが要件となりまして、その上で性欲を興奮もしくは刺激せしめとありますので、それに該当しないようなものであれば除外されることになりますので、衣服を脱いでいないもので、それがエロチックなポーズであったとしても、そういうことになると思います。
○保坂委員 あと、刑罰というところで端的にお聞きいたしますけれども、十八歳未満の児童と恋愛をして、再三出ていた質問でありますけれども、性的関係を含めた交際をした場合に、性的行為の前であろうが後であろうが、プレゼントや金銭の供与ということがその交際の中であり得るだろうということはここの場でも随分出たと思うんですが、恋愛関係が破綻した後に、これらの金銭や物品の供与が児童買春であるというふうに告発されるケースが想定できないだろうか。
 例えば、もうちょっと突っ込んで言いますと、ある成人男性、二十代のサラリーマンでもいいですけれども、十六歳の少女と交際をしていて、対価性ということでいえば、非常に無理をして、ボーナスのほとんどをつぎ込んでパソコンを買ってあげたとか、例えばフルコースの、ほとんど給料の大半を尽くしていたというようなこともあるわけですよね、実際には。しかし、その男性が新たな恋人と出会って、少女との関係は終えんに向かった。その少女の方は、非常に裏切られた、許せないというふうに思ったときに、私は買春された、証拠はこれです、金銭及び物品はこういうふうにもらっていますと言われた場合に、この男性の側は反証がなかなかしにくいのかなということも考えるんですが、ちょっとひねった質問で済みませんが、お答えいただきたいと思います。
○円参議院議員 大変個別具体的なケースだと思いますが、先ほどもお答えしましたように、児童と真摯に交際している場合は、その児童と性交等をしていても、またその後になってもそのことについて反対給付を提供しているとは言いがたいことが多いと思いますので、対償の供与の要件に該当しない限りは児童買春には当たらないと思います。
○保坂委員 ここは大事なところなんで、いろいろ現場現場の事件によっては、やはり告発者がいて、そして証拠があって、告発された者が、被疑者が否定をしても、証拠があった場合かなり難しいのかと思いますが、刑事局長にもちょっと……。では、その前にどうぞ。
○大森参議院議員 告発されること自体は、その人のやることですのでとめることはできない、災難に遭うということもあるのかなと思います。しかし、証拠があってと先生おっしゃるんですけれども、証拠というのは何かもらったものですか、物的証拠もありますけれども、しかし、これは両者の供述もちゃんととりますので、事情聴取いたしますので、適正な取り調べが行われるならば事実と間違ったようなことが認定されることはないと私は信じております。
○松尾政府委員 今の御答弁のとおりで、格別つけ加えることはないわけでございますが、問題は、真摯な恋愛関係にあるかどうかという事実認定の問題でございます。それは具体的な事案においてはまさに証拠によるということになります。
 この法案、いずれ成立いたしましたら、その運用を預かる者として申し上げるならば、やはり具体的な事案に即しまして総合的にそういったものを判断する。そうした際にも、ただいまの発議者の御答弁あるいは法文それからこれまでの国会における御論議全般といいますか、そういったものの趣旨にのっとりまして適切に対応していきたいと考えているところでございます。
○保坂委員 済みません、難しい質問を最初にいたしましたけれども、私自身はこの法案に大賛成で、とりわけ東南アジア、例えばタイでありますとかフィリピンなどというところで児童買春ツアーなるものが実際上日本人の男性によって行われていて、またその拠点たるホテルなども、実はNGOの仕事などで行きますと、隣でしている話など聞くにたえないという経験もございます。
 世界じゅうに、しかも日本発の、あるいは日本人業者による児童ポルノがはんらんしているこの国際的な責任を、この法案がどのようにその要請にこたえているのかという点についてお願いします。
○円参議院議員 お答えいたします。
 今保坂議員がおっしゃったとおり、今回の法案をつくるきっかけになりましたのは、国内の児童の性的搾取や性的虐待だけではなくて、本当に東南アジアに対して我が国の成人が性的搾取及び性的虐待を続けていることに各国から大きな非難がありましたことや、また、世界に出回っております児童ポルノの八〇%は日本製であるとも言われております。そういったところからぜひとも国内外の児童を性的搾取や性的虐待から守らなければいけない、そういったことからこの法案ができました。
 それで、この法案は、児童買春及び児童ポルノに係る行為を犯罪とし、日本国民の国外犯も処罰することも入れまして非親告罪としているわけでございます。したがって、外国において児童買春等をした日本国民は、被害者からの告訴がなくても処罰することができることになります。国外犯につきましても、もちろん国際協力が大変重要でございます。例えば、国民の国外犯等に関する捜査共助、逃亡犯罪人の引き渡しの実施及びこれらに関連する情報交換を推進することが考えられまして、今後大いにこういったことをやってまいりたいと思っております。
○保坂委員 次に、セカンドレイプという言葉もありますけれども、性的な被害に遭った女性が、そのことを明らかにすることによってさらに深刻な侮辱を受ける、あるいは取り調べ等においても残念ながらそういった事例もないわけではない、捜査官によって問われることがということがあります。もちろん、この点は十分議論されて提出されていると思うんですけれども、この買春及びポルノの被害に遭った子供が逆に傷つけられる、生涯修復できないような傷を受けるということについて、いろいろ考えられていると思うんです。そこについて伺いたいのです。
 特にこの十三条の、記事化することあるいはマスメディアによって流布されることを抑えている部分がありますけれども、神戸の少年事件の写真誌報道等々、やった者が、罰則がないので、努力規定なのでということで、少年法の場合にもそれが事実上出っ放しの状態で、ここに罰則をやはり設けるべきではないかというふうに強く思うんですが、その点も含めてお願いしたいと思います。
