国会質疑 > 重国籍 > 05

国会での審議の中継


参議院・外交防衛委員会(2005/04/26)/犬塚直史議員(民主党所属)


社会保障協定の締結について

○犬塚直史君 話題変えまして、日本の社会保障協定の締結に関する質問を町村大臣に申し上げます。
 これは、この社会保障協定をじっくり読ませていただいたんですが、一見非常に地味に見えるこの協定ですが、大変大切な協定だというふうに感じております。
 大臣、今のところこの協定は大企業の人たち、日本が特に派遣をされてその大企業に所属しながら表で働く人たちを想定をして、五年という期限の中でお互いの国の社会保障を認め合うような設定になっておるんですが、まず、大臣のこれからのこの社会保障協定に関する取組の決意といったものをお伺いしたいんですけれども、将来的には大企業だけではなくて、専門的な技能を持っている人たちの交流、あるいはその先に行きますと、特にアジアの国々との資格の相互認証といったことまで視野が大きく広がってくると思います。まずは、大臣の御決意をお願いいたします。

○国務大臣(町村信孝君) 日本から相手国に派遣されている被用者等について、双方の社会保障制度に強制加入となりまして両国で保険料を支払う義務があるという、いわゆる二重加入の問題、これを解決をしなければならないということがあると思います。それぞれの国で払うとこれは大変に負担が大きくなるということがあるわけであります。それから、相手国から日本に派遣されてくる被用者については、日本での就労期間が短いために保険期間が年金の受給に必要な期間を満たさずに年金を受給できない、いわゆる保険料掛け捨て問題というものも生じております。こうした問題がそれぞれの国との企業及び個人の大きな負担となって人的交流の増進に影響を与えるということが懸念をされるわけでございます。
 したがいまして、こうした協定を締結することによって、原則として就労地の、そこで働いている国の社会保障制度にのみ強制加入をすると、これによって二重加入問題の解消ができますし、また、両国での保険期間を通算をするということでそれぞれの国における年金の受給権を確立できる、掛け捨て問題の解消ということになるわけでございまして、まず、こうした基本的な制度間の調整を図るということがそれぞれの企業、個人の負担軽減、ひいては人的交流の促進ということになると思います。
 そして、その先に、今委員が述べられた様々な人的交流を促進するための資格制度の相互認証の問題等々というものも視野に入ってくるんだろうと。現に一部のEPA協定等ではそうしたことも既に議論になってきているわけでございますが、より一層そうしたことを取り組んでいくことがこれからの国際社会、特にアジアにおいては東アジア共同体ということまでも視野に入れながらの議論をしているわけでございますから、是非そういった政策は積極的に進めていきたいと、かように考えているところでございます。

欧州各国との社会保障協定の締結について

○犬塚直史君 今大臣がEPAという言葉をおっしゃいましたんで、FTA、EPA、これをアジアのいろいろな国々と今積極的に日本が結ぼうとしておると。私は、そうした東アジア共同体に向けた取組の最も地味であるが最も大切な取組がこの社会保障制度の相互認証といいますか、この取組だと思っております。
 しかしながら、今お手元にお配りをした資料を見ていただきたいんですけれども、このチャートの一番下、協定締結数というところを見ますと、今回締結を予定しておりますフランスが五十七か国、ベルギーが四十二。これに比べまして、日本の場合は今のところドイツ、英国、韓国、米国の四か国のみという形で非常に取組が後れているんですが、この辺がどうしてこんなに後れているのか、御説明をお願いします。

○政府参考人(鹿取克章君) お答えいたします。
 我が日本におきましても、経済発展等に伴う人的交流の活発化を踏まえまして、昭和四十年代より各国との間で年金制度への二重課税等の問題について意見交換は開始いたしました。しかし、その後、委員御承知のとおり、特に我が国におきましても何回かにわたり年金制度の大きな改革というものがございまして、そういう事情もありまして、またその後、関係国と協議いたしまして、ドイツとの間で最初に締結いたしましたが、ドイツとの間では平成十年署名と、こういうことに至ったわけでございます。
 しかし、その後、我々としても鋭意努力いたしまして、今正にベルギーとフランスと署名いたしましたけれども、これから積極的に社会保障協定の締結に向け進んでまいりたいと思っております。

