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地方教育費:07年度も0.6%減 11年連続で減少(毎日新聞/2009/08/04)

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090805k0000m010075000c.html
 文部科学省は4日、国や地方が公立学校や社会教育施設などの経費として支出した07年度の地方教育費は総額16兆5584億円(06年度比0.6%減)で、11年連続で減少したと発表した。

 財源別では、過去5年連続で減っていた国庫補助金が06年度比1.9%の増加に転じて1兆9498億円となり、4年連続で増えていた都道府県支出金が同0.8%減の8兆7514億円となった。

 総額の内訳は、学校教育費が13兆8072億円(同0.1%減)で6年連続の減少。図書館や体育施設などに使う社会教育費は1兆8031億円(同3.1%減)で11年連続の減少だった。1人当たりの学校教育費は▽小学校89万2000円(同0.3%増)▽中学校103万6000円(同0.2%増)▽高校全日制119万1000円(同1.9%増)--となっている。
毎日新聞 2009年8月4日 20時41分

質問なるほドリ:幼稚園から大学まで、教育費っていくらかかるの?=回答・大貫智子(毎日新聞/2009/08/11)

http://mainichi.jp/select/wadai/naruhodori/news/20090811ddm003070105000c.html
 <NEWS NAVIGATOR>

 ◆幼稚園から大学まで、教育費っていくらかかるの?

 ◇すべて私立なら2258万円 欧米に比べ少ない公費支出
 なるほドリ 日本の教育費は高いと言われるけど、幼稚園から大学卒業までに、実際はどのくらいかかるの?

 記者 学校が国公立か私立かで、ずいぶん変わります。文部科学省は、子供1人当たりの教育費(06年度)を六つのケースに分けて算出しています。

 一番安い費用で済むのが幼稚園から高校まで公立、大学は国立の場合で、計864万円。すべて公立だと880万円。一つでも私立に通うと1000万円近くになります。特に小学校が私立だとそれだけで824万円かかり、すべて私立だと最も高くて2258万円にも上るんです。

 このデータは大学を文系、理系に分類せずに平均で計算しているので、理系に進学するともっとかかります。教育費には学習塾代など学校外活動費も含まれています。

 Q 家計をかなり圧迫することになるね。

 A そうなんです。特に所得が低いほど世帯年収に占める割合が高くなる傾向があります。日本政策金融公庫の調査(08年)によると、小学生以上の子供にかかる教育費は、年収900万円以上だと23・2%ですが、それでも4分の1近くを占めます。世帯年収200万~400万円未満だと年収に占める割合は55・6%と半分以上にもなります。文科省は、子供2人が同時に大学に在籍した場合、教育費は税などを引いた手取り650万円の標準世帯収入の3分の1に上ると試算しています。

 Q 他の国々と比べるとどうなのかな。

 A 日本をはじめとする東アジアの国々に比べ、欧米では「教育は国家の責任」という意識が強く、私たちほど親が子供の教育に多くは投資していません。その代わり各国は教育費へ公費を支出する割合が高いのです。特に日本では、就学前教育と大学など高等教育への公費の支出が少ないことが顕著です。日本の高い進学率は、お金の面でみれば各家庭の努力に支えられているのです。(政治部)

選択の手引:’09衆院選 教育費(その2止) 教育費、家計負担減の道は(毎日新聞/2009/08/11)

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090811ddm003010052000c.html
 経済・雇用状況の悪化に加えて近年、親の所得が子供の教育に及ぼす影響のさまざまな実証データが示され、教育費の負担に関心が集まる。自民、民主両党はともに家計の負担軽減策を打ち出すが、家庭の状況や子供の年齢ごとに必要な支援は異なっており、優先順位をつけることは難しい。社会全体として効果の高い政策は何なのか。判断が求められる。【山崎友記子】

