国会質疑 > 重国籍 > 07

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衆議院・決算行政監視委員会(2007/04/19)/岩國哲人議員(民主党所属)

岩國哲人 - Wikipedia
○岩國委員 民主党の岩國哲人でございます。
(中略)

重国籍問題について

 次に、いわゆる二重国籍といいますか重国籍についてお伺いしたいと思います。
 これは、担当は法務省、おいでいただいていると思いますけれども、フランス、スイスに在住しておられる日本人の方からのいろいろな請願、陳情が相次いで来ていると思います。
 最近は、これは日本に限らず世界の流れですけれども、留学生がどんどん外国へ出かける。留学した結果として、あるいは海外勤務の結果として、あるいは企業そのものが海外へ移転した結果として、こういう国際結婚というものがふえ、また外国でお生まれになる赤ちゃんも多くなってきています。
 そこで、国籍という、ややこしい、しかし一人一人にとっては大切な問題が激増しているわけですよ。この問題について、日本は、そうした日本国籍のほかに外国の国籍を持つという方向に緩和しつつあるのか、逆に、外国の国籍は持たせないという、いわゆる純血主義というんですか、方向に動いているのか、どちらの方で行政は対応しておられるのか、お聞かせいただけませんか。
    〔古川(元)委員長代理退席、委員長着席〕

○寺田政府参考人 おっしゃるとおり、非常に国際的な、人的な交流というのが盛んになっております。国際結婚で見ますと、もう毎年、増加の傾向にございまして、十年前に比べますと何倍というようなオーダーでこれがふえてきているわけでございます。
 私どもの関係で申しますと、国籍法というのは、常にそれぞれの国が国籍を与えるという形で、専権事項で決めておりますので、当然のことながら、二重国籍ということが今おっしゃるとおり起こっているわけでございます。
 しかし、私ども日本の政策といたしましては、かつて国籍法の改正をした際に、それまでは、父が日本人の子供が日本人であるということになっていたわけでございますけれども、父または母が日本人である子が日本人であるという、父母両系主義と申しますが、そういう主義に変換した際に、二重国籍が非常にふえるだろうと予想されたものでございますので、日本といたしましては、これをできるだけ防止したいということで、国籍の選択の制度というのを設けまして、二十になりますと、二十二歳までの間に、二重国籍の方はどちらかの国籍をお選びいただくような仕組みを、その際に国籍法の中に組み込んだわけでございます。
 もともと、帰化等の要件を見ましても、日本の国籍を取得する、すなわちこれが帰化でございますが、する際には、外国の国籍を離脱していただくというのを原則にしておりますので、我が国の国籍法としてはかなり徹底した重国籍排除の考え方であろうと言えると思います。

○岩國委員 日本という国は、私も海外から日本を随分長いこと見ておりましたけれども、いわゆる資源に乏しい国です。石油もない、石炭もない、鉄鉱石も少ない。そういう資源の乏しい日本で、たった一つの資源は人間という資源だ、私はそう思い続けてきました。これからの日本の国際化というときに、どこかの国に資源を売ってあげるというようなことはとてもできません。人間だけが日本の財産ではないか。
 そういう考えに立脚すれば、海外で活躍されていらっしゃる日本人の方が、そういう国籍のしがらみとか、あるいは日本の国籍法ということが、海外で生活し、あるいは海外で子供をお育てになるときに、それがしがらみになって、マイナスになるようではいけない。海外へ出かけていく人にはいろいろな苦労もあります。その御苦労を少しでも軽減し、そして家族が幸せに暮らせるように、そして、御当人だけではなくて、そのお子さんも含めて、相手の奥さんも含めて、日本の国籍法というものがよその国と比較して非常におくれているということが、海外における、日本の顔をし、日本のために、そして会社のために努力していらっしゃる人たちの障害や負担になってはならないと私は思うんです。その思いは寺田局長も恐らく同じ思いであられると思いますけれども。

