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朝日新聞

持つだけも禁止 自民、厳罰化を検討(2008/03/04)


インターネットによる児童ポルノの拡散に歯止めをかけるため、自民党は児童買春・児童ポルノ禁止法を改正し、厳罰化する方向で検討を始めた。
第三者への販売や提供などが目的の場合のみが違法となる現行法を改め、目的にかかわらず原則として児童ポルノの所持そのものを禁止する。警察当局は取り締まりを強めているが、個人がネットなどを通じて集めた児童ポルノを載せたサイトが乱立しており、単純所持を禁じることで発信源を断つ必要があると判断した。
児童ポルノは、ネットで複製した画像や動画が多数出回っており、これらは海外のサーバーを経由しているケースが多い。
このため、発信源となっている所有者を摘発するのが難しいという。
自民党は森山真弓元法相をトップにした小委員会を今年2月、法務部会に設置。
どの程度の罰則を設けるかなどについて今後議論し、超党派の議員立法で今国会への改正案の提出を目指す。
警察庁によると昨年1年間の同法違反事件のうち、児童ポルノ関連で立件されたのは567件(暫定値)に上り、5年前の3倍になった。
こうした状況から日本が「児童ポルノ大国」という国内外の批判は根強い。
主要8カ国(G8)中のほとんどはすでに単純所持を禁じている。
単純所持をめぐっては、04年の法改正時にも与党が禁止条項の創設を検討した。
しかし、たまたまダウンロードしたり、迷惑メールなどで一方的に送りつけられたりした場合も摘発対象となる可能性があり、「捜査権の乱用を招くおそれがある」との指摘があった。
「表現の自由を侵すことにつながる」という批判もあり、このときは創設が見送られた。
森山元法相は「事態は深刻化しており、前回の改正時とは状況が違う」としている。
ただ、プライバシーの侵害を懸念する意見も強く、小委員会では違法とする範囲を「収集の意思があった場合」などに限ることも含めて検討する。


読売新聞

所持だけでも「処罰」…与党が法改正方針(2008/03/09)


自民、公明両党は、児童ポルノの画像などのはんらんに歯止めをかけるため、児童ポルノを販売目的でなく、「単純所持」するだけでも禁じることとし、罰則の対象とする方向で児童買春・児童ポルノ禁止法を改正する方針を固めた。

改正案は議員立法で、今国会中にも提出する方針だ。
インターネットなどを通じて児童ポルノ事件の被害者が急増していることや、国際的に日本の対応が出遅れていることが背景にある。

単純所持とは、販売や提供の目的でなく、画像や写真などを個人で集めたり、CDやDVDなどの記録媒体に保存したりすることを想定している。
インターネット上での公開は海外からでも閲覧できるため、日本からの画像流出が問題視されている。

この問題で、米国のシーファー駐日大使は11日にも鳩山法相と会い、児童ポルノの単純所持の禁止措置を日本が導入するよう求める。

法務省によると、主要8か国(G8)の中で、児童ポルノの単純所持が禁止されていないのは日本とロシアだけだという。

内外の情勢を受け、自民党は7日、法務部会の中に新設した「児童ポルノ禁止法見直しに関する小委員会」(森山真弓委員長)の初会合を開き、単純所持を禁止し、罰則を設ける議論を進めることを決めた。
公明党も昨年12月に同様のプロジェクトチームを設置して法律の見直しを検討してきた。
同法は超党派の議員立法で成立したため、自公両党は今回も超党派による改正案提出を目指す。

児童買春・児童ポルノ禁止法は99年に成立。
当時、単純所持について、罰則なしの禁止規定の盛り込みが検討されたが、プライバシー権の侵害につながるなど、様々な反対があり、見送られた。

法務省によると、児童ポルノに関する事件の起訴数は99年は25件だったが、03年は214件、06年は585件と急増している。
(2008年3月9日03時05分 読売新聞)

「性的搾取」反対の世界会議 準備会合(2008/10/11)