 ◇自民--「国家の責任」希薄
 「安心して教育が受けられる社会の実現」を目指す自民党。マニフェストに盛り込んだ具体策は、高校・大学生対象の給付型奨学金創設と低所得者の授業料無償化▽3~5歳児の幼稚園や認可保育園の通園費用を段階的に軽減と、3年目からの無償化--などだ。
 全高校生を対象に「実質無償化」を掲げる民主党に対し、自民党は「低所得者」「3~5歳児」など支援対象を絞り込んだ点に特色がある。限りある財源を踏まえた現実的政策と言えそうだが、「国家が教育に責任を持つ」という理念の希薄さを感じさせる内容で、迫力に欠ける。
 低所得世帯の高校生の授業料無償化について、塩谷立文部科学相は7月28日の会見で「まず授業料を払ってもらい、所得の低い人を支援する方が理解が得られる」と、一律無償化しない考えを強調。日本の奨学金制度は卒業後に返還義務のある「貸与型」が大半で、将来の「借金」となって残る仕組みだ。「給付型」が主流の他の先進各国に比べると負担が重く、「教育は国の責任」という理念の希薄さの象徴とも指摘される。自民党は今回、給付型に言及したが、給付対象を明示しておらず、どこまで給付が広がるか定かでない。
 明確な「無償化」を公約したのが、3~5歳児の幼稚園・認可保育園の通園費。所要額は約8000億円と見込まれるが、文科省の担当者は「既存財源ではまかない切れない」と言う。幼児教育無償化は前回衆院選マニフェストにも明記されたが、財源のメドが立たず進展しなかった経緯がある。政権が明確な意思を示して教育関連予算の総額を大幅に増額しない限り、実現は難しいのが実情だ。

 ◇民主--個人給付に疑問も
 幼児から高校生まですべて網羅的に支援策を実施するのが民主党の特徴だ。中でも高校教育の無償化は、07年の参院選のマニフェスト(政権公約)にも盛り込まれた重点施策の一つだ。
 前回は国公立高校生のみが対象だったが、「経済的理由でやめざるを得ない子が出てきている」(小宮山洋子・ネクストキャビネット=次の内閣=文部科学担当)と私立高校生も対象にした。議員立法で「高校無償化法案」も提出した。
 同党は「子育て・教育は家族、個人の問題という考え方を大きく転換したい」(岡田克也幹事長)と、社会全体で子供を支える姿勢を打ち出す。背景には米国、フランスなど多くの先進国で、日本の高校にあたる公立学校が無償化されていることがある。
 民主案は国公立高校生1人につき、授業料相当の年間約12万円を保護者に支給する。私立高校生も同額だが、年収500万円以下の世帯は24万円に増額される。所要額は5000億円。財源について同党は「『税金のムダづかい』を一掃させた後に、優先的に実現させる」と説明する。
 だが「税金のムダ」を原資に行う政策は他にも「子ども手当(所要額5・3兆円)」などがある。安定的な財源を確保できるかは不透明だ。収入に関係なく一律に支給することも、「経済的に豊かな世帯にも補助するのか」と批判がある。
 「授業料の無償化」は、実際には授業料に相当する額を個人に直接、現金で支給する仕組みのため、教育費以外に費やされる可能性は否定できない。教育関係者からは「個人給付では遊興費などに使われることにもなりかねない」と、疑問視する声もある。

 ◇理念、論争にならず
 教育を巡っては、07年の参院選で安倍晋三首相(当時)が「美しい国」づくりに向けて、道徳教育の強化を説くなど、「何を教えるか」が一つの争点となった。だが今回は、そうした理念の論争は姿を消し、個人への給付を中心に「いかにカネを出すか」が競われている。
 参院選で敗北した自民党だが、安倍氏の肝いりで60年ぶりに教育基本法が改正された。その後、小中学校の新学習指導要領は事実上、ゆとり教育から方針を転換し、約40年ぶりに指導内容や授業時間数を増やす方向に改定された。
 今回の自民党のマニフェストでは「新しい教育基本法にのっとり、世界最高水準の義務教育を実現」「新学習指導要領を確実に実施」といった文言はならんだものの、こうした転換が教育にどのような結果をもたらしたかを総括した様子はうかがえない。
 民主党はマニフェストで、学校教育環境の整備や教員増員なども掲げる。だが新しい教育基本法や新学習指導要領に関する記述はなく、また、教育内容をどのように充実させるかは不明瞭(めいりょう)だ。
 教育政策は、効果や影響が明らかになるまで時間がかかる。教育の内容や理念と、教育関連の支援策は本来セットで議論されるべきだが、両党ともそうした動きはない。長期的視野に立ってどのような教育を目指すのか。その方向性を示して拡充や改革を進めなければ、教育全体の底上げにはつながらない。

