国会質疑 > 児童ポルノ法 > 2009-04

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衆議院・法務委員会(2009/06/26/午後)/園田康博議員(民主党所属)

○山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。園田康博君。

○園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。
 きょうは、質問の機会をいただきまして、委員長を初め与野党の理事の方には感謝を申し上げたいと思います。
 私も、通常は厚生労働委員会に所属をさせていただいておりましたので、この法務委員会での質問というのは初めての機会となるわけでございますけれども、今般の児童ポルノに関する法律のさまざまな論点の中で、やはり児童の、子供の権利擁護という点をきちっと明らかにしていかなければいけないのではないか、しかも、先ほどの議論で少し、午前中私も聞いておりましたけれども、児童ポルノという規定も後ほどちょっと議論をさせていただきたいと思うのでありますが、この児童ポルノそのものを、やはり我々としては根絶というものを考えていかなければいけない。その手法を、どのような形で取り締まっていくのか、それをこの議論の中で明らかにできればなという思いでいっぱいでございます。
 いずれにしても、自公案そして民主案ということで、両案がこの国会に提出をされ、そして本日から紳士的なあるいは活発な議論がなされるということに対して、法案提出者の皆様方には敬意を表させていただきたいと思っておりますし、また、この委員会で幅広くこの議論というものが熟成されることを願っておるところでございます。
 それでは、時間も限られておりますので、早速質問に入らせていただきたいと思っております。
 まず民主案でございますけれども、世界的な潮流の中で、やはりこの取り締まりをしっかりとやっていかなければいけないという思い、これは私どもも共有をさせていただいているところであります。しかしながら、世界の潮流の中では、この規制をするということに関しては、やはりしっかりとした定義規定がまず最初になければいけないんだという視点に立っているという点は、私も、同感、共有をさせていただいていくところでございます。
 そこで、今般、先ほども少し議論がありましたけれども、まず民主の改正案について、「児童ポルノ」という、チャイルドポルノグラフィーそのものの名称、これを変更いたしました。「児童性行為等姿態描写物」ということに改めておるわけでございますけれども、まず、そもそも、なぜこういったことから規定をしなければいけなかったのかというその趣旨であります。
 それからもう一点は、やはりもう一度、この改正になる前というか、現行法そのものの意義というかその法益、それをきちっと最初に確認させていただきたいと思っておるところでございます。それは、先ほど申し上げた、あくまでも児童に対する性的搾取あるいは性的虐待からの児童の保護というところにまずその個人的な法益というものがあるんだというふうに私は理解をさせていただいているところでありますけれども、それで間違いないかどうか、それをまず確認させていただきたいと思います。民主案でございます。

○枝野議員 まず、「児童ポルノ」という言葉を変えたということでございますけれども、これは、ポルノ、ポルノグラフィーという言葉の、多分直訳的意味からすれば、現行法あるいは私どもの改正案の中身とも、もしかすると一致をするのかもしれません、私、語学が強くありませんので断定的なことは申し上げられませんが。ただ、日本の国内でポルノという言葉で受ける印象は、昔、ロマンポルノというんですか、ちょっと年代的に違いますのでよくわかりませんけれども、というような映画があった等のことから、非常に風俗犯的、風紀犯的なイメージを伴っている言葉であるということ。
 それから、逆に、この間、この児童ポルノの問題に絡んで、この十年来、大変えげつないといいますか、私自身も午前中の質問のときに申し上げたでしょうか、かつて並んでいた、本当に小さなお子さんが性的に虐待をされている写真等が載っていた雑誌を見たことがございますけれども、そういった本当にえげつないもの、こういうものを何とか防がなきゃということで動いてきた。
 その裏返しとして、定義上は、午前中、宮沢りえさんの「サンタフェ」も話題に上がりましたけれども、これが児童ポルノの定義に当たるのかどうか、私は、詳細な中身まで、朝日新聞の広告しか見ていませんので判断できませんけれども、芸術性との境目ぐらい、ぎりぎりのところのものまで非常に実は幅広く含まれている。
 もちろん、そういったものでも取り締まらなければならない対象のものはあるとは思いますけれども、児童ポルノという言葉で、ある人たちは昔のロマンポルノ映画のようなことで風紀犯的なことをイメージし、一方では、特にこういうものはひどいじゃないかということで、えげつない、大変ひどい、一番悪質なものを思い浮かべるということで、若干、その言葉によって受けるニュアンスが人によって違ってきたりしているのではないだろうか、あるいは誤解を招くようなことがあるのではないだろうか。
 むしろ、ここは素直に、何を取り締まっているのかといえば、児童の性的行為等の姿態を描写したものを取り締まっているので、あえて片仮名、横文字を使わずに素直な表現をしたことの方がどちらの方向にも言葉が紛れることがない、そういう思いで用語を変えるということを提起いたしました。
 それから、保護法益についてはもう御指摘のとおりでございまして、これは一貫して、条文上もございますけれども、被写体となった児童個人の性的虐待、権利侵害を防ぐ、そういったことから子供たちを守るという個人的な法益が保護法益であると認識をいたしております。

