国会質疑 > 入管法改正01

国会での審議の中継


参議院・法務委員会(2009/04/09)/前川清成議員(民主党所属)

○赤池委員 自由民主党の赤池誠章でございます。
 本日は、いわゆる入管法の改正と、それに伴う外国人登録法の廃止、一元化ということについて、順次質問をさせていただきたいというふうに思います。
 先ほど大臣から趣旨説明がございましたとおり、国際化という中で、外国人の入国者は昨年一年間で九百万人を超えております。昨年九月からの世界同時不況の影響ということで、上半期は伸びましたが下半期となって減少したとはいえ、本当に大勢の方が我が国に入国をなさっております。入国者数は、韓国の方が二百六十三万人、台湾の方が百四十三万人、中国の方が百二十一万人と、この方々がトップスリーということであります。
 ただ、その反面、御承知のとおり、不法滞在者という方が平成十六年では二十二万人もいらっしゃったということでありまして、そういう面では、これでは、世界に冠たる治安大国と呼ばれる日本が、言ってみれば大変な問題になるということでありまして、御承知のとおり、法務省そして政府一体となって、不法滞在者半減プロジェクトというものを実施してきたわけであります。ことし一月一日現在で、目標の五割減、十一万人まで下がったわけであります。国別でいえば、それでも、韓国の方が二万四千人、中国の方が一万八千人、フィリピンの方が一万七千人と、この国々の方々がワーストスリーということであります。
 前回の質問でも確認をさせていただきましたが、入国管理行政というのは、「ルールを守って国際化」ということを合い言葉にいたしまして、出国、入国の管理行政を通じて日本と世界をしっかり結びつけていく、人々の国際的な交流の円滑化をしっかり図っていく。ただ、その反面、我が国にとっては好ましくない外国人の方々は強制的に国外に退去させるということがうたわれておりまして、そういう面では、健全な日本社会の発展に寄与するということにほかならないわけであります。
 つまり、言わずもがなでありますが、入管行政というのは、人権、人道的な立場があるとはいえ、外国人のために行うというわけではなく、あくまで、日本社会の発展に寄与、国家国民のためにあるというわけであります。
 先ほど御指摘させていただいたように、大勢の方々が入ってくる一方で、不法滞在という形があります。不法滞在、不法入国というのは、犯罪にとって基盤となる、インフラ犯罪という言葉もあるというふうに聞いておりまして、そういう面では、外国人犯罪の増加というのは、数字的な問題以上に、国民の中に体感治安、治安が非常に悪くなっているのではないか、そういう感情を持たれている部分につながるわけであります。
 そういう面では、それに対応して、先ほど御指摘いたしましたように、不法滞在者半減プロジェクトを実施した法務省、まずは、警察としっかり連携をして、警察でも、平成二十年、不法滞在摘発が九千七百十五人ということで、過去五年間で七万人近く摘発をしているということも聞いているわけであります。
 しかし、最近の傾向としては、非常に巧妙になっている。不法滞在者が地方に分散化をしていくとか、居住とか稼働、いろいろ動き回るのが大勢ではなくて本当に少人数、小口化という形になっておりますし、非常に精巧な各種偽造証明書が出回っていて、いわゆるブローカーが介在をして犯罪手口が巧妙化しているということも聞いているわけでございます。
 そんな中で、法務省入国管理局として、平成十八年、私ども、委員会でも審議をさせていただいて、法案を改正、成立させていただきました。上陸審査時の生体認証を導入させていただいたわけでありますが、改めてその成果と課題について法務当局からお伺いをしたいと思います。