 ◇教育、最大の社会保障--広井良典・千葉大教授(社会保障論)
 成長が続く時代から成熟期へと日本の社会構造は変化した。戦後しばらくは人生の始まりは皆が同じスタートラインに立てたが、現在は定年までの雇用は保障されず、若年層の失業率は高くなって生活のリスクが人生前半に及んでいる。
 格差も世代を通じて継承され、機会の平等が保障されなくなった。子供の貧困や教育格差も論じられている。
 今こそ若い世代への社会保障が必要で、教育は最大の社会保障だと考えている。個人が受けた教育と、その後の賃金や失業・貧困に陥るリスクは密接に関係する。十分かつ適切な教育を受けることは生活を保障し、人生の選択肢を広げる。
 教育にはこうした「保障機能」と個人や国家の力を向上させる「上昇機能」があるが、保障機能はあまり論じられてこなかった。
 自民、民主両党が幼児教育や高校教育の無償化など、保障機能につながる政策を提案したことは好ましい。ただ財源が明確でなく、せっかくの政策も財政赤字となれば、つけは若い世代に回る。
 大学など高等教育への支援策も足りない。職業選択や将来の賃金水準に大きく影響するのは、高校卒業後の進路だ。皆が大学に進学すればいいとは言わないが、家庭の経済事情で進学したくてもできない事態は避けるべきで、家計の負担を減らす政策が必要だ。低成長時代の国家の生き残りに必要な「創造性」を確保するためにも高等教育の充実は欠かせない。

教育費、家計負担軽くなる? 〈総選挙〉政策・公約チェック(上)(朝日新聞/2009/08/24)

http://www.asahi.com/edu/news/TKY200908240109.html
 総選挙の投開票まで、あと1週間。政権交代がかかった今回の選挙では、教育政策をめぐって各党が数多くのマニフェスト・公約を掲げて競い合っている。何が語られているか。実現可能性は。2回にわたり「総ざらえ」で点検する。初回は、家庭の教育費負担の軽減策をみた。(上野創、青池学)

    ◇

■進学支援
 文部科学省の学校基本調査の速報値によると、4年制大学への進学率はこの春、50.2%と初めて5割を超えた。その分、家庭の教育費負担も増える。日本政策金融公庫の調査によると、高校入学から大学卒業までにかかる費用は1人あたり平均1023万円に上る。ここをどう手当てしていくかは、各党が公約で重きを置く点の一つだ。
 自民は、返済しなくていい「給付型」の奨学金制度を高校生、大学生について設けることを目玉に掲げる。「今でも家計が苦しいのに、さらに借金が増えたら返済の負担に耐えられない」。そう考えて奨学金を利用せず進学をあきらめる学生は少なくない。ならば「給付型」で支援しようという考えだ。
 この「給付型」は自民・公明の連立与党重点政策に盛り込まれている。自民はさらに低所得者の授業料無償化を訴え、公明は▽中・高校生の教育関係費の一部の税額控除▽所得に応じた高校授業料の減免▽経済的に困難な小中高校生の支援基金の設立――などもうたう。
 低所得層を重点的に支援するこうした与党側の政策に対し、「高校無償化」で全体を支援するというのが民主案だ。政権をとれば10年度から実施するとしている。
 具体的には、公立高校生の家庭に、年間授業料に相当する12万円程度の就学支援金を出して実質的に無償化。私立の家庭にも同じく年間12万円程度を出し、低所得者には倍の24万円程度を支給する。大学生向けには希望者全員が受けられる奨学金制度を創設するとしている。
 高校無償化は、民主、社民、国民新の3党が合意した「共通政策」にも盛り込まれた。共闘関係にある新党日本も高校無償化を掲げる。
 社民は無償化の対象に入学金を含めたうえで、3分の1に下げられた義務教育費の国庫負担率を2分の1に戻すことを盛り込む。国民新は、進学などで実家を離れた子どもをもつ家庭向けの「仕送り減税」も唱える。
 共産は、公立無償化に加え、私立の入学金、授業料について年収500万円未満は全額助成、800万円未満は半額助成とする「授業料直接助成制度」を提示。給付型奨学金の創設と、国の奨学金の無利子化も掲げている。
 みんなの党も高校、専門学校、大学について、給付型などによる奨学金制度拡充をうたっている。

■子育て
 各党の公約には、子育て支援策も多く盛り込まれている。
 自民が前面に打ち出したのは幼児教育の無償化。3~5歳児の幼稚園・保育所の費用負担を段階的に軽くし、12年度から完全に無料にするとしている。公明は自民同様の無償化と共に、児童手当の支給対象を現在の小学生から中学生まで引き上げ、額を倍増させることを盛り込んだ。
 幼児教育無償化は民主も政策集で触れてはいるが、眼目は「子ども手当」。月額2万6千円を中学卒業まで支給する考えで、まず来年度、半額支給から始めるとする。
 他の野党も、社民は18歳まで月額1万円(第3子以降は2万円)、みんなの党は中学卒業まで月2万~3万円支給するとしている。共産は幼稚園と保育所の費用軽減を掲げつつ、公的保育(市町村立の認可保育所)を増やして待機児童をゼロにするという。
 教育に対する日本の公費支出は他の先進国より格段に低く、その分を家庭が負わされている――。こんな指摘は言われて久しい。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本の国内総生産(GDP)比の教育予算は先進国の最低レベル。05年のデータは3.4%と、資料がある28カ国で最低だ。
 今回の総選挙では、ほとんどの政党がこれをOECDの平均レベル(5%)に引き上げるとうたっている。自民、公明、共産は数値を入れずに「OECD諸国並み」とし、民主や社民は「5%」と明記している。

