国会質疑 > 児童ポルノ法 > 1999-03

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提案理由説明(衆議院法務委員会(1999/05/11))

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
○清水(嘉)参議院議員 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 平成六年に批准されました児童の権利に関する条約では、児童はあらゆる形態の性的搾取及び性的虐待から保護されることが定められております。
 しかしながら、国内における援助交際あるいは東南アジアにおける買春ツアーのように、対償を供与して児童と性交等をすることが社会問題となっております。また、児童の性的な姿態を描写した写真、ビデオテープ等の製造及び販売も問題となっているところであります。
 諸外国の多くは、立法によってこれらの行為を厳しく処罰しております。しかしながら、我が国の現行の法律では、刑法の強姦罪、強制わいせつ罪またはわいせつ図画頒布罪によって一定範囲で処罰されることはありますが、対償を供与して児童と性交等をすることは、十三歳以上の者に対しては暴行または脅迫を用いない場合には原則として処罰対象にはなっておりませんし、児童の性的な姿態を描写した写真等であって諸外国においては児童ポルノとして取り締まられているものすべてが刑法上のわいせつ図画に該当するものではないのが現状であります。
 そこで、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害していることの重大性にかんがみ、児童の権利の擁護に資するため、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、児童の保護のための措置等を定めるこの法律案を提案した次第でございます。
 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、この法律で保護される児童を、十八歳未満の者としております。
 第二は、児童買春の処罰であります。児童等に対償を供与して児童と性交、性交類似行為または自己の性的好奇心を満たす目的で児童の性器等、すなわち性器、肛門または乳首をさわり、もしくは児童に自己の性器等をさわらせることを児童買春として処罰するとともに、児童買春の周旋や周旋目的での勧誘を処罰することとしております。
 第三は、児童ポルノに係る行為の処罰であります。児童ポルノとは、写真、ビデオテープその他の物であって、児童を相手方とするもしくは児童による性交もしくは性交類似行為に係る児童の姿態、他人が児童の性器等をさわる行為もしくは児童が他人の性器等をさわる行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させもしくは刺激するものまたは衣服の全部もしくは一部をつけない児童の姿態であって性欲を興奮させもしくは刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したものをいい、児童ポルノの頒布、販売、業としての貸与、公然陳列またはこれらの目的での製造等を処罰することとしております。
 第四は、児童の人身売買の処罰であります。児童を児童買春における性交等の相手方とさせまたは児童の姿態を描写して児童ポルノを製造する目的で、児童を売買した者等を処罰することとしております。
 第五は、捜査及び公判における配慮等であります。この法律で処罰される犯罪の事件の捜査及び公判に職務上関係のある者は、児童の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならないこととしております。
 第六は、記事等の掲載等の禁止であります。氏名、年齢、職業、就学する学校の名称、住居、容貌等により児童がこの法律で処罰される犯罪の事件に係る者であることを推知することができるような記事もしくは写真または放送番組の出版物への掲載または放送を禁ずることとしております。
 第七は、児童の保護のための措置であります。児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、関係行政機関は、必要な保護のための措置を適切に講ずるものとしております。また、このような児童の保護を専門的知識に基づき適切に行うことができるよう、国及び地方公共団体は、必要な体制の整備に努めるものとしております。
 第八は、国際協力の推進であります。国は、この法律で処罰される犯罪の防止及び事件の適正かつ迅速な捜査のため、国際的な緊密な連携の確保、国際的な調査研究の推進等の国際協力の推進に努めるものとしております。