○西川政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、入国管理局におきましては、テロ対策及び不法滞在者対策として、平成十九年の十一月から個人識別情報を活用した入国審査を実施しているところでございます。
 この新しい制度の導入以降、個人識別情報の活用により入国を認めなかった者は、本年三月までの間に一千百十四人に達しております。相当の成果が上がっているものと考えております。
 加えまして、同制度導入後の不法残留の新規発生数でございますが、実施前と実施後を比較いたしますと約三五%減少しており、昨年末までの五年間当局が取り組んだ不法滞在者半減計画の目標達成にも大きく寄与したものというふうに考えております。
 他方、課題の方でございますが、偽装指紋によるすり抜けという事案が発生をいたしました。これは、平成十九年の七月に、我が国から不法残留により退去強制され上陸拒否期間中であった韓国人女性が、平成二十年四月、青森空港から入国し、その後東京入国管理局が同女を摘発、退去強制したという事案でございますが、同人は、氏名及び生年月日が異なる旅券を行使したものでございますけれども、退去強制手続において入国経緯を追及しましたところ、我が国の個人識別情報を活用した入国審査により過去の退去強制歴が発覚するのを避けるため、指にブローカーが用意したテープ様のものをつけて入国審査を通過したという旨を供述いたしました。
 当局といたしましては、この事案の発生を踏まえ、対策として、提供された指紋の品質値について厳格な基準を設けまして、それが一定程度以下の場合には、入国審査官が指の状態を目視の上、指紋に偽装がないか確実に確認するとともに、指紋の状態をブースにいる入国審査官がディスプレー上で確認できるようにいたしました。
 いずれにしても、指紋の加工、偽装は厳格な入国審査を実施する上で看過できないものであり、今後も、警察等関係機関と連携を図るとともに、さらなるシステムの改善を検討し、厳正かつ的確に対処してまいりたいというふうに考えております。

○赤池委員 そういう面では、平成十八年時にも当委員会で議論をさせていただいて導入をした生体認証というものが非常に有効に機能しているということではないのかなというふうに思っております。
 既に約二年たつわけでありますが、当初、人権、人道的な問題で、指紋云々というのはいかがなものかというような批判もあったということもあるわけでありますが、その間特段それに関して問題のようなものというのは何かあるんでしょうか。改めて局長にお伺いいたします。

○西川政府参考人 制度開始前に危惧しておりました指紋提供の拒否者は、現在までのところ一名ということでございまして、特段の問題は生じておりません。この一名についてはそのまま退去いただいたということになります。

○赤池委員 そういう面では、当初はアメリカと日本のみで、拙速ではないかという批判もあったということでありますが、テロ対策さらに不法滞在への対応としては非常に有効に機能しているということではないのかなと思います。
 あと、日本、アメリカ以外でも今後こういった動きが世界的にも広がる、そんな可能性はあるんでしょうか。改めて局長、お伺いしたいと思います。

○西川政府参考人 現在、韓国で導入を検討中であるという話を聞いております。

○赤池委員 各国、当然お金のかかる、体制のかかる話でありますが、これだけ有効に機能しているということであれば、こういった面でも、国際協力を含めて、それぞれ関係国に働きかけていくということも大事ではないかなというふうに思います。
 それから、課題として指摘をされた偽装指紋事件に関しても、これも当然、いろいろなシステムを導入しても、それを、いわゆる犯罪集団というのはどんな形にしても何とかしようということは言われているわけでありまして、そういう面では、今回の偽装指紋事件、早速、目視初めディスプレーの改善ということをしていただいたということではありますが、これも、どういう形で出てくるかというのは本当に難しい問題があるとはいえ、やはり国際的な情勢またはさまざまな情報収集の中で機動的に対応していただきたいというふうに思っております。
 そういう面では、半減プロジェクトということで、五年間の成果が出てきているとはいえ、それでもまだ十万人以上の方がいらっしゃるだろう、それから、毎年毎年不法入国なさる方もいらっしゃるということは間違いはないということでありまして、これは、これだけやったからいいということではなくて、さらに入管当局、当然大変なことにはなるわけですが、警察と協力して、これは限りなくゼロ、もちろんゼロの目標に向かって頑張っていただきたいというふうに思っております。
 続いて、今回新しい在留管理制度という形を導入するんですが、今までの在留管理制度、外国人登録法に基づく今までの制度がどうだったのかなということを、現状を確認させていただきたいというふうに思うんです。
 これは私も聞いて驚いた部分がありますし、ましてや一般の、入管行政にかかわらない方は聞くと本当に驚くことではないのかなというふうに思うんですが、外国人登録証明書が不法滞在の方に対しても発給されているという事実があるわけであります。外国人登録証に、「在留なし」というところにわざわざ赤字で書くということらしいんですが、それは一体どういうことでそういうふうな形になっているのかということを、局長、御答弁をお願いいたします。

○西川政府参考人 お答え申し上げます。
 現在の外国人登録法第二条におきましては、その対象とされている外国人とは、日本国籍を有しない者のうち、仮上陸の許可を受けた者及び一時庇護のための上陸の許可を除く特例上陸許可を受けた者以外の者をいうということとされており、不法滞在者もこれに含まれるということになっております。
 そして、同法第三条によりますと、本邦に在留する外国人は、その上陸の日から九十日以内に登録の申請をしなければならないというふうにされております。したがって、不法滞在者も登録の申請をする義務があり、登録をした場合には、市区町村の長は、外国人登録証明書を作成し交付しなければならないということになっているということでございます。