○吉川(春)参議院議員 お答えいたします。
 十二条についてまず私の方から御答弁いたします。その後また別の人から答弁いたします。
 確かに先生がおっしゃられますように、児童買春とかポルノ自体が、非常に児童の心が傷を受ける犯罪でございますが、そしてその尊厳が踏みにじられるわけですが、同時に、さらにその捜査、公判の過程で、今おっしゃったようなセカンドレイプというようなことがないように、これは十分に注意しなければならないということで、第十二条が一項、二項と設けられております。
 第一項では、この法律に規定する罪に係る事件の捜査及び公判に職務上関係のある者に対して、「その職務を行うに当たり、児童の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならない。」ということを決めております。同時に第二項では、国及び地方公共団体に、これらの者に対して、「児童の人権、特性等に関する理解を深めるための訓練及び啓発を行うよう努める」、この義務を課した規定です。
 事件の捜査及び公判に職務上関係ある者、特に警察官などだと思いますけれども、捜査や公判において関係者の名誉や尊厳を害しないように注意を払うということは当然のことですけれども、同時に、児童については特別に、まだ成長過程にあって、精神的に未熟である上に、その人権を自分から守る能力も限界がありますから、特にこれらの点について配慮をすべきだ、このように考えております。
 それで、勉強会の場でもいろいろ意見が出たことですけれども、例えば、捜査に当たっては、子供の信頼すべきカウンセラーとか弁護士の同席とか、被害女児の事情聴取は女性捜査員が行うとか、こういうことは今警察でも非常に努力をしておられるということが報告されましたけれども、そういう問題についても一層力を尽くしていく必要があると思います。また、訓練及び啓発を行うということについては、例えば子どもの権利条約について捜査に当たる人たちに徹底するとか、それから、この法案が成立した後にはこの法律の趣旨を徹底するとか、第二項において、そういう訓練も行う義務を規定している、このように考えております。
○清水(澄)参議院議員 今二つのことをおっしゃったんですが、一つの、警察等においての取り扱いのところは今説明されました。そして、新聞やいろいろな出版物への記事の問題は、これは今度この法律が施行されれば禁止されるわけですから、ここで改めて罰則をというふうには今考えておりません。もしそれが必要であれば、三年後の見直しまでに検討をしたらいいのではないかと思います。
○保坂委員 私自身は、せっかく禁止するんなら、処罰もないとなかなか難しいのかなという気はいたしておりますので、指摘をして、また考えていきたいと思います。
 次に、これは時間的に最後になりますが、十五条、十六条で、先ほどの答弁にもつながるんですが、被害に遭った児童のケアあるいはリハビリ等について規定されています。これは、例えばこの国会、衆参両院の有志の皆さんでチャイルドラインを推進していこうという議員連盟もできていますけれども、子供自身が匿名で被害を訴えるというようなシステム、これは法によってつくるものではありませんが、社会的な基盤形成ということでもありますけれども、このあたりのこと、十五条、十六条関係のケア、リハビリについて、及び子供がみずから被害を訴え出るシステムなどについて、お考えを聞かせていただきたいと思います。
○清水(澄)参議院議員 児童買春、児童ポルノ等の問題に取り組むに当たっては、単に処罰だけでは十分ではないと思います。やはりこれはあくまでも子供の人権を保護する、子供の受けた被害をどう回復させていくかということが重要な課題であると思っております。
 そこで、今の御質問のところは、子供が買春における性交等の相手方となったり、それから児童ポルノにその姿態を描写されるということは、非常に児童の心身に有害な影響を与えるものでありまして、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長していくことができるような、そういう保護のための各種の措置を講じていかなければならないということがここで規定をされているわけでございます。
 そこで、第十五条では、相談、指導、一時保護、施設への入所等を、関係行政機関等が相互に連携を図りつつ適切に講ずると規定しておりますし、第十六条では、専門的な知識に基づく保護を適切に行うことができるように、それらに関係する人々の資質の向上等をここで明記しております。そしてさらに、児童の保護を行う民間の団体との連携協力体制の整備なども、これから必要な体制整備に努めていかなきゃいけないというふうになっておるわけでございます。
 それらの具体的なものといたしましては、まだこの問題に取りかかるのが初めてでございますから、児童買春、児童ポルノ等の性的搾取、性的虐待の実態や、その児童に与える影響、それから被害児童のケア、リハビリの手法なども今後さらに調査研究をしていかなきゃならないと思いますし、相談等につきましても、そのケア、リハビリを専門的に行える体制の構築等、それらについても、既存の児童相談所やいろいろなこれまでにある施設または行政機関等を、ちゃんと整合性を持って、その裏の、プログラムの開発とか専門的な人材の育成、その他関係する職員に対する教育訓練というのは非常に急務になっているだろう。
 そして同時に、被害児童の保護を、公的機関だけではなくて、NGO等の皆さんたちも努力しているわけですから、そういう人たちと一緒に被害児童の保護のための重要な役割を担っていくような、支援的なそういうものを今後つくっていくべきではないかということを想定しておるわけでございます。
 以上です。
○保坂委員 本法案は、子どもの権利条約、児童の権利条約批准後大変大事な、しかもストックホルムにおける会議の指摘をじかに受けて、本当にスピーディーに、また時間をかけて濃密に検討されてきた関係議員の御努力に改めて敬意を表しつつ、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