○園田(康)委員 ありがとうございます。
 おっしゃるとおりでございまして、釈迦に説法でございますけれども、この法益の問題については、通常言われている部分でいきますと、個人的な法益を保護するかどうかというところ、それがいわゆる法律の射程に入るかどうか、あるいは、社会的な法益、広く一般に、通念上、社会的なものを守るべきものであるのかどうか、それに対する取り締まり罪というものも確かに刑法の中にはあるんだというところ、あるいは、国家的な法益と言われる、国家を守るという点からして、そこに幅広く、内乱罪のようなものが当たるのではなかったかなと思うわけでありますが、そういったものもきちっとやっていかなければいけない。
 そういったそれぞれの法益があるわけでございますけれども、殊さら、この現行法、児童ポルノ、買春禁止法でありますけれども、これは、あくまでも受けた個人の、子供の権利を守らなければいけないという前提に立った法益であるんだというところであります。
 したがって、先ほど少し議論がありましたわいせつ罪、刑法の百七十四条あるいは百七十五条以下のわいせつ罪については、これはいわゆる個人的法益というよりは、どちらかというと社会的法益であるんだというところが、やはりこの児童ポルノ禁止法とは少し性質を異にするんだという点、この部分を、やはりどこに視点を置いてこの法律の保護がなされるのかというところをまずきちっと把握しておきたいなというふうに思うわけでございます。
 そうなりますと、続けて民主案でございますけれども、今度、定義をさらに明確化をしていくということで、現行法のいわゆる二条三項の規定の中で一号、二号、三号というふうにあるわけでございますけれども、このうち三号を削除したわけでございます。さらに、二号についての要件をさらに改正しているわけでございますけれども、この理由というもの、そしてなぜ現行法の三号を削らなければいけなかったのか、その理由を教えていただきたいと思います。

○枝野議員 これは、この平成十一年の本法のスタートのときの立法に深くかかわっている立場としては、反省も含めて申し上げなければいけないんですけれども、やはりこの三号というのは、非常にあいまいかつ広範である。これも、当時から申し上げておりますけれども、この文言を読む限りでは、十五、六歳の男の子のアイドルがステージ上で汗を飛ばしながら上半身の服を脱いでいくというのが、少なくとも文言上はかかってしまうのは間違いないというふうに思います。しかし、この法律の趣旨がそういったものを処罰するという趣旨でないというのもはっきりしていると思います。
 一方で、これも午前中に申し上げましたけれども、大変極端な水着、乳首と性器と肛門がわずかに隠れるだけで、そういった部分がむしろ強調されているような水着の、それも十八歳未満のお嬢さんの写真が、ある意味、ちまたに普通にあふれているという状況になっていて、ようやく、昨年でしょうか、こういったものについても取り締まろうかという動きが出てきたというふうに聞いていますが、逆に、これが本当にこの三号に当たるのかというのはなかなか判断が難しいところである。
 判断が難しいということは、これはまずいんじゃないのと思っていても、捜査機関が腰が引けてしまうということが現に起こってきているのではないかということを考えると、真に可罰的な映像というものをより明確にする知恵はないかということを、平成十一年の当時もいろいろ工夫をしたわけでありますが、この十年足らずの間のいろいろな検討や実態等を踏まえたときに、今回提起をさせていただいた形に変えることによって、より明確、より客観性を高め、もちろん、具体的には個別の案件ごとに判断しなきゃいけないわけでありますけれども、取り締まるべきものは明確に取り締まることができることになるというふうに思っております。

○園田(康)委員 そうすると、今回、三号の規定を削って、なおかつ二号の規定を細かくというか、もう少し明確にするべきだということであります。
 先ほどくしくも、与党といいますか自公案提出者の御発言の中で、いわゆる提出者が質問に立たれたときに、さまざまなパネルといいますか容姿を見せて、そしてそれによって、これはどうなのか、当たるのか当たらないのかという御質問がなされたわけでありますけれども、当然ながら、そういった部分の判断というものが、一つ一つやっていかなければいけないものであろう。今の現行法においても、今御指摘があったように、さまざまな議論というものがあって、そして、その解釈があいまいになってしまう。それによって捜査機関が、この部分は取り締まれるのかどうかというところがむしろ引けてしまうのではないかという危険もあるんだという危惧を私もいたしております。
 したがって、いずれにせよ、もし与党の皆さんから反論があればお伺いをしたいと思っておるのですが、この児童ポルノに対する禁止規定を、後ほど議論はさせていただきたいと思っておりますが、さらに可罰性をもって厳しく取り締まっていく、それで冤罪はないんだというものを自信を持っておっしゃるということであるならば、この現行法の部分もあいまい性を残したまま、それをさらに規定を盛っていくというのは少し危険があるのではないのかなと私は今現に思っておるところでございます。
 どうせならば、民主案のように、現行法の規定、定義そのものも改正を考えていってはいかがなのかなというふうには思っております。そのこと……(葉梨議員「反論」と呼ぶ)よろしいですか。
 では、質問通告はないですけれども、もし反論があれば。

○葉梨議員 時間の関係もあるので、長々とは申し上げません。
 先ほどの質疑でも私は感じましたけれども、むしろ、今民主党から出ている案の方があいまいであるし、狭いんじゃないかという印象を持っています。

○園田(康)委員 しかしながら、さらに広い、広過ぎる規定が今現にあるんだというところからすれば、それをもう少し厳格に定義づけるということが必要ではないかなというふうに私は思っております。
 さらに、先ほどの議論の中で強調というのがありましたけれども、それもすべて、要は、映像全体、描写物の全体からも判断をしていけるのではないかというところが担保されているという点は、極めて合理的な改正案ではないのかなというふうに私は思っておるところでございます。
 では、今答弁していただきましたので、先ほど議論になっておりました単純所持についての議論というものに移らせていただきたいと思っております。
 今回の自公案は、一般的な禁止規定というものを設けているわけでございますけれども、そこに罰則規定は設けられなかった。さらに、そこから今度は、提供目的以外の児童ポルノの所持、一般規定についての自己の性的好奇心を満たす目的においての処罰規定というものに、二つ類型をつくられたということでございます。
 先ほどくしくも、やはりこれも、葉梨提出者からもお認めのものがありましたけれども、捜査機関、今の段階において、可視化の部分も当然一緒にやらなければいけない問題であろうというふうに思っておりますけれども、残念ながら、恣意的な捜査というものがすべてにおいて排除し切れない。当然ながら、それがあってはならないというのは私も共有をさせていただいておりますし、そういう方向に期待をいたしておるところであります。
 しかしながら、現段階において、まず定義規定があいまいであるというところと、それプラス、恣意的な捜査というものの可能性が否定できないという状況の中で、それをそのまま対処せずにいいということにはやはりならないのではないのかなと私は思っておるのですけれども、それに対する御所見。
 それから、今般、一般的な所持、単純所持と言われるものは、確かに文言上は、世界的な潮流の中においても、単純所持に対するさまざまな規制をする求めというものは行われております。ただし、その単純所持に関しましても、御案内のとおりでありますけれども、要件をきちっと概念的に明確にしている。我が国よりもさらに厳しい規定を設けながら、そこにおいての単純所持を規制しているというのは御承知のとおりであるというふうに思っておるところでありまして、それをせずして単純的な所持というものを行うには少し無理があるのではないか。むしろ、その所持に至るまでの行為、その行為の入り口の段階で規制をかけていく方が合理的な説明がつくのではないかなというふうに私は思っておるのですが、その点に対しての御所見はいかがでしょうか。