○赤池委員 法的にそういう位置づけがなされているということなんですけれども、さらに突っ込んで聞くと、なぜ外国人登録法にそのような形での、一見すると、何でそんなわざわざ不法滞在者を外国人登録なんかするんだろうかという素朴な疑問が出るわけでありまして、そもそも論、なぜこういったものが外国人登録法で対象となっているのか、改めて局長、お伺いしたいと思います。

○西川政府参考人 現行の外国人登録制度は、いわゆるポツダム勅令としての外国人登録令、昭和二十二年制定ということですが、によって創設され、外国人登録法に引き継がれて現在に至っているということでございます。
 制度創設当時、これは現在と相当状況が違いまして、我が国に在留する外国人は現在よりも大幅に少なく、その構成も朝鮮半島出身者が大半を占めていたことであったということでございます。当時、同半島からの船舶による密航が後を絶たない状態にあって、一たん検挙を免れて国内に潜入した者を追及するため、外国人が本邦に在留するに至った原因等を問わず登録の対象にしたものとされておりますが、現在とは相当状況が変わっているということであろうと思います。

○赤池委員 まさに時代の大きな変化、歴史的な背景があればこそということではないのかなということを聞かせていただきまして、今回の新しい在留制度、そういう面ではもっと早くてもよかったのかなという思いもありますし、これは、この機をしっかりとらえて新しい制度を導入していかなければいけないということにもなるのかなというふうに思っております。
 そんな中で、不法滞在者の方々というのが、現行、行政サービスとしてどうなっているのかということを確認させていただきたいというふうに思いまして、きょうは、政府参考人として厚生労働省また文部科学省、大変お忙しい中、急にお呼びをいたしまして大変申しわけないですが、それぞれの行政サービスについて、現行、不法滞在者にどうなっているのか。また、当然、新しい在留管理制度、在留カード、これから順次質問もするわけでありますが、どう変わるのか変わらないのかというところも踏まえて聞かせていただきたいと思います。
 まず、年金についてはどうなっているんでしょうか、お願いいたします。

○二川政府参考人 外国人の方につきましての国民年金についてのお尋ねかと思います。
 国民年金につきましては、日本人か外国人かを問わず、日本国内に住所を有する方について適用しているところでございます。外国人の方につきましては、住所を有するかどうかという判断の基準につきまして、外国人登録を行っているか否かといったことで判断をしているところでございます。
 ただ、現時点におきまして、外国人の方でも、不法滞在といったことになりますと、そういった方からの保険料徴収というのは現実には相当困難でございますので、今般の改正等によりまして大きな変化はないものというふうに考えておるところでございます。

○赤池委員 当然といえば当然の話でありまして、年金に関しては変わらないということでありました。
 健康保険についてはいかがでしょうか。

○榮畑政府参考人 市町村国民健康保険におきましては、現行でも、入管法に定める在留資格を有しない不法滞在者の方につきましては、法令に基づき適用除外とされているところでございまして、この取り扱いは、今回の入管法の改正により変更するところではございません。

○赤池委員 ありがとうございました。
 それでは、雇用保険はどうなりますでしょうか。

○大槻政府参考人 雇用保険制度は、失業時に必要な給付を行うことによって生活の安定を図りつつ求職活動を支援する、そういうための制度でございます。したがいまして、出入国管理及び難民認定法におきまして就労活動が認められていない外国人につきましては、そもそも我が国におきまして求職活動を支援すべき者ではないということで、制度の対象とならないものでございます。
 この取り扱いにつきましては、今般の改正によりましても変わるものではございません。

○赤池委員 ありがとうございました。
 それでは、生活保護についてはどうなるんでしょうか。

○坂本政府参考人 生活保護法は日本国民を直接の対象といたしておりまして、また、適法に日本に滞在し活動に制限を受けない永住、定住等の在留資格を有する外国人につきましては、予算措置として、生活保護法を準用して保護を実施しているところでございます。
 このように、不法滞在者には生活保護を実施しない仕組みといたしておりまして、これを変更することは考えておりません。

