国会質疑 > 在留特別許可 > 2009-01

国会での審議の中継


衆議院・法務委員会(2009/03/11)/細川律夫議員(民主党所属)

細川律夫 - Wikipedia
○山本委員長 次に、細川律夫君。

在留特別許可の基準について

○細川委員 それでは次に、これも一昨日の報道であったんですけれども、フィリピン人のカルデロンさん一家の親子の問題でございます。これは私の地元のことでもありますけれども、この一家が退去強制命令を受けて、東京の入国管理局に出頭して、夫のアランさんが収容されました。この件は、両親が不法に入国して、妻のサラさんが入国管理法で逮捕されて、一家は退去強制命令を受けまして、最高裁で敗訴が確定をした後に、在留特別許可を求めてきていたものでございます。中学一年生のノリコさんが日本で育って、日本語しかできない、そういう人道上の事情もありまして注意を集めてきたところでございます。私も、個人的にはその一家の三人が引き続きこの日本で生活ができたらなというふうにも思っておりますけれども。
 そこで、在留特別許可という制度についてお聞きをいたしますけれども、これについては大臣が個々の事情を勘案して決定するものだというふうに聞いております。元来、不法の者に特別に許可を与えるものでありまして、例外的な規定であるというふうに承知をしておりますけれども、それでもある種の基準があるのではないか、また、ある程度は基準がないと恣意的になるのではないかというようなことも心配されるわけであります。
 そこで、大臣にお伺いいたしますけれども、在留特別許可、この制度について大臣はどのような認識をお持ちなのか、また、その一定の基準があるのかどうか、子供の養育等、あるいはまた人道上の配慮、こういうことについては大臣はどのようにお考えになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

○森国務大臣 御答弁を申し上げる前に、先ほどの御指摘でございますけれども、ちょっと一言言わせていただきたいと思います。
 マスコミあるいは報道の一つ一つの記事について論評するのは差し控えたいと思いますが、検察当局においては、従来から捜査上の秘密の保持について格別の配慮を払ってきたものでございまして、捜査情報や捜査方針を外部に漏らすようなことはあり得ないものと確信をしております。
 さて、今の御質問の件ですが、外国人の我が国への出入国は、国民生活や我が国の産業等に重大な影響を与えているものであり、退去強制手続において在留特別許可を付与するか否かを決定することは、法務大臣に与えられた重要な権限であると認識しております。
 また、委員御指摘の在留特別許可の基準につきましては、個々の事案ごとに事情は異なり、種々の事情を総合的に考慮する必要があることから、在留特別許可について一義的な基準を作成することは困難でありますので、このような基準は設けておりません。
 一般論で申し上げれば、在留特別許可の判断に当たっては、当該外国人の本邦在留を希望する理由、生活状況、家族状況等の個人的事情、人道的な配慮の必要性のほか、我が国における不法滞在者に与える影響等を総合的に勘案して判断しておりますが、子供につきましては、可塑性や扶養状況、両親とともに生活することが福祉にかなうか否かの判断等、人道的観点に十分に留意した上で、先ほど述べた諸般の事情を総合的に勘案して判断することといたしております。
 この一家に対しても、以上のような観点から検討したところ、両親の在留は認めがたく、したがって、三人での在留は認められないとの結論に達しましたが、長女については、永住者等の在留資格で在留している三人のおじさん、おばさんなどがすぐ近所におられますことから、適切な監督保護、養育者のもとで学業を続けさせたいとの理由から在留を希望するのであれば、在留特別許可をしてもいいと考えておりまして、その旨伝えております。
 また、長女の在留が特別に許可された場合には、両親についても、一定の期間が経過した後、長女と面会の目的で日本を訪れる場合には、短期間であれば上陸特別許可を付与してもいいと考えております。また、その旨伝えているところでございます。

参議院・法務委員会(2009/03/11)/今野東議員(民主党所属)