○犬塚直史君 このお渡ししました資料をよく見ていただきますと、例えばこの今回締結しようとしているベルギーなんですが、実はこのベルギーから日本に対してこの社会保障協定の申入れがあったのが昭和の六十一年といただいた資料に書いてございます。昭和の六十一年当時はこの表に出ているどの国とも全く締結はしておらなかったと。どうしてベルギーだけがこんなに遅れたのかという御説明をお願いします。

○政府参考人(小松一郎君) お答え申し上げます。
 先ほど同僚の政府参考人から御説明を申し上げましたように、我が国も昭和四十年代ぐらいから経済発展に伴う人的交流の活発化を図るために年金制度の二重加入の問題の解決というものが重要であるという認識を持ちまして、諸外国とこの話合いを進めていたわけではございますけれども、先ほど同僚の政府参考人の御説明にもございましたように、我が国の年金制度の大掛かりな改正が数度によって行われたというようなこともございまして、なかなか継続的な交渉をすることが困難であったという事情がございます。
 そういうことで、この条約につきましては、やはり双方の年金制度、非常に技術的な内容でございますので、この相互調整を図ると。かなり技術的に複雑な要素がございまして、まず、いい相手と典型的な条約を締結をするということが早道であろうということで、先ほど御説明をいたしましたように、平成十年にドイツとの協定を署名をしたということがございます。
 昭和六十一年以降、ベルギー側より数次にわたってこの社会保障協定の締結交渉開始の申入れがあったということにつきましては委員の御指摘のとおりでございますけれども、そういったようなことがございまして、交渉の開始自体がその平成十年よりも後になったということがございます。
 このベルギーとの間の交渉につきましては、我が国からの、経済界からの強い要望も踏まえまして、平成十三年の二月に行われました日本とベルギーの首脳会談におきまして、当時の森総理とヴェルホフスタット・ベルギー首相の間で、近い将来の社会保障協定の締結を視野に入れて双方の社会保障制度に関する情報及び意見の交換をこの十三年中に開始するということを確認いたしまして、そこから話が本格的に始まったという次第でございます。

○犬塚直史君 今政府参考人がドイツについていい相手と今おっしゃったんですけれども、そのいい相手という意味をもう少し説明してください。

○政府参考人(小松一郎君) 例えば、在留邦人の数でございますとか、それから経済交流の規模でございますとか、そういった観点、それから相手の国の年金制度と我が国の年金制度の関係で調整が相対的に容易であろうと思われるようなところを考えて、話を優先的に始めたということでございます。

○犬塚直史君 いい相手という意味は、私が今まで理解した範囲では、非常にドイツの社会保障の法律が精緻にできていると、非常にきっちりとできている相手とまずは締結を行って、その先いろいろな国と締結をする際の、何というんですか、一里塚としたいという私は理解をしたんですが、それでよろしいでしょうか。

○政府参考人(小松一郎君) 委員のおっしゃるとおりでございます。

アジア諸国との社会保障協定について

○犬塚直史君 そこで、このアジアの諸国に対する取組を今ここで質問をしたいと思うんですけれども、御存じのように、ASEAN諸国あるいは韓国、中国に対する我が国からの企業活動といったものは非常に盛んになっており、この社会保障についても最も注目しなければならない地域であるにもかかわらず、今韓国だけが結ばれているわけですが、どうしてこんなに東アジアの諸国が遅れているのか、その辺の御説明をお願いします。

○政府参考人(鹿取克章君) アジア諸国との関係でございますけれども、私どもが社会保障協定を考慮する場合に、二国間の関係、在留邦人の数、企業の数、それから相手国の社会制度の現状、それから民間企業からの御希望、こういうものを総合的に判断して考えるわけでございますけれども、アジア諸国につきましては日本と保険制度の相違が大きい。例えば、社会保障、社会保険制度あるいは年金について強制加盟という制度がないと、そういうこともありまして、日本の民間企業においてもそれほどアジア諸国と社会保障協定を結ぶ上でインセンティブはないと、こういうようないろいろな問題がございました。
 それで、私どもも調べて、私どもは今韓国と協定を結びましたけれども、欧米諸国の方、欧米諸国においてもアジア諸国と社会保障協定を結んでいるという例は今のところ余りございません。一つの例は韓国とフィリピンで、韓国とフィリピンは欧米諸国と社会保障協定を結んでいるという背景はございます。
 しかし、社会保障協定につきましては、先ほど委員からも御説明ありましたように、人的交流、企業活動、そういう観点から非常に重要と考えておりますので、私どもも、これからアジア諸国につきましても、先ほど申し上げましたような様々な観点から検討は進めてまいりたいと考えております。