■実現の道筋
 様々に並ぶ教育費の負担軽減策と予算拡充案。しかし、本当に実現できるのだろうか。
 例えば、教育予算のGDP比をOECD加盟国の平均レベルにもっていくには7兆円以上が必要とされる。自民と公明が掲げる幼児教育無償化は、文科省の試算では7900億円が必要だ。民主は子ども手当に5兆3千億円、高校無償化と奨学金の拡充に9千億円かかるとしている。
 自民は11年度までに消費税引き上げを含めた税制改正を行って財源に充てるとするが、「OECD並み」実現には単純計算で3%近く消費税率を上げなければならない。そもそも、こうした税制改正は「景気回復」を前提にした話だ。
 民主は、天下り法人への補助金や非効率な政策など無駄を削減し、政策の優先順位を厳格にしていく中で実現するとしている。しかし、教育関係の公約を実現するにはそれ以外の施策を相当削り込まなければ困難だ。いずれにしても、実現までの具体的な手順は有権者には見えていない。
 本当に最優先で実現すべき政策なのか、疑問が投げかけられている公約もある。
 例えば、高校の授業料については、現在でも低所得者向けの減免制度がある。経済的に困難な生徒は、むしろ授業料以外でかかる学用品、制服、修学旅行の積み立てといった費用の負担が厳しく、その支援策こそ先決だという指摘も強い。

漫画家・倉田真由美さん―公立校の教育、底上げが必要
 いま小3の息子がいて、年末に第2子を出産予定です。やはり関心があるのは教育や子育ての政策です。各党が教育や子育てをメーンのテーマのように取り上げていますが、私たち一般の人間にはありがたいですね。
 ただ、例えば幼児教育の無償化は自民党がうたい、民主党も言及しているけど、認可外の保育所はどうなるんだろう。高額の認可外保育所もありますが、そこも無償になるのかどうかは書いていない。公約は具体的じゃないと判断材料にならないですね。
 親として注文があります。学校で、インターネットの危険性をきちんと教えてほしい。例えば児童ポルノは、表面化していない事件がいっぱいあると思う。親が危険性をわかっていないこともあるだろうから、学校で教えるべきです。
 近々、息子を連れて福岡から東京に転居します。中学校のことを考えると、東京では公立と私立のレベルの差が大きくて、公立に通わせていいのか心配になります。ほぼ全員が公立中に行く福岡では考えもしなかった問題です。
 だれもが行ける公立校でこそ、高い水準の授業が受けられるようにするべきです。子どもが受ける教育の水準が、子ども自身の学力ではなく、親の経済力によって左右されるのはおかしい。公立校の教育の底上げが必要ではないでしょうか。
 4年前に争点となった「郵政民営化」なんて、専門家じゃないから今も全然わからない。それでも当時はその是非だけを基準に投票してしまったけど、いま考えれば大事なことは他にいくらでもあった。前回の選挙を反省材料にしたいですね。

小林雅之・東大教授―全体で支える意識を
 日本の教育予算が少なく、家計の負担が重い問題について、ようやく政治家が関心を持つようになった。ただ、自民などが掲げる給付型奨学金も、民主などが打ち出す高校無償化も、先進国ではすでに整備されている。どちらかではなく、両方が必要だ。
 こうした政策が総選挙の時だけ語られ、実現されないままになってしまっては困る。危機的な財政のなか、財源をどうするかは難しい問題だが、予算の組み替えなどで対応していくべきだ。教育費は社会全体で支えていく、という方向に人々の意識を切り替えていく必要もある。そういう視点で考える人が増えないと、教育予算を増やしていくのは難しい。