日本国憲法の外国人への適用

○今野東君 何点か質問をさせていただきますが、まず、森法務大臣とはこういう形では初めてですので、基本的なところからお伺いしたいと思いますが、憲法についてであります。
 憲法第三章は、国民の権利及び義務について書かれています。この中で基本的な人権とか、あるいは法の下に平等であるとか、あるいは健康で文化的な最低限度の生活を営む権利とかいうのは、この書き出しがすべて国民はという書き出しになっているんですね。
 十一条、国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。十三条、すべて国民は、個人として尊重される。そして、幸福追求の権利があるわけですが、十四条は、すべて国民は、法の下に平等であって、二十五条は、すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するというように、人権やそこからくる権利についての多くは国民にそれがあるという考え方で憲法は書かれているのだと思うんです。
 さて、それでは外国人についてはどのように考えるのでしょうか。
 我が国で外国人登録をしている方は、平成十九年でも二百十五万人いらっしゃいます。今、もう恐らくその数の上を行っているでしょう。こういう方々の基本的人権や権利についてはどのようにお考えなのでしょうか。

○国務大臣(森英介君) 基本的人権は極めて重要なものでありますが、憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上、日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対してもひとしく及ぶものと解すべきものであると理解しております。認識しております。
 一般的に、思想、良心の自由や信教の自由等は外国人に対しても保障されていると解されている一方、参政権や入国の自由については、その権利の性質上、外国人には保障されるものではないと解されていると承知しております。

○今野東君 在留する外国人に対しても、基本的な人権そのほかは存するということで安心をいたしました。
 それではまず、ここのところ報道されております、埼玉県蕨市に住むフィリピン人アランさん夫婦とカルデロン・ノリコさんのことについてお尋ねいたします。
 個別の案件ではありますが、もはや多くの国民にマスコミを通して知れ渡っていることでもありますし、また同じような家族が、これは推定ですけれども六百から七百世帯、あるいはそれ以上いらっしゃるかもしれませんが、あると言われていることから、ここで政府の考え方を少しお伺いしておきたい、議論をしておきたいと思います。
 この家族については、アランさん夫婦が自主的に帰国すればノリコさんの在留を認め、自発的に帰国する決断をしないのなら三人まとめて強制的に送還するという判断を示しました、法務省は。出入国管理というのは、確かに厳正に行われなければならないと私も思います。しかし、この厳正に行われるべき入管行政の中で、入管は不法に入国していた人を発見せずに結果的に不法滞在を容認してきたという責任もあるのではないかと思います。

藪市議会からの意見書

 アランさん夫婦は、一九九二年と九三年に、これは他人名義のパスポートを使って入国してきたという好ましくない状態ですが、それぞれ入国をして、しかし、その後アランさんは内装解体工としてまじめに働き、今ではその技術の蓄積を後輩に伝える指導的な立場だというふうに聞いております。まじめに働く良質な市民の一人として、所得税、住民税も納めているということを聞きました。一家が地域社会からどのように受け入れられているかという事実は、住民の方々の二万人を超える署名からもお分かりいただけると思います。そして、何より蕨市の議会が、一家について特別在留許可を求める意見書を採択しています。
 外国人にも我が国の国民とひとしく同じく基本的な人権がある、健康的な生活をしていく権利があるというふうにお考えならば、なおこの蕨市の意見書、採択された意見書があるわけでありますから、そこのところはお考えいただいて特別在留許可を出してもよかったのではないかと私は思いますが、大臣は所信表明で、様々な意見に謙虚に耳を傾けとおっしゃっています。蕨市議会の意見には、在留特別許可を出すべきだ、出してほしいという意見には謙虚に耳を傾けていただけないのでしょうか。これはどういうふうに受け止めていらっしゃるのでしょうか。

○国務大臣(森英介君) もちろん、蕨市議会からカルデロン一家三人に在留特別許可を認めるよう意見書が寄せられているということは承知をしております。
 最終的な判断を金曜日に示した、いや、もっと前に通告はしておりましたけれども、したわけでございますけれども、その最終的な判断をするに当たって意見書が出て、その意見書についても十分に考慮をさせていただきました。