○富田議員 園田先生が最初に言われましたけれども、やはり児童ポルノは撲滅しなきゃだめなんだ、ここは多分認識は一緒なんだと思うんですね。そういった意味で、単純所持の一般規定を置くというのは、その観点から、我々自民党、公明党はこういう措置を講ずる必要があるというふうに今回考えて、置かせていただきました。こういう場合に、児童ポルノの撲滅に向けた民間の協力も得られやすくなるだろうというふうに考えております。
 十四条の二で、インターネットの利用に係る事業者の努力規定というのを置かせていただきました。これとあわせて、インターネット上の例えば掲示板に児童ポルノが掲載されたような場合に、掲示板の管理者とかサーバーの管理者などの事業者が送信防止などの措置を講じていただけるようになるんじゃないか。そういった意味でも、単純所持というのは違法なんだという規定を置く必要があるというふうに我々は考えております。
 また、性的好奇心を満たす目的で所持した場合に罰則の規定を設けておりますけれども、「自己の性的好奇心を満たす目的」というこの文言は、現行法でも、二条二項の児童買春の定義において今まで用いられてきております。決してあいまいな規定ではないというふうに思いますし、ここの部分、先ほど来、枝野先生の方から内心の問題じゃないかというような指摘がありましたけれども、やはりこういう目的についても、所持している対象の内容とか所持の態様とか、先ほど来問題になっています、どれぐらいの量を持っているのかといった客観的事情から推認して立証されていくものだというふうに我々は考えておりますので、先ほど来、民主党提案者の方から、自白の強要にいくんじゃないかというような御懸念が出ておりますけれども、既に現行法制上用いられている概念でやっておりますので、そういった懸念はないというふうに私たちは考えております。
 また、与党PTの中でも、確かに先生おっしゃるように、取得というところを注目してやったらどうだ、取得して所持というような御意見もありました。そこも随分検討しましたけれども、まず単純な所持について罰則を設けていませんので、所持罪をきちんと違法なんだという宣言ができるのであれば、所持という概念でいいのではないか、仮に取得して所持ということになると、どこから取得したんだ、いつ取得したんだ、だれから取得した、そういう形態を全部捜査機関側が立証していかなきゃならなくなるというと、単純に所持していて撲滅しなきゃならない対象であるのに、取得の部分の立証に逆にまた時間がかかってしまうんじゃないか、それは所持の態様、自己の性的好奇心を満たす目的というところの客観的な事情を積み重ねることによって、これは違法なんだと認定していった方がいいんじゃないかというふうに与党PTの中では議論が落ちついたものですから、ちょっと民主党の皆さんとは観点が変わって、今回は取得というところに注目するのはやめたという経緯があります。

○園田(康)委員 そうしますと、やはりまだまだというよりも、今おっしゃっていただいた捜査機関が膨大な立件のための捜査をしなければいけないということでありますけれども、しかしながら、犯罪構成要件として認定をし、そしてそれをするための立証責任というのはやはり検察側に当然ながらあるわけでありますので、それに対する、簡素化させることを念頭に置いたような規定というのは、どちらかというと少し本末転倒ではないのかなという気はします。
 だからこそ、単純所持というような状況を認定するよりは、取得というものをきちっと定義しておけばそれの立証をきちっとやればいいだけのことであるわけですから、当然ながら、先ほどおっしゃった、自己の性的好奇心を満たすというような状況、その立証責任をいわば被疑者に求める、内心的な自白によって求めるというようなことの方が、これはやはり権力の横暴につながる可能性がまだ否定できないのではないのかなという感じはいたしております。
 そこで、要は検察側がきちっとその立証を行うということで、先ほど葉梨提出者もおっしゃいましたけれども、しっかりとした客観的な証拠を集めるということが当然ながら検察側に求められる仕事、責任でありますので、そのことをもってすれば、取得をするということの立証責任は当然ながらできるものだ、それを証明するというものは検察側に負わされる責任、責務であろうというふうに私は考えておるところでございます。
 それからもう一点だけ、質問通告がありませんで、ごめんなさい。
 さっきの議論の中で、いわば民主党案でいくならば、一回のクリックで、しかも一度に大量に取得をするということは対象にはならないのではないかという議論がありましたけれども、では、与党案の場合において、一回クリックによって所持になった、それがすなわち犯罪構成要件として適用になるんでしょうか。これだけちょっと。
 一回クリックで大量に持った時点、これでもう犯罪ということで認定されるんでしょうか。