 第九は、検討条項であります。児童買春及び児童ポルノの規制その他の児童を性的搾取及び性的虐待から守るための制度については、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行状況、児童の権利の擁護に関する国際的動向等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとしております。
 なお、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
○杉浦委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十時六分散会

衆議院・法務委員会(1999/05/12)/枝野幸男議員(民主党所属)

○杉浦委員長 これより会議を開きます。
 参議院提出、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。枝野幸男君。
○枝野委員 民主党の枝野でございます。
 まず、本案についての質問に先立ちまして、理事会等でも御議論をさせていただいていることと思いますが、私、法務委員会にこの六年間の議員生活の間ほとんど籍を置いておりますが、一貫して紳士的な場ということで先輩諸兄からも言っていただいておりました法務委員会の議事の進行に若干さまざまな混乱が出ているということで、そのことについては私の立場からも遺憾の意を最初に申し上げさせていただいて、しっかりとした対応を今後していただきたいということを最初に申し上げておきたいというふうに思います。
 さて、本案について質問に入らせていただきますが、提案者の皆様、きょうはお疲れさまでございます。提案者の皆様も御承知のとおり、ともに超党派でこの法案づくりにかかわってまいりました者として、ようやく衆議院に来て審議をされるということについては大変よかったなというふうに思っております。私も、去年の国会などでは議員立法の提案者として、金融の問題でしたが、参議院などに行かせていただいて答弁させていただいた経験を持つ者としては、参議院での審議そしてきょうの衆議院の審議に向けて、提案者になられた皆様方には大変な御苦労があろうということで、そのことについて敬意を表したいと思います。
 超党派での勉強会のときもそうでありましたが、児童買春や児童ポルノ、特にこれによる被害を受けている子供たちのことを考えますと、しっかりとした法律を一刻も早くつくらなければならないという思いで私も加わらせていただいてまいりました。そのためにも、刑罰法規でございますので、抽象的、あいまいな法律であって、そのことによって不当ではない行為まで処罰されることになっては当然のことながらいけませんし、またそういったあいまいさがあれば、逆に、運用する警察、法務当局などの方もあるいは腰が引けたような対応になってしまって、期待をした効果が上がらないということも考えられないわけではございませんので、具体的に、あいまいさがないんだ、刑罰の範囲というものが特定をされているんだということについて順次お尋ねをさせていただきたいと思っております。
 まず、出発点として、この法律の提案の理由にかかわりまして一点お尋ねをさせていただきたいと思います。
 若干言葉じりをとらえるような話になるんでありますが、参議院の議事録を十分に読ませていただきましたところ、今回の立法の提案理由として、児童買春や児童ポルノというものが「児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになる」ということを御答弁になっておられます。こういった風潮がいい悪いということはもちろん別といたしまして、今回の法律は刑罰法規でありますので、内心の心理といいますか、それは対象にはなっていないというふうに理解していいと思います。どういった内心を持っていようとも、それが現実に子供たちの権利を侵害するというような行動に出たということがこの法律で処罰をするということであるというふうに思っております。この点、確認をさせていただいて、改めて本案の提案の理由を御説明いただければというふうに思います。
○円参議院議員 枝野先生の御質問にお答えいたします。
 今先生がおっしゃったように、内心の自由や、また性風俗などを規制することは本来法案の目的ではなく、あくまで具体的な虐待や搾取の行為を禁止するものと考えておりますが、本当にその御指摘のとおり、この法案は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性を考えまして、また、児童買春や児童ポルノに係る行為は、児童買春の相手方となった児童や児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えることから、かかる行為を規制、処罰するものでございます。