諸外国における重国籍の法制度について

 そこで、資料3としてお配りしました、これを見てください。これは「諸外国における重国籍に関する法制度」。これを見ますと、日本のところには丸印、イギリスはペケ印、カナダもイタリアもフランスもロシアもみんなペケ印。丸とペケというこの記号は、丸というのは普通はいいことをしたときに丸をつけるものなんですね。これはちょっと記号のつけ方が逆じゃありませんか。
 これは、重国籍を認めてほしいという人に対してどういう対応をしておるかというときに、私はこの印を見たとき、ああ、日本は丸だ、ところが文字を読んでみて、要するに、これは非常に厳しいというところに丸がついておって、そしてヨーロッパ諸国のように、お互いに国境が接近し、そういう交流が非常に数が多いところにおいては重国籍を認めていこう。重国籍を認めているところにペケ印がついているんですね。それを認めないよというところに丸印がついている。こういう理解でよろしいんですか。私の理解がもし間違っていれば、この記号のつけ方は。そして、この記号のつけ方は、よその国も同じような記号のつけ方をしているのかどうか、同じような観点から。お答えください。

○寺田政府参考人 これは私どもで重国籍の法制度を説明する際に、外国の国籍を取った場合に、その国の国籍を失うかどうかということを基準に考えておりますので、失うものが丸、つまりこれは二重国籍を認めないものが丸、失わない、つまり二重国籍も容認するというのがバツというふうになっておりまして、これはたまたま、当然喪失をするかどうかということを基準に考えているものでこういうことになってございますので、当然のことながら、常に二重国籍を認めるかどうかということでマル・バツが一律に決まっているものではございません。

○岩國委員 これは実際に国民の立場、あるいはこういうことについていろいろと悩んでいらっしゃる立場の方からいえば、この丸印とペケ印は全く私は逆だと思いますよ、赤信号と青信号が。
 そして、それは喪失するという表現をされましたけれども、喪失させるわけでしょう、法によって。私は別に失いたくないんですと窓口でおっしゃったら、失わなくていいのか。そうではなくて、喪失させるんでしょう、強制的に。私は日本国籍を取得したい、しかし、今フランスに住んでいるから、フランス国籍のほかに日本国籍もといった場合に、あなたは日本国籍を取ったらフランス国籍は持ってはいけませんよ。フランス国籍を喪失するということは、言葉をかえれば、きついんですけれども、もう一つの国籍を奪い取るということでしょう、国が。奪われるということですよ、窓口にあらわれた人から見れば。
 そういう非常にきついというか、そういう法制度に対して、これはいろいろな各国に住んでいらっしゃる日本人の方からいろいろな請願とか陳情というのは毎年のように来ているんじゃないかと思いますけれども、この十年間でどれぐらいの件数、どれぐらいの人数の方が実際に国に対して異議というか陳情をされたのか、簡単な数字で結構ですから、お答えいただけませんか。特にどの国からそういうことが非常に多くなってきているのかもあわせてお答えください。

○寺田政府参考人 まず、国でございますけれども、これは二重国籍を比較的認めやすいというスタンスをとっておられる国に国籍を置いておられる方々、すなわちフランスでございますとかそういうヨーロッパの国、あるいはカナダ、オーストリア、そういうようなところが中心でございます。
 人数でございますけれども、これは団体の請願も来ておりますので、確定的には申し上げられませんけれども、請願そのものとしては、ここ三年間に二十ぐらいの規模で来ておりまして、私ども推測するところでは、トータルとして、関係者は約一万人ぐらいの方が請願をなさったというように理解をいたしております。

○岩國委員 それでは、今現在、日本に居住している人の中に重国籍を持っていらっしゃる方はどれぐらいあると思っておられるか、それが一つ。
 それから、先般、四月四日の新聞で私も知りましたけれども、高さんとおっしゃる御家族、ある国に拉致された。ある国というか、報道では北朝鮮ということになっておりますけれども、拉致された。そして、その高さんは二重国籍の方だったんですか、それとも日本国籍だけだったんですか、それとも北朝鮮の国籍を持っておられたのか、その三つの中のどれだったのか、それをお答えいただけませんか。