○富田議員 目的要件を満たせば、仮に一回クリックで大量のものを所持したとなれば、この要件に当たるというふうに考えます。

○園田(康)委員 そうしますと、私も今、私のさまざまなメールアドレスがあって、それは公開されておりますから、そこにどんどんどんどん入ってきております。その中で、いわば怪しいものがたくさんありますから、それはもう見ずして削除せよというような指示は秘書に出しております。しかしながら、それを誤ってクリックする場合もあるんですね。そして、それによってパソコンの中に入り込んでしまうという危険性、これはやはり否定はできないのではないかなというふうに私は思っておるところでありますので、そういった点において、それによって直ちに所持というふうになってしまうことの危険性というものは少し考えておいていただきたいというふうに思うわけであります。
 では一方、民主案に対しての質問をさせていただくわけでありますけれども、今回、所持ではなくて取得というところを新しく創設されたわけであります。今回、収集という行為が規定されずに、あくまでも取得という行為に対する罰則規定が設けられたわけでありますけれども、なぜこの収集という行為そのものを対象から外したのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。

○枝野議員 二つの理由がございまして、二つの側面がございまして、一つは、みずから進んで入手する意図を持って積極的に入手する行為であれば、一回であったとしても、これは可罰性があるのではないだろうか。しかも、そこに、有償ということでそのことを裏づける、それを要件とするのであれば、客観的な要件で、一回だけれども積極的に入手をする意図を持って入手をしたんだということが立証可能であるということで、収集に至らなくても、有償であれば一回でも処罰をする。
 それから一方では、これはあくまでも主観的な要件を本件においては使うべきではない。先ほど、性的好奇心を満たす目的というのは、本法にもほかにも使われているというお話がありましたが、そういったことが外観上、こういう外観が整っているから推測できるよねとか、こういう外観が整っているから、ないことが推測できるよねというのは、普通、目的犯の場合はくっついてくるのが一般ですけれども、この所持についての性的好奇心を満たす目的というのは、まさに内心だけで、ないとかあるとかを言える問題でありますので、そこは、犯罪の種類によって目的犯にすることが許されるものと問題が大きいものとは違いがあるだろうと思っております。
 ただ、いずれにしても、所持そのものあるいは取得そのもののときにおいても、できるだけ主観的な要件ではなくて、つまり、収集ということだと、例えば一回だけ実際にクリックをしてとりました、だけれども収集の意図を持っていましたということになれば収集は立証できてしまう、これはやはりリスクが大きいのではないだろうか。むしろ、収集という主観的要素を排除して、反復して行われるという客観的な要件を満たすということによって処罰できる範囲とできない範囲というのを明確化するということが望ましいのではないかということで、収集も検討いたしましたが、こういう結論として提案をいたしました。

○園田(康)委員 今の御答弁からもおわかりのように、客観性によって構成要件をきちっと認定していった方が、犯罪捜査を行う警察側も、それに対しては十分いわば広範な範囲でその行動を行うことができるのではないかというところにやはり視点があるのではないかというふうに思うわけであります。
 したがって、内心の自由まで踏み込んで、それがどうなんだという自白に頼らざるを得ない状況を残したままそれを犯罪構成要件というふうにするには、やはり少し無理があるのではないかというふうに思うわけであります。だからこそ、その規定ぶりも、客観性をいかに求めていくのかというところは、やはりきちっと考えておいていただきたいというふうに思うわけであります。
 それで、先ほどおっしゃった、一回きり、百枚の取得が児童ポルノの存在を認めることになるのではないかということでありますけれども、当然、取得をし、そしてそれを所持する、しかしながら、それがいわばみずからの内心に基づいて取得をしたものではない、あるいはそうでない状況のまま結果的に所持をしているという状況になっている場合、それは当然ながら排除することはできませんけれども、しかしながら、その存在そのもの、ポルノグラフィーそのものを認めているということには当たらない。だからこそ、今も御案内のとおり、目的外の製造罪というものの処罰範囲についても民主党は今回拡大をしておられるというふうに私は認識をさせていただいておるところでございます。
 この点については、提供目的以外の児童ポルノの製造のうち、いわゆる盗撮等みだりに行われた製造行為についても処罰対象とするというふうに対象を拡大しているわけでありますけれども、この趣旨についてはいかがお考えでしょうか。

○枝野議員 まさに、どういう形で製造されたにしても、児童の姿態についての性的描写物がつくられるということはその人権を侵害することになります。販売目的であろうかどうかということに関係ありません。目的を問わず、つくられたことによって人権侵害がある。
 なおかつ、それは、児童に何らかのポーズをとらせる等ということがあれば、もちろん現行法でもこれ自体が児童に対する性的虐待として対象になりますが、まさに典型的なケースは盗撮のような形でありますけれども、もちろん盗撮は、盗撮それ自体が大人に対してであっても許されない行為でありますけれども、特に児童に対しては児童の性的虐待に該当するということで、撮影、製造されること自体が独立して可罰性を持った行為であるというふうに判断をいたしましたので、これを新設することといたしました。

○園田(康)委員 時間が来ましたので、これで終わらせていただきますが、すなわち、自己が所持をしていたとしても、今度、さらに別のところに広がりを見せるというところに対しては、それまた製造物といいますか、その対象になるわけでございますので、当然ながら、そこからの広がりというものに対する抑制策というものはきちっとここで担保されるのではないかというふうに私は考えます。
 したがって、この法改正を機会に、さらに反社会的なポルノグラフィーというものがしっかりと抑制される、そして、それが子供の権利擁護というものに際してしっかりとしたメッセージになっていくというところに期待をさせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

衆議院・法務委員会(2009/06/26/午後)/保坂展人議員(社民党所属)