 ただ、児童買春や児童ポルノに係る行為を放置することは、児童買春の相手方となり、児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えることは明白でございます。しかし、それだけでなく、まだそのような対象になっていない児童についても、健全な性的観念を持てなくなるなど、その人格の完全かつ調和のとれた発達が阻害されることにつながるのではないでしょうか。そこから児童一般を守るとともに、児童を性欲の対象としてとらえることのない健全な社会を維持することもこの法案では目的としております。そこで参議院の答弁では、その趣旨を、「児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに、身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に」重大な影響を与えると表現させていただいたものでございます。
○枝野委員 今の御答弁で趣旨は理解をさせていただくんですが、こういう理解でよろしいでしょうか。つまり、刑罰法規の部分については、まさに内心の問題ではなくて、実際の侵害の行動を処罰するものだ、これは間違いない。ただ、そういったことの結果として、刑罰法規とは違った意味の部分のところで、そうした風潮を抑止するという効果もある、それも目的に入っている。ただ、あくまでも刑罰法規は行動についてのものである、こういう理解でよろしいですね。
○円参議院議員 はい、枝野先生の御指摘のとおりでございます。
○枝野委員 それでは、具体的な法案の、特に刑罰の構成要件について、若干の確認を順次させていただいていきたいというふうに考えております。
 まず、二条の二項のところに、児童買春の定義として、「対償を供与し、」あるいは「その供与の約束をして、」ということが要件として入っております。この対償の供与に関しましてお伺いをさせていただきたいというふうに思っておるんです。
 一般的に対償というものがどれぐらいの範囲をいうものであるのか。もちろん、要するにお金を渡して、いわゆるまさに一般的に言われるような売買春のような形態がこれに当たる。これは間違いないことだというふうに思っておりますし、当然こうしたことは、児童を相手にした場合に絶対に許されるものではないということはいいんだろうと思いますが、例えば男女の関係の間の中で、たまたま一方が相手に対して食事をごちそうしたりするというようなことは、大人同士の関係だったら、当然一般的によくあり得ることである。それは男性が女性に食事をごちそうすることもあれば、女性が男性に食事をごちそうすることもあるでしょうし、そういったことはあり得るわけです。それが、例えば十七歳の高校生同士で、マクドナルドかなんかに行って、きょうはおれがごちそうするわなんということはここで言う対償ということには入らないだろうなと思うんですけれども、大体そんな理解でよろしいでしょうか。
○円参議院議員 児童に食事をごちそうして、その後当該児童と性交に至った場合、それが買春になるのかどうかというお尋ねのように思いますけれども、まず、児童買春とは、先生ももちろん御承知のとおり、児童等に対償を供与し、または供与の約束をして児童と性交等をすることとしておりまして、ここに言う対償とは、児童に対して、性交等をすることに対する反対給付としての経済的利益を言っております。
 児童買春に当たるかどうかは、性交等をすることに対する反対給付と言えるかという点と、供与されたものが社会通念上経済的利益と言えるかという点の二点を満たす必要がございます。
 御質問のような例が児童買春に当たるかどうかについては、食事をごちそうされたことによって児童が性交等をすることを決定したか否か、また食事が経済的に見てどれぐらいの価値があるかなどを総合的に勘案いたしまして、対償であると認められる場合に限り児童買春に当たると考えておりますので、先生がイメージされているようなものは当たらないのではないかと思います。
○枝野委員 なかなかこれは、範囲を区切って答弁いただくのは難しいということは非常によくわかっています。今の日本では考えられないかもしれませんけれども、例えば、マクドナルドのハンバーガー程度のものであったとしても、貧しくて食べるものもなくて困っているような児童にハンバーガーを食べさせてあげるからと言ったら、それは対償になることもあり得るかもしれないだろうということもあるでしょうから、一般的に答えるのはなかなか難しいことだろうということはよくわかっています。
