国会質疑 > 国籍法 > 04

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衆議院・法務委員会(2008/11/18)/古本伸一郎議員(民主党所属)

古本伸一郎 - Wikipedia
○山本委員長 次に、古本伸一郎君。

○古本委員 おはようございます。民主党の古本伸一郎でございます。

 違憲判決を受けての法改正ということで、大変重たい事案でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 子たちの笑顔というものは、それに偽りは私はないと思います。そのいたいけな子たちの姿に偽りはないと思う中で、真正なる血統があるにもかかわらず日本国籍を取得できないという子たちがいるならば、これは救わなければなりません。他方、こうした子たちがいる一方で、私たち立法府としては、その他大勢の日本国民もいらっしゃるわけで、その方々の利益も守らなければなりません。その意味で、違憲判決を受けての法改正でありますので、是非は論をまたない部分はあるわけでありますが、幾つか懸念する点を確認してまいりたいと思います。

違憲判決の分析と準正要件の緩和という対応の可能性

 まず、何が違憲であったのかということでありますが、準正要件による国籍取得自体は否定はされていない。つまり、準正か非準正であるかという国籍を取得する要件そのものがよろしくなかったわけであって、準正によって国籍を取得した子までが否定されているわけではない、これは正しいでしょうか。

○倉吉政府参考人 御指摘のとおりでございます。

○古本委員 そうであれば、婚姻を求めたという準正要件そのものが問題であって、つまりは、要件緩和というやり方で対応する余地はなかったのか。いかがでしょうか。

○倉吉政府参考人 このもとの国籍法三条が立法された当時のことをお尋ねだと思いますが、その当時におきましては、日本国との結びつきをどういうふうにして考えるのが合理的かという発想で規定が定められておりまして、父親と母親が婚姻しているときは、父親が日本人であるときはその子供は日本国との結びつきが強くなるだろう、それでそういう要件を課したということでございまして、今回の最高裁判決におきまして、この規定が今日では違憲となった。もっと正確に言いますと、この原告らが申し立てをした当時においては違憲状態に遅くともあったと言ってはおりますけれども、少なくともこの制定当時、昭和五十九年当時におきましてはこの規定は違憲ではないという判断がされているところでございます。

○古本委員 つまり、同じく血統主義をとってきた英国でも、登録をしたり養子縁組をしたりとか、幾つかの条件を付与するという運用もあったわけですね。日本は、父系血統主義でありましたのを、昭和五十九年に父母系の血統主義に変えたわけであります。この血統主義である限りは、分娩の事実がない、男にはありませんが女性は分娩の事実がありますので、母親の子がすなわち国籍を取るということはいいと思うんですが、その子が国籍が取れるということは何の異論もありませんが、父が真正なる血統をその子との間に有しているかについては、これは実は婚姻を前提としたこれまでの国籍付与を変えてくるわけでありますので、血統の真贋、つまり血統が真実か否かについては、これまで以上に確認をする必要性が出てきているんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○倉吉政府参考人 確かに、これまで置いておりました婚姻という要件、嫡出子だという要件を外すわけでございますので、その意味では理論的にもその必要性が多くなる、実際的にも偽装認知を防ぐためにその必要性は高い、こういうことになろうかと思います。

○古本委員 科学的な調査による補完ですとか、いろいろな御議論がありますが、例えば出生場所という観点もあると思うんですね。実は最高裁も、事案の概要説明の冒頭でこう述べておられます。「日本国民である父とフィリピン共和国籍を有する母との間に本邦において出生した上告人らが」と切り出しているんですね。

 つまり、日本で生まれたという事実は少なからず最高裁は意識したと思うんですが、その点はいかがでしょうか。

○倉吉政府参考人 最高裁の判決におきましては、基本的にどういう事実関係なのかというのを指摘するのは最小限必要なことであります。これは、判例の射程距離であるとか、いろいろな場合に問題となります。こういう事実関係の事件についてこういう判断をしたのだということをきちっと説明しなければいけませんので、その前提として事実関係が挙げられている。