○寺田政府参考人 まず、重国籍の人数でございますけれども、先ほど申しましたように、昭和五十九年に法改正がございまして、それから二重国籍ということが激増しているわけでございますけれども、私どもが推定している範囲では、現在まで約五十万人の方が日本とほかの国との重国籍をお持ちだというように理解をいたしております。ほとんど九割以上の方が、生まれたときに重国籍でいらして、それをそのままお続けになっておられる、こういうことであろうかと考えております。
 それから、先ほどの特定の問題について、どういう問い合わせがあって、どういう回答をしたかということでございますが、私どもも、この国籍についてはいろいろなお問い合わせが関係者の方からございます。関係者の、御本人あるいは代理人がおいでになった場合には、どういう国籍の関係になって、どことどことの二重国籍だということを当然のことながら前提にいろいろお話を申し上げますけれども、非常にプライバシーにわたることでございますので、関係者以外の、つまり御本人以外の方々に対しましては、基本的にはこれはどういう関係にある、どういう国籍状態にあるということは申し上げないということにいたしておりますので、恐縮でございますが、その点については差し控えさせていただきたいと思います。

○岩國委員 何度もお出かけいただいて恐縮ですけれども、この特定の事件を新聞では北朝鮮国籍と。それは、日本で生まれて日本の国籍を取得しないという意思表示をされたから一つの国籍だけを持っておられたのか。
 また、こういう特定の国に限らず、二重国籍、日本以外の国籍を持っていらっしゃる方は、一元的にどこの役所にそれはきちっと整理されているのか。
 三番目に、警察庁はそういうデータを持っているのか。外務省が持っているとは思いませんけれども、法務省にはそろっているのか、両方にあるのか、法務省にしかないのか。
 そして、新聞報道では北朝鮮となっておりますけれども、これが事実でないとするならば、法務省は、各メディアに対して、事実でないことを事実であるかのごとく国民に報道することについて当然注意をされなきゃいかぬと思うんです。あのように報道されているということは、何らかの裏づけがあったのか。
 まとめて聞きます。
 そういうメディアに対して、問い合わせがあったときに、法務省にきちっとした重国籍に関する資料、名簿があるとするならば、外部からの問い合わせに対してはお答えになっておるのかどうか。外部、それは他の官庁あるいは官房長官からの電話だったら、それは四月四日の十一時に答えましたとか、警察から、これも答えます。メディア、答えません。それでは、親族、自分の父親が二重国籍かどうか、自分の父親の国籍を実のお子さんが問い合わされた場合もそれは拒否されるのか、ちゃんとその情報は提供されるのか。親子、親族の間での問い合わせに対して、日本の国籍に関する情報提供というのはどのようになっているのか。それをお答えいただけませんか。

○寺田政府参考人 これは、先ほども推測では申し上げたわけでございますけれども、基本的には、日本国籍があるかどうかということは戸籍の記載によって把握できるわけでございますし、戸籍の副本というのは法務局にも保管してございますので、市町村あるいは法務局においては、日本国籍を有している者かどうかは当然のことながらわかるわけでございます。
 その中には、生まれたときに、相手方の、妻が日本人であれば、国際結婚であれば外国人のだんなさんということになるわけでございますけれども、その国籍法によってそこの国の国籍も取得するかどうかも、これは法務局では外国法の調査によってわかる仕組みになってございますので、基本的に、ある者が日本国籍とどちらかの重国籍を有するかどうかということは、法務局では把握できる状態にあるわけでございます。
 これをどう関係者の方に情報開示するかということでございますけれども、先ほど申しましたように、御本人には当然のことながらこれを御説明することはしばしばございます。また、官庁の問い合わせでございますけれども、そういったものも行政目的として、当然国家公務員法の守秘義務というものがかかった状態になるわけでございますけれども、情報を提供する場合もございます。
 問題は、最後におっしゃいました親子兄弟でございますが、これは御本人の推測的な意思というものが明らかになっているという場合にはオープンにする場合、情報を提供する場合もございます。それ以外の方には、先ほど申しましたように、基本的に非常に高度なプライバシーに属することでございますので、報道機関を含めましてこれは情報提供しないというスタンスでこれまで対応してきているところでございます。

○岩國委員 そうした御本人がカナダの国籍を、あるいは台湾の国籍を、フィリピンの国籍を持っているということも、それは出生のときあるいは結婚のときに必ずしも適切に報告されるかどうか。あるいは、報告を忘れた場合、あるいは場合によっては隠ぺいされた場合、いろいろなケースがあり得ると思いますけれども、法務省が持っておられるデータそのものが不備なものも少しはあるのではないかと私は思います。

重国籍者が問題を起こした事はあるのか?