http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/mixnews/20081011ok01.htm
児童ポルノ規制強化訴え
 子ども買春や人身売買、児童ポルノの根絶に向けた「子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」が11月25~28日、ブラジルのリオデジャネイロで開かれる。
 これに先立ち、日本ユニセフ協会は今月6日、東京都内で準備会合を開いた。世界会議への参加予定者ら約90人が集まり、政府や国際NGOの代表者がこれまでの国内の取り組みや課題などを報告した。
 子どもの性的搾取とは、買春、人身売買、ポルノなど、子どもを性的な対象として扱う虐待行為を言う。
 性的搾取の中でも、状況が悪化しているのが児童ポルノの問題だ。米国では、認知された児童ポルノのサイト数が2001年に2万だったのに対し、06年には34万と激増。準備会合では、日本も児童ポルノのサイトが多数つくられている国の一つとなっている現状が指摘された。
 国際NGO「ECPAT/ストップ子ども買春の会」共同代表の宮本潤子さんの報告によると、05年3月~06年10月の集計で、日本は、米国、ロシアに続き3番目に児童ポルノのサイトが多い国という(ECPATスウェーデンホットライン調べ)。
 欧米諸国では、児童ポルノを所持すること自体を犯罪とする国が多いが、日本の児童買春・児童ポルノ禁止法では画像の「単純所持」を処罰することができない。性的なポーズをとった水着姿の子どもの画像も、性的虐待を描いたアニメも取り締まれないため、早急な法整備が必要なことが強調された。
 会合では最後に、日本ユニセフ協会大使のアグネス・チャンさんが、「児童の性的搾取の問題は、深刻化、広範化している。官民あげて様々な立場の人たちが連携し、子どもの保護のために行動を起こす必要がある」と呼びかけた。
 この世界会議は1996年にスウェーデン・ストックホルムで、2001年に横浜で開催されたのに続き、今回が3回目。
(2008年10月11日 読売新聞)

社説:児童ポルノ 与野党で法案の一本化を急げ(2009/06/21)

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090620-OYT1T01029.htm
 児童買春・児童ポルノ禁止法改正案の国会審議が遅れている。
 児童ポルノを私的に利用する「単純所持」禁止を盛り込んだ自民、公明の与党案は、昨年6月の提出以来、実質的な審議はなく、今国会には民主党案も提出された。
 両案は、子供たちを性的虐待から守るための規制強化では一致しており、大きな隔たりはない。法案を一本化するなどして、早期の成立を図るべきだ。
 現行法は、児童ポルノを他人に有償無償を含め提供する目的で所持することなどを禁じている。
 単純所持禁止は、10年前の法制定の際にも検討されたが、個人の嗜好(しこう)やプライバシーの侵害につながるなどとして見送られた。
 しかし、インターネットの普及で児童ポルノの拡散は急速に進んでいる。単純所持が禁止されていない場合、警察がパソコンを押収しても、児童ポルノ提供者を摘発するのは難しい場合が多い。
 主要8か国(G8)で単純所持を禁止していないのは、日本とロシアだけだ。日本が単純所持を容認していることが、国際捜査協力の支障となっている。
 与党案は、児童ポルノを「みだりに」所持することを禁止し、「性的好奇心を満たす目的」で所持した場合に限り罰則を設けた。
 民主党案は、代金を払うか、繰り返して取得することを禁じた取得罪を設け、与党案の単純所持罪より重い罰則を設けた。
 一致点を見いだすことは、それほど難しくないはずだ。
 児童ポルノの規制を進めていくためには、ネット事業者など民間団体の協力も欠かせない。
 警察庁は、プロバイダーが違法なサイトへの接続を遮断する「ブロッキング」制度の導入に向け、ネット事業者らと児童ポルノ流通防止協議会を発足させた。今後、技術面などの検討が行われる。
 児童ポルノに類したマンガやアニメなどについても、欧米では規制する国が増えている。
 最近は、少女らをレイプして妊娠・中絶させる過程を疑似体験する日本製パソコンゲームソフトが国際的に出回り、英国議会などで批判された。
 この問題を受けて業界団体は、性暴力を扱うゲームソフトの製造販売を禁止することを決めた。
 児童ポルノのゲームなどに対する規制も、与党案は今後の検討課題として盛り込んでいる。「表現の自由」とのかねあいもあるが、児童保護の観点から積極的に議論すべきだ。
(2009年6月21日01時43分 読売新聞)

毎日新聞

米が日本に罰則強化要求「単純所持も犯罪」(2007/06/10)

http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20070610k0000m010119000c.html
インターネットの普及で国境を越えて流通し、被害が深刻化している児童ポルノをめぐり、米政府が日本の政府・与党に対し、画像を所持するだけでも処罰できるよう「児童買春・児童ポルノ禁止法」の改正を要請していることが分かった。同法が個人的な収集目的での所持を禁じていないため、ネットに広がる大きな要因になっている。米政府が児童ポルノ問題で、日本に罰則の強化を求めたのは初めて。

児童買春・児童ポルノ禁止法は、他人への販売や提供目的で画像を所持すると処罰されるが、収集目的の「単純所持」は罪に問われない。主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)のメンバーで、単純所持が合法なのは日本とロシアだけ。