○赤池委員 児童手当に関してはいかがでしょうか。

○北村政府参考人 お答え申し上げます。
 児童手当制度は、児童を養育する者が日本国内に住所を有するときに支給することとされております。受給者の国籍は問わないこととしておるところでございますが、不法滞在者は対象とはしておりません。
 児童手当の認定に当たりましては、外国人登録原票により在留資格あるいは在留期間等を確認しているところでございます。
 今回の法改正によりまして、児童手当制度における不法滞在者の取り扱いは変わるものではございません。

○赤池委員 ありがとうございました。
 わざわざ確認をさせていただきましたが、厚生労働行政に関しては、不法滞在者については、当たり前の話なんですが、今までも行政サービスはしていなかった。当然、今回の法改正によって、在留カード制度を初め、新しい在留管理制度になっても何ら変わらないということがわかりました。
 次に、文部科学省はいかがでしょうか、お願いいたします。

○前川政府参考人 我が国に滞在いたします外国人が、その保護する子の我が国の公立の義務教育諸学校への入学を希望する場合におきましては、すべての子供の教育を受ける権利の保障を求めております国際人権規約等の規定に基づきまして、滞在の資格のいかんを問わず、無償での受け入れを行っておりまして、不法滞在の外国人につきましても、我が国に滞在する期間におきましては同じ取り扱いとなっているわけでございます。
 この方針は、今回の出入国管理法の改正によりましても変更はないものと承知しております。

○赤池委員 ありがとうございました。
 厚生労働行政も変わらない、文部科学行政は変わらない。ただ、今お話を聞いて改めて思ったのは、厚生労働行政、さまざまな、年金、保険、手当に関しては、もともとしていないんだから、当然今回変わってもしない。文部科学行政だけは、いわゆる不法滞在者の子弟であっても、国際人権規約というような形で、もともと一切そういうことを考慮していないということであって、当然、そうなると今後もその取り扱いに関しては変わらない。変わらない中身が、もともと厚生労働省としては変わらない、文部科学行政に関しては、受け入れているから変わらない形だという認識であります。
 確かに、子供に罪はないということはよくよくそのとおりだなというふうに思うわけですが、その反面、日本は当然法治国家でありまして、当然、教育というものの中でいろいろなことを、新しい教育基本法を踏まえていろいろな形で教育目標がある中で、やはりルールを守る、遵法精神を養うというのは、教育目標の根幹の一つだということを感じております。
 今回、そういう面では、新しい在留管理制度になる中で、わからないでこれは全部学校としては受け入れたということは、当然よくわからないだろうなと。もともと不法滞在でありますし、一々、外国人登録証としても、外国人登録証の中には「在留なし」ということで、一見、知識、常識がなければ、外国人登録証を見せたら合法滞在だと、我々、普通の感覚、一般の方々は思ってしまうわけでしょうし、この後も質問させていただきますけれども、それを使ってさまざまな問題も出るのかもしれない。
 ただ、文部科学行政としては、もともとそういうことも確認をしていないという形の中で、今回も、仮に新しい在留管理制度になっても、人道、人権、国際条約の中で、引き続きそのまま変わらないということなんですけれども、果たしてそれでいいのかなという素朴な疑問を持っております。
 国全体として不法滞在半減プロジェクトをやっている、そして、まだまだ大勢いらっしゃる。一方で、子供に罪はないというのも当然よくわかる理屈になるわけでありますが、文部科学行政として、お伺いしますと、平成十八年に通知を出して、居住地のみだけで、あえてそういったことはいいよということを通知を出しているというふうに聞いたわけでありますが、今回新しくなって、在留カードという新しい在留管理制度の中で、合法か非合法かはっきりわかるわけですね。今まではわからなかった。そういう面で、今後も同じような取り扱いで果たして文部科学行政がいいのか。これは、わかるんですよ、子供に罪はないし、改めてここを突破口にして親を捕まえるかという話になると学校現場として大変混乱するとかということもよくよくわかる反面、それでは、これをこのままほうっておくのかという問題もございます。
 これは、すべて不法滞在者がなくなれば、結果的に文部科学行政にとっても何の問題もなくなるという反面はあるんですが、どうしても、十万人以上いらっしゃる、毎年一万人、二万人の方々が日本にいらっしゃる、その中でまた不法入国、不法滞在が行われるというような、これは簡単にはいかない中で、このままの文部科学行政でいいのか。
 これは多分この場で質問しても審議官が困るだけだというのはよくよくわかっておりますが、これは国際人権条約やさまざまな問題がある反面、やはり、当然日本は法治国家だということで、学校が隠れみのと言ったらちょっと言い過ぎなんですが、不法滞在の助長の拠点になってもこれもまた意に沿わない話だと思っておりまして、これは何かしらの、どう折り合いをつけていくのかということをぜひ研究、検討していただきたいなというふうに思っています。
 厳罰主義で何でもかんでもやればいいのかといったら教育現場が混乱をするということもあるでしょうし、子供にはもちろん罪はないというのはよくわかる反面、在留カード、新しい管理制度ができたのに、それも活用しないまま、そのまま今までどおりでいいよという対応だけで果たしていいのかという、非常に難しい部分があるのは重々承知の上で、ぜひ研究、検討をしていただきたいなというふうに思っております。
 きょうは、こういった問題があるということの問題提起をさせていただく中で、今後も知恵を絞って議論をしながら見出していきたいなというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、この後何もなければ、どうぞ政府参考人、この場は結構ですので。ありがとうございました。
 続きまして、これはそもそも論なんですが、なぜ現状、不法滞在者が外国人登録を、言ってみれば、リスク、危険を冒すわけですね。私は不法滞在していますということを名乗りを上げるわけですけれども、先ほど言いましたように、わざわざするんだから、きっと何かメリットがあるんだろう。ただ、聞いてみると、厚生労働行政サービス、年金、保険、手当、いろいろなことは何にも変わりはない。学校、就労というのはあるのかもしれないけれども、逆に言えば、学校就学、子供の就学もあえて登録証を求められていないわけでありますから、居どころがわかればそれでいいということであります。
 そういう面では、素朴な疑問、なぜ不法滞在の方がわざわざ危険を冒してみずからが不法滞在者だということを登録しようとするのか、その辺に関しまして、法務当局から見解をお伺いしたいと思います。