○今野東君 十分に考慮をした結果がどのようになっているんですか。

○国務大臣(森英介君) 先ほど委員も説明をされましたように、両親については他人名義の偽造パスポートで入国したという経緯がございます。したがって、家族統合の原理からいえば三人そろって国外退去していただくというのが本来の方針、決定でございますけれども、しかしながら、この娘さんについては、これは何も罪もないわけでありますし、それから十何年間日本で生活し、日本で学業を続けてきたということもございますので、加えて、この一家の特殊事情というのは、この娘さんにとってのおじさん、おばさんが三人も近くにいるということでございまして、もしその近親者のあるいはそれに見合った人たちの適切な監護、保育、養育の環境が整えてもらえるなら、もしその娘さんが希望するなら娘さんには在留特別許可を出してもよいということを決定いたしまして、結果として、娘さんは日本で残って学業を続けるということを希望したわけでございまして、来月の十三日に両親は退去していただくと、こういう運びになりました。

児童の権利条約の解釈問題

○今野東君 蕨市議会の意見書は、家族をばらばらにしてくださいという内容のものではなかったはずです。
 政府の言う児童の権利に関する条約、いわゆる子どもの権利条約ですけれども、第九条の一項には、締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保するとあります。この条約は一九九四年五月二十二日から日本で効力が生まれておりますが、政府はこれらの部分に関し解釈宣言ということを行っています。この解釈宣言というのは、条約の規定や文言について複数の解釈が可能な場合に、国家が自国にとって最も好都合な解釈を特定し、それを一方的に宣言することと言われます。この政府の行った解釈宣言というのはどういう効果を求めて行ったのでしょうか。

○政府参考人(石井正文君) お答え申し上げます。
 先生おっしゃいますとおり、この条約の第九条の一でございますが、これは、締約国に対しまして、父母による児童の虐待又は父母の別居などの特定の場合におきまして、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として児童の最善の利益のために必要であると決定する場合を除きまして、児童がその父母の意思に反して父母から分離されないことを確保するよう義務付けるものでございます。
 この規定は、児童又は父母の強制退去、抑留、拘禁など、この条約の同じ条の四におきまして国が取り得る措置として認めておられる措置の結果として親子の分離が生ずることを妨げるものではないというふうに解しております。ただ、このような解釈が文言上、必ずしも一義的に明らかではないため、将来、解釈をめぐって問題が生じることのないよう、条約の締結時にこのような解釈を明らかにするために解釈宣言を行ったものでございます。

○今野東君 政府の解釈宣言は、出入国管理法に基づく退去強制の結果として児童が父母から分離される場合に適用されるものではないとなっているわけですね。
 しかし、子どもの権利条約第九条において、父母の意思に反しても分離が許されるというのは、おっしゃったように、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件とし、かつ、その分離が子供の最善の利益のために必要である場合に限られるとなっています。
 今の出入国管理法では、退去強制させるかどうか、出入国を認めるかどうかは法務大臣の裁量です。第九条の求める司法の審査とはなっていません。これは国際社会に通用しないんじゃないですか。

○政府参考人(石井正文君) 解釈宣言につきましては先生今おっしゃったとおりでございますので繰り返しませんが、この解釈宣言につきましては、条約の規定に内包された解釈の幅の中で我が国の取る解釈を明確にするものを目的としておりまして、この条約の規定の適用を変更するというふうな意図ではございません。この点につきましては理解が得られているものと考えております。

○今野東君 理解を得られていないから、一九九八年六月の児童の権利に関する委員会の第十八会期と二〇〇四年二月の第三十五会期は日本についてコメントが出ていますね。このコメントは、委員会は締約国、これイコール日本です、委員会は日本による第九条一及び第十条一に関する解釈宣言を懸念を持って留意すると、懸念を持たれています。これはどういうふうに、これについてはどういうふうな説明になるんですか。

○政府参考人(石井正文君) おっしゃるように、過去二回の権利委員会におきまして懸念を表明するという最終見解が出ております。これは、この条項に対して解釈宣言をしておりますのは日本だけではございませんで、ちなみにドイツ、ほかの国も、幾つかの国が解釈宣言をしておるところでございます。もちろん政府といたしましては、こういう懸念が表明されたことを踏まえまして、この解釈宣言を見直すべきかどうかということは内部で検討させていただきました。
 ただ、先ほど申し上げたことの繰り返しになって恐縮でございますが、日本が申し上げたような解釈というのが文言上必ずしも明らかでないこと、それから、その解釈自身が条約の規定に内包された解釈の幅の範囲内であり、条約の適用関係を変えるものではないというふうに判断されることから、この解釈宣言は維持したいということで決定させていただいたところでございます。このような解釈につきましては、解釈宣言を出していない国におきましても一定程度共有されている部分があるのではないかと思っておりまして、その意味で、先ほどちょっと理解を得ているというふうに申し上げたわけでございます。

