現在の運用状況に関する情報提供
フィンランドからのブロッキングの問題の指摘
実際、このニュースに続いて、法執行機関が作るブラックリストの問題が表に出てきた。 フィンランドからの報道。フィンランドでは国家検察局が「海外児童ポルノサイトのリスト」を持っていて、これによってほとんどのISPでは当該サイトへのアクセスがブロックされているという。このブラックリストはDNSベースで、URL単位でなくホスト単位でのブロックが行われている。その内容をフィンランド在住のアクティビストMatti Nikkiが非公式に入手して 公開してきたページ があるのだが、今回、そのページがブラックリスト入りした、ということだ。「ホスト単位」というのがひとつのポイントで、このNikkiのページでは、各サイトのトップページにリンクを張ったり、ホスト名を書いているだけで、それで児童ポルノにアクセスできるケースはほとんどない、という。にも関わらず、Nikkiのページはブロックされ、検察局は(Nikkiのページのリストが事実かどうかや、そのページ自体がリスト入りしたかどうかはコメントしないままで一般論として)リストの公開は児童ポルノ拡散の幇助にあたると警告している、という状況。これに抗議する Electronic Frontier Finland (Effi)の声明文 が出ている。
児童ポルノ単純所持規制に向けた児童ポルノ禁止法改正の動きが出ている日本でも、これは将来ありうる話としては無視できない話だ。さらにいえば、フィンランドのケースそれ自体も日本は無縁ではない。なぜなら、Nikkiのページのリストに上がっているもののひとつは、IIJ4Uの個人ユーザー向けホームページサービスのホストのひとつだから、そのサイトにある、おそらくほとんどは合法なサイトは、フィンランドの多くのISPでは児童ポルノとしてブロックされているということになる。
追記: フィンランドの件は、フィンランド語だけだった内容が英語でも伝わるようになって、より興味深い事態となっている。本件はすでにYLE(フィンランドのマスメディア)でも報じられているほか、Wikinewsでも取り上げられ、NikkiのサイトについてのWikipediaの項目もできている。これらによれば、フィンランド共和国検察局は、Nikkiのサイトがブラックリストに載っていることを認めたという。さらに、リストの大部分のサーバーが米国やEU諸国にあり、実際に児童ポルノが存在するなら削除・閉鎖措置がとれらるはずであることや、Googleで"gay porn"を検索した結果の上位のサイトが軒並みブラックリスト入りしているということだ。さらに、Mika Pruikkonenのサイトの情報には、ブラックリストのサイトにアクセスしたときのリダイレクト先のページの情報として、そのリストがヨーロッパ各国の同様の取組の中で集められてきたものが含まれていることや、プロジェクトが "European Police Chief Task Force" によって始められたことなどが記されているという。なお、Matti Nikki自身の英語による解説もでてきている。こうして、フィンランドの問題は、Mobile Alliance Against Child Sexual Abuse の話との関連性がより濃く疑われる状況になってきた。
漫画やアニメの規制に関する運用状況に関する情報提供
マンガやアニメの規制ですが、これもアメリカでは明確に違憲判決を出しています。
そのためアメリカ連邦法典§1466Aでにある様に、極めて厳格な定義付けをした上に、本物の児童と「見分けがつかない」CG画像を禁止としています。
「児童ポルノ規制は違憲 米連邦最高裁(High Court Strikes Down Child Pornography Law)」
http://www.reuters.com/news_article.jhtml?type=topnews&StoryID=824753 (現在、ソース先消失)
米国最高裁は子供達が自由な表現を行う権利を妨げるとして性的行為を表現したCGの所持を罰する児童ポルノ禁止法を無効と判決した。
児ポ法の制限が広範囲に渉り、文学、芸術などの価値にかかわらず表現を禁止している事が違反である理由としている。
原告側は十代の性行為のテーマや性的虐待が文学などを励起したと主張。
主張の中では「ロミオとジュリエット」をあげ、その中の登場人物(シェークスピア)が13歳の子供である事を示した。
作者が登場人物の性的関係が達成された事を表現したかったかもしれないとも語る。
マンガファンで知られる麻生太郎先生もこうしたマンガを持っておいででしょう。
ですから麻生さんも逮捕対象になる恐れも十分あるのです。
国立国会図書館での閲覧禁止