 理論的な結論において住所があるということは、意識はされたということは正しいかもしれませんが、それが必須だと言っているわけではない、このように考えております。

○古本委員 意識はしたということを今、多分是認されたというふうに受けとめましたが、実は、国際情勢の変化というのを随分最高裁は酌み取ったというふうに受けとめているんです。

 国際情勢の中で、児童の権利に関する条約七条、これは、児童は、出生のときから氏名を有する権利、国籍を取得する権利を有する、できる限り父母によって養育される権利を有すると書いているんですね。つまり、できればお父さん、お母さんと一緒に過ごした方がいいということを書いてあるわけですよ。

 加えまして、児童の権利委員会の最終意見、二〇〇四年、これは日本に対して求められたわけでありますが、委員会は、締約国に対し、日本で生まれた児童が無国籍にならぬよう、条約七条と適合させるべく国籍法、他を改正することを勧告する、こう来ているんですね。

 ですから、どこで生まれたかという要素は法務省としても意識すべきであると思うんですが、いかがでしょうか。最高裁じゃないです、法務省としてどうですか。

○倉吉政府参考人 まず、先ほどの答弁で、申しわけありませんが、最高裁の判決が意識したということを申し上げました。しかし、最高裁の判決について法務当局がこういうコメントをするというのはまことに出過ぎたことでありましたので、お許しをいただいて、撤回させていただきたいと思います。

 その上で、今の点でございますが、法務省として政策としてどうかという問いでございまして、その点についてはさまざまな考え方があり得るところだろうと思いますが、今回は、最高裁で違憲と言われたということ、それから、そのほかの住所要件であるとか日本で生まれたという要件をつけることがどうかということは、補足意見を通じて賛成と反対の意見が争われている。こういう中で、最高裁の判決は、とにかくこのような嫡出子と非嫡出子の間で差異を設けることは差別に当たるんだという判断をしているということから照らして、少なくとも住所要件というものを今回の法案においてつけるということは相当ではないと考えた次第であります。

○古本委員 では、何が違憲であったかについてもう二、三お尋ねしたいんですが、最高裁は、判決文の抜粋ですが、「四 国籍法三条一項による国籍取得の区別の憲法適合性について」というくだりで、「日本国籍は、我が国の構成員としての資格であるとともに、我が国において基本的人権の保障、公的資格の付与、公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位でもある。」こう述べておられるんですね。

 それぞれについて確認をしたいんですが、まず、憲法十四条にそもそも違反をしているということでありますので、法のもとの平等という概念でいけば、外国人にも基本的な人権は対応されている、こういう立場に立つのが憲法解釈の通説だというふうに理解をいたしております。昭和三十九年に、世界人権宣言によれば憲法十四条の趣旨は外国人に対しても類推される、こういう判決も出ておりますので、そう理解をしたいと思います。その立場に立ちますと、恐らくこの基本的人権については既に保護されているんだろう。これは類推をいたします。

日本人と外国人の間での社会保障サービスの違い

 もう一つでありますが、公的給付金なんですね。これは報道等で大変御懸念の声も出ておるようでありますが、きょうは厚生労働省も来ていただいています。例えば卑近なところで生活保護、あるいは労災保険、あるいは失業保険、さらには年金、さまざまな公的給付があるわけですが、日本人と外国人だからといって何らの差異があるんでしょうか。差別があるんでしょうか。

○坂本政府参考人 御指摘のありました各種の社会保障サービスにつきましては、制度によりまして違いはあるものの、総じて、適法に在留しており活動に制限を受けない外国人については、日本人と実質的に異なる取り扱いはいたしておりません。

○古本委員 例えば生活保護なんかですと、偽装の認知によって日本国籍を取得し、生活保護をある意味かすめ取るといったような御懸念もあるんですが、そんなことというのはできるんですか。

○坂本政府参考人 生活保護につきましては、日本国民を対象にいたしておりますが、適法に国内に居住している実態がある者につきましては、それに準じた取り扱いとして対応しておるところでございます。

○古本委員 つまり、このたびの法改正によって新たに国籍を取得した子が、例えば本件の事案でいけばフィリピン人から日本人になったということによって、従前と従後によって生活保護に差異はない、これでいいでしょうか。

