各種の論点の説明
論点1:「単純所持規制」の導入
与党案:導入(冤罪被害の防止に関しては言及なし)
民主案:警察の捜査権拡大や冤罪被害の防止のため、所得罪で代替
与党案を後押ししている日本ユニセフ協会の広報担当となっているアグネス・チャン女史の見解は、以下になります。
論点3:創作物への表現規制を前提とした調査
与党案:表現規制を前提とした調査を導入
民主案:憲法問題もあるので導入せず
●「児童ポルノ禁止法改正案」Q&A 2008年06月23日(高市早苗議員公式サイト)
http://rep.sanae.gr.jp/tusin2/tusin2_contents.html?MID=40
【問14】
ゲームやアニメにも児童ポルノに近い表現があると思うのですが、これらは規制対象外なのでしょうか?
【答14】
立法作業中には、猥褻なゲームやアニメも規制対象にするべきだとのご意見も、多く寄せられました。
そもそも現行の「児童ポルノ禁止法」は、被写体となった子供の保護・権利擁護を目的としていることから、実在する子供が被写体ではないゲームやアニメについてまで同法の改正案によって対象に加えることは、現段階では立法技術的に困難だと考えました。
しかし、児童ポルノ禁止法改正案を作った与党プロジェクトチームのメンバーも、「子供を性の対象とする社会的風潮を助長する可能性が高いアニメ等」が流通しているのは事実だと思っています。
将来、児童ポルノ禁止法の「目的」の見直しを含めて同法改正で対応すべきなのか、別の法律で対応すべきなのかの議論も含めて、与党改正案では「政府の調査研究課題」と位置付けました。
論点4:「児童ポルノ」の定義
与党案:そのまま
民主案:警察の捜査権拡大や冤罪被害防止のため定義厳格化
「児童ポルノ」の定義が曖昧であり、単純所持禁止にまで範囲を拡大してしまった場合、捜査機関の捜査範囲の拡大と冤罪被害の拡大が予想される事から、前回の改正時においても定義の明確化を求める声はあがっていました。
これに対し、単純所持禁止を求める日本ユニセフ及び規制推進派議員の回答は、以下の通りでした。
第2回児童買春等禁止法改正に関するユニセフ公開セミナー平成15年6月9日
http://www.unicef.or.jp/kenri/ken_bod7.htm
Q1:
わが国の児童ポルノの定義は、例えば子どもの権利条約の選択議定書やアメリカのCOPAやサイバー犯罪条約と比べても、いわゆるハードコア画像限定ではなく芸術ヌード・ソフトヌードを含み、範囲が非常に広範である。
これを処罰の対象とすることについて大人のプライバシーとの関係で問題があるのではないかと懸念がある。
つまり、単純所持まで規制している国では児童ポルノの範囲が狭く、逆に児童ポルノの定義が狭い国においても単純所持規制についての危険性は許容されている。
例えば、子どもの権利条約に関する選択議定書では単純所持を規制すべきとは定めておらず、サイバー犯罪条約もその点に関して留保を認めている。
この点についてどういう風にお考えなのか聞きたい。
A:今回単純所持について罰則は設けていない。
児童ポルノをどうするのかということは、3年後の見直しの時期に罰則を設けるかどうかという議論を行う場合の課題として残してある。
今回重要なのは児童ポルノは禁止であることを明らかにすることである。
上記のような前回改正時までの状況を踏まえ、今回も同じメンバーが単純所持規制を求め、それに答えた与党(自民・公明)案は以下のようになります。
●「児童ポルノ禁止法改正案」Q&A 2008年06月23日
http://rep.sanae.gr.jp/tusin2/tusin2_contents.html?MID=40
【問1】
児童ポルノの所持が禁止されると聞きましたが、どのような猥褻物が対象となるのでしょうか?
【答1】
与党の改正法案では、「児童ポルノの定義」については変更を行っておりません。したがって、「児童ポルノ」の範囲が新たに拡大するものではありません。つまり、単純所持禁止の対象となる物も現行法と同じです。
現行法第2条3項に基づき「児童ポルノ」の例を挙げますと、「性交や、性交に類似する手淫・口淫・同性愛などの行為を撮影したもの」、「児童の性器を触る行為、児童が大人の性器を触る行為を撮影したもので、性欲を興奮させ刺激するもの」、「全裸や半裸の児童に扇情的なポーズをとらせて撮影したもので、性欲を興奮させ刺激するもの」です。
児童ポルノ法公開質問状に対する、民主党の回答 子供の人権と表現の自由を考える会
http://cjhjkangaeru.web.fc2.com/organize/question/minsyu.html
1-2:
現在の児童ポルノ法は、被害者の救済や児童ポルノの頒布禁止等を盛り込んだ個人法益でありますが、改正議論において社会性風俗を取り締まる様な社会法益に変質させようという動きがありますが、個人法益を社会法益に変質させてしまって、本来の目的であるはずの子どもの人権は守れるとお考えですか?
民主党は、2008年6月11日に児童買春・児童ポルノ処罰法改正案骨子を発表していますが、その中でも本法が風俗犯罪処罰法ではなく、あくまでも児童に対する性的搾取・性的虐待から児童の権利を保護するための法律であることを明確にする観点から、「児童ポルノ」の用語を「児童性行為等姿態描写物」と改めることを検討しています。
一方、法律家出身の議員が多い民主党案の場合、曖昧な定義のまま法律を施行すると冤罪被害を誘発する事から、定義の厳格化を盛り込んでいます。
児童ポルノ禁止法一部改正法案 概要
1.「児童ポルノ」の名称の改正・定義の明確化
(1)「児童ポルノ」の「児童性行為等姿態描写物」への名称の改正
児童に対する性的搾取・性的虐待に係る行為等の処罰という法の趣旨の明確化
(2)「児童性行為等姿態描写物」(児童ポルノ)の定義の明確化
「性欲を興奮させ又は刺激するもの」「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」等のあいまいな要件を」削除すると共に、その処罰対象を真に加罰的なものに改正することにより明確化
参考サイト
論点7
(民主党)
本法が風俗犯罪処罰法ではなく、あくまでも児童に対する性的搾取・性的虐待から児童の権利を保護するための法律であることを明確にする観点から、「児童ポルノ」の用語を「児童性行為等姿態描写物」と改めることを検討しています
(共産党)
児童ポルノ法の制定趣旨は、被害に遭う子どもをただの1人も生みださないことであり、・・・(中略)・・・児童ポルノ法を、性風俗を取り締まるようなものに改定することには賛成できません
(国民新党)
現行法は、被害児童の人権保護を主眼としており、この点は今後とも堅持していきたい
(公明党)
子どもたちを守るため、そして人道、人権擁護のためとの本来の目的に立ち児童ポルノの氾濫を阻止しようと与党での改正議論を進めてきました。
最終更新:2009年03月28日 14:47