 その点について、時間の制約もありますから次の観点に移りますけれども、こうした国籍をもう一つ持つということは、決して差別の対象になるものではないし、かといって特別な尊敬の対象になるものでもないと私は思いますけれども、今まで入学とか就職とかそういうときに、ある別の国の国籍を持っているということをもって差別されたというような事件があったかどうか。そういう相談なりあるいは情報なりを法務省の方で持っておられるかどうか。人権尊重、人権保護という観点から、重国籍というのが日本という社会の中ではどういうふうな問題を起こしているのか、あるいは全く問題を起こさないで、重国籍を受け入れる社会的雰囲気はもう十分に雇用者の方でも学校の面でも整っているというように見ておられるかどうか。どうぞ、お答えいただけますか。

○富田政府参考人 お答えいたします。
 法務省の人権擁護機関は、差別等の人権侵害を受けた被害者からの申告を受けるなどした場合に、救済手続を開始し、所要の調査を遂げた上、適切な措置を講じているところでありますが、平成十六年から十八年までの過去三年間に、重国籍者であることを理由として就学や就職の場面において差別的取り扱いを受けたとの被害申告を受け、救済手続を開始した事案は承知しておりません。
 人権擁護上、差別する雰囲気があるかどうかというお尋ねがございましたけれども、今のところその点は、人権擁護機関では具体的には承知しておりません。ただ、一般的には、人権に関する相談につきましては、人権相談所あるいはインターネットによる受け付けシステム等、あるいは窓口を通じて、差別等の人権侵害を受けた被害者等からの相談や被害の申告を受け付けております。また、ポスターやホームページ等で、一般的には差別等の人権侵害を受けた被害者等からの訴えを積極的に呼びかけております。
 今後とも、これらの手段を通じまして、そのような差別的取り扱いの疑いのある事案に接した場合には速やかに救済手続を開始し、適切に対処していく所存でございます。

○岩國委員 最近三年間においてそういう事案は承知していないという御答弁がそのとおりであるとすれば、もう既に日本は十分そういった点においては国際社会の中で成熟した社会になりつつあるという一つの根拠になり得るのではないか、そのように私は思います。

衆議院・法務委員会(2007/10/31)/矢野隆司議員(自民党所属)

矢野隆司 - Wikipedia
○矢野委員 自由民主党の矢野隆司でございます。
 まずは、鳩山大臣、そして河井副大臣、古川政務官、どうぞよろしくお願いいたします。
 きょうは限られた時間でございますので、法務行政全般についてですが、少しずついろいろとお尋ねをしたいと思います。

不法滞在者半減計画について

 まず、先般の大臣のごあいさつの中にもございましたけれども、不法滞在者半減計画からお尋ねをしたいと思います。
 不法滞在者半減計画は、大臣のごあいさつの中にも数字がございますけれども、平成十六年にスタートされて、当初二十五万人で、平成十九年、ことしの初頭では二十万人にまで減少した、こういう文言がございます。私も二年ばかり法務委員をしておりまして、今ごろこんなことを聞くのもどうかと思いますが、二十五万人不法滞在者がいるという、その数字のそもそもの根拠というものをもう一度改めて教えていただきたいということと、結局これは、期間内に最終的には十二万五千人までのいわゆる半減、半分の人数まで減らすんだ、こういうことなのかどうか、数字的な根拠といいますか、概括的な数字の状況というものをまず教えていただきたいと思います。