○坂本政府参考人 日本国籍を取得いたしますと、生活保護法の適用を受けるという形では……(古本委員「金額に差はないんですか」と呼ぶ)それは原則として差はないと考えております。

○古本委員 大臣、つまり、公的給付についてはまず差はないようなんですね。

 もう一つ、子たちの将来の就職や、あるいは参政権といった社会への参加という概念も大事なんですが、まずは食べることですよ。まずはこの日本で暮らしていく。今マニラにいらっしゃるのかどうかわかりませんが、生きていくことの方が大事ですよ。

 それから、教育ですね。きょうは文科省も来てもらっています。外国人だと教育が今受けられないんでしょうか。それとも、国籍を取得することによって何か特別な義務教育が受けられるようになるんでしょうか。

○前川政府参考人 外国人につきましては、外国人がその子供を公立義務教育諸学校へ就学させることを希望する場合には、国際人権規約等を踏まえまして、日本人の子供と同様に無償での受け入れを行っているところでございます。

○古本委員 つまり、教育も受けられるんですよ。ただ、就学通知ということで、一年生に上がるときに学校へ行きなさいよという案内が親御さんに行くか行かないかなんですけれども、これもよくよく聞けば、希望者への教育の機会提供ということで、案内はきちっとしているそうです。

 ということで、公的給付、援助という意味では、法改正に伴って特別に何か便益が提供されるという御懸念については当たらないという整理をまずしておきたいと思うんです。

警察官への就職機会などの公的資格の付与

 実は、最高裁の言った中で最後のこれが問題なんです。公的資格の付与なんです。まさにフィリピンのこのたびの原告の少女は、いたいけにも将来警察官になりたいと言っているんですね。つまりは、実は、日本人の父の真正なる血統を受け継いだ子が日本人になってくれて、日本の警察官になって警察行政に関与したいと。もしそうであれば、これはあっぱれですよ。ところが、実は日本人じゃない人が成り済まして日本人になって、警察官になって、その人に逮捕された日には目も当てられませんね。

 つまり、公的資格の付与というのは、最高裁が指摘した基本的人権の保障並びに公的給付を受ける上で重要な意味を持つという中で、実はこの公的資格というのが私は一番大事な話じゃなかろうかと思う。

 その意味において、やはり何をもって差別というのかという議論に立ち返りながら少し整理しなければいけないのは、DNAの鑑定等々先ほど来先輩方から出ておりましたが、日本人同士の認知においてはDNA鑑定を求めていないのに、相手が外国人になった途端になぜ求められるんだ、それこそ差別だ、これもごもっともなんですが、よくよく考えますと、民法上の父子関係を設定する認知、つまりは、いわゆる嫡出でない子の認知の仕組みは国籍発生が伴う話ではないんですよ。他方、本件は認知に伴って国籍が得られるんです。この事柄において似て非なる認知だと思うんですが、いかがでしょうか。

○倉吉政府参考人 実は認知というのは、親子関係を、おまえがおれの子供だということをする意思表示、それを届け出ですることであります。日本の法制では、それによって父子関係が発生するとしているだけでありまして、それと今回の国籍取得届について、別の認知をするわけではありません。同じ認知。認知がまずあって、それについて、両親が結婚をしていなくても、認知をしていれば、日本人の血統の子なんだから、届け出によって国籍取得を認めることにしようというのが最高裁の判断でございまして、似て非なる認知という言い方はちょっとずれている、失礼ですが、ちょっとそんな感じがいたしますが。

○古本委員 では局長、言いかえますと、先ほど来DNAの鑑定の話も出ておったように記憶しますが、これをやる気はありますか。

○倉吉政府参考人 DNAの鑑定については、先ほど来御答弁申し上げているとおりでありまして、さまざまな問題があるので、これを採用するのは適当ではないと考えております。

 もう一度繰り返しましょうか、その中身を。(古本委員「理由は」と呼ぶ)

 理由は、まず、このDNA鑑定を持ち込むということは、基本的に認知という届け出行為だけで父子関係を設定させようとしている民法の親子関係の全体の法体系に影響を及ぼす。DNAであれば今まで親子だと言われていた人を簡単にひっくり返せるんだ、こういう風潮になっては困るというのが一つございます。