 きょうは、実際にこの法律ができ上がったら運用をしていただく警察当局と法務当局にもおいでいただいております。こちらもまた答弁が大変だろうというのはよくわかっておりますけれども、今のような提案者の意図、そしてこの文言の一般的な意味から考えて、大体今のようなことで運用もされていくという理解をしてよろしいかどうか、お答えいただければ、警察と法務、それぞれお願いいたします。
○松尾政府委員 今なされました御答弁で結構だと思います。
○小林(奉)政府委員 警察といたしましても、ただいまの発議者の答弁の趣旨に従いまして、適切な運用に努めてまいりたいと考えております。
○枝野委員 ほかのところでもうちょっと突っ込まなければいけないかなと思いますが、今のところは今ぐらいでいいかなと思います。
 似たようなことを聞いて、提案者の方が大変答えにくいのを繰り返します。難しいのはわかった上で、恐縮ですけれども。
 食事と同じような例で、要するに対価性を持たないような普通の男女関係の中でも、たまたまきょうは誕生日だから誕生日のプレゼントをした、その後たまたまホテルに行ったとかというようなケースというのは一般論としてはたくさんある。大人同士ではあり得るし、それがいい悪いは別として、十七歳同士でも今の社会では十分あり得る話です。普通の対等におつき合いをしている男女関係で、たまたま片方は十七歳、例えば十七歳同士でもいいでしょう、それで誕生日のプレゼントを渡した、その直後にホテルに行きました、では、これは対償ですなんということにはならないだろうなというような議論をしてきましたが、そんな理解でよろしいですね。
○円参議院議員 十八歳以下の児童同士ではなくて、大人が児童にプレゼントをした場合の話ですか。(枝野委員「いやいや、まさに誕生日のプレゼントだから、一般的な普通におつき合いをしている、たまたまきょうプレゼントを渡し、その直後にホテルに行きましたなんという話は」と呼ぶ)もう既に恋愛関係にあるような同士が、真摯にお互いを思い合っていて、そしてプレゼントをして、その後性交等に至った場合は、私は、一般的には児童買春にはならないと存じます。
 ただ、プレゼントを渡されたことによって児童が性交等をすることを決定したか否か、また、プレゼントが経済的に見てどれぐらいの価値があるかなどを総合的に勘案して、それが対償であると認められる場合に限り、やはり児童買春に当たるとは思います。
○枝野委員 難しいところをうまく答えていただいたというふうに思うので、ありがとうございます。
 これについても念のためお尋ねしますが、法務当局、警察当局、こういった理解でよろしいですね。
○松尾政府委員 お答えいたします。
 先ほどは大変端的にお答えさせていただきましたけれども、多少申し上げますと、既存の法律を運用しておる立場からいいますと、法案の文言というものの解釈が、既存のものと今御議論いただいているものとで同じ文言であれば、同じような解釈というのが自然な発想でございますが、例えば売春防止法の二条で、「「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、」「性交することをいう。」こういうことを言っています。それで、今までの判例の積み重ねでは、売春をすることに対する反対給付というのが一つの条件、それから経済的利益、これが二つ目の条件ということでございます。ですから、具体的事案に適用されるかどうかは、それらを総合的に、その二点、主に中心点が二点ですが、それに当たるかどうかの判断ということになろうかと思います。
 そういった意味で、今発議者の方の御答弁をお聞きしていますと、法務当局としても、御答弁の内容そのものに対しましては、従来のそういう積み重ねからいいましても格別問題はございませんし、また、その御発言の趣旨を我々としても十分に尊重して運用してまいる、慎重に対処してまいるということだろうと思います。
○小林(奉)政府委員 御質問につきましては、先ほどの二点、性交等をすることに対する反対給付という観点、それからもう一点は社会通念上経済的利益と言えるかどうかという、この二点を判断して私どもは適用してまいりたいと思います。
 その場合には、社会通念上、やはり常識に従った判断というものが極めて重要だと思っておりますので、そういった線に基づきまして適切な運用をしてまいりたいと思います。
○枝野委員 大変結構な御答弁をいただいたというふうに思います。
 さて、それでもう一つは、「供与の約束」の「約束」に係るところなんですが、この「約束」というのはどの程度のものが要るのか。具体的に、つまり性交等を行ったら幾ら払いますよとかという約束、これがこれに当たるというのはよくわかる話なんですが、よくある話なんだろうと思いますが、例えば、いずれ旅行にでも連れていってあげるよだなんということを言って、それがほかのところを取捨するために、それなら性交渉に応じようかというような話になったような場合、この程度のあいまいな約束というのは、これは「約束」に当たるのかどうかということをちょっとお尋ねしたいと思うのです。