○犬塚直史君 町村大臣、これは大変大事な私は要素を含んだ答弁だと思うんですけれども、要はアジア諸国に関しては年金制度を始めとする社会的な基盤がまだ整っていない国が多々見受けられると、そこのところが一つの障害になってなかなか進展がしないということだと思うんですね。
 そこで私は、読売新聞の今年の四月の二日に、非常に小さいんですが、面白い記事を発見をいたしまして、タイに文書鑑識の専門官を派遣をしたという記事がございました。こうしたまだまだ言わば基盤が整っていない国に対して、今までの例えばODAに代表されるようなインフラの整備の次には社会基盤の整備に対しても人的な支援をこれからするべきではないかというふうに考えております。
 そうした意味で、こうしたアジアの諸国に対する専門員の派遣ということについての今後のお取組の状況を御説明ください。

○政府参考人(佐藤重和君) お答えを申し上げます。
 委員おっしゃられましたいわゆる社会基盤の整備ということにつきまして、私どものODAの世界でも、貧困削減ということにもつながるということで、こういった分野に取り組んでいくということを考えております。
 政府のODAの中期政策の中でも、例えば失業対策プログラムであるとか、いわゆる広い意味での社会的なセーフティーネットの構築ということで、途上国に対する支援、それを通じてその社会基盤の整備の強化を図っていこうということをうたっております。
 お話ございましたアジア諸国に対する協力、専門家の派遣ということでございますが、今行ってきておりますのは、例えば医療保険であるとかそれから社会福祉行政、こういった分野でそういった先方の基盤整備を行うということで、タイとかインドネシアとかフィリピン等にその専門家の派遣を行ってきております。
 こういった専門家が先方でいろいろな保険業務であるとか、あるいはその地域の社会保障制度の構築ということでアドバイスを行って、そうした基盤の整備ということ、あるいはその先方の人材育成ということで協力をしてきておりますけれども、今お話にございましたとおり、広い意味で、その先方、特にアジアの各国の社会基盤整備に私どもとして協力をしていくということは今後ますます重要になっていくと考えておりますので、こういった専門家の派遣、あるいは先方からのその研修生の受入れといった形で協力を進めてまいりたいと考えております。

中国へのODAは形を変えて継続するのはどうか?

○犬塚直史君 今、平和の構築の視点からも、やはりこうした社会基盤整備に対しての支援が必要であるという、そういう御説明だったわけですけれども。町村大臣、今ODAが〇・七%のこの目標がなかなか達成ができないという中にありまして、例えば中国を見ますと、今度、オリンピックをきっかけに一応ODAの供与は有終の美を飾るというふうに言われておるんですけれども、私はやっぱりここで発想の転換といいますか、やっぱり平和構築という意味で、今までの使い方ではなくて、ODAに関しても社会保障基盤を始めとするこうした人的、物的、あるいは資金的な支援を続けるべきだと私は思うんですが、大臣の御見解いかがでしょうか。

○国務大臣(町村信孝君) 一例を中国に挙げますと、まあお互いが十分理解した形の中で、祝福される形の中で二国間の借款というものはオリンピック前にやめましょうということになりました。大規模な資金需要というものは、日本から資金を提供しなくても彼らも自力調達できるという部分もあるというようなこともあるわけであります。
 ただ、それはそれとして、今委員御指摘のような、ある意味では地味かもしれません。ある意味では、それは金額がそう大きくならないかもしれない。しかし、中国もそうでありますし、アジアの国々、まだまだいろいろな面でいわゆる社会基盤、インフラ、物的なインフラではなくて制度的なインフラ、知的財産権などは一番そのいい例かと思いますが、そういう面の整備というのがまだまだこれからだろうと思います。
 また、中国を例に取れば、確かに知的財産権の保護の制度はあっても、それの運用となると、ほとんどそれが生かされないままに大量の模倣品等々が出回って日本の知的財産権が大いに侵害をされている。制度の面とそれからその運用の面と、両方の面で私どもとしてはアジアの諸国がより高いレベルになってもらう必要が、なることが彼らにとってもプラスだし、また翻って、日本にとってもメリットがあるということだろうと思います。
 したがいまして、私ども、今後ODAの中で、今経協局長申し上げたように、こうした社会インフラの面で一層の支援をやっていくと、知的貢献をしていくということは非常に重要なことであろうと、こう思っておりまして、今後、我が国の経済協力の一つの大きな取り組むべき分野として、これをしっかりと位置付けて進めていきたいと考えております。