2009年8月24日

〈夏の陣 09総選挙 くらしの現場から〉教育 影落とす経済的「格差」(朝日新聞/2009/08/25)

http://www2.asahi.com/senkyo2009/localnews/TKY200908260349.html
 県内の専門高校で進路指導を担当する女性教員(36)は、大学進学を望みながら、経済的な理由で果たせなかった生徒を見てきた。多くは親に本音も告げず、ひっそり夢をあきらめていく。「もったいないけど、学校はどうにもできない」
 教育現場で、「格差」が目に見えるかたちで影を落とし始めている。
 県教育委員会によると、県立高校の授業料減免を申請する生徒は増加傾向にあり、08年度は2607人にのぼった。経済的に厳しい家庭で、公立の小中学校に通う子どもに給食費や学用品、修学旅行費などを支給する「就学援助」も、03年度の7823人(全体の6.2%)から08年度は9680人(同8.5%)に増えた。
 とりわけ深刻なのが、母子世帯だ。
 沿岸部の食品加工会社で準社員として働く佐々木良子さん(41=仮名)は2年前に離婚し、地元の県立高に通う次女(15)と2人で暮らしている。給料と児童扶養手当を合わせても収入は月約14万円。住宅ローンや光熱費、食費などを引くと、手元に残るのは1万円ほどだ。
 毎月の授業料や修学旅行費の積み立て金、クラブ活動費が家計に重くのしかかる。佐々木さんは最近、授業料の減免を申請した。「離婚は親の勝手な都合だから、子どもが進学したいのなら絶対にかなえてあげたい」
 県児童家庭課によると、03年度に1万2378世帯だった県内の単親世帯は、08年度は1万3409世帯に増えた。生活保護を受ける母子世帯は09年度(月平均、6月現在)は484世帯で、5年前と比べると3割増だ。厚生労働省の06年度調査では母子世帯の母親の85%が働いているが、平均所得は213万円で全世帯平均の4割以下だ。
 教育費の負担を減らそうと、各党は子ども手当の創設や授業料の無償化、給付型奨学金の充実など様々な支援策を政権公約に盛り込み、単親世帯への支援もうたう。
 だが、佐々木さんは「授業料をタダにするより、親が働きながら子育てできる環境づくりの方が大事では」と話す。専門高校の女性教員も「奨学金が生徒の授業料や進学費にまわらず、家の生活費に消える。親への経済援助が教育格差を解消するかは疑問」と言う。
 盛岡市の県立盛岡三高で進路指導に携わる廣瀬謙三教諭(45)は「高校の授業料を無償化しても、あまり実態は変わらない」と言う。
 中学生時代に塾の講習や通信教育を受けられるかどうかで学力に差が出る。親の経済状況によって大学進学や高校の進学先も左右されるのが現実だという。「高校入学前に教育格差は出ている。雇用状況の改善など根本的なところを変えなければ、教育機会は均等にならない」
 (平井恵美)

<主要政党のマニフェスト概要>
●自民党
 高校、大学での新たな給付型奨学金、就学援助制度の創設。低所得者の授業料無償化。
●民主党
 公立高校の授業料を無償化。私立高校生は年12万~24万円を助成。大学生ら希望者全員が受けられる奨学金を創設。
●公明党
 就学困難な高校生の授業料減免、給付型奨学金制度の導入。ひとり親家庭への支援の充実。
●共産党
 公立高校の授業料無償化と私学への授業料助成。給付型奨学金制度を創設。母子加算復活。
●社民党
 高校の入学金・授業料を無償化。給付型奨学金を増やし、私学助成を充実させる。母子加算の復活。
2009年8月25日

教育費負担の軽減に重点=14.5%増-文科省概算要求(時事通信/2009/08/28)

http://www.jiji.com/jc/zc?k=200908/2009082800709
 文部科学省は28日、2010年度予算概算要求をまとめた。一般会計の要求額は、前年度比14.5%増の6兆461億1000万円。教育費負担の軽減策に重点的に取り組み、低所得世帯の高校生を対象とした給付型支援制度を創設するほか、奨学金や授業料減免の予算も大幅な拡充を求める。
 高校生向けの給付型支援制度は455億1900万円計上し、年収350万円以下の世帯に教科書代や入学金などを援助する。大学生らを対象とする奨学金の貸与人員は無利子2万人、有利子3万人の計5万人増やし、全体で120万人とする。また、寄宿舎などから高校に通う離島出身者らに自治体が居住費を支援する場合、費用の一部を国が補助する制度(7億円)も設ける。(2009/08/28-17:28)