○円参議院議員 今おっしゃったような、例えばいずれ旅行に連れていこうというようなあいまいな約束につきましては、やはり具体的な事実に応じて、先ほど刑事局長などもおっしゃっていますけれども、また警察もおっしゃっています、それが社会通念上経済的利益に係るものと言えるかどうか、そもそもその約束があったものと言えるかどうかといった、やはりそういった観点を踏まえまして個別に判断されるべきものではないでしょうか。
○枝野委員 それからもう一つ。「対償を供与し、又はその供与の約束をして、」性交等をすることということが要件になっておりますが、こういった対償を供与したり供与の約束なしに性交等が行われ、その後になって例えば児童の側がお金ちょうだいというような話があった場合、これはこの法律に該当するのかどうかということをお答えいただけますでしょうか。
○円参議院議員 今、それが該当するのかどうかということでございますが、児童買春の成立要件の一つである対償の供与、対償の供与の約束といいますのは、性交等がなされる前に存在することが必要でございます。したがいまして、性交等をする前に対償の供与がなく、対償の供与の約束もなかった場合には、性交等の後に対償が供与され、またはその約束がされた場合でも、児童買春には当たらないものと考えております。
○枝野委員 今の点は、法務省、警察、よろしいでしょうか。
○松尾政府委員 既存の法律であります売春防止法の二条におきましては、「「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、」「性交することをいう。」こうなっております。同じような規定があるわけでございますが、その解釈は、今発議者の御答弁になったのと同じでございます。
○小林(奉)政府委員 行為がなされる前に存することが必要である、このように考えて、運用してまいりたいと思います。
○枝野委員 それから、対償の先ほどの二つの要件の経済的なというところに絡むんだと思うんですけれども、東南アジアの児童買春のような例では、むしろお金の問題の方が大きいのかなと思うんです。国内で、大人が児童に対して性的虐待をするということのケースとしてむしろ想定しやすいのは、一つは、例えば就職活動なんかのときに、今就職先が特にないですから、性交に応じれば雇ってあげますよとかいうような話があった場合、あるいは、本人に限らず親も失業している。子供ごとうまくそういったことをさせれば親を雇ってやるよとか、あるいは学業成績、例えば学校の先生が高校の生徒に対して、性交等に応じれば優をつけてあげますよとか、そういったことはこの対償となるのかどうか、これをお答えいただけますでしょうか。
○円参議院議員 お答えいたします。
 おっしゃるとおり、さまざまなそういったお金ではない、就職させてやるとか、親が失業して大変だねということを利用する人もいるかもしれません。そうした雇用の約束やまたは親の雇用が対償に当たるかどうかは、具体的な事実関係のもとで、これらが性交等をすることに対する反対給付と認められるかという点と、また社会通念上それらが経済的利益と認められるかという判断にかかっていると思われます。学業成績の付与それ自体は、経済的利益とは認めがたいものですので、対償には当たらないと考えます。
○枝野委員 勉強会などの議論の中でもありましたけれども、明確にして絞るということも片方で大事ですけれども、実際に子供たちを傷つけるようなことについて何とかきちんと入れ込まなきゃならないという視点もまた大事で、そうした意味では、学業成績の付与は、この要件では法律上は入らない、だけれども、現実にこういったことが教育の現場などで行われたりすれば、許されることではないというのはお金が対償だった場合以上かもしれないというふうなこともあると思います。
 そういった意味では、これからお互いに、こういったところについてはどうやったらとめることができるのかということについて、きちんと検討していかなきゃならないなということを申し上げておきたいというふうに思います。
 それでは次に、この児童買春の性交等の中には「性交若しくは性交類似行為をし、」という言葉が入っております。この性交類似行為が勉強会でもさんざん議論になったわけでありますが、これが法律の中に書いてある場合と、一般的に法律を全く知らない人が性交類似行為と聞いた場合とでは、多分イメージも違うのではないだろうかな。私も、一応弁護士ではありますけれども、売春防止法とか余り知りませんでしたので、性交類似行為と今回の議論の中で初めて聞いて、あれと思いまして、なるほどなとも一方では思ったのですけれども、ちょっとこの解釈について確認をさせていただきたいと思います。