○稲見政府参考人 お答えいたします。
 不法滞在者半減計画、スタートした平成十六年、不法滞在者二十五万でスタートいたしました。この二十五万の内訳でございますが、そのうちの二十二万人は与えられた在留期間を徒過しまして不法に居残っている者、いわゆる不法残留者でございます。これが二十二万人。さらに、残りの三万人は、一切の手続を省略して、夜陰に乗じて不法に入国するいわゆる船舶密航者、こういう不法入国者でございます。
 このうち不法残留者につきましては、私ども、御案内のとおり、すべての入国記録を電算で管理しておりますので、電算上の計算によりまして、ある程度正確にその数を推計することが可能でございます。これまでも、従来から、毎年一月一日を基準日にいたしまして、毎年その数を計算し公表しているというものでございます。
 これに対しまして、いわゆる密航者、船舶密航に代表される密航者、これは科学的に類推をするデータが一切ございません。
 そこで、先ほど言いました三万人というのも、実は、大胆な推計のもと、計算上算出したものでございます。これにつきましては、現在もより正確な計算方法がないかということを研究しておりますが、先ほどの不法残留者のように、毎年これを発表するというようなことは行っておりません。
 したがいまして、五年で半減、不法滞在者の半減計画の進捗状況、これを御説明するに当たりましては、比較的正確な数字をつかんでおります不法残留者の推移ということで御説明させていただきたいと思います。
 スタート時、二十二万人でスタートいたしました。これが一年たった後には二十万七千人ということで、一万三千人一年間で削減し、二年目が終わった段階で十九万三千人、さらに一万四千人削減できました。ことしの一月一日、三年目が終わった今年の一月一日現在でございますが、十七万一千人ということで、さらに二万二千人の減少が図れたということでございます。
 さらに、四年目に今入っておりますが、十カ月経過しておるわけでございますが、ことしにつきましても、これまでのところは昨年と同じようなペースで推移している、確実に減少はしているというぐあいに推定しております。
 このように申し上げまして、確実に不法残留者は推定しているんですが、二十二万人でスタートしましたので、これを半減ということになりますと、十一万人にしなければいけないということになります。この最終目標の十一万人に対しまして、現時点では若干まだ距離があるなという状況にあるというのが現在までの進捗状況でございます。
 以上でございます。

○矢野委員 今の数字を聞いて、大変しっかりやっておられるなというか、大変失礼な言い方かもしれませんが、やればできるんだなというような感じはしましたけれども。
 とはいえ、大臣のこのごあいさつの中では、要するに、達成期限は残り一年余りで目標の実現に向けた道半ばというような御表現もされておられます。ぞうきんで例えると恐縮ですが、最初は絞ればどっと水が出ますけれども、だんだんかたくなって水も出にくくなるということで、やはりだんだんこれから厳しくなるのかなと思ったりもしますが、そのあたりの推進状況といいますか、具体的な達成方法といいますか、その辺の御所見を大臣の方から承れればと思います。

○鳩山国務大臣 不法滞在の中に不法残留と密航者と、これは推定値なんでしょうけれども、これがあるということは今御説明したとおりでございます。
 この不法滞在の問題は、一つは、外国人犯罪の問題につながっていくからこれはきちんとしなければならないということ、それからもう一つは、例えば、武藤先生から御質問があるかと思って用意はしておったんですが、研修生や技能実習生、この受け入れについてはさまざまな需要についてのお話もあるわけですね。これを労働力と見るか技術の移転と見るかという難しい問題はありますが。
 ただ、これをふやそうとした場合に、研修生、技能実習生が不法滞在になってしまった例がやはりあるわけですね。だから、優秀なしっかりとした人をなるべく多く入れようと思っても、この不法滞在、不法残留を解決しないとなかなか前に進めないという、何か足かせになっているようなイメージがあるわけでございます。
 半減という目標については、強力に進めていく以外にないというふうに思っております。今も御説明はしたかと思いますが、今度、指紋と顔写真のがありますね。そのことの例を説明している間で私ちょっといろいろ言い過ぎたのかもしれませんが。どうも、例えば五万人ぐらい退去強制させると、七、八千人はまた入ってきているらしいんですね、今までの例として、一三%とか。これをやりますと、それを防げるわけですね。日本で、お帰りくださいというときに指紋をとっておけばリピーターにならないわけですから、かなり効果があるのではないかというふうに思っております。
 今までは、大体首都圏中心に一どきに百人ぐらいの固まりで不法滞在者が住んでおられるというような例が多かったようですが、最近は小口、地方分散化という傾向がありますから、効率的な摘発がなかなか困難になっておりますので、余計警察等の関係機関と連携を密接にして、丹念に地方、隅々まで摘発をしなければいけないんだろう、そんなふうに思っております。
 また、円滑な送還のためには、収容施設が手狭という状況もありますから、大阪、名古屋、東京等の庁舎は新しくふやしていこう、新営していこうというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、法務省は全力を尽くしますが、水際対策とか摘発あるいは送還ということを全部やらなければなりませんから、警察庁、厚生労働省、外務省等と緊密に連絡をとって、何とか目標達成に頑張っていきたいと思っておりますが、道半ばであることは正直認めます。