高校の授業料無償化、間接給付で決着か(読売新聞/2009/09/14)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090913-OYT1T00923.htm
 民主党がマニフェスト(政権公約)の柱に掲げる「高校授業料の実質無償化」について、文部科学省は、対象となる約330万人分の授業料を都道府県などを通じ交付する「間接方式」とすることで民主党側と調整に入った。
 民主党は当初各世帯に直接給付する方針だったが、多額の事務経費が必要な上、授業料に充当される保証がないなどの問題があり、党内でも間接方式を推す声が強まっている。同省は、現在授業料を減免されている低所得世帯に向けた給付型奨学金の創設も提案する。
 民主党のマニフェストは、公私立双方の高校生を対象に公立の授業料の年額相当分(12万円)を支給、私立高生で年収500万円以下の世帯に年24万円を上限に支援するもの。年間4500億円を要する見込み。
 実現方法について文科省では、公私立を問わず都道府県や政令市を通じた間接給付とし、具体的には、使途を限定した特定財源とするか、授業料を徴収しないことを法律に明記した「教育交付金」などの地方交付税とする方法をあげている。
 最終的には都道府県の授業料予算に充当されたり、学校法人に交付されたりすることになりそうだ。
 これまでの民主党案では、保護者からの申請に基づき、市町村が年3回に分け各家庭に直接給付することになっていた。しかし同省で検討した結果、多数の高校生の在学証明の提出が必要になるなど手続きを行う自治体の負担が大きく、事務経費も推計で数百億円にのぼることが分かった。
 また、授業料滞納者が公立私立計1万7000人(2008年度)にのぼる実態もあることから、支給分が全額授業料に充当される制度が必要としている。
 民主党内でも、こうしたデメリットを指摘する声があり、「必ずしも直接給付にこだわらない」(教育政策担当幹部)として間接給付を本格的に検討する。
 一方、私立高の場合、授業料の年平均は約33万円のため全額賄うことができないケースも出る。このため同省は、授業料引き下げに充てる私学助成金の増額なども検討している。
 高校生のうち約22万4000人については都道府県などの判断で授業料が減免されているが、同省は、こうした生徒らについては、返済義務がなく授業料以外の用途にも使える「給付型奨学金」の創設が必要とする提案を行う方針。
(2009年9月14日03時06分 読売新聞)

「高校無償化」二つの懸念…方法は?財源は?(読売新聞/2009/09/14)

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090914-OYT1T01063.htm
 民主党が政権公約(マニフェスト)に掲げた「高校教育の実質無償化」は、社民、国民新両党との政策合意に明記された。
 財務相就任が有力視される藤井裕久・党最高顧問も「来年度当初から絶対にやる」と実現に意欲的だ。だが、文部科学省には懸念が二つある。
 一つは、「無償化」の方法だ。民主党が先の国会に議員立法で提出した関連法案は、保護者の申請に基づき、市区町村を通じて年額約12万円を「就学支援金」として各世帯に支給するなどの仕組みだ。
 文科省内では、この案に否定的な見方が多い。〈1〉保護者が支援金を授業料に使う保証がない〈2〉在学証明や所得証明を処理する市区町村の事務量が膨大になる――などの理由からだ。
 このため、文科省は代案を考案した。公立高の授業料は徴収しない、との法律を制定した上で、高校の設置者である都道府県への国庫補助を増額する内容だ。地方交付税など既存の仕組みの活用か、新たな国庫補助制度を創設するか、いずれかの手法が有力だ。
 民主党内には、文科省案に同調する意見もある。ただ、自治体などに国が補助金を支給するという旧来の手法の踏襲は、民主党が衆院選を通じて訴えてきた「家計への直接支援」路線の転換を意味し、党がすんなり応じるか不透明だ。
 もう一つの懸念は、財源だ。民主党が「年間4500億円」と試算する財源の手当ては明確でない。省内には今、「高校無償化のために他の予算が削られかねない」という疑心暗鬼が広がる。幹部は「予算の全体額が増えるなら歓迎だが、省内から必要な財源を出すなら、とても無理」と話す。
 文科省案の核心はここにある、ともいえる。つまり、財源の大半について、地方交付税を所管する総務省の予算に計上できれば、文科省が“身を切る”分が少なくて済む、というわけだ。
 民主党は、麻生政権が編成した今年度補正予算の組み替えなどで対応する方針だが、「子ども手当」や高速道路の無料化など、巨額の財源が必要な懸案は他にも数多くあり、財源の確保には曲折も予想される。
(2009年9月14日22時08分 読売新聞)

新教育の森:教育にかける公費、乏しさ浮き彫り 重すぎる日本の私費負担(毎日新聞/2009/09/26)

http://mainichi.jp/life/edu/news/20090926ddm090100158000c.html
◇OECDデータ比較
 経済協力開発機構(OECD)が「図表で見る教育09年版」を公表した。加盟30カ国の教育に関するさまざまなデータを比較分析したリポートから読み取れる日本の教育の現実とは--。【井上俊樹】