関係者によると、米政府高官が4月から5月にかけて、外務省幹部ら政府関係者や自民党の有力議員に面会した。この中で、米捜査当局がこれまでに摘発した児童ポルノ事件で、画像購入記録に数百人の日本人が含まれていることに言及。日本の現行法で単純所持を禁止していないことが、米国での児童ポルノ画像の生産にもつながっている事情を説明した。

そのうえで、参院選後にも予定される同法の見直し論議で、米国同様に単純所持の禁止を実現するよう働きかけたという。米政府高官はさらに政府・与党に対し、プロバイダー(ネット接続業者)などがネット上の児童ポルノ画像を見つけた場合には、米国のように関係機関への通報を義務付けることも促した。

米国内では、児童ポルノの被害者が3歳以下の幼児にまで及ぶなど問題が深刻化。米議会でも「児童ポルノは深刻な児童虐待」として対策強化を図る動きが出ている。

米政府高官は毎日新聞の取材に「児童ポルノを売るのを違法としながら、買うのは合法とする日本の法律は大きな矛盾を抱えている。日本の法の抜け穴が児童ポルノの市場を温存させている」と述べた。

日本の国会議論でも「単純所持も禁止すべきだ」とする主張はあったが、当局による捜査権の乱用を懸念する声もあり、見送られている。【ネット社会取材班】

【ことば】
◇児童買春・児童ポルノ禁止法 99年に議員立法で成立、施行された。性欲を刺激する18歳未満の子供の写真やビデオを「児童ポルノ」と定義。不特定多数に提供するか、多くの人が見ることができるようにした場合は5年以下の懲役、または500万円以下の罰金を科す。特定の個人へ提供しても3年以下の懲役、または300万円以下の罰金。
毎日新聞 2007年6月10日 3時00分

単純所持に罰則も検討 自民が法改正へ(2008/02/24)

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080224k0000m040109000c.html
インターネットによる児童ポルノ画像などの拡散に歯止めをかけるため、自民党は23日、児童買春・児童ポルノ禁止法を改正する方針を固めた。販売目的でなくても、画像や写真などを個人で集める「単純所持」を禁じる規定を新たに盛り込むほか、処罰規定も検討対象とする。超党派の議員立法で今国会に提出する考えだが、処罰規定には与野党とも「わいせつの定義もあいまい。捜査権の拡大を招く」といった慎重論がある。

自民党は月内にも森山真弓元法相をトップに小委員会を設ける。販売や提供の意図がない単純所持について「電磁的記録の保持」を禁じる規定を設ける案が出ている。処罰規定は、罰金を科すことを軸に検討する。迷惑メールなど、一方的に画像を送りつけられるケースがあるため、適用対象を収集の意図が明らかな場合に限る。アニメやコミックの児童ポルノへの規制は「表現の自由を侵す恐れがある」との意見が強く、見送られる見通し。

この問題では、国際的な取り組みが必要と米政府が昨年、単純所持を禁止する方向での法改正を要望。鳩山邦夫法相も4日の参院予算委員会で、単純所持にも処罰規定が必要と述べた。

現行法は99年施行。処罰対象なのは児童(18歳未満)の性的に刺激が強い写真や画像、ビデオについて▽制作と販売▽販売・提供目的での所持▽ネット公開--など。販売や提供目的でない個人収集は対象外だ。

与党は04年の法改正時にも、単純所持を禁じる規定を盛り込む案をまとめたが、野党の慎重論に配慮して、外して成立させた。しかしネットに画像を流した人物や組織を突き止めることは難しく、自民党内に「画像の拡散がやまない。法的規制が必要だ」との意見が再浮上していた。

同党は超党派での国会提出を目指すが、勝手に画像を送りつけられ、取得に気づかないケースも想定され、民主党内には「捜査権がいたずらに広がる可能性がある」(幹部)との異論がある。【堀井恵里子】
毎日新聞 2008年2月24日 2時30分

「児童ポルノをなくすには、単純所持を禁止して市場にインパクトを与えるしかない」シーファー駐日大使、鳩山法相と意見交換(2008/03/11)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080311-00000129-mai-pol
鳩山邦夫法相は11日、法務省を表敬した米国のシーファー駐日大使とインターネット上に広がる児童ポルノの規制強化などをテーマに意見交換した。

関係者によると、主要8カ国(G8)の中で児童ポルノの単純所持が禁止されていない日本とロシアについてシーファー大使は「子供を犠牲者にする児童ポルノをなくすには、単純所持を禁止して市場にインパクトを与えるしかない」などと主張した。
鳩山法相は自民、公明両党で法改正の検討が進められていることを説明した上で「個人的には大使の考えに賛成だ」と応じた。