『同図書館は有罪、あるいは起訴された事件の写真集などの情報を法務省に求めたが、「リストアップしていない」と断られた。逆に、児童ポルノにあたる構成要件は法で明示していることから、「図書館で判断できるはず。もし児童ポルノを提供しているとわかれば、摘発対象にもなりうる」と、自主的な対応を迫られた。 』とあります。
行政機関においても、現行法の児童ポルノ定義の広範であいまいなことによる混乱があるのではないでしょうか。
現行法の運用の問題点
まずはこの問題に関して真剣に反対派の意見を聞いていただける早川先生に心から賛辞を送りたいと思います。
私も他のみなさんと反対の意見は同じです。ただひとつ申し上げることがあるとすれば、単純所持の違法化を行った場合、諸悪の根源の提供者が捕まらなく可能性がかなり高くなってしまうということです。もしねずみ取りのような運用が成された場合、単純所持のほうに力を削ぐことになってしまい提供者は突き止めるのが難しいという理由だけで放置されてしまいます。このような確信に至ったのは次の報道です。またマスコミの報道になってしまいますが、判断材料がこの記事だけなのでこちらから判断するしかありません。
与党PTは、同法改正案に単純所持に罰則を科す方針を打ち出していた。しかし、これだけでは単純所持の摘発対象者が多すぎて捜査が追い付かず、児童ポルノを見ようとする利用者も減らないため、与党PTは、サイトそのものを見られなくする措置が必要と判断した。
単純所持で摘発対象者が多くなるというのはそれだけ提供者を野放しにしてしまうということです。いくら単純所持を罰したところでそこから拡散しない限り終わりです。その人たちを捕まえたところで元々提供者ではないので捕まえても意味がありません。しかしその単純所持者を捕まえている間にも提供者によって流通は続いていくのです。これで本当に子供を守ることに繋がるのでしょうか?さらに単純所持者は今の定義だと冤罪者になる可能性もあるのです。これって意味の無いことだと思いませんか。ちなみに持っているだけで拡散の恐れがあるという理屈は一般的に認知されている共謀罪に通じるものがあります。(先生のご提案とは違うかもしれませんが)
あと警察の恣意的な運用が成される危険性というのはブログの2007年02月24日に書かれているあたり先生ご自身が一番良く分かっているかと思います。まず違法化によって一番懸念されるのが別件逮捕の可能性です。今の定義ではたんなる裸でも適用されてしまう可能性が高く、たとえば痴漢の疑いがあることで拘留されていてやっていないことを証明しようとしても家宅捜索した時にきわどいアイドルなんかの写真で児童ポルノだと判断されればその方は犯罪者です。この法案の恐ろしいところは提供者である方たちの製品を判断するだけではなく、所持者にも判断の対象になりうるということです。たとえば、心交社が児童ポルノ法違反で摘発されたことは有名ですが、後に児童福祉法に切り替わりました。しかしもし単純所持が違法だった場合、会社も購入者も所持者もすべて逮捕できてしまうことになります。もちろん出演者が年齢を偽ってた場合、さらに事態は深刻です。この場合誰も情を知っていなかったことになりますが、今の条文だと全員ひっくるめて逮捕です。さらにこの別件逮捕で違法だと判断された場合、逆に所持者から会社、購入者、所持者が逮捕されます。
これって非常にナンセンスだと思いませんか?しかも児童ポルノじゃないかもしれないのですよ?さらに恣意的な運用の危険性としては見た目で判断してしまうこともあります。見ただけじゃ年齢なんて区別できませんよね?しかし単純所持が違法化された場合、たとえ18歳以上であっても児童ポルノとして逮捕される可能性があります。18歳以上だと証明できなければ有罪確定です。このように色々問題があるのです。
始めに申し上げましたが、提供者を捕まえるためにも単純所持違法化には反対です。さらに今の定義も見直して頂きたいと思います。ここまでお付き合い下さってありがとうございました。早川先生の今後のご活躍を期待しております。
U-15アイドルというムーブメント
早川先生は最近の「U-15アイドル」というムーブメントをご存知でしょうか。
いわゆる「15歳以下の少女のアイドル」という意味であり、ここまでなら普通に聞こえます。
が、上記U-15アイドルとカテゴライズされる人々はきわどい水着を装着して扇情的なポーズを取ったりいわゆる「性的な慰み者」になっています。
が、現行法において上記は平然と隆盛を極めているわけでどう考えても現行法は穴だらけで定義が曖昧なのです。
これは「規制する側の定義の曖昧さ」でありますが、「曖昧である事は定義のブレが激しい」のです。
今後法案が通るようであれば上記のU-15アイドルという現行法で問題のないはずのジャンルは間違いなく駆逐されるでしょうし、となれば「現行法で問題がある物ない物」という定義は既に破綻しているわけです。
最終更新:2009年04月03日 02:26