 ◆対GDP比3.3%
 日本の06年の公的財源からの教育支出の対国内総生産(GDP)比は3・3%(OECD平均は4・9%)で、比較可能な28カ国中ワースト2位、大学などの高等教育への支出に限れば0・5%(同1・0%)で最下位、すべての公的支出に占める教育費は9・5%(同13・3%)で27カ国中最下位--。OECDのリポートで改めて浮き彫りになったのは、他のOECD諸国に比べて著しく乏しい公的教育支出の現状だった。
 一方で際立っているのが私費負担の重さで、公私合わせたすべての教育支出に占める私費割合は33・3%と、日本と同様に私立大学が大半を占める韓国(41・2%)に次いで2番目に高かった。とりわけ負担が重いのが大学などの高等教育段階で、OECD平均(27・4%)をはるかに上回る67・8%が私費で占められ、やはり韓国に次いでワースト2位だった。
 これに対し、大半の大学が国公立で、授業料も無償か低額、または奨学金制度が充実しているヨーロッパは総じて私費負担が少なく、最も負担の軽いノルウェーは高等教育段階でも3%にすぎない。

 ◆大学入学が家計圧迫
 重い負担は家計を直撃している。東京地区私立大学教職員組合連合が首都圏の16私大・短大の新入生家庭を対象に行った調査によると、08年度の初年度納付金の平均は130万9061円。5人に1人は入学費用を借り入れにより工面していた。自宅外通学者の家庭では入学年度にかかる費用が年収の3分の1にも達していた。国立大の授業料も過去30年で15倍になり、もはや低所得者層の受け皿とは言えない状況だ。
 初等中等教育(小中高)段階でも決して負担が軽いわけではなく、私費割合はOECD平均(8・8%)より高い10・1%。日本は私立高校に通う生徒が約3割、東京都に限れば半数以上と、欧米の主要国(数%~20%程度)に比べて多いのが大きな理由だ。しかも、その私立高校ではこのところ授業料値上げが相次いでいる。大阪府では今年度、府内の私立94校の半数以上の50校が、東京都でも233校中54校が値上げした。中には一気に年間20万円近い値上げに踏み切った高校もある。日本私立中学高等学校連合会によると、08年末時点の授業料滞納率は2・7%。経済情勢の悪化で07年度末の3倍に増えた。

 ◆目標5%、財源は?
 民主党は公的財源からの教育支出をGDP比で「先進国の平均水準(5%)に引き上げる」目標を掲げている。無論、それには財源が必要だ。北欧諸国の場合は教育費を無償にする代償として、国民は税率25%前後の付加価値税(消費税)など、世界最高水準の高い税負担を課せられている。仮に民主党の目標を達成するとすれば、新たに必要な財源は8兆円程度になる。

 ◇1学級当たりの児童数、平均21・4人 日本28・2人、多さくっきり
 OECDの調査では、日本の1学級当たりの児童・生徒数の多さも明らかになった。07年は小学校が28・2人で、23カ国のうち、韓国(31人)に次いで多く、最少のルクセンブルク(15・8人)とは12人以上、OECD平均(21・4人)とも7人近い差がある。中学校も33・2人とOECD平均(23・9人)を大きく上回った。

 ◆学級編成基準の違い
 日本の小中学校の学級編成基準は上限40人。文部科学省によると、例えば米カリフォルニア州の小学1~3年生、イギリスの小学1・2年生はいずれも上限30人、ドイツは4年生まで標準24人と、政府の基準自体が日本より少ない。日本でも都道府県の負担で教員を増やして「30人」や「35人」といった少人数学級を実現している自治体も増えているが、欧米諸国に比べれば、まだまだ見劣りする。
 学力向上だけでなく、いじめや不登校対策など、きめ細かい指導をするためにも、少人数学級の実現を求める声は多い。文科省によると、仮に学級編成基準を30人に引き下げるには、教員の給与総額で年間8000億円程度が必要になるという。

 ◇4年制大学進学率は18位 卒業率90%はトップ、平均69%
 今春の大学進学率が初めて50%を超えたことが話題になったが、4年制大学(医学部などは6年制)に限れば日本の大学進学率は必ずしも世界トップ水準というわけではない。
 今回の調査対象となった07年時点では日本は46%で、27カ国中18位。1位のオーストラリアは86%に達し、OECD平均でも56%。ただ、日本の場合は高校卒業後、短大や専門学校に進むケースが多く、これらを含めた高等教育機関全体では76%と、OECD平均(71%)を上回る。
 一方、日本の高等教育機関の中退率は著しく低く、卒業率(05年)は90%と19カ国中トップ。OECD平均は69%で、最も低いアメリカの場合は47%にとどまる。OECDは日本の教育成果の一つに挙げるが、「入りさえすれば卒業できる」日本の高等教育機関の実態を改めて浮き彫りにした、ととらえるほうが的確だろう。