3月11日19時59分配信 毎日新聞

社説:児童ポルノ規制 これ以上子どもを泣かせるな(2008/12/19)

 児童ポルノやインターネット上の子どもの性的虐待画像などに対する規制のあり方が、見直しを迫られている。

 先月、ブラジル政府とユニセフなどが主催し、約140カ国の政府やNGO(非政府組織)関係者らが参加してリオデジャネイロで開かれた「第3回子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」では「単純所持」や画像の閲覧、さらに過激な漫画やアニメなどの表現物も処罰対象にする厳しい行動計画が策定された。日本では自分が見るために持つ「単純所持」や表現物は規制対象外とされているため、対応の遅れが際立つ格好となった。

 96年にストックホルムで開かれた第1回の同会議では、日本は東南アジアへの児童買春旅行者の送り出し国として名指しで批判を浴び、99年に児童買春・児童ポルノ禁止法を制定した経緯がある。最近も「単純所持」を禁止していないのは主要8カ国では日本とロシアだけで、ポルノの大量供給国になっている、と海外から指摘されている。

 規制は憲法が保障する表現の自由を脅かさぬように慎重であらねばならないが、実際にはんらんしている児童ポルノの多くは暴行や虐待など犯罪の証拠品と呼ぶべきものだ。被写体となった児童の年齢や撮影日時の特定、被害児童の身元の割り出しなどが困難なため、警察当局による捜査が追い付かないのが実情だが、被写体にされた児童の人権への重大な侵害を断じて見逃してはならない。

 多くの児童は無理やり被写体にされたり、正邪の判断ができぬまま被害を受けている。撮影された画像は、ファイル交換ソフトなどを使って瞬時に世界中の不特定多数に広がる。回収は不可能で、被害状態は永久に続く。被害者の心の傷が成長に伴って増幅されるかと思うと、やり切れない話ではある。インターネットが登場する前に比べ、被害は格段に深刻化しており、市民の一人一人も従来の規制では通用しないと認識する必要がある。

 「単純所持」については規制対象に加える方向で、超党派で同法の改正案をまとめることにしていたが、ねじれ国会の影響もあり、残念ながら論議は深められていない。世界会議の結論も踏まえ、早急に与野党で協議し、警察権の乱用を招かぬように要件を明確に絞り込んだ上で、所持や収集についても規制対象とすべきだ。

 警察当局は取り締まりを強化しなければならない。これまではインターネットの接続業者に削除を要請したり、海外からの流入はブロッキングという手法で防いできたが、手ぬるいと言わざるを得ない。提供目的所持など現行法でも十分に対応できるケースが少なくない。子どもの被害をこれ以上拡大、拡散させぬため、積極的な捜査を求めたい。

児童ポルノ:フィリピン、規制審議 被害「最多国」汚名返上へ 単純所持も禁止に(2009/05/11)

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090511ddm012030079000c.html
 国際社会で児童ポルノ取り締まり策が論議を呼ぶ中、フィリピン下院(定数250以内)は児童ポルノの単純所持やネット閲覧を禁じる厳格な児童ポルノ禁止法案審議を進めている。法案には下院の過半数が賛成する見込みで、年内成立の可能性がある。同国はネットや書籍・ビデオ販売などで流通する児童ポルノの発信源の一つ。その「商品」に使われる被害児童の多さでは筆頭に挙げられる。児童ポルノ規制強化の動きは、単純所持を禁止しない日本などにも影響を与えよう。【マニラ矢野純一】
 法案は規制範囲として児童ポルノを写真やビデオに加え、性描写目的の漫画も含めている。販売目的の所持だけでなく、単純所持や意図的なネット閲覧やダウンロードも禁じた。違反した場合は禁固6~12年。インターネットの接続業者(プロバイダー)や、児童ポルノ関連のホームページ開設者も処罰対象になる。
 フィリピンではこれまで児童ポルノを労働法や人身売買法の枠内で規制するだけで、児童ポルノを定義して規制する単独の法律がなかった。そのため、未成年者を対象にした売春容疑などでしか摘発できなかった。規制が緩いことから、各国の捜査機関は児童ポルノをネット上に流す抜け穴の一つにフィリピンがなっていると指摘してきた。
 日本の捜査当局がこれまでに押収した児童ポルノの画像の中には、比国内で撮影されたものが多く含まれている。また、日本の児童ポルノの漫画が同国を発信源にネット上に流される例もある。
 法案提出者の一人で下院・児童福祉委員会のテオドロ委員長は「貧困から親が子供を児童ポルノのモデルに使って、その収入を生活費に充てているケースもある」と語る。比国ネット上では、法案に対して「表現の自由を侵す」「捜査権の乱用につながる」との批判も飛び交っている。
 テオドロ委員長は「表現の自由といっても子供の性を食い物にしていれば問題だ。また、きちんと(児童ポルノに使おうとした)証拠を集めれば、(違法かどうか)判断できる」と力説する。
 世界各地で児童ポルノ問題に取り組む国際NGO「児童失踪(しっそう)・児童虐待国際センター」(米バージニア州)は「フィリピンでこの法律が施行されるとアジア地域で最も規制の厳しい国になり、喜ばしいことだ」と規制強化実現を期待している。