衆議院・法務委員会(1999/05/14)/笹川堯議員(自民党所属)

○杉浦委員長 これより会議を開きます。
 参議院提出、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。笹川堯君。

○笹川委員 まず、昨年、私が法務常任委員長のときに、オウムの問題で特別立法で参議院で大変お世話になりまして、無事に可決をしていただきましたことをお礼申し上げます。
 きょうは、そのお返しという意味ではありませんが、私が何か反対をしているように思っている人もおられるかもしれませんが、私は、少なくとも人を罰するという法律をつくる以上は、やはり厳しく中を精査しながらよりよいものをつくっていただきたい、こういう希望のもとに幾つかの質問をさせていただきたいと思います。
 この法案そのものの趣旨は、罰するということよりは、これから次代を担う小さいお子さんのために健全な精神と肉体をやはり守ってやりたい、こういう趣旨でこの法案をつくられたと思うんですが、その点は間違いございませんか。発議者、どなたでも結構です。

○林(芳)参議院議員 お答えいたします。
 笹川先生おっしゃるとおりでございまして、いろいろな条約等ございましたし、先生御指摘のとおり、次代の日本を担っていただく、児童というのはここでは十八歳未満ということになっておりますけれども、健全な育成をしていただきたいという趣旨を込めましてこの法律をつくらせていただいた次第でございます。