上陸審査について

○矢野委員 大臣、ありがとうございます。
 今、大臣からいみじくもお言葉がございました上陸審査の関係のことについてちょっとお尋ねします。
 来年、我が国はサミットを控えておりまして、やはりますますそういう入国審査関係は厳しくしなければならないと思うのでございます。大臣のこのごあいさつの中にも、来月の二十日からですか、上陸審査を開始するということが触れられておりますけれども、具体的にどこの施設からどのような方法で開始するのかということを、改めて整備状況を教えていただきたいと思うんです。これは、河井副大臣、お願いいたします。

○河井副大臣 矢野隆司先生には、この新しい個人識別情報の活用に御関心を抱いていただきまして、ありがとうございます。
 来月、十一月の二十日から始まりますので、もうあと三週間少しになってまいりました。外国人に対しまして、基本的には、両方の人さし指の指紋それから顔写真の提供が日本に入る際に義務づけられます。これと、先ほど大臣もお答えいたしましたとおり、過去に退去強制をされた者の情報と照合することによりまして、他人に成り済まし、あるいは偽変造旅券を使って再び入国を図ろうとする者の入国を確実に阻止することが期待されておりまして、先生御指摘のとおり、不法滞在者半減目標の達成にも役立つものだと考えております。
 現在の準備状況でございますけれども、各地方入国管理局等への関連機器の導入が始まっておりまして、もう間もなく、来月初めまでには、もうすぐでありますが、設置を終了する予定になっておりまして、また職員にもしっかりと習熟をしてもらわなくちゃいけないということで、本格運用に向けた研修を十月の九日から順次実施中であります。また、日本に入ってきていただく方々への周知広報、協力の広報活動も積極的に行わなくちゃいけないということで、八月の末には国際線運航航空会社への説明会を実施し、また九月には在日外国公館への説明会を実施しております。そして、大体日本に入る人の六割以上を占めると言われております中国、香港、それから韓国、そして台湾、それぞれの現地におきまして、海外での政府機関、旅行会社、マスコミに対する説明会を実施済みでございまして、円滑に始まる準備を今懸命にやっている状況でございます。

○矢野委員 ありがとうございます。
 大変心強く思います。ちょっとここで通告にない質問ですが、一問だけ関連して。
 顔写真もともに撮るというふうに聞いております。これは、いわゆるバイオメトリックスといいますか生体認証の関係で、瞳といいますか虹彩も記録するようなことはないと思うんですが、その辺をはっきりおっしゃっていただきたいと思います。

○稲見政府参考人 ちょうだいいたします生体情報は指紋と顔認識情報でございまして、いわゆる写真でございまして、虹彩は対象に入っておりません。

○矢野委員 ありがとうございます。
 続いて、やはり入国関係の質問になるんですが、そういう不法に滞在、残留といいますか、オーバーしたというような人を収容する施設が国内に三カ所ぐらいあると思います。私は吹田というところに住んでおりまして、隣に茨木という町がございます。そこに入国管理関係の施設がございまして、今月、そこの収容者がいわゆるハンガーストライキをしたというようなことがあったそうで、新聞に大きく出ておりました。
 例えば、食べ物に異物が入るということは、我々も時々というか、めったにない人もいるかもしれませんが、私は二、三回大きな虫が入っていたことがありますけれども、あることはあると思うんですが、ハンガーストライキにまではなかなかならないのかなと思うんです。新聞でおもしろおかしく書かれていたようなこともありますので、この際、経緯といいますか、それと再発防止みたいなものがあるなら、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