◇「娘との生活のため」 日本の漫画、翻訳しネット販売
 日本の児童ポルノ漫画を翻訳するフィリピン人女性は胸中を悲しげに話した。「生活のためには仕方がない」。マニラ首都圏に住む20代の女性は周囲を気にしながら、翻訳中のポルノ漫画を見せてくれた。未成年と分かる制服を着た少女や、小学校の校庭を舞台にした絵が描き出されていた。
 女性は児童ポルノなどをネット上で販売する会社で翻訳のアルバイトとして働いている。「仕事を失いたくない」と匿名を条件に取材に応じた。
 「日本の漫画に興味がある人」という求人をネット上で見つけ、応募した。給料は、同国の公務員の平均月収とほぼ同じ月額約1万5000ペソ(約3万円)。小学生の娘と2人暮らし。この収入だけが生活の支えだ。
 日本の漫画は定期的に、マニラ首都圏にあるこの会社にメールで届いているという。女性は週2回、出社して漫画の画像が入ったUSBメモリーを受け取り、自宅のパソコンで日本語のせりふ部分を英語に翻訳する。日本語はほとんど話せないが、ネットの辞書機能を使っている。
 同社の事務所では10人ほどがパソコンの画面でフィリピンや世界各国のポルノビデオやアニメの編集や翻訳をしている。編集した映像や、女性が翻訳した漫画は、ネット上で世界中に販売されているという。欧米など世界中に顧客がいる。事務所は24時間稼働。「人件費が安いし、規制がないから、この国にこんな会社があるのだと思う」と女性は説明する。
 「初めてこのような漫画を見たときには、あまりのひどさに頭が混乱した」という。自宅で作業中のパソコンの画面を娘が見たこともある。それ以降、二度とパソコンには近寄らないように言いつけている。今は何も感覚がなく、淡々と訳すだけだという。
 「子供を扱ったものは規制すべきだと思う。こんな仕事をしていて罪の意識はあるけど……」。別れ際に彼女は力なく話した。
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 ■ことば
 ◇児童ポルノ規制
 「児童失踪・児童虐待国際センター」によると、世界で児童ポルノの画像の単純所持を禁じているのは56カ国で、米やカナダ、スウェーデンは漫画も処罰対象にしている。日本は04年の法改正で、新たに販売目的以外で児童ポルノを提供した者も処罰の対象に加えたが、単純所持は禁じていない。

 ◆各国の児童ポルノ規制の動き◆
96年 8月 ストックホルムで「児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」開催。日本は「取り組みが遅れている」と指摘される
    9月 米連邦議会で96年児童ポルノ禁止法が成立。実在しない児童を描写した漫画などのポルノを規制対象に
98年 5月 スウェーデンで児童ポルノの単純所持を禁止
99年 5月 日本、児童買春・児童ポルノ禁止法制定。児童ポルノの製造、販売などを処罰
00年 5月 国連総会で「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書」を採択。児童ポルノの製造、配布、輸出入、販売や、これらの目的での保有に対し、締約国は自国の刑罰法規を適用することを求められる。日本は05年1月に批准
02年 4月 米連邦最高裁で、96年児童ポルノ禁止法で定めた実在しない児童を描写するポルノの禁止は表現の自由を不当に侵害するとして違憲判決
04年 6月 日本は児童買春・児童ポルノ禁止法の一部を改正。販売目的以外で児童ポルノを提供した者も処罰の対象に加えたが、単純所持は禁じず
08年 6月 日本で与党が児童ポルノの単純所持禁止などを盛り込んだ児童買春・児童ポルノ禁止法改正案を衆院に提出。現在も継続審議
   11月 ブラジル・リオデジャネイロでブラジル政府、ユニセフなど主催の「第3回子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」を開催。児童ポルノ画像の入手だけでなく、閲覧や過激な漫画などの表現物も規制対象とする行動計画が策定される