○山本委員長 次に、保坂展人君。

○保坂委員 社民党の保坂展人です。
 私は、かつて子どもの権利条約がまだ批准される前に、衆議院外務委員会で、悩んでいる子供、人権侵害をされている子供の声を大人、ジャーナリストとして証言したり、その後、皆さん御存じだと思いますけれども、チャイルドライン、子供の声を二十四時間イギリスで受けとめている民間組織の活動を国会内で紹介し、今、全国に大変広がっている。これは超党派で、あらゆる政党の皆さんに入っていただいて続けております。また、二〇〇〇年には、児童虐待防止法、これはどうしても必要だということで、これも超党派で立法し、余り急いでつくったものですから幾つか抜けている点があった。二回にわたって見直しの作業もしています。という意味では、子供の人権という意味では、あるいは権利条約という意味では、このことを第一義に考え、動いてきたという立場の議員であります。
 私は、以上前置きしながら、今回のとりわけ与党案にお尋ねしていきたいんですけれども、大変重大な危惧を覚えているんですね。というのは、表現の自由あるいは内心の自由にかかわる重要な議論が必要だろうというふうに思っているからです。
 実は、ちょっと資料を取り寄せてみましたら、今二〇〇九年ですが、ちょうど丸十年前にこの法律の最初の審議があった当時、私は法務委員会の一番最初に、「不思議の国のアリス」のルイス・キャロルのことを取り上げて、写真も当時出たての写真で、非常に写真に趣味をさらに高じていって、少女の写真を撮っていった、中には半裸、全裸のものもあった、ロンドンのナショナルポートレートギャラリーに展示されていて、芸術的に高い評価を受けているというようなケースがあるんだけれども、これはどう考えたらいいでしょうかと。当時の大森提案者は、芸術に該当するかどうかということはこの法案では立てていないんです、「当該描写に係る児童の姿態がこの法案の要件を満たすものであるか否かによって判断される」と答えているんです。
 そこで、先ほど枝野委員と葉梨提案者のやりとりを聞いていて、私も、篠山紀信さんが撮影した「サンタフェ」、百万部とか百五十万部とか売れているということで、過去見たことがあって、記憶がたどれなかったので国会図書館から借りて見直してみましたけれども、私は、これが本当に児童ポルノなのかなというふうに、率直に言って思えないんですね。児童ポルノだというふうには思えない。
 ただ、それは基準があってのことですから、葉梨さんが先ほど、例えば「サンタフェ」が家庭の中にあったら、この一年以内にこれを探して処分をするということをやってもらいましょうよというふうに答弁されたと思うんですが、これはお変わりありませんか。児童ポルノであるという判断なんでしょうか。

○葉梨議員 私自身も余り品行方正な生活をやっていたわけじゃないんですが、「サンタフェ」は見たことがないものですから、具体的に「サンタフェ」が児童ポルノに当たるのかどうかということについては、今ここで結論づけて申し上げることはできません。
 ですから、先ほど申し上げましたのは、「サンタフェ」が当たるか当たらないか、それぐらい有名なものであれば、宮沢りえさんが当時何歳だったかというのも大体わかるでしょうから、政府の方でもそれぐらいのサービスはしてくれるんじゃないんですかというようなことで申し上げたんです。
 「サンタフェ」を探さなきゃいけないということで、「サンタフェ」を持っていたよなというような記憶のある方はやはりそうしていただくということだろうと思いますし、先ほど言いましたけれども、蔵の中に、あるいは押し入れの中にもしかしたらあるかもわからないけれども、「サンタフェ」を持っていたという記憶がないなという方がそれを探さなければならないということはないんだろうと思います。たまたま将来、押し入れをあけて「サンタフェ」が出てきて、もし「サンタフェ」が児童ポルノに当たるんだということになれば、それは廃棄なりしていただければよろしいんじゃないかなというふうに思います。

○保坂委員 見ていないのに、廃棄した方が安全だ、そういうふうに言えるんでしょうか。(葉梨議員「違う、違う」と呼ぶ)ちょっと待ってください。その後議論します。
 ちょっと警察庁にまず基本的なことを聞きます。
 三号ポルノの要件の「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」、こうありますけれども、これは統一したいわゆる認定基準のようなものを設けているんでしょうか。

○園田政府参考人 お答え申し上げます。
 いわゆる児童ポルノ、三号ポルノに当たるかどうかでございますけれども、これにつきましては、個別具体的な事案に即しまして、本法の制定趣旨あるいはこれまでの裁判例等を踏まえまして、児童ポルノに該当するかどうかを総合的に判断しているところでございます。

○保坂委員 今の答弁は何も言っていないのに等しいんですね。ケース・バイ・ケースで見ると。
 警察庁からきのういただいたコンメンタールでは、これは一応、衣服の全部または一部をつけない児童の姿態を描写したものの中には、水浴びをしている乳幼児の自然な姿を撮影したものや医学図書に掲載された児童の身体を撮影したものが含まれることになり、このようなものは除外する、こうありますよね。そういうふうに具体的に除外しているものがあるんだと答えてもらわなければ困るわけです。
 では、葉梨さんにもう一度聞きます。いいですか、葉梨さん。これは具体的に「サンタフェ」というものを見ている見ていないという問題は出てきますけれども、写真家の中で、いわゆる少女のセミヌードとかソフトヌードと言われるような、「サンタフェ」もその一つだと思いますけれども、そういう写真をかつてお撮りになって、写真集という形で出版をされ、あるいは平凡パンチとかプレイボーイとかそういう青年雑誌にも掲載されていたということが過去にありました。それらのものは児童ポルノに当たるのかどうかというところをどういう尺度で判断されているんですか。

○葉梨議員 先ほどちょっと誤解があったようですが、私は「サンタフェ」というのは見ていないんですけれども、もしも「サンタフェ」が児童ポルノに当たるということであればということを前提でお話をしたので、見てもいないものをどうなんだということではないということでございます。
 それで、過去にいろいろな雑誌で、そういったいわゆる三号ポルノというものですか、出ているということはあろうかとは思いますけれども、基本的に、児童が十八歳未満かどうかというところがまず一つの尺度になりますね。
 十八歳未満かどうかというのは、先ほど未必の故意の議論もありますけれども、明らかに、顔から見てなかなかよくわからなくても、制服を着ているとかそういったことで大体それは推知されるという場合もありましょうし、あとは顔が幼いかどうかということで。それが十八歳未満かどうか、客観的に見て、ほぼ十八歳未満じゃないかなというように推定がされるようなものかどうかということが一つありますね。
 それで、衣服の一部または全部を脱いでいるかどうかという要件、そして、それが性欲を興奮させ刺激するものかどうか。これについては、地裁判例等でかなり明確な基準等が示されておるんですけれども、そういったところで判断をしていくということになるんじゃないかと思います。