○稲見政府参考人 お答えいたします。
 お尋ねのハンガーストライキでございますが、これは、十月の八日の夕食時、私どもの西日本管理センター収容中の被収容者一人から処遇を担当しております入国警備官に対しまして、給食の御飯の中に虫が混入している、それで給食を交換してほしいという申し出があったことに端を発しております。
 この異物でございますが、これは後でいわゆる米粒大の野菜のかけらだということが判明しております。
 西日本センターでございますが、実は、本年度四月以降でございますが、給食に異物が入っているというクレームが被収容者の方からこの十月までに三十件以上出ておりました。これを受けまして、センターの方では、給食業者の方にも指導いたしまして、再発防止策といたしまして、給食を各被収容者に渡すときに、もちろん警備官立ち会いでございますが、給食業者が食器のふたをあける、御飯とおかずになっているんですが、二つございますが、あけて、被収容者に異物の混入がないということを確認させた上で渡すというような対応をこの十月一日から実施していたやさきでございます。
 この件も、対応した警備官、そういうぐあいに異物が混入していないということを確認した後のことであったこと、それからもう一つ、この被収容者からクレームが出たのが食事を渡した後の三十分後であったというようなことから、交換の要求にこたえなかったということでございます。この状況を見ておりましたほかの収容者が、同調いたしまして、翌日の朝食からハンガーストライキに入った、全員で約三十名ほどがハンガーストライキに入ったという事実でございます。
 その後、どうなったかといいますと、私どもの職員が、給食業者に対してさらに衛生管理を徹底するよう指導するというようなことを説明いたしまして、さらに、その翌日の昼食から全員が正常な状況、ハンストをやめて食事をとるという状況に戻っております。
 西日本センター、先ほども言いましたように、これまでの異物混入のクレームに対しまして、さまざまな対応策をやってきたんですが、十分ではなかったということでございます。もちろん、その被収容者に対する給食の給与というのは、健康管理の観点から当然適正にやらなければいけないというものでございます。
 今回の件を受けまして、まず、本省入国管理局から、すべての私どもの収容施設に対しまして、異物混入防止対策の強化というのをまず指示いたしました。さらに、本省にプロジェクトチームを設けまして、西日本センターだけではなくて、すべての私どもの被収容施設におけます異物混入事案の実態調査というものに着手しております。
 今後、その異物混入の原因の究明あるいは改善策の検討というふうなものを行いまして、異物混入の根絶を図ってまいる所存でございます。
 以上でございます。

○矢野委員 新聞は、発生したことは大きく書きますけれども、その後どういう手当てをしたかということはなかなか書いてくれないものですから、今、懇切丁寧に御説明いただいて、安心された方も多いと思いますし、私も安心した次第でございます。

重国籍者の国政立候補について

 次に、国籍関係の質問に移りたいと思います。
 かつて、党の部会で、無国籍といいますか、国家承認をしていないパレスチナ人の御夫妻が日本で子供を出産した場合、いわゆる国籍法の関係で、無国籍者の子供となって日本国籍が申請すれば与えられるという、両親ともパレスチナ人であるにもかかわらず、子供さんが日本人になるという仕組みが果たしていいのかどうかというようないろいろ議論がございました。
 その後、法務省と外務省さんとで大変よく御検討いただき、外国人登録法上はパレスチナ籍を認めるといいますか、そういう措置をするということで、先般、新聞にも報道されておったということで、御決断といいますか、措置に評価といいますか敬意を表したいと思いますけれども、かねて、私が一つだけこだわっておる問題がございます。
 それは、また別の問題でございますけれども、外国の元首までされた方、実はこの人は重国籍者、日本人と外国籍と両方持っておったということですけれども、その方が日本の国政選挙に立候補をされた経緯がございます。
 立候補できたんですから、当選すれば日本の国会議員になっておられたのかもわかりませんけれども、一方で、二重国籍者が外国の公職についたとすれば、日本の法務大臣は日本国籍の喪失を宣告できるという国籍法の仕組みがございます。ならば、この仕組みの中で、私は、今最初に申し上げた人物の場合、なぜ元首になった時点で国籍喪失の宣告がされなかったのか、国籍選択という問題も絡めて教えていただきたいと思います。