○今野東君 無理やり理解をされているというふうにいっても、実際にはこのような委員会から懸念を持たれている。複数の国がそういう解釈をしているからそれでいいんだという考え方は、これは日本としては誠に国際社会に対して恥ずかしい実態であると思います。
 御存じかと思いますが、大臣、退去強制命令が自由人権規約違反と判断された例もあるんですね。オーストラリアに不法滞在していたインドネシア人の一家ですけれども、国外退去を命じられました。二〇〇〇年の五月、両親と子供、このときの子供はちょうどこのノリコさんと同じ十三歳なんですが、両親とこの十三歳の子供は家族でオーストラリアに在住することを求めて自由人権規約委員会に通報して、その結果、退去強制命令は自由人権規約に違反すると判断されたという例です。
 退去強制命令は、自由人権規約第十七条、私生活及び名誉の保護、第二十三条、家族の保護、二十四条、児童の権利に違反するという自由人権規約委員会の判断なんですが、我が国もこれに倣うべきだと思いますが、どうですか。

○政府参考人(西川克行君) お答え申し上げます。
 まず、御指摘の事例ですが、これは承知しておりまして、インドネシア国籍の両親がオーストラリアにおいて不法滞在後、子供が出生したと。子供が十年間滞在したということでございまして、この子供は既にオーストラリア国籍を取得していたと、こういう事案であると承知をしております。
 両親が退去処分とされて、両親の送還が執行された場合は、家族の恣意的な介入に当たって未成年者としての必要な保護の手段を提供しなかったことにより、B規約の第十七条第一項及び第二十四条第一項に違反しているとみなすとの指摘がなされた事案であるということであります。
 他方、今回のフィリピン一家の例を見ますと、この少女は我が国で出生して、フィリピン国籍の両親から出生したわけでございますのでフィリピン国籍でございます。いずれも不法滞在であったことから退去強制手続を受け、一家三人全員に退去強制令書発付処分がなされたということであります。この国籍及びそれに伴う家族全員の処分の同一性の有無について事案が異なるというふうに考えております。
 さらに、カルデロン一家の場合ですが、三人とも国籍国に退去強制するのが原則であり、それが可能であるという事案でありましたが、仮に両親から長女について適切な監護者の下で学業を継続させたいとの申出があった場合には、長女の在留を特別に許可する旨の意向を伝えていたものであって、当局が同一家に対して、十三歳の長女のみ残るか、あるいは両親と三人で国外退去するか、選択を迫ったというわけでもございませんので、御指摘の事案とは事情が異なるというふうに考えております。
 外国人を自国内に受け入れるかどうか、これを受け入れる場合にいかなる条件を付すかは専ら当該国家の立法政策にゆだねられているというのが国際慣習法上の原則でありまして、児童の権利に関する条約、B規約等もこの原則を前提としてこれを基本的に変更するものではなく、したがって、児童の最善の利益及び家族統合の原則も在留制度の枠内で考慮されるにとどまるということは、カルデロン一家に対する退去強制処分、取消し訴訟を始め、他の取消し訴訟においても裁判所も判示しているというところでございます。
 以上です。

在留特別許可における法務大臣の裁量権について

○今野東君 日本は独自に非情な道を歩んでいくのだというお話を長々としていただきましてありがとうございました。
 所信の中で大臣は、不法滞在者を本年一月までおおむね当初の半数である約十一万三千人まで削減できましたと胸を張っているんですが、強制的に送還され、削減と表現された外国人の方々の中には、その基本的な人権が侵され、国際社会から非難されている事案もあるということを知っておいていただかなければならないと思います。
 憲法の十三条にある基本的な人権、そこから生まれてくる様々な権利、これは外国人も同じであるというふうにおっしゃっていただいた大臣がいらっしゃる法務省の考え方とは現状ではとても思えない。この際、人道的配慮から特別在留許可を出すべき基準といいますか、こういうことはノリコさんのことだけではなく何家族もあるわけですから、ある程度どういう方向でいくのかというのを真剣に決めておかなければならない、定めておかなければならない、そういう必要があるのではないかと思いますが、大臣のお考えを伺います。