○保坂委員 そうすると、では、「サンタフェ」の話はそれを見ていないということですけれども、同様の、例えば篠山紀信さんは十代の少女の写真等を数多く撮っているわけですね。写真集も出していらっしゃる。恐らく自宅にはネガフィルムや紙焼きがたくさんあるでしょう。しかし、もし単純所持ということでいえば、これは児童ポルノに相当するという判断がされれば、全部フィルムや紙焼きを廃棄処分しろ、こういうことになりますか。

○葉梨議員 廃棄をしていただくか、あるいは国立国会図書館に届けていただけば、国立国会図書館ではそれは正当行為として保管するということにもなるんでしょうけれども。
 児童ポルノに当たるものであれば、どんなに有名な方がつくったものであっても、あるいはどんなに大手の出版社が出したものであっても、やはりそれについては、明確にここにあるんだというようなことがわかっている方は、一年以内に廃棄をしていただくということが求められるんじゃないかと思います。
 ただ、廃棄というか、申し上げると、それは一般的な禁止規定ということになりますけれども、取り締まりをするかどうかということになりますと、それは、あくまでこれは自己の性的好奇心を満たす目的で持っているかどうかということになってくるわけで、ある写真家が自己の性的好奇心を満たす目的でいろいろなネガフィルムを持っているということが立証されれば、それは処罰の対象になるでしょうし、明らかに正当行為として、単なる保管で、それは自己の性的好奇心を満たす目的では明らかにない、それはネガとして持っているだけで、一切今までも見たこともないということであれば、当たらない場合もあるだろうというふうに思います。

○保坂委員 では問題は、だれが判断をするかという問題ですね。
 私も、児童ポルノ、ひどいポルノがあり、そこの被写体になって、人権を侵害され、そして救出を求めてきた子供たちに対して鈍感であってはならないと思います。それについての規制を強めることは賛成ですよ。ただ、だからといって、いわば三号ポルノというのは非常に定義があいまいじゃないかというふうに私は考えています。そして、例えばその写真集を持っていることが、恣意的にそれが犯罪化されたり犯罪化されなかったりするようなことはやはりあってはならないと思います。
 これに関連してもう一つ聞いていきますが、いわゆる処罰をする場合には、「自己の性的好奇心を満たす目的で、」こうありますけれども、単純な禁止規定で「何人も、みだりに、」とありますね。この「みだりに、」というのは、先ほど正当な理由なくというふうにおっしゃいましたけれども、正当な理由なくというその限定は、そんなに深い意味内容を指していないように私には思えるんですね。何か、こういうものを除外しているんだというふうに列挙できますか。みだりにではない所持の仕方というのはあるんですか。

○葉梨議員 例えば捜査機関が、押収した児童ポルノを持っている、これはみだりにではございません。先ほど言ったように、例えば国立国会図書館、これは出版物全部持っていなきゃいけませんね。それを持っていて、かつて児童ポルノが出版された、国立国会図書館に保管されている状況も、これはみだりにということではありません。
 さらに、先ほど枝野委員からの質疑にもありましたけれども、多分ですけれども、まさにこの法案を審議するためということで、もちろん性的好奇心を満たす目的でもない、まさに法案審議のために、きょうもちょっとお配りしたんですが、これが画像だったら児童ポルノになるんでしょうけれども、そういったものを研究する、これが明らかであれば、それはみだりにということにはならないだろうと思います。
 いずれにしても、正当な理由というのは、結構いろいろな例というのは挙げればあるんじゃないかなというふうに思います。

○保坂委員 諸外国では、例えばアメリカでは、文学、芸術、科学、政治などの価値に欠くものというような列挙をしてあるところもありますね。例えば、今葉梨委員が挙げた、御自身がかかれたイラストですか、これはどこまでが児童ポルノかどうかというような議論のために資するものだということだから除外されるという意味でしょうけれども、それは学術的な意味ということになろうかと思います。
 他方で、一番最初に挙げましたけれども、芸術的な価値がある作品である、これは芸術的な作品として保管をしているんだということは、その正当な理由になるというふうに考えていいんですか。

○葉梨議員 これは当初から、法案、一貫してということですけれども、芸術的な作品であるかどうかということで児童ポルノに該当するかどうかということでの限定を付しているというわけではございません。まず、これは定義の問題ですね。
 みだりに持つということについては、それは正当な理由というのがあれば持てるということですけれども、芸術性のある写真だからといって、一般人が持っていて、それが児童ポルノに当たるのであれば、それは正当な理由があるとは言えないだろうと思います。
 アメリカの例で、芸術的なものは除外しているというのを、私どもも質問通告がありまして調べてみたんですけれども、明確にその出典が明らかじゃないので、チャイルドポルノグラフィーに関する定義かどうかというのはちょっとわからないということでございます。

○保坂委員 芸術的な作品であるというものが同時に児童ポルノでもあるということがあり得るのかどうかということは、やはりこれは深めていかなければいけないと思いますね。私は、芸術的な作品としてそういう少女の写真ということはあり得るという立場であります。
 ですから、過去に出版された、さっき「サンタフェ」の例を挙げましたけれども、そういった写真集がいわゆる禁書になって、例えば古本屋さんからもこの一年以内に全部蔵出しして、焼却処分しなければいけないというような形で、この与党案がもし通ったらそういうふうな、そこまでは求めていないんだよということを言うかもしれませんけれども、しかし、過剰反応というのは常にあるわけで、今の答弁者の話にもあるように、そういう疑わしいものは持っていない方がいいんじゃないかということで、日本全国、大掃除して、かつてのそういう写真集とか古書店にあるものとかを国立国会図書館かあるいは最寄りの警察署に届けなさい、こういう反応も起き得るんじゃないか。
 この点、富田さん、公明党はどう考えますか、人権上。