○笹川委員 趣旨は私も同感であります。
 さて、個別にお聞きしたいと思いますが、例えば児童だとか幼児だとか、いろいろな言葉がありますが、これは、いずれにしても各国とも、あるいはアメリカでも各州でそれぞれ定義が違っておりますので、そういう内容について議論をするつもりはありません。十八歳未満ということで御了解をさせていただきます。こういう法案をつくること自体は、大変我々人間の恥でありますし、特に大人としては寂しい限りでありますが、そういうものをつくらざるを得なかったという背景はよく理解ができます。
 さて、皆さんの方に御通知申し上げたと思いますが、実は第二条の中に、性交もしくは類似行為ということがございます。先般同僚議員の質問の中で相当部分は理解できたんですが、実はアメリカでは幼児ポルノが法律によって禁止されております。それから、アニマルセックス、獣姦と言っておりますが、実はこれもアメリカで法律において禁止をされました。それまでは、そういうポルノ映画、雑誌等が販売されまして、供給元は中南米の非常に所得の低い国の方々でありまして、それを買う方はアメリカでありました。そういうことで、アメリカの世論も喚起いたしまして、実はそういう法律ができまして、禁止されました。
 ところが、今回のこの法律の中には、類似行為というものの中にアニマルセックスは入っているのかどうか。私は、これは入っていないというふうに理解をいたしております。と申しますのは、アメリカではその項目を一項目ぴしっと立てまして、これはだめですよということをうたっておりますので、できたら私はこの法律の中に、今回間に合わなければ次回でも結構ですから、もう少し明確にわかるように、俗に言う動物を相手にしたアニマルセックスの禁止というものをぴしっと入れていただければありがたい。
 これは長い人間の歴史の中で、戦争のときに、まあ国会の場でありますので、言葉を選ばなきゃなりませんのでこれ以上申し上げませんが、それは皆さんがよく御存じのとおりの歴史の中でございましたので、ひとつその点についてお尋ねをします。御案内のように、大人のおもちゃといいますか、バイブレーターその他は性交の類似行為の中に入るという判例も実はもう既に出ているということを見ておりますので、その点につきましては了解いたしますが、動物との性交までがこの類似行為の中に入るのかどうかをちょっとお尋ねをさせていただきたい。入るのなら入る、入らないのなら入らない、それで結構です。

○大森参議院議員 性交という言葉は、刑罰法で用いられる場合、通常の理解として、その性交というのは人対人とのものとなっておりますので、そういうアニマルセックスですか、動物と人間との間の行為は性交とは言わないと理解しております。

○笹川委員 昨日の御答弁でもそういうふうにお答えになっておりますので、そうなりますと、当然、やはり私が申し上げている項目については明らかに欠如している。私は、この点を指摘を申し上げたいと思いますので、ぜひひとつ、近い将来にそういうことを入れていただく意思があるかということだけを確認させていただきます。どなたでも結構です。

○大森参議院議員 今回の勉強会で、さまざまな論点が出てまいりました。ただ、一方で、早くいい法案を成立させようということで急ぎました。それで、もっと時間をかければそういう結論も出たかもしれませんが、これからの、三年後の課題ということで考えております。児童の性的虐待、搾取の形態、ほかにもいろいろあると思いますので、これもこれからの課題で、必要なものは三年後の見直しのときに何らかの形にしていきたいというふうに思っております。

○笹川委員 今お答えいただきまして、三年後の見直しということもございますが、将来ともにそういうことをでき得る限り早急に整備をしていただけるように私の方からお願いをいたしておきますので、よろしくお願い申し上げます。
 さて、質問の順番が多少ずれるかもわかりませんが、実はこの法律、捜査あるいはまた公判の維持とかいろいろなことがございますが、職務上関係のあった者は、児童の人権及び特性に配慮するというふうに第五の捜査と公判のところに書いてある。これは、今までいろいろなお子さんを相手にするときの裁判は同じであります。
 実は、私は国会議員として初めてエイズ問題を国会で取り上げて質問いたしました。御案内のように、当時、新聞でもラジオでもテレビでもHIVの感染者を犯罪人のように追跡されまして、実は物すごく人権が無視されたわけであります。御主人が実はHIVの患者でありましたが、奥さんが看護婦さん。ところが、そのことが知れて、追及するものですから、病院の患者さんが、だんなさんがHIVの感染者なんだから当然奥さんもそうだ、そんな人が看護婦では我々は困るということで、結局、最終的には看護婦さんはその病院から追放されました。
 こういうことを、一つの犯罪を摘発するために別な犯罪、特に私は人権にかかわる問題をないがしろにされては困る。特に今回は、お子さんの人権を配慮したいというのがこの法律の趣旨でありますので。
 たまたま今回は議員立法であります、閣法ではありませんので、その辺を、国に対して啓蒙運動をするとかということは結構なんですが、実は今から数年前、ちょうど十月の国民体育大会の時期に、皇后陛下が宝島という雑誌にあることないこと書かれまして、心因性の、言葉が出なくなった病気になったことは、皆さん御存じのとおりであります。実は私、当時法務委員会でこれを取り上げまして、数百人の方が天皇、皇后にお仕えしているのにこういう問題一つ解決できないようでは、皇室の安泰は難しいのではないかと。しかも、本来ならば、奥さんがたたかれればだんなさんはあだ討ちをすべきである。ところが、天皇陛下にはそういうことをすることが許されていないし、また法律を使って訴訟の対象にもなり得ない。こういうことで、実は宮内庁に広報官が新たにあれ以後新設をされました。
 そのときに私は、大変こういう問題を、今後起きないようにということを思っておりますが、今度の問題が、法律ができて、摘発されないことが望ましいのだけれども、仮に摘発をされたときに、今の放送あるいはまた新聞、雑誌といいましてもピンからキリまでありますから、私は、興味本位で猛烈に書くだろうと。そうすると、とてもお子さんの、仮名でしようが何でしようが、人権の擁護という面について、私は非常に実は不安があります。
 そこで、「記事等の掲載等の禁止」というふうにここに書いてあるのですけれども、これは禁止といいましても罰則規定がありませんので、私は、守られるなんて到底思っていない。発議者の皆さん方は、この禁止規定をつくることによって、そういう人権が守られるような雑誌、報道等になるかということをひとつお聞きをしたいと思います。