○国務大臣(森英介君) 委員のその御指摘、御提案は、私も認識を共有するところがあって随分このことに当たるに当たって考えてまいりました。
 ただ、やはり現時点での私の整理としては、やはりおおむねの何といいますかね、基準というかラインみたいなものはあるにしても、やはり最終的には個別の事案に応じた大臣の裁量ということがいいのかなというのが現時点での思いでございます。

○今野東君 大臣に裁量権があるわけですから、これはひとつ大臣のところで、様々な意見を謙虚にお聞きいただける大臣ですから、大臣のところで是非この方向について検討していただきたい、そういうお願いをしておきたいと思います。

参議院・法務委員会(2009/03/24)/千葉景子議員(民主党所属)

千葉景子 - Wikipedia
○千葉景子君 おはようございます。民主党・新緑風会の千葉景子でございます。
 今日は、私も限られた時間でもございますし、それから予算に伴う基本的な議論をさせていただくということでございますので、大臣とできるだけ議論をさせていただくということにいたしたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

外国人政策の基本に関して

 さて、先般の質疑の際に丸山委員からも御議論がございました、外国籍の皆さんとの関係を一体どう日本はしていくのかということについて多少議論をさせていただきたいと思っております。
 外国籍の方という表現がいいのか、あるいは来日をされて日本で生活をする皆さんというそういう表現がいいのか、なかなかここは考え方によってかなり表現も違ってくるのかなというふうに思いますけれども、まず基本的に、いわゆる来日外国人の皆さん等との日本のこれからの関係をどうしていこうとしているのか、できるだけやっぱり多文化共生の社会ということを考えて、門戸を開きながらやっぱりその皆さんと共存して、そして日本の社会というのをつくっていこうと、こういう方向にあるのか、それとも、いやいやそんなことはない、外国の人は外国の人なんだから一定の制限をして、そしていずれは外国にお戻りをいただく、そういうやっぱり外の人なんだ、こういう基本的な考え方でこれから行こうとしているのか、それによって私はやっぱり政策の立て方あるいは様々な制度のつくり方、大きく変わってくるのではないかというふうに思います。
 そういう意味で、まず基本的な理念というかこれからの方向性、これについて一体、この間、丸山先生も移民政策はあるのかというお話をされておられましたけれども、確かに本当にお持ちなのか、あるいはこれからどういうふうにしていこうという何らかの御認識とかあるいは見解があるのか、そこのところをまず大臣のお考え方を聞かせていただきたいと思います。

○国務大臣(森英介君) 外国人政策の基本についてお尋ねがございました。
 少子高齢化時代を迎えた我が国においては、外国人の受入れの在り方は国の形にもかかわる極めて重要な問題であると認識しております。専門的、技術的分野に該当しない分野におけるいわゆる外国人単純労働者の受入れや、あるいは今お話もありました移民政策の導入については、我が国や我が国社会の在り方そのものにかかわる問題であり、国内の治安に与える影響、国内労働市場に与える影響、産業の発展、構造転換に与える影響、また社会保障に与える影響等々、多様な観点からの慎重な検討と国民的な大きな議論が必要であろうというふうに思っております。
 なお、個人的にどうかというふうに問われたら、法務大臣という立場を離れて私自身はどちらかというと抑制的な立場でございますけれども、それはおきまして、現状について申し上げるならば、我が国における外国人の受入れについては、我が国の社会の安全と秩序を維持しつつ、我が国の経済社会の活性化、一層の国際化を図る観点から、専門的、技術的分野の外国人労働者については、これまでも積極的な受入れを図ってきているところでありますし、また今後も引き続き受入れを推進していきたいと思っております。
 また、不法に我が国に入ってくる外国人や不法に残留する外国人には厳正に対応する必要があると思いますが、ルールを守って我が国に入国し在留する外国人の方々は大いに歓迎して、入国管理上もこの方々への利便性を向上させ、多文化共生を可能とする社会の構築に貢献していきたいと考えているところでございます。