 それから、あとは具体的な問題でございますけれども、DNAでやるということになりましても、これは認知届を受け付ける市区町村とか、それから国籍取得届を受け付ける法務局がやることでございます。そうすると、DNAと簡単に申しますけれども、それは、検体が間違いなく父と子とされている人からとられているのか、そういうことが判断はできない、その他さまざまな事柄でございます。

○古本委員 今重要なことを言っていただきましたね。現在認知されている父子関係をひっくり返すことになるかもしれないということだったんですが、今、我が国における認知は、認知の際にDNAなんて求めていませんよ。届け出ればいいわけですね。つまり、それは何かというと、例えば前夫の子というのですか、連れ子という言い方が正しいかどうかは、済みません、不適切なら訂正しますが、その子を好意的に認知してきたという歴史的背景もあるわけでしょう。

 そういったことについては、実は実子でないにもかかわらず、その子は新しいお父さんにある意味認知してもらうことによって経済的な背景も強化される等々の中で、実は日本の父子関係においてのこの認知は、極めてその部分については好意的な認知があるということで、好意的な認知に関しては、いわば偽装認知があってもそれは寛容してきたという背景があるんじゃないのですか。そのことを指摘しているんですよ。局長もわかっているでしょう。

 そういった認知と、今回の認知は国籍という大いなるおまけがついてくるんです。これはおまけじゃない、本質ですね。領土であり、国民というのは、我が国にとっての骨格です。その国籍というものが、このたびの認知により付随してくるんですね。だからこの認知は違うんじゃないですかと言っているんですよ。それをずれているとは、あなた、失敬だ。

○倉吉政府参考人 ただいま聞いておりまして、御趣旨がよくわかりました。先ほどの発言は撤回させていただきたいと思いますが、要するに、まず虚偽の認知であるという前提に立って、これまでともすればやられがちであった、養子縁組に近いような、ただ自分の子供にしたいということで、本当は自分の子供じゃないんだけれども、わかっていて認知をする、それを周りの家族も容認して一緒に育てる、そういうことと、違法に国籍を取ってやろう、親子関係がないんだけれども国籍を取ってやろうという意図で虚偽の認知を仮装する、これはもちろん動機が全然違いますので、違うということは御指摘のとおりでございます。

認知の違いと国籍行政について

○古本委員 つまりは、こうした認知の違いというのは、今民事局長をして御理解をいただけたのは大変光栄に存じますけれども、やはり本件の本質だと思うんですね。ですから、今後の運用で、さまざまな真贋の確認についてはぜひ遺漏なきを図っていただくということを強く念を押しておきたいと思いますが、あわせて、きょうは内閣府の増原副大臣もいらっしゃっておりまして、ぜひお尋ねしたい事柄がございます。

 実は、本件の議論は、大臣が冒頭趣旨説明をしていただいた文章の最初の一行目に、国籍行政という言葉でおっしゃっておられるんですね。つまり、国籍行政とは何かという話なんです。これは、この範囲を新たに広げることになるのか。今潜在的に権利を留保していた人の権利が行使できるだけであって、範囲が広がる話なのかどうなのか、このことについて少し議論してみたいと思うんです。
 まず、今回の法改正によって範囲は広がるんでしょうか、民事局長。

○倉吉政府参考人 現実に国籍行政の対象、射程範囲になっている人がふえるのかという意味だとすれば、多くの方は、このような、父親に認知をされたというだけ、両親が結婚していないという人は、若干時間がかかります、それなりの審査をいたしますので時間がかかりますが、これまで簡易帰化によって日本国籍を取得する道を選んでいたのではないかな、これはただ推測でございますが、と思われます。

 そのように、多くの人がそうだったとすれば、そういう人たちが、今度は簡易帰化の申請をするまでもなく、届け出で国籍を取得することができることになるだけなので、それほど変わらないのかなという気はいたします。

 ただ、今回の改正によりまして、外国で生活している方が在外公館に対して届け出だけでできるということになります。日本の簡易帰化の要件というのは、少なくとも日本に何年か住んでいるか、住所要件だったかが必要ですので、そこは変わる、その意味ではふえるということになると思います。

移民政策との関連性はあるのか?