○清水(澄)参議院議員 せんだっての本委員会でも御説明いたしました。
 まず、今おっしゃいますような、確かに、被害を受けた子供の記事について、その名前とか住所とか学校名とか、被害者がだれであるかという対象がわかる記事が非常に多うございますので、それを今回は禁止行為の中に含めたいということでこの法案の中に入れましたけれども、おっしゃるように、処罰規定はないわけでございます。
 ですから、これも先回のときも御指摘ございましたので、今回はそれをまだ入れておりませんけれども、三年後の見直しの中で、必要であればまた御論議いただきたいと思いますが、今回はそれでまずやってみるということと、それから、非常にいろいろな記事を取り締まるということの方のおそれといいますか、そちらの方の意見が非常に多うございましたので、今回はとりあえず罰則規定は入れていない、こういう状況でございます。

○笹川委員 今の御答弁で、そういう議論も出たけれども、三年後にやるというお答えじゃないですね。三年後までに議論をしようというお答えだと思うのですが、私は、それでは困るので入れてほしい。
 ただし、憲法上、やはり発言の自由だとか、いや出版の自由だとか、いろいろそれはわかります。だけれども、幼児のポルノのこの件にというふうにして限定されているわけですから、何でもかんでも書いてはいかぬと言っているわけじゃありませんので、そのことは仮に処罰規定を入れても、ポルノ、この事件に関して禁止するんですよということだから、私は差し支えないと思うのですが、いかがですか。もう一度。

○円参議院議員 先生おっしゃるとおり、例えば表現の自由の価値を極めて重視しておりますアメリカにおいても、子供ポルノの規制は憲法上の審査をパスしてきております。
 そういった意味で、私どもも、こういったことに罰則を設けるかどうか、随分勉強会で議論をいたしましたけれども、今回は、報道の自由との関係もございまして、直ちに罰則を設けることには慎重であるべきだということに結論が出ましたので、三年後、先生のおっしゃるように、見直しの時期にまた必ず入れるということは、ちょっと今申し上げられないと思います。