○倉吉政府参考人 特定の個人を想定してということになりますと、プライバシーにかかわりますので差し控えさせていただきたいと思いますが、あくまでも一般論として申し上げたいと思います。
 委員御指摘のとおり、国籍法十六条二項という規定がございまして、委員はもう既に御承知のとおりと思いますが、簡単にその条文を申し上げますと、日本の国籍を選択する旨の宣言をしたものの外国の国籍を失っていない重国籍者が自己の志望によりその外国の公務員の職に就任した場合において、その就任が日本の国籍を選択した趣旨に著しく反すると認められるときは、法務大臣は、その者に対し日本国籍の喪失の宣告をすることができる、こう定められておりまして、つまり、日本の国籍を選択する旨の宣言をしたということが、この規定の適用の前提になっております。
 さて、この規定は、国籍の選択に関する規定等とあわせまして、昭和五十九年の国籍法の改正により設けられたものですが、それまでは国籍の選択義務が課されていなかった、そういう改正法施行前の重国籍者については、この改正法に附則の三条というのがございまして、みずから国籍の選択をしない場合には、所定の期限が到来したときに日本国籍の選択の宣言をしたものとみなされる、こういうふうにされております。
 また話がもとに戻りますが、そうしますと、このような改正法施行時における重国籍者は、日本国籍の選択の宣告をしたものとみなされたということになるわけでありまして、自己の自発的な意思により選択の宣言をしたものではない、こういうことになります。
 そうしますと、先ほど申し上げました、国籍法十六条二項の適用の前提を欠くということになりまして、外国の公務員の職に就任した場合でも、その人に対して日本国籍の喪失宣告をすることはできないというふうに解釈されております。

○矢野委員 大変ややこしくて、何回聞いてもよくわからないんですけれども、例えば、六十年一月一日というのが改正国籍法の一つの線引きといいますか、これをまたぐかまたがないかというのが一つあると思うんですが、では、改正国籍法が施行された後に重国籍者となって、かつ、外国の元首に就任された場合、日本の法務大臣は国籍喪失の宣告ができるのかどうか、教えてください。

○倉吉政府参考人 それでは、先ほどの改正国籍法が施行された後はどうか、こういう御質問だと思います。
 この点につきましては、国籍の喪失を宣告するか否かということについては、もちろんこの十六条二項の規定に基づいて判断するということになるわけですが、先ほど申し上げました要件の中の最後の要件でございます。その者が外国の公務員に就任するということが、日本の国籍を選択した趣旨に著しく反することになるかどうか、これをあとは個別具体的な事案に即して判断するしかない、こういうことになろうかと思います。

○矢野委員 大変悩ましい問題だと思います。
 この方のことばかり言うのもなんですけれども、恐らくこの方は、平成十二年に日本に亡命といいますか来られて、そして、これは野党のある先生の質問主意書ですけれども、平成十二年の十二月になって、これは政府の答弁ですが、「法的問題の整理の一環として日本国籍の有無の確認作業を行った結果、日本国籍を有していることを確認したものである。」と書いていますから、この時点で、私は日本国籍があったということが確認できたと。
 では、ずっと昭和六十年一月一日を遡及して、例えば、自分が日本人であるという意識が全くなく、それで日系であるということで日本に入ってきた、ずっと調べてもらったら、あるいは日本政府が調べたら、戸籍があった、国籍があったという場合に、今の局長がおっしゃったさまざまな条文、条項が当てはまるのかどうか、私はちょっと疑問に感じます。
 なぜならば、この方は、平成四年には国賓として日本に来日をされたり、その後も何度も日本に非公式ながら外国の元首として来日されたりしておる経緯もあるわけですから、そこで、あるときはペルーの、ペルーとは言っちゃいけませんけれども外国の元首、あるときは日本人ですという使い分けをしながら政治活動で太平洋を行ったり来たりしているというのもいかがなものかなというのを私は日本人として純粋に疑問に感じるということをちょっとここで申し上げたいと思います。

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最終更新:2009年01月12日 15:35
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