○古本委員 恐らくふえるんですね。だから、範囲は広がったというふうに私は受けとめます。

 他方、きょう与党の先生もにわかに動きが、いろいろとやっておられるようでありますが、実はこれは法制審にも諮っていないんですね。例えば、御党の中でも移民政策を唱える大家もおられるというふうに伺っておりまして、いや、日本は血統主義ですけれども生地主義に切りかえるんだ、来るもの拒まず、ただでさえ少子化なんだから、手を打っていくという意味では、この際日本人になっていただけるなんてありがたいことだという発想に転換したんだというならまだわかりやすいですよ。

 つまり、議論の中で、国籍行政とおっしゃるからには、移民政策についての議論があったのかどうか。少子化対策という観点から、いかがでしょうか。

○増原副大臣 ただいま御指摘の点でありますが、平成十六年に閣議決定いたしております少子化社会対策大綱、これにつきましては、特に移民政策といったようなものは入れておりませんで、四点言っておりますが、若者の自立とたくましい子育て、あるいは仕事と家庭の両立支援と働き方の問題とか入れておりまして、いわゆる移民政策については入れておりません。

○古本委員 つまり、国籍行政といいながら、実は生地主義か血統主義かというのは、これは根幹の話なんですね。最高裁に言われたから慌ててやったという感が否めないんですよ。

 ですから、きょう論点惹起がまだし切れないのが山とありますけれども、その意味では、本当にこの後、終局、採決ということはまことにもって何ともしがたいものを感じますけれども、もう一点、ぜひ聞いておきたいんですよ。

最高裁判決について

 そういった上で、どこで生まれたかというのに加えまして、一緒に住んでいるかどうかというのは物すごく大事だと思うんですね。実は今回、違憲だというふうに、〇五年の四月、断罪された東京地裁をもってして、家族としての共同生活が認められない場合、違法と断ずる根拠はないと言っているんですね。つまり、やはり一緒に住んでいるかどうかというのは今後とも大事な観点になると思うんですが、これは重視されますか、されませんか、それだけ。

○倉吉政府参考人 実は、一緒に住んでいるとか、日本に住んでいるとか、そういう要件を新たにつけ加えるということは逆に新たな差別を生むことにならないか。それであれば、嫡出子の、準正によってこれまでそういう要件もなしに届け出でできた方にも同じ要件を課さなければならなくなる。そうすると、今までそんな要件がなくても届け出でできたのに、何でこんな新しい要件がつけ加わるんだという不合理さが加わるということで、そのような新しい要件をつけ加えるということには消極の見解を持っております。

○古本委員 あと、加えて、いつから違憲状態になったのかという論点も実は残っているんですね。違憲状態がいつになったか。最高裁は、昭和五十九年の法改正のときには準正要件は合理的だったとおっしゃっているんですね。その後、平成十五年ごろには、準正と非準正の区別が違憲になったとおっしゃっておられます。途中、平成七年に、民法九百条の四号ただし書きの問題、つまり嫡出か非嫡出かの差別について、これはその後も累次にわたって議論があるようでありますが、これは合憲だとおっしゃっているんですね。直近ですと、事前に事務方から聞きましたが、平成十四年にも合憲だと類推される判断が出ている。そうしますと、ピンポイントで、平成十五年の一体いつから違憲になったんだという話になるんですね。

 きょう厚労省に来てもらっていますけれども、人口統計から言えることで、そんなに劇的な変化があったのかという話も実はあるんですね。昭和六十年当時の非嫡出割合というのは一%でした。そして、違憲だと言われた十五年が一・九%なんです。つまり、このコンマ九%が、この立法府をしてつくった法律が憲法に反していると断罪されるに足る違憲状態になったのかどうなのかという、これは統計的な分析も要るんですよ。

 もう時間がありません。だから、課題の提起だけさせていただきます。

法改正によって救われる子供の数

 さらに、救われる子の数ということも多分あると思うんですけれども、これはずばり、何人ぐらい救われると思いますか。それによって法務局の体制やら、入管体制やら、警察当局の動きやら、いろいろなことが変わってきますよ。これはずばり、何人救われるともくろんでおられますか。