○犬塚直史君 今大臣、制度的なインフラが非常に大事であると、そういう認識を力強くおっしゃっていただきました。
 せっかくですから、ここでもう一度、中国に対するODAを、要するに、今までの道路とか橋とか、そういうインフラ整備が一応めどが付いたと、経済的なインフラ整備に対する援助はもう一段落しただろうという理解は分かるんですが、これからもっと大切な、こうした制度的なインフラ整備に日本が人も金も援助していくんだという御決意をここでお願いしたいんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(町村信孝君) 中国との間でも、円借款という形のものについてはさっき申し上げたような方針でありますが、例えば草の根無償、人間の安全保障協力等々の二国間の技術協力あるいは無償資金協力といったようなものについては今後よくお互いに話し合って、ニーズのある分野については引き続きこれをやっていこうというふうに考えているわけでございます。
 今委員がお触れになったそうした社会、制度的なインフラ部門で、彼らの、よく話をして、中国政府とも話をして、この分野で日本は大いにまたやっていこうという分野があれば、そこは大いに協力をしていきたいと、かように考えているところでございます。

○犬塚直史君 さっき政府参考人もおっしゃっておられたんですが、平和の構築という意味で、非常に地味でありますが、人間の移動を地味なところから支えていくというこの制度の構築、私は先般、ルワンダのあの惨劇の後に、三年間掛けてアメリカを中心としたいろいろな学者の人たちが現地の聞き取り調査をやったレポート読んだことありまして、そこでやっぱり指摘されているのが人の移動をいかに確保するかということだったんであります。いろんなレベルがあるとは思うんですが、平和の構築にとって大切な人の移動、社会保障制度の相互に認め合うといったことをどんどんやっていただきたいという希望をまずは申し上げておきます。

社会保障協定における負担軽減額について

 お手元の資料をいま一度ごらんになってください。ここに日本の負担軽減額というのが書いてございます。例えば、ドイツが三十億円、アメリカは例えば六百億円というふうに日本の負担軽減額が書いてあるんですが、この負担軽減額というのは一体何なのか、どうやって計算しているのか、これをまず御説明ください。

○政府参考人(渡辺芳樹君) 本日御審議いただいておりますフランス、それからベルギーに関する協定関連でお尋ねがございました。
 ここで、表にまとめていただいております日本の負担軽減額、ベルギー約四十億円、フランス約百十億円という数字は、私どもも今推計できる範囲でこういう数字かなと承知しておるわけでございますが、そのベースにつきまして簡単に御報告申し上げます。
 フランスにつきましては、平成十四年に厚生労働省が行いました実態調査がございます。また、ベルギーにつきましては、平成十三年にベルギー日本人会が行っていただいた実態調査がございます。それぞれ相手国に進出している日系企業の調査でございます。
 フランスにつきましては、この中で、フランスに在留する民間企業関係者のうち保険料の二重負担者の割合、一人当たりの保険料賦課の対象とする所得、この辺りが調査上非常に重要でございますが、そこを調査しております。また、在留する民間企業関係者のうち保険料を二重に負担している方の人数、これも調査をさしていただきました。そうした中で、保険料賦課対象となる所得にフランスの保険料率を乗じて得られる一人当たりの保険料負担額というものを試算いたしまして、先ほど申し述べました民間企業関係者のうちの保険料の二重負担者の割合というものを加味いたしまして総負担軽減額を算出しておるわけでございます。それがこの百十億円というものでございます。
 ベルギーにつきましても、これは日本人会の御調査を基に民間企業関係者のうちの二重負担者の割合、それから対象となった者の社会保障負担の年総額につきまして調査をいただいております。在留する民間企業関係者のうち保険料を二重に負担している方の人数を割り出し、そして社会保障負担年総額を調査の対象となった日本人派遣者の数で除して得られる一人当たりの保険料負担額を算出いたしまして、そして二重負担者の割合というものを加味して総負担軽減額を計算しているところでございます。
 端的に申しますと、フランスにつきましては、一人当たりの年負担軽減額が三百六十万円、それに三千人というものを掛け合わせて百十億円というものを出しております。
 また、ベルギーにつきましては、一人当たり負担軽減額が年二百四十五万円、それに千五百人という二重負担者数の数字を乗じて約四十億円というものを算出しているものでございます。