○笹川委員 私は、三年以内にこういうことが起きないと心から期待をしております。もしそうであれば入れなくていいんだけれども、おくれるとなかなか入れにくい。最初に火がついて、皆さん方が、こういうのをやるんだと意気込んだときには割とできるんだけれども、時間がたってしまうとなかなかできにくいのじゃないかと私は思うので、報道の自由というのはよく理解できますが、ぜひそういう趣旨をきょうの議事録に私も発言としてとどめておきたいと思いますので、ひとつその精神が生きるように、お子様を守るという人権上の配慮の上に立って、そのことだけは報道してはいけません、書いてはいけませんよという、ごくごく限定された自衛権の発動だという意味に御理解いただいて、これからもしそういう議論があったときには、ぜひひとつお子さんを守るという意味において掲載しないようにしていただきたい。そうじゃないと、興味本位に書いて書いて書きなぐるということになるおそれがあると思います。
 さて、次に、国外犯のことをちょっとお尋ねしますが、飛んでしまってごめんなさい、国外犯といったって、そんなに難しいことを御質問するわけではありませんので。
 御案内のように、今、日本は非常に経済的にも恵まれておりますし、教育の水準も高うございますから、私は、日本国内でこういうことが起きるということは、可能性としては非常に少ないと思っています。
 だけれども、フィリピンだとか、国名を言うことは大変申しわけないのですけれども、あるいはタイや何かも、後進国といいますか、経済的に非常に貧困のところではそういうことがあったということも事実でございますし、そういうことが国連で指摘をされたということで、御婦人の方々がそういう会合に出たときに厳しく詰問をされたということも聞いております。そのことも今回の法案の中に当然くみ入れられたと思っております。
 そこで、実は一番困るのは、日本の警察とか検察庁と同等のレベルのときには非常に摘発そのものも容易なんですが、私もフィリピンはもう数え切れないぐらいスポーツ交流で行きましたが、非常にいいかげんな国でありますので、こういうものが日本にできることによって、逆にマフィアだとかやくざが、善良な人が行くわけですから、当然脅迫だとか恐喝のたぐいになるということはアメリカでも過去ずっとありましたから、私は、このことは皆無じゃない、それが起きたときに困るなというような心配をいたしております。
 その点について、私はたまたま国外犯というのは難しいかなと言ったのですが、逆に言うと、国外犯を外してしまうと、外国のこの法案に対する評価がなくなってしまうのだということもよく聞いております。
 そこで、国外犯というのは、明らかにこれは、法律ができますと、後は我々の仕事から離れまして検察庁、警察の仕事になるのですが、これは運用のときにやはり厳しく、そしてまた公平にやっていただかないと、一つの犯罪を摘発することによって一つの犯罪がまた発生してくる、こういうことの議論もございましたか。ちょっとお尋ねいたします。

○堂本参議院議員 お答え申し上げます。
 そもそもこの法律を立案するときに、日本に児童買春、児童ポルノを禁止する法律がないために、日本のそういった国外犯が野放し状態にあるということが最初の動機でございました。ですから、国内であろうと国外であろうと、今回の法律では罰するということになっているわけです。それでよろしいのでしょうか。
 先生の御質問、マフィアとの関係で、善良な人が行ったときにということの意味がよくわかりませんでした。

○笹川委員 御婦人の皆様でそこまでおわかりにならないのが当然でありまして、知っている方がおかしいのかもわかりませんが、これは現実としてそういうことがあるのですよ。例えば年齢の問題がありますのでね。
 例えば十八歳未満で当然これはひっかかるわけですから。例えば外国に行って、年を聞いた、幾つ、十八だと言った。安心してしまった。ところが、実際は十五だった。そうすると今度、向こうの家族とか悪い人が、十五だったからあなたは法律に触れますよということになり得ないのかなということの心配をちょっとお尋ねしただけであります。

○大森参議院議員 まず、先生、マフィアと、それから、善良な人が行くので被害に遭うというところ、今お尋ねしましたら、御婦人であるからわからないとおっしゃったんですけれども、御婦人であるからわからないのかどうか、ちょっと確かめたいので、もう一度そこのところを教えていただけませんでしょうか。

○笹川委員 今の発議者の答弁の中で、マフィアその他がわかりにくいというお話があったので、私は、そういうことが起こり得るんですということを申し上げただけの話であります。
 例えば、「過失がないときは、この限りでない。」九条にありますね。いかなることがあっても処罰を免れないんだけれども、過失がないときというのをお尋ねしようと思ったんだけれども、時間の関係でなるたけ早くやめたいと思ったから。では、IDカードを見せなさい、ドライバーライセンスを見せなさいと言って年齢が確認できたらいいですよ。こんなことをしてはいけないんだけれども、仮にそうしたときに、できないでしょうから、幾つと聞いたときに、いや、十八と言った、だからおれは「この限りでない。」に入ると思うけれども、相手は、そんなこと言わなかった、私は正真正銘十四歳でしたと言われたときに、私は、申し上げたようなことがアメリカでもあったし、日本でも起こり得ますと。
 だから、国外犯の処罰というのはやはり難しい面がありますよということは、皆さんの勉強会の中でそういう話が出ましたかということをお聞きしただけであります。