 ◇給付型奨学金の拡充と財源の議論を--欧米の教育費事情に詳しい東京大学大学総合教育研究センターの小林雅之教授(教育社会学)の話
 教育費には大きく分けて三つの考え方がある。
 一つ目は教育は社会全体で支えるという考えのもと、税負担が大きい代わりに私立大も含めて無償にするスウェーデンのような北欧型。二つ目が返済が必要なローン型奨学金を利用して学生自身が負担する個人主義的なアメリカ型。
 これに対し、親が子供の教育の面倒を見るのが当たり前というのが日本や韓国の考え方だ。
 しかし、このままの高い学費で、しかもかつてのような経済成長も期待できないとすれば、所得の高い人は高学歴で子供も高学歴・高所得、所得の低い人はその反対という「階層の再生産」化がますます強固になる。そうやって可能性が閉ざされた社会には活力がなくなり問題だ。
 民主党が掲げる「GDP比5%」は現実的には難しいが、日本の公的教育支出は明らかに少なすぎる。
 ある程度高い授業料は取るが、一方で低所得層対象に返済をしなくてもよい給付型奨学金を拡充すべきだ。ただそれには何らかの形での増税は避けられず、今後議論する必要がある。
毎日新聞 2009年9月26日 東京朝刊

<文科省>高専も無償化…外国人学校なども 概算要求へ(毎日新聞/2009/10/14)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091014-00000051-mai-bus_all
 民主党が政権公約に掲げた高校授業料の実質無償化について、文部科学省は、高等専門学校や専修学校の高等課程、外国人が通う各種学校なども対象とし、必要額を来年度予算の概算要求に盛り込む方針を固めた。高専は5年制だが、第1~3学年を対象とする。
 鈴木寛副文科相が毎日新聞の取材に「なるべく多くの人の学ぶ機会を応援したい」と述べ、こうした方針を明らかにした。
 政府は来年4月から公立高校生の授業料を無料とし、私立高校生の世帯に年12万円(低所得世帯は最大24万円)を助成する方針。鈴木副文科相は国公立の高専について、平均授業料が23万円を超えることから、私立高校生と同様に低所得世帯への増額措置を適用する方針も明らかにした。
 美容師や調理師養成校などを含む専修学校のうち、高等課程(中卒者対象)の生徒は対象とする。また、外国籍でも、学校教育法に定める各種学校の生徒は加える方針で、朝鮮人学校やインターナショナルスクールなどが該当。ブラジル人学校などに多い無認可校は「制度の枠組みの中に入れ支援するのが望ましい。認可のハードルを下げるなどの見直しが必要」とし、対象としない考えを示した。
 全国の高校は5183校(生徒334万7000人)で、専修学校高等課程は495校(3万8000人)、高等専門学校は64校(5万9000人)。民主党が当初の予算額として想定した4500億円より要求額は膨らむ見通し。
 支給額を増やす低所得の目安は年収500万円が基準となる見通しだが、段階的な支給額の増加なども含め、財務省と調整する。
 支給は、生徒や保護者に直接ではなく学校側に渡す「間接支給」方式とする。私立高校で支給額の増額を求める場合、保護者の収入証明書を添えて学校に申請し、授業料との差額を納付する仕組みになる。【加藤隆寛、本橋和夫】

 【ことば】各種学校
 学校教育法第1条に定める「学校」ではないが、学校教育に類する教育機関として同法で規定され、私立校は都道府県知事の認可を受ける。カリキュラムの自由度が高く、通学定期の購入も可能。服飾や看護系学校、簿記学校などが含まれ、外国籍の子どものための教育機関の多くが該当する。予備校や自動車学校にも認可校がある。

公教育費民間負担、韓国は依然世界1位

http://contents.innolife.net/news/list.php?ac_id=2&ai_id=103799
2009/09/09(Wed) 06:27
韓国の公教育費の中で民間が負担する割合が去年に続き、経済協力開発機構・OECD国家の中で最も高かった。大学の授業料はアメリカに続き2位だ。
教育科学技術部はこのような内容の2009年OECD教育指標の調査結果を発表した。韓国の国内総生産・GDP対比の公教育費の割合は7.3%で、OECD平均5.8%より高く、特に公教育費の中で、保護者など民間が負担する割合は2.9%、OECD国家の中で最も高かった。
また、25歳から34歳の高校履修者の割合は97%に達し、調査対象36か国中1位、大学水準の高等教育履修者の割合は56%で、カナダに続いて2位だった。

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最終更新:2009年10月15日 03:40
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