社説:児童ポルノ 世界の批判を聞こう(2009/06/09)

http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20090609k0000m070157000c.html
 娘と母親をレイプし妊娠から中絶させるまでをCG(コンピューターグラフィックス)で疑似体験するパソコンゲームが海外で問題になっている。製作したのは日本国内のゲームソフトメーカーで、国際人権団体「イクオリティ・ナウ」(本部・ニューヨーク)は製作、販売会社だけでなく麻生太郎首相ら日本政府の閣僚らに抗議文を出すよう、160カ国の会員に呼びかけた。こうしたゲームは「陵辱系ソフト」と呼ばれる。日本ではこのような性暴力をテーマにした商品が高い収益を上げ、児童ポルノの市場も肥大化していることが批判されている。

 これを受け、国内のアダルト系ゲームソフトメーカーなど約230社でつくるコンピュータソフトウェア倫理機構(鈴木昭彦理事長)は、性暴力を描写した「陵辱系ソフト」の製作禁止、「陵辱系ソフト」の判断基準の確立・整備などの対策を打ち出した。

 児童ポルノを規制する動きは国際的に活発で、日本の対応の遅れが際立っていることは以前から指摘されていた。昨年11月の「第3回子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」では画像を入手するだけでなく、閲覧することや過激なアニメなども規制対象とする行動計画が策定された。先進諸国ではアニメやCGについても何らかの法規制を設けている国が多い。各国捜査機関から「児童ポルノの提供国」と指摘されていたフィリピンでも単純所持や閲覧、アニメなども規制対象にした法案が審議されている。

 これに対し、日本は昨年6月に与党が画像などの単純所持を処罰の対象とする児童ポルノ禁止法改正案を国会に提出し、今年3月には民主党が「有償または反復して取得する行為」に処罰対象を限定する法案を提出したが、いずれも論議されないまま放置されている。アニメやCGは与野党いずれも規制対象としては触れていない。

 悪意で児童ポルノ画像を送りつけられた場合にも単純所持で処罰されるのでは警察権の乱用を招く恐れがあり、直接の被害児童がいないアニメなどにまで安易に規制を広げれば表現の自由が脅かされかねない。いずれも議論を深めるべき問題だろう。

 ただ、画像が一度ネットに流されれば世界中に広がり、回収は不可能になる。深刻化する子どもの性被害への影響についても各国で問題になっている。児童ポルノは国際連帯がなければ対応できない問題なのだ。「このような犯罪を放置することは人類の恥だ」(ブラジルのルラ大統領)。業界団体の自主規制は注視すべきだが、このまま日本の国会が放置していることは許されまい。

産経新聞

【主張】児童ポルノ 根絶へ所持規制は不可欠(2009/06/27)

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090627/plc0906270421002-n1.htm
 インターネットなどを通して氾濫(はんらん)する児童ポルノが国際的な問題となっている。
 日本では10年前にできた児童買春・児童ポルノ禁止法で、18歳未満の青少年を含めた子供のわいせつ画像については、撮影などの製造や提供、販売目的の所持などは禁止されている。
 ところが、個人的趣味などとして持つ「単純所持」には法規制がない。根絶には画像を入手する者への歯止め措置が不可欠であり、国会は審議入りした与野党双方の改正法案の調整を急ぎ、早期成立を目指してほしい。
 児童ポルノ犯罪の拡大には目を覆いたくなる。最近では2歳長女のわいせつな写真を撮影した母親らが逮捕される信じがたい事件も起きている。画像は1枚数千円程度で買い取られていたという。教職者がかかわる事件も目立つ。
 警察当局は、ネット上の児童ポルノ投稿サイトへの広告掲載を仲介した広告代理店を同法幇助(ほうじょ)容疑で摘発するなど取り締まりに力を入れている。警察庁は先ごろ、被害児童のカウンセリングを含めた総合的な対策も発表した。
 児童ポルノ犯罪の検挙件数は昨年、過去最悪を更新した。だがネットで流れる画像だけでは被害児童の特定が難しく、摘発は氷山の一角とされる。配信に海外のサーバーを使うなど摘発逃れの手口も巧妙化している。違法サイトへ接続させないシステム構築も検討されているが、対策にはネット接続業者など民間の協力も必要だ。
 単純所持をフリーに認めているのは主要国(G8)では日本とロシアだけで、米国などからは、捜査協力上も日本に所有自体を禁じる法規制を求める声が強い。
 与党提出の改正案は、単純所持を原則禁止し、「性的好奇心を満たす目的」の所持には罰則を科すとしている。これに対して民主党案は、芸術表現や家族写真なども規制対象になりかねないとの懸念から、有償や常習的な取得に限って罰則を科す「取得罪」の新設などを盛り込んでいる。
 海外ではポルノ撮影を目的とした児童誘拐まで起きている。知らぬ間に画像が流れた子供たちの精神的被害も深刻だ。
 与党案も民主党案も、子供を性的対象とすることに反対の立場であることは一致している。子供たちを卑劣な犯罪から守る。そのための法規制強化であることを忘れないでほしい。
2009.6.27 04:21