○倉吉政府参考人 実は、ちょっと限られた範囲でサンプル調査をいたしました。本件の、両親は結婚していないんだけれども認知された、日本人の父親に認知されて、外国人の母親だ、そういう人がどれぐらいいるのかというのをちょっと類推いたしまして、サンプル調査なので正確とはとても言えませんけれども、その結果では、六百人ぐらいという結論がたしか出ていたかのように記憶しております。

○古本委員 他方、報道によれば、フィリピン人と日本人の間の子をジャピーノというそうですね。この子たちが今五万人控えておるというふうに聞きますね。五万人といったら、ちょっとした町ですよ。全員が仮に日本国籍を取るということになれば、大変な潜在母数が私はあると思いますね。

 ですから、きょう、法務当局が登記所でどういう面談をしていくのか等の実務には全く入れなかったので本当に残念でなりませんが、ぜひさまざまな面談を通じて体制を整えていただきたいということを申し上げ、ちょっと幾つか論点を整理して終わりたいと思うんです。

まとめとしての論点整理

 まず、政治として、大臣、国籍行政とおっしゃる限りは、やはり大局観は政府として求められると思います。

 それから、違憲判決を受けたということではあれ、準正か非準正かというその要件の差別が問題だと言われただけであって、実は胎児認知の問題には入っていないんですね。子は親が結婚しているかどうかも選べませんけれども、お母さんのおなかからいつ出てきたかも選べないんですよ。実は、この胎児認知についての差別については、差別的扱いとあえて言っていいでしょう、触れていないんですよ。これは非常にインバランスを感じます。その意味で、今回の準正の要件については、運用で改正できたんじゃないかという懸念は残りますね。

 さらに、認知の父子関係については、民事局長をして理解していただけたので、差はあるんだろうということで留飲は下がりましたけれども、とはいえ、国籍取得が伴います大変大きな話でありますので、血統主義を我が国が維持するためのコストとしてさまざまなことを今後やっていかなきゃいけない、こう思うわけですね。

 さらに、日本とのつながりという意味でいうならば、さりとて、国際機関も言っていますよ。お父さん、お母さんと子は住んだ方が幸せだと書いてあるんですよ。その居住要件というのは、やはりしっかり確認すべきですよ。重視しないというお話がありましたけれども、これはまことに残念です。

 それから、重要な法的な地位という意味では、この子が将来警察官になりたいというのは、ある意味あっぱれですよ。だけれども、そうじゃない人が、真正なる血統を有さない人が、将来我が国の警察官になろうとしている人が仮にいたならば、これはもう本末転倒、何とかしなければなりません。

 それから、違憲状態も、はっきり言って、平成十五年の一体いつからなったんだというのははっきりしません。これは積み残されたままです。

 それから、偽装認知、偽装結婚の話なんですけれども、真正な血統を持っている今回の原告団のような方の名誉を守るためにも、その真贋の確認は、逆にその方々の名誉のためにもしっかりやった方がいいと思います。

 最後に一言だけ、大臣、言わせてください。真正なる血統を持っておられた子の幸せと、その他の大勢いる善良なる日本人の利益を考えたならば、私は、その子たちの血統が真正であるならば、その重みは全く一にするものだと思います。その意味において、この後の議論、慎重審議ということでありますけれども、いかなる場合の結末を迎えようとも、真正なる血統であるかどうかの確認に向けて全力を挙げるということを今誓ってください。よろしくお願いします。

○森国務大臣 大変に示唆に富む、また独特な興味深い切り口での御議論をいただきまして、大変に参考になりました。

 本日の御審議は、ぜひ速やかな御可決をお願いしたいと思いますけれども、しかしながら、今委員がおっしゃられた移民政策あるいは難民政策、広い範囲で、やはりそういった大局観を持たなきゃいけないということを感じております。そういう意味において、本日の御議論を参考にさせていただいて、今後とも真摯に取り組んでいきたいと思います。

 血統主義の点については、今委員の御指摘は私も認識を共有するものでありまして、その方向でもって努力をいたしますことをここでお約束いたしたいと思います。

○古本委員 ありがとうございました。終わります。

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最終更新:2009年01月09日 06:35
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