○富田議員 保坂先生の言わんとしているところはよくわかるんですが。
 先ほど三号ポルノに該当するかどうかというところは、京都地裁の判決でかなり詳細に認定していますので、多分、その京都地裁の判決の基準に当てはめると、保坂先生言われる芸術性の部分で、性欲を刺激しない、相当程度そこが落ちてくるんだという、三号ポルノ自体から外れてくるんじゃないか。そういう場合には、やはりそれを持っていたからといって廃棄しろというふうにはならないと思うんですね。
 客観的には、まだこの一例が、かなり細かく判断したというのは一例ですけれども、ここが基準になっていくのではないかというふうに私自身は考えています。

○保坂委員 今の点、枝野さんに聞きたいんですけれども、やはり三号ポルノの要件が非常に幅が広いということで、警察に聞いても、ケース・バイ・ケースで、そのときの状況に応じてというような答えが返ってくると、ここにまた単純所持規制ということが入ると、問題が大変多いだろう。その点、民主党がそこに手を入れたということの目的や意図はよくわかりますけれども、今の議論を聞いていて、どういうふうに思いますか。

○枝野議員 まず、児童ポルノに該当するものが芸術性のあるものと両立をするのかという話なんですけれども、私は、少なくとも十一年の立法者の一人として、その時点で、今後は十八歳未満の児童をモデルとして、仮に芸術性の高い写真であれ映画であれ、そういったものをつくることはやめましょうという趣旨であった。
 なぜかといえば、芸術性が高い低いということでその被写体とされる子供の人権侵害の程度が違うのかといえば、そこは違わない可能性もある。もちろん、それが性的虐待、物理的虐待までいけばまた別ですけれども、ただ写真を撮られた、裸の写真を撮られたということでは、それは有名な芸術家が芸術作品としてつくった場合とそうでない場合とで違いはないのではないかというふうに考えました。ですから、基本的には、芸術性が高いかどうかということで三号ポルノに該当するかどうかということの区別がつくということは、少なくとも私は、立法者の一人として、想定をしてきておりません。
 だからこそ、過去にさかのぼって、芸術性のあるものとして社会的にも許容されてつくられた作品について、新たに出版をして、新たに配給をしてということについては、これはおやめをいただいた方がいいんじゃないですかということはできたとしても、それを持っているから廃棄してくださいということまではできないのではないか。
 その当時は、特に先ほど来名前の出ているような、例えば「サンタフェ」。私自身も中身まで詳しく見ておりませんから、私どもの案の「殊更に」に該当するかどうかは判断いたしかねますけれども、仮に、特に十一年の本法施行前、製造等が規制をされる前の段階では、芸術性が高いものについては子供が被写体であったとしてもという、社会的に許容されていた時代につくられたもので、それを、広く流通しているものを、さあ全部捨てなさいということまで迫れるのかということになれば、それはまさに刑罰の遡及ということになるだろうと思いますので、それは無理ではないかというふうに思っています。

○保坂委員 また与党の方の提案者に聞いていきたいんですけれども、処罰がかかっているところの前提に、「自己の性的好奇心を満たす目的で、」ということがあるわけですね。ここの証明をするのが密室の捜査になるんじゃないかという議論が午前中あったと思います。私もその危惧を持っているんです。
 質問は、次の点になるんですけれども、もともとこの法律は、児童ポルノという大変忌まわしき、被写体になって、そのとき、それから未来にわたっても、長期にわたって人権をじゅうりんされるという子供の救出、その権利の保護にそもそもの法律の目的が、保護法益があったのではないかというふうに思うんです。
 アニメや漫画のことは今回入りませんでしたけれども、どうもその目的がさらに肥大をして、いわゆるそういった個人の、例えば少女を恋愛、あるいはもっと言えば性愛の対象にするような傾向の、ある種の嗜癖というかそういうものですね、これ自体がやはり社会的に好ましくないんだと。私も好ましいとは実は思っていないんですが、しかし、古今東西の文学作品には、少女を対象に恋愛を描いているものというのは過去にもあったし、そして、それがまた名作であれば映画化をされた例もあるしということですね。
 もちろん、小説は絵ではありませんから、小説がポルノだなんという話はないと思いますけれども、しかし、そこの小説に描かれているようなものも、そういう個人の嗜癖や、その作家が想像の中でつくり出す人間模様の中で、ある社会的な好ましくない傾向を描いている場合もあるじゃないですか。ここはやはり表現の自由との関係でしっかり整理しておいた方がいい。
 この法律は何のためにあるのかというのは、私の理解では、被写体になって人権をじゅうりんされる子供たちの保護のためにあるのであって、それ以外ではないというふうに私は考えている。そこはどうですか。