○千葉景子君 今大臣もお答えになっておられますように、個人的にはというか、どちらかといえば抑制的な考え方なんだと。しかし一方では、やはり皆さんには来日を許容してそして日本の中で一定の役割を果たしてもらうということで、なかなかこれは、私も正直に大変国の形にもかかわる大きな問題だというふうに思っています。ただ、ここをずうっと確かに議論をきちっとしないままにこの間来てしまいました。大分以前からこの問題については議論をしなければならないという指摘はありながらも、ここまで推移をしているものですから、様々な政策がどうも継ぎはぎになったり、あるいはそれぞれの対応が矛盾を生じたりしているのではないかというふうに思っています。
 そういう意味では、それは今日あしたですぐ結論を出せといっても難しいところがあるのは承知ですけれども、やはりそろそろ長期的なやっぱり展望というものを持ちながら個々の政策展開をしていかなければいけないのではないかというふうに思います。
 そういうのがないままに、今回も、これどういうまた法案審議になるか分かりませんけれども、技能実習というような形での一定の在留資格を設けようということのようでございます。これも考えてみると、実際に働いて労働力になっている、しかし現実には、そういう資格がないものだから研修というような形で非常に不安定な中に置かれてきたというものを解消しようということなのかもしれません。ただ、こういうことを入れるということは、ある意味では、一定制約付きではあるけれども労働力の門戸を広げたとも言えないことはないわけですね。
 ですから、何か長期的なものがあって、それにまずはここからということなのか、あるいはもう矛盾が生じていてどうも混乱するからこの辺までにしておこうかということなのか、そういうところが結局は場当たり的になってしまうのではないかというふうに思うんですけれども、こういうことをとらえても、そろそろ何かそういう長期的なあるいは大きな視点での基本的なまず考え方というのをやっぱりこれ検討していくときが来ているのではないかというふうに思うんですが、その辺はどうでしょうか。

○国務大臣(森英介君) 問題意識としてはまさに私も同感でありますけれども、確かにそういった、先ほど申し上げたように、これから日本がどういう国を目指すのか、やっぱり人口が減少しても、つまり人口が減少するということはやっぱりそれなりに経済が収縮するわけですけれども、それでもってそれなりの国を維持していくのか、あるいは外国人労働者を、外国人を導入してその人口減少分を補完してまたそれなりのボリュームを維持するのかとか、いろんな考え方があって、これはやっぱり本当に国民的な議論をこれから展開していかないといけないと思いますし、またそういうことが、まだ一つのコンセンサスができていない中で、まあこういうことを私が言うのはなんですけれども、やっぱり苦肉の策みたいなことで行われているようなところもあるというふうに正直思います。
 今回の研修・技能実習制度の見直しは、一部の受入れ機関において不適正な受入れが行われ、研修生、技能実習生が実質的に低賃金労働者として扱われるなどの問題が増加しているその現状にかんがみまして、それに対処して、研修生、技能実習生の保護の強化を図る観点から、実務研修は雇用契約を締結した上で実施させることとし、実務研修中の研修生が労働関係法令上の保護を受けられるようにすることを目的としたものであります。
 したがって、今回の改正は、我が国で習得した技術等を出身国において生かすことで出身国の経済発展や技術の進歩に寄与するという研修・技能実習制度の本来の目的を変更するものではなく、また、単純労働者の受入れを行うものでも、研修生、技能実習生の受入れの拡大を目指すものでもないというふうに考えております。