○林(芳)参議院議員 お答えを申し上げます。
 私も先生がおっしゃることは、男性でございますのでというわけでもありませんが、よくわかるつもりでございまして、その意味で、この九条を置いておりまして、児童を使用する者以外は、この反対解釈として、過失の場合は認められないということ、除かれるということに一応して、これは国外犯にも適用がございますので、御懸念のところは、その辺のラインで、あとは運用のところできちっとやってもらわなければいけないというふうに考えておるところでございます。

○笹川委員 あとは運用という御発言がありましたが、運用というのは、あくまでも警察と検察庁の限りでありますので、それは期待ができるだろうというふうには思いますが、そういう心配もあるんだということだけ、ぜひ頭の中に置いておいていただきたいと思うんです。
 では、きょうは運輸省の観光部に来ていただいたんですが、日本人が団体で買春ツアーをすると随分新聞に書かれました。ところが、日本人というのはもともと私を初めとして語学に達者な人は少ないものですから、どうしても団体で外国へ行くわけですね。そうすると、団体というのは、個人のそういう気持ちをばらばらにしてしまう。一人だと横断歩道を渡らないけれども、みんなだから行ってしまうということが実は往々にしてございます。
 そこで、観光会社というのは運輸省が免許を与えているわけですね。ところが現実に、例えばフィリピンのような外国に行ったときには、そこでもうその案内は終わってしまって、切れてしまって、あとは地元の業者に引き渡してしまうということになりますと、何か起きたときに、日本の旅行会社は責任ありません、知りませんでした、現地がやったんですから現地の人の処罰ですということになると、日本人がやったものは処罰できるけれども、提供した向こうの人まで日本の法律で罰することはできません、向こうの法律で罰していただくよりしようがないのであるから。
 そういうことになりますと、運輸省が、そういうライセンスを持っている業者に、観光で下請に渡すときにそういうことのないように、例えば成田だとか羽田で外国へ行くときに、けん銃の密輸だとかあるいは麻薬はいけませんというカードをいっぱい渡していますね。ああいうことの啓蒙運動をどんどんやってもらわないと、この法律をつくっただけではなかなか実行が難しいから。
 そういう意味で、きょうは運輸省に来てもらったので、そういうことのないように、現地の会社だから我々の手が及ばないということでなくして、そういう責任を、やったところにはもうライセンスは国内で取り上げますよというぐらいの行政指導をぜひひとつやってもらいたい。そうじゃないと、この法案をつくっても実行が非常に難しいと思うので、この点については運輸省の答弁を求めます。

○大黒説明員 お答えいたします。
 運輸省といたしましては、従来より、旅行業者が日本人海外旅行者の不健全な行動に関与しないよう指導してきたところでございますけれども、この法案が成立した際には、この法律の趣旨を踏まえ、旅行業者及び現地子会社その他代理人を含め、この法律に違反する行為に関与しないよう旅行業協会等を通じて旅行業者を指導してまいりたいというふうに思っております。
 また、旅行業者、その代理人等含め、そうした行為に万が一関与した場合については、旅行業者に対し、運輸省といたしましても適切に対応してまいりたいと思っておるところでございます。

○笹川委員 運輸省、適切というのは、なかなか役人の答弁で適切というのはあいまいなので、厳しく対処するというふうにひとつもう一遍答弁してくれませんか。

○大黒説明員 いろいろなケースが想定されるといいますか、どういうケースが生じるかということは非常に想定しがたいところがございますけれども、旅行業法におきましても、旅行業者または代理人、使用人その他従業者が、その取り扱う旅行業務に関連して、旅行者に、旅行地の法令に違反する行為をあっせんし、またはその行為を行うことに関し便宜供与を行うこと等を禁止しておるという条項もございます。
 ケースによっては旅行業法に違反している場合も想定されるところでございまして、旅行業法に基づく処分、それから、そうした場合以外であっても、旅行業者に対して指導その他厳しい対応を行う必要があると考えております。

○笹川委員 発議者の皆さんに大変御苦労をおかけしました。今運輸省にお尋ねしたのは、この法案がうまく機能し、海外から非難を受けないように協力をしてもらうという意味でこの席で発言をしていただきましたので、ぜひ、そのこともひとつ頭の中に入れていただいて御留意をいただければありがたい。時間が早いんですが、どうもありがとうございました。

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最終更新:2008年12月25日 11:57
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