 例えば、我々のような普通の服を着ていて普通にキスをしましたというような話とか、あるいは普通に服を着ている状態で抱擁をするとか、アメリカなんかでは道端でもするような抱擁をしましたというふうな話は性交類似行為には入らないというふうに考えておりますが、よろしいでしょうか。
○円参議院議員 今枝野先生がおっしゃったようなケースは、私も性交類似行為には入らないと思っております。
 ただ、性交類似行為とは、御案内のように、実質的に見て性交と同視し得る態様における性的な行為を申しております。何が性交類似行為に該当するかにつきましては、あくまでも具体的事案に即して判断されるべき事柄でありますが、今申しましたように、先生のような行為は性交類似行為には当たらないと存じます。
○枝野委員 もしかすると次の要件、「自己の性的好奇心を満たす目的で、」接触をしというところにも絡むのかもしれませんが、着衣の上から例えば乳首等に触れる。触れてはいないのでしょうね、着衣の上ですから。こういったものというのは性交類似行為などの「性交等」の中に入るのでしょうか、入らないのでしょうか。
○円参議院議員 衣服も、着ている衣服の種類とか材質とか厚さによって違いますし、またこれはいろいろ勉強会で、下着のような服はどうなのかとか問題になったところでございますけれども、また、触れるとおっしゃいましたけれども、さわる行為の態様によっても違ってくるかと思います。また、さわる対象部位等の具体的事情もやはり勘案しなければいけませんので、そういった事情を踏まえつつ、具体的事案について個別に判断される事柄であると思います。
○枝野委員 それから、これも勉強会などでいろいろと議論のあったところでありますが、自己の面前で、児童に他者、第三者と性交等をさせる行為、あるいは自己の面前で、自分は接触はしないで児童に自慰行為などをさせる行為、こうした行為はこの性交類似行為あるいは性交等の中に含まれるのでありましょうか。
○円参議院議員 今のお尋ねでいきますと、児童と性交等をする者が対償を供与した者と意思を通じているような場合には、対償を供与した者が児童買春の共犯となる場合もあり得ると考えております。しかし、そのような状況でない場合には、児童と性交等をしたものとは評価できませんので、児童買春には当たらないものと思います。
 児童等に対償を供与して児童に自慰をさせる行為につきましては、それが性交類似行為に該当する程度に至っていない限り児童買春に当たらないものと考えております。
○枝野委員 ここまでの性交類似行為の解釈のところ、法務省、警察庁、運用主体として、大体よろしいでしょうか。
○松尾政府委員 既存の法律でも、児童福祉法の三十四条には「児童に淫行をさせる行為」の「淫行」という文言がございますが、これは、解釈としては、性交のみならず性交類似行為も含まれるというのが最高裁の判例で確定しているところでございます。
 性交類似行為の概念につきましては、児童の心身に与える有害性が認められ、実質的に見て性交と同視し得る程度の行為などと今までの判例の累積では定義されているところでございますので、その内容は発議者の御答弁の内容とほぼ同じだと考えてよろしいかと思います。
 また、対償を供与した者と淫行した者とが異なる場合のものでございますが、例えば強姦罪等でありましても、実際に姦淫をした者とそれをさせた者が一体となって強姦をしたとみなされるケースについては、例えば女性の共犯であっても強姦罪の正犯が成立するということも判例で認められているところでございますので、淫行をさせる、あるいはその相手となるということの解釈においても同じように考えられるのではないか。参考までに申し上げます。
○小林(奉)政府委員 性交類似行為につきましては、実質的に見て性交と同視し得る態様における性的行為をいうということの発議者の御説明がございました。また、これにつきましては、法務省の刑事局長から答弁がございましたように、判例、裁判例の積み重ねがございますので、そういった判断に従って、私どもは適切に運用してまいりたいと思います。
○枝野委員 ありがとうございます。
 それから、この点について一点だけ、確認的な話なんですが、趣旨としては問題ないんだろうと思うのですが、ちょっと文字にしましたら趣旨が伝わりにくかったりしている部分がありますので、参議院の議事録を見ますと、千葉景子議員からの質問に対して円議員がお答えになっているところで、性交類似行為の具体例、例えばということでこうおっしゃっているのです。「これは異性間の性交とその態様を同じくする状況下における、」途中を省略しますが、「同性愛行為などをいう、」という御答弁をされているのですが、その「性交とその態様を同じくする状況下における、」と「同性愛」というものの間がいろいろたくさん入っているので、多分つながっている御趣旨だというふうに思うのですが、紙だけで見ますとつながっているのかつながっていないのかがちょっとわからないものですから、念のため確認させてください。