○西川政府参考人 お答え申し上げます。
 御案内のとおり、外国人登録証明書は、氏名等の基本的な身分事項及び居住地等が記載され、写真も表示されております。したがって、在留資格なしという記載があったとしても、社会生活上はさまざまな場面で身分証明書として使用することが可能であるというふうに考えられます。
 例えば一般人がそれを見て正規の滞在者と誤解するということもありますでしょうし、例えば預金口座の開設であるとか携帯電話の加入であるとか、身分の証明を要求される場合について使われるということもあると思います。
 したがって、それで継続的な在留が容易になっているという面もあると思われ、こうした身分証としての外国人登録証明書の利用を企図して登録の申請をするのではないかという、これは推測でございますが、推測をしております。

○赤池委員 外国人登録証というのは国が、もしくは市区町村の法定受託事務でありますけれども、そういったものを見せたときに、一体何が書いてあるかということをわざわざ見て、「在留なし」赤線ということを知っているというのは、今局長が御指摘のようにやはりなかなかないのかな。
 そうすると、銀行口座をつくるとか、当然社会生活に必要な携帯電話、これはもう今まさに必須の状況になっておりますし、不法入国、不法滞在の一番の理由にもなっているという不法就労という問題にも、知ってとぼけてしまえばそれまでということもあるでしょうし、知らなければ、あ、では大丈夫なんだなということにもなって就労がしやすくなるということであります。
 今回、いわゆる戦争の影響の中で、ポツダム勅令からという話もありました。そういう面では、時代の大きな流れの中で、またこういう具体的な、まさに現行の外国人登録制度が、一面、不法の口座、携帯電話または就労を助長、促進している側面があったということになるのかな。それがさまざまな犯罪の温床に使われるというのはもちろんでありますし、もともと不法滞在でありますから、そういう面では、つくって、利用して、どこかにいなくなるということも当然考えられてくるということになるのかなというふうに思っておりますので、現行の大変な問題点ということではないのかなというふうに思っております。
 そういう面で、今回、新たな在留制度が導入をされると、当然ここがはっきり明確にクリアになるということでありまして、在留カードがあるのかないのか、当然、ある方は身分確認ということで、正規の方としての預貯金口座だったり携帯電話ができるという形になるでしょうし、もともと不法の方はもうないわけでありますから、この辺は明確になってくるということになるのかなというふうに思っております。
 これは行政サービスではないので、行政サービスは、先ほど言ったように、厚生労働省初め文部科学省は認識をしていただいていると思いますが、それぞれの金融機関であったり、また携帯電話の場合は、各キャリア、いわゆる携帯電話の会社の方々、また、就労となると本当に大勢の一般の事業主の方々ということになるわけでありまして、これは法律が通った後ということにはなると思うんですが、そういう面での広報、周知徹底ということが大変重要になると思いますし、そういったものを知らなければ、あれっということにもなるというふうに思っておりますので、これは通った後の話になるわけでありますが、ぜひきちっとした周知徹底も改めてお願いをしたいというふうに思います。
 局長、それだけ一点、今の点でお聞かせ願いたいと思います。