その他の新聞

「漫画・アニメ規制危惧」(中日新聞/2008/11/18)


児童ポルノ禁止法改正案に疑問の声
 「これでは、どこまでが『芸術』で、どこからが『犯罪』なのか分からない」。与党が国会に提出している児童買春・ポルノ禁止法の改正案をめぐり、疑問の声が出ている。児童ポルノ写真・映像を個人的に持つ「単純所持」も禁じたことや、今後、漫画・アニメも禁止対象となる可能性があるからだ。漫画家や専門家らは、同法改正が表現の自由を狭める契機になるとの危機感を募らせている。

 与党の禁止案は、「単純所持」を禁止し、性的好奇心を満たす目的で所持・保管した場合は、懲役刑など罰則を科す。一方、民主党は児童ポルノを買ったり、自ら何度も入手した場合に処罰する「取得罪」を盛り込んだ骨子案をまとめた。
 単純所持を違法とするかどうかや、漫画・アニメも含めるか否か、1999年の児童ポルノ法制定当時から議論されてきた。日本ユニセフ協会は今春から、児童ポルノ反対のキャンペーンを実施。単純所持禁止のほか、子どもへの性的虐待を描いた漫画やアニメも違法化することを訴えている。
 漫画やアニメの作者らでつくるネットワーク「連絡網AMI」共同代表理事である兼光ダニエル真さん(36)は、「実際に子どもが性的虐待されている児童ポルノは根絶すべきだ」としながらも、「空想上の産物である創作物は分けて考えるべきだ」と訴える。

  • 定義あいまい
 「児童ポルノの定義が『性欲を興奮または刺激する』などあいまいで、何が違法なのかを決めるのに主観が入る。捜査当局の胸三寸で判断でき、単純所持を禁止すると別件逮捕の温床になる恐れもある。定義が明確化されないままで改正するのは反対」
 また、有害や不快なものも「違法」として取り締まる流れになっていると懸念する。「何が有害か不快かは人によって違う。下劣でいかがわしいものでも、創造物は頭の中での想像。これを取り締まることは、思想弾圧にもつながりかねない」。
 この問題に詳しい山口貴士弁護士は、単純所持は捜査当局の乱用が懸念され、4年前の改正時も見送られたことを指摘。創作物規制について「表現の自由は少数派の表現を守ることに存在意義がある」とする。
 小説「チャタレイ夫人の恋人」を翻訳した作家・伊藤整氏らは猥褻文書販売罪で57年、最高裁で有罪に。問題部分は伏字にされ、完訳本刊行までに長年を要した。「価値観は時代とともに変わるが、一度、規制すると失われた表現の自由を取り戻すことは不可能に近い。特定の時代の価値観で未来における表現の在り方を規制し、未来の世代から創作の自由を奪ってはならない」(山口氏)
 専修大の山田健太准教授(メディア法、現論法)は「日本は性犯罪が絡んだ絶対禁止すべきものと、見たくない人の目に触れないよう流通で規制すべきもの、青少年に見せたくない『有害』なものなどが、これらが一緒くたに『わいせつ』とされ、とにかくみんな禁止してしまおうという流れになっている。法で絶対禁止にするものは厳格でなくてはならない」とする。
 規制範囲の拡大も懸念する。「今の世の中は、安心・安全・健全の名の下に何でも法や公権力で規制することに頼り、規制の範囲が、違法なものから不正や有害なものへと広がっている」
  • 思想のチェック
 単純所持禁止が「思想のチェック」につながりかねず表現の自由の大原則を変えることになる。一度作った例外が、その後一般化する例は少なくない。民主党骨子の取得罪も、どう特定するかを考えると同じ危険性がある」と懸念を示す。
 山田氏は、創作を規制するのではなく、年齢区分や陳列区分などの流通過程の自主規制で対処できるものが多いとする。「法や公権力で取り締まる範囲は、ほどほどにすべきだ。規制により、憲法で保障された権利や自由がどんどんせばまっている。これは児童ポルノ法改正の問題だけではない」
  • 流通で規制すべきだ
 漫画家のみなもと太郎さん(61)も改正の動きに強い不安を覚える。「現行法を含め、どこまでがポルノの範囲に入るのか分からない」。みなもとさんが、関ヶ原の戦いから幕末までを描いた「風雲児だち」の中にも、11歳の少女が遊女として売られ、5年間客を取らされるシーンがある。「これも駄目と言われたら、歴史的事実が書けなくなる。誰が何をわいせつと決めるか、はっきりしていないのが怖い」
 20歳で少女漫画でデビュー後、あらゆるジャンルを描いてきた。歴史ものやギャグ漫画のほか、同人誌即売会「コミックマーケット」にも作品を出し続け、50歳の時に「萌え」の世界い挑戦。童顔で巨乳の少女も描いた。「子どもの裸や下着姿は駄目なのか。見る人がどう想像するかで変わるのではないか」