○円参議院議員 おっしゃるとおり、つながっているものなんですが、もう一度、その性交類似行為の定義につきまして参議院の質疑で答弁いたしましたところを再度説明させていただきますと、性交類似行為とは、実質的に見て性交と同視し得る態様における性的な行為をいいます。例えば、異性間の性交とその態様を同じくする状況下における、あるいは性交を模して行われる手淫、口淫行為、同性愛行為などでございます。
 ここで、おっしゃるとおり、「異性間の性交とその態様を同じくする状況下における、あるいは性交を模して行われる」という部分は「同性愛行為」にもかかるものでございます。したがって、同性愛行為につきましても、異性間の性交とその態様を同じくする状況下における、あるいは性交を模して行われるものが性交類似行為に当たるというふうに思っております。
 参議院の質疑ではあるいはそのことが適切に表現されなかったかもしれませんが、結論としては今御説明したとおりでございまして、枝野先生の理解と同じと思っております。
○枝野委員 ありがとうございます。
 それでは次に、児童ポルノの方の定義のところについてお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。
 「「児童ポルノ」とは、」ということで、「写真、ビデオテープその他の物」というまず一つの限定がございます。ここのところで、従来の自社さで衆議院に出されておりました案では、「絵」という文言が入っておりましたが、今回「絵」という文言を外しました。そういたしますと、「その他の物」に絵が入るのか入らないかということになるわけですけれども、含まれる絵と含まれない絵があるというふうに理解をしておりますが、どういったものが含まれて、どういったものが含まれないのかということについてお答えいただければと思います。
○大森参議院議員 自社さ案の方では例示のところに「絵」がございましたけれども、今回明記してございません。これは一つに、コミックとかそういうものが入るのか、こういう問題もあったものですから例示から外しております。それで、枝野委員おっしゃるとおりに、絵につきましては、「その他の物」に含まれ、児童ポルノに該当することもあり得ると考えております。
 この法案では、児童ポルノとは、児童の一定の「姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」とされておりますが、ここに言う児童とは、十八歳未満の実在する児童をいうことになります。したがいまして、絵につきましても、実在する児童の姿態、これを描写したものであると認められない限り、児童ポルノには該当しないことになります。こう考えております。
○枝野委員 ありがとうございます。
 さてそこで、ちょっと悩ましいのは、実在の児童を描いたのだけれども、実際に裸にしてそれを描いたということではなくて、顔だけ実在の子供、例えば芸能人などのような有名人の顔であれば、顔だけは実在の子供の顔を描きました。だけれども、裸の部分についてはこれは全く想像してかきました。こういった実在の児童を想像して描いた絵というのは、これはどちらに入るのでありましょうか。
○大森参議院議員 その場合に、人物、児童という人間は実在しているけれども、その姿態が、架空ですね、これが実在しない場合、想像してかいたものになりますので、実在する児童の姿態とは言えず、児童ポルノには該当しないと考えております。
○枝野委員 このあたりのところは表現の自由と絡みますので、やはり明確さが要る。今のようなものを本来は規制の対象にすべきかどうかということはまた別に問題があって、うまく規制できるのだったらすべきというのもあるかもしれませんけれども、この法律の解釈として、対応としては今のようなことでやるべきだろうというふうに思います。そうしか解釈できないだろうというふうに私も思います。
 今の特に後の方の話など、法務省それから警察庁、同じような理解でよろしいでしょうか。
○松尾政府委員 ただいまの発議者の御答弁の趣旨を尊重して運用していくべきものと思っております。
○小林(奉)政府委員 警察におきましても、ただいまの法務省さんと同じように、発議者の説明の趣旨を体して適切に運用してまいりたいと思います。

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最終更新:2008年12月05日 05:20
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