○西川政府参考人 委員御指摘のとおり、在留カードが導入された暁においては、在留カードは正規の在留者にしか出さないということになりますし、そこに就労が可能であるか等についても明記されるということになります。
 この在留カードがどのようなものであるか、どういう証明力を有するかということについては、対象となる外国人の方はもちろんでございますけれども、やはり社会一般に十分広報していかなければならないというふうに思っておりますので、周知に努めたいというふうに思っております。

○赤池委員 そういう形で、現状の問題点、当然幾つかある中で、外国人登録証の問題点を指摘させていただいたし、質問の中で明らかになったわけであります。
 そんな中で、今回、新しい在留制度の導入という形の中で、制度を変えていこう、法改正をしていこう、外国人登録法を廃止して一元化していこうという形につながってくるということでありまして、そういう面では、改めて今回の法改正、法務大臣が継続的に情報を把握する制度という形になっているわけでありまして、継続的に情報を把握する制度、対象となる外国人の範囲ということを聞かせていただきたいと思います。

○西川政府参考人 法務大臣が継続的に情報を把握する制度の対象となる外国人は、まず、入管法上の在留資格をもって我が国に中長期間在留する外国人ということでございます。
 具体的に言えば、入管法上の在留資格をもって在留する外国人でございますが、以下の者は除かれます。
 まず、三月以下の在留期間が決定された者、二番目として短期滞在の在留資格が決定された者、三番目は外交または公用の在留資格が決定された者、四番目はこれらの外国人に準ずる者として法務省令で定めるもの、これらの者を除いた者を対象とする、こういうことでございます。

○赤池委員 当然、短期の方々というのは、また出入りが激しいわけでありまして、そういう方々まで在留カードを出すということにはならない。中長期。その定義をそれぞれ、三カ月以内、短期在留、外交、公用、四番目は準ずる方々という形での定義が法案の中にきちっと明記をされているということであります。
 ちょっと細かい話なんですが、四番目の、準ずる者というのは、何か具体的に想定しているものがあるのか、それともこれはその都度考えていくのか、その辺はいかがでしょうか。

○西川政府参考人 これは今後詰めていくことになるというふうに思いますが、現在考えておりますのは、例えば、亜東関係協会、台湾の関係の本邦の事務所の職員の方々であるとか、それから駐日パレスチナ総代表部の職員の方々やその家族等について、今念頭に置いております。

○赤池委員 よくわかりました。当然そういう形でなってくるということで、外交、公用ではないということで、さまざまな国際関係の中での政治的な判断ということにこういったものが活用されるということはよくわかりました。
 続きまして、先ほども既に在留カードを前提とした質問もさせていただいているんですが、在留カードとは何か、新たな在留管理制度における、どのように位置づけられるのかということを改めてお聞かせ願いたいと思います。

○西川政府参考人 お答え申し上げます。
 在留カードとは、法務大臣が我が国に中長期間在留する外国人に対し、上陸許可や、在留資格の変更許可、在留期間の更新許可等、在留に係る許可に伴って交付する文書をいうということでございます。
 新たな在留管理制度におきましては、法務大臣が我が国に中長期間在留する外国人の在留管理に必要な情報を継続的に把握することになるところ、在留カードには、法務大臣が把握している情報の重要部分が記載され、記載事項に変更が生じた場合には変更届け出がなされることにより、常に最新の情報が反映されるということになります。そのため、外国人は、就労活動を行う際や各種の行政サービスを受ける際に、在留カードを提示することによって、みずからが適法な在留資格をもって我が国に中長期間在留する者であることを簡単に証明することができるようになります。
 このように、在留カードは、我が国に中長期間適法に在留することができる外国人であることを明らかにするものであると同時に、法務大臣による継続的な情報把握を担保するものであり、新たな在留管理制度の根幹をなすものというふうに言えると考えております。

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最終更新:2009年10月24日 08:52
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