現在、与党案が衆院に提出され、民主党も骨子をまとめた。いずれも漫画やアニメは対象にしていないが、与党案は今後の状況を見て必要な措置をとるとしている。だが、みなもとさんをはじめ、漫画やアニメにも規制が広がると危惧する人は多い。
 これまで、少女漫画でも、濃厚なラブシーンや十代の性が描かれてきた。みなもとさんは「手塚治虫さんの作品でもエッチなシーンはある。人類の歴史の中で、文化としてさまざまな作品で表現されてきた」と話す。漫画雑誌や男性誌にも、アイドルの水着姿なども掲載された。絵画でも少女がエロチックに描かれた作品はある。伝説の画家とも呼ばれる、フランスの巨匠バルテュスが1930年代に少女の身体を克明に描いた作品は人々に衝撃を与えた。
 みなもとさんは「権威ある芸術作品は、取り締まれない。それならば、どこから取り締まるのか。誰が過激だと判断するのか」と疑問を呈する。
 どぎつい性描写をしたものや暴力的な漫画もある。「変なことを考える人はいるかもしれないけど、見た人みんな犯罪者になるわけではない。規制し始めると、なし崩しに範囲が広がっていく」
 子どもの体操着姿の写真でも、親が持っているのと幼女が好む人が持つのが違うように、見る人によっては意味は変わると指摘する。「結局、人の頭の中を探って、取り締まることになる。犯罪と芸術や創造がごちゃごちゃになっている。描いていいと言われたものだけを描くのは、表現の自由ではない、創作ではなく流通で規制すべきだ。何でもかんでも規制するのは恐ろしいこと。魔女狩りになる可能性もある。創作者が萎縮して、表現の自由を狭めていってしまうのも怖い」
増える携帯でのヌード写真のやりとり 送った少女らに「児童ポルノ罪」適用か[3/30]

携帯電話でヌード写真送った少女らに「児童ポルノ罪」適用か、米国(AFP/2009/03/30)

http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2587978/3982021
米ペンシルベニア(Pennsylvania)州で、携帯電話で自分たちのわいせつな写真を友人に送った行為が「児童ポルノの頒布」にあたるとして起訴する可能性もあるという連絡を検事から受けていた10代の少女3人とその家族が25日、起訴しないよう求めてこの検事を訴えた。

3人の少女のうち2人はブラジャーのみをつけた状態で、1人はトップレスの上半身写真を友人に送っていたことがわかり、学校側が関係当局に報告していた。

これをうけ、ペンシルベニア州のジョージ・スクマニック(George Skumanik)地方検事は、少女らの行為は児童ポルノの頒布にあたり、5週間の行動矯正コースに参加し、薬物テストを受けなければ起訴するという内容の文書を少女らの親に送っていた。

しかし、少女らを支援している米国自由人権協会(American Civil Liberties Union、ACLU)はスクマニック検事の行為は違憲で、起訴されれば少女たちが「性犯罪者」として登録され、就職に支障が出るおそれもあるとしている。
米国では未成年が自分のヌード写真やセミヌード写真を携帯電話でやり取りする行為が増えている。こうした行為は携帯電話でメッセージを送るという意味の「テキスティング(texting)」という単語をもじってセクスティング(sexting)と呼ばれる。
米国のある家族計画団体が前年12月に発表した調査によると、米国のティーンエージャーの20%がセクスティングをしたことがあるという。

【写真】
オランダ・ライデン(Leiden)の職業学校で、生徒の持ち物の携帯電話や筆箱(2008年10月17日撮影、本文とは関係ありません)
http://toku.xdisc.net/cgi/up/ttt/nm11917.jpg

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最終更新:2009年10月16日 03:14
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