○葉梨議員 先般来の議論でありますけれども、基本は、実在の被害に遭った児童の保護であること、これについては間違いない。個人的な法益という話で先ほどございました。
 では、社会的法益の部分がもともと全くないんだろうかというふうに考えますと、現行法においても、今明らかにこの世に存在しない、亡くなった方であっても、実在の児童を被写体としたものであったら、それはやはり規制はされる。さらには、やはり個人的なそういった法益、つまり被害児童を虐待するということを何らかのために防止するというような措置、これをとっていかなきゃいけないんじゃないかというようなこと、それをつらつら考えますと、やはり社会的法益の部分というのは全くないとは言えないんじゃないかというふうに私自身は考えています。
 ただし、問題は、社会的法益の部分ということで、例えばその傾向自体に対処をする。私は傾向がいいとは思いませんよ。では、例えばテレビゲームだ、アニメだ、漫画だといったときに、これはやはり二〇〇二年の米国の連邦最高裁の判決もあるわけで、一律に全く実在の児童と同じような規制を全くエビデンスなくやってしまうというのは、これは私はいかがなものだろうかなというふうに思います。
 ですから、規制の態様というのは、当然実在の児童を対象とするものと違ってくるべきだし、そのための立法事実というのをしっかりと研究をしていかなければいけない。まだ日本においてはその段階なんだろうというふうに思います。
 ですから、その意味で、今回、附則に研究ということで入れたのは、与党としては、社会的法益の部分をこの法律で、今も例えば亡くなった児童はどうだというぎりぎりの話はありますけれども、それについて研究をして、今後この法律でいろいろと規定をしていくんだというような考え方がありますよということを附則で盛り込んでいるわけです。そこの部分が、これはどちらをとるかという決めの問題なんですけれども、民主党はそれを別法でやろう、私どもは一緒の法律でやろうということです。

○保坂委員 社会的に好ましくない行為が文学やあるいは映画で描かれるということは、例えば殺人事件なんというのは典型的ですね。そして、殺人事件のナイフがテレビドラマで出てくると、それが誘発したみたいな話もございますし、また、いわゆる、人が何十人も死ぬ映画やテレビというのは日常茶飯事にあるわけですね。
 しかし、それが一概にすべてを規制すべきだという話になっていないということは、表現の自由との関係でいうと、どうなんでしょう、ちょっと法務省にお聞きしたいんですけれども、この児童ポルノの単純所持がないというのが問題だという声がずっと強いんですね。そうすると、単純所持規制が生まれた国で、それ以前の子供対象の性犯罪発生率みたいなものがそこで抑止された、横ばいになったり、あるいは減ったというような例はあるんでしょうか。もし数字が言えたら教えていただきたい。

○大野政府参考人 諸外国における児童に対する性犯罪の動向に関する統計資料でございますけれども、私ども、手元に有しておりませんので、今の御質問に対してお答えできません。

○保坂委員 では、もう一つ大野刑事局長に聞いておきたいんですけれども、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持していた場合という与党提案者の話なんですけれども、こういう目的というのは、心の中、気持ちの中、内心ということにならないか。やはり客観的な、外形的な行為として表出したことをもって処罰するというのがいわゆる戦後の刑事法の原則だったかなと思うんですが、その目的でということを外見的に表出しない段階でもって確定をし、例えばそれを犯罪として処罰するようなことは現に行われているのか。あるいは、将来行うとしたらどのような捜査になるのか。

○大野政府参考人 ただいま御質問がありましたのは、いわゆる目的犯と呼ばれる犯罪の類型についてでございます。
 目的犯によりましてはいろいろなものがございますので、一概にはお答えできないわけでありますけれども、刑法で申しますと、例えば刑法百七十五条後段にわいせつ物販売目的所持罪というのがございます。物理的な、対外的な行為としては所持をしているだけであっても、そこに販売目的があるかどうかということで犯罪の成否が変わってくるわけであります。
 そうした販売目的の認定に当たりましては、そうしたわいせつ物を所持するに至ったいきさつ、どういう経緯で手に入れたのか、それから、所持しているわいせつ物の内容とか量ですね、あるいはどういう形で所持をしているのか、所持をしたものの中で利用、処分したものがあるのか等々のそうした事情から立証することが多いというように承知しております。

○保坂委員 そうすると、もう一点ですが、今の刑事局長の御説明だと、例えば、ある程度の量を用意していて、あるいはそういった販売をする準備をしていて、あるいはそういうルートを持っていてとか、幾つか外形的に外に表出する事象として確認し得るものもあって証明をされるのかなと私は聞いたんですけれども、自己の性欲を満たす目的で所持していたぞということを証明するといったら、自白以外にないんじゃないかなと。
 おびただしい量を持っていたら、それはまた同じになりますけれども、例えば数冊持っていたとか一冊持っていたという場合はどうでしょうか。

○大野政府参考人 今の御質問は、自己の性的好奇心を満たす目的という、いわゆる改正法案の中身に関するものでございまして、現在審議中でありますので法務当局からどこまで申し上げるのが適切かと思いますけれども、お尋ねでございますのでお答え申し上げます。
 自己の性的好奇心を満たす目的でありましても、そうしたいわゆる児童ポルノを所持するに至ったいきさつ、偶然飛び込んできたものなのか、それとも例えば買い集めたものなのか。それから、所持している児童ポルノの内容ということもございます。普通の写真なのか、特別に、いわゆるえげつのない内容のものなのか。もちろん量もございますし、それから、どういう形で所持しているのか。たまたま一つだけ持っていたのか、大量に持っていたのか等々の、そうした外部的事情から立証することになるだろうというふうに考えております。

○葉梨議員 午前中からいろいろと議論をさせていただいておりますけれども、自己の性的好奇心を満たす目的というのが自白だけに寄っかかって立証するんだというのは、それはそうじゃないだろうと思います。やはり、例えば、一枚であって自己の性的好奇心を満たす目的でありますよというのを立証するときには、絶対自白だけじゃないでしょうかといったら、その児童ポルノに手あかがついて何回も見られているとか、何回もクリックされているとか、あるいは、先ほども、今も答弁ありましたけれども、その児童ポルノの内容ですとか、そういったことからある程度客観的に立証ができると私は思っています。

○保坂委員 この点について、やはり外部的に表出をした証拠によってしか犯罪化され得ないというのは原則だと思いますし、ここが外れてしまうと、心の中で君はみだらなことを思い描いたのかということが処罰対象になりかねないということを指摘して、時間になりましたので終わります。
 ありがとうございました。

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最終更新:2009年07月04日 22:16
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