カルデロン一家事件に関して

○千葉景子君 さて、そういう中で、先般のカルデロン・ノリコさん、そしてその一家の問題というのも、やっぱり私は今の日本の矛盾みたいなものを私たちに突き付けているんではないかというふうに思います。
 大臣も大分悩まれて御決断をなさったというふうに思います。一家の方も大変悩んじゃって、大変だったわけですよね。それを見ている私たちも何となく本当に悩ましくて、何とも本当にいたたまれないような、そういうことになっている。みんなで本当に悩んじゃっているわけですね。これも、やっぱりそういう大きな基本的な視点というものがないままにこういう家族が放置をされてきてしまったということなんではないかというふうに思うんです。
 不法な人は日本での滞在は認められないんだと言いながらも、結局は長い間それをある意味では見逃してというか、そうしてきたわけですよね。実際に不法の人を全部、じゃもうそういうものは許さないんだから全部早く帰っていただくといったって、これ現実には不可能のことを言っているというしか私はないと思うんですね。何十万という人をじゃもうあしたすぐ帰ってもらうかなんて、そんなこともできないわけで。片方では、そういう皆さんの労働とかあるいはいろんな働きを日本社会もある意味で頼りにしてしまっている、それによって成り立っているという部分もあるわけですね。こういう中で、いや、ある日、やっぱり不法だった、じゃやっぱりもう帰っていただくしかない、何かここいらに本当に矛盾が生じているというふうに思います。
 とりわけて、入ってくる仕方は確かにいろいろあったというふうに思うんですけれども、その滞在においては犯罪を犯しているわけではない、犯罪集団とかということではない、そういう意味では非常に日本にとっても力になってもらい、あるいはお互いに尊重し合いながら生活をしているという、こういう事実が現に存在してしまっている。こういうことをこのノリコさん一家の問題も私たちに突き付けたような気がいたします。
 そういう意味では、私はこの辺でやっぱり、先ほど言った、確かに難しい問題ではありますけれども、どこかで一度、例えば、よく言われておりますように、一定のこういう本当に生活の拠点を持ち、そして日本の本当に力にもなってきたという皆さんをアムネスティーのような形できちっと一度滞在を認め、そしてこれから先こういう条件で日本は皆さんと一緒に暮らしていく、そういう社会をつくっていくんですよと、こういう方向をきちっと提起をしていく、こういう時期が私は来ているのではないかというふうに思っております。
 そういう意味では、是非、はいそのとおりですと大臣もお答えできないだろうとは思いますけれども、やっぱりそういう時が来ている、みんなでそういう議論をきちっとやろうじゃないか、大臣としてもそれに率先してそういう検討をする、あるいは議論をする、こういう姿勢を持っていくというようなことをやっぱりここは法務大臣がまず示していただくということが大事だというふうに思うんです。
 みんなで、悩むんではなくて、やっぱり多文化共生の、本当にそれぞれがお互いに力を出し合ってそういう日本の新しい社会をやっぱりつくっていこうやと、こういうことを大臣からも是非大きくアピールをしていただく、こういうことが今求められているのではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(森英介君) 委員の御意見はやっぱり一つの大変傾聴すべき御意見とは思いますけれども、やはり日本の治安あるいは社会秩序に責任を持つ立場から申し上げますと、不法滞在外国人の在留を一律にあるとき認めちゃうというような方策については、今後新たな不法入国者等の増加を誘発する要因にもなりかねませんし、ひいては我が国の出入国管理体制に重大な支障を生じさせることにもなりかねないと考えております。
 したがって、やはり御意見は御意見として私としては慎重に対処せざるを得ないわけでございまして、また、実際、在留特別許可の許否の判断においては、個々の事案ごとに、在留を希望する理由、生活状況、人道的な配慮の必要性等、諸般の事情を総合的に勘案した上で判断しておりまして、なかなかその個別の事情も様々ですからその基準化も難しいということで、やはりその個別の事情に応じて在留を特別に許可すべき場合、そうでない場合ということで対応するのが適当ではないかと現時点では思っております。
 いずれにしても、外国人労働者の受入れに係る政策は、先ほど申し上げましたけれども、我が国のこれからの国の形にもかかわる重要な問題であって、大いに議論を闘わせていって何とか一つのコンセンサスをつくらなきゃいけないということは必要性は感じているところでございます。

○千葉景子君 いずれにしても、最後にそういうことは必要なんだという御認識はお持ちいただいているようですので、是非そういうことを積極的に議論をさせていただきたいし、大臣にもそういうリーダーシップを発揮をいただきたいということだけ申し上げて、この問題は一区切りさせていただきたいというふうに思います。
最終更新:2009年10月24日 09:23
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。