○犬塚直史君 簡単に申し上げると、ベルギーでは二百万円、フランスでは三百万円以上という金額を毎年毎年、派遣をされた方が現地で支払をしておると。しかしながら、その任期が終わって帰ったときにはこの金額が掛け捨てになってしまうと。要は、相手国に払ったけれども自分の年金にはならないと、この金額の合計が、例えばアメリカだったら六百億円になると、こういう理解でよろしいんでしょうか。

○政府参考人(渡辺芳樹君) はい、そのように私どもも承知しております。

○犬塚直史君 ここで、この表をもう一度見ていただきたいんですが、韓国と米国がございます。この社会保障協定の発効時期、上から三段目なんですが、同じ第百五十九回の常会に提出されたこの韓国と米国が、韓国の場合は発効時期が平成十七年の四月予定、そして米国の場合が平成十七年の秋見込みとなっております。これ、半年変わってしまいますと、今の御説明ですと、例えばアメリカですと年間六百億円の負担額ですから、半年違うと三百億円という膨大な金額がここで無駄になるといいますか、なるわけですけれども、どうしてこんなに違ってくるんでしょうか。

○政府参考人(長嶺安政君) お答えいたします。
 今先生御指摘の、お配りになられた資料に書いてございますように、韓国につきましては、昨年、日本側につきまして国会御承認をいただいたものでございますけれども、もう今年の四月に発効しております。
 日米、アメリカとの間の社会保障協定でございますが、これも日本側では昨年六月に国会の御承認をいただいたものでございますけれども、米国におきましては、アメリカの行政府の中の所定の事務手続を経まして、昨年の十一月十七日に大統領より米国議会に提出をされております。アメリカでは、アメリカの社会保障法の規定によりまして、社会保障協定は、議会提出後、上下両院の少なくとも一方が開会中である六十日間が経過して、その間に反対の決議が採択されない場合に協定の規定に従って効力を生ずるという国内的な手続がございます。
 現在の状況につきまして米側から聞いておりますところでは、六月末又は五月初頭にこの六十日間が経過する、失礼しました、四月末又は五月初頭に六十日間が経過するものと見込んでおるという説明を受けております。この六十日間が経過いたしますと、社会保障協定の規定に従いまして、双方で外交上の公文を交換した月の後、三か月目の月の初日から効力を生ずるということでございます。
 先生御指摘のように、既に署名をされておって、我が方におきましては手続が済んでおる協定でございますので、私どもといたしましても早期の発効を図ってまいりたいと考えております。

○犬塚直史君 大臣、これ半年で三百億円変わるんですよね。これだけ大きな金額が交渉の行方次第で変わってまいるわけですので、是非、今、最近ではIC旅券に関してはあれだけその締切りについてアメリカからプレッシャーを掛けられているわけですから、逆に、こうした先方が遅れていることについては、外務大臣、是非プレッシャーを逆にこちらから掛けて、この三百億円セーブしていただきたいんですけれども、御決意いかがでしょうか。

○国務大臣(町村信孝君) 既に事務レベルでも先方に対して再三にわたって働き掛けをしているというふうに聞いておりますので、更に要すれば、またより高いレベルでの働き掛けもしたいと思います。

○犬塚直史君 お願いします。
 もう一つ、この表の中で、簡単で結構ですので御説明をいただきたいんですが、通算制度の有無、ほかの国は通算制度があるんですね。にもかかわらず、英国と韓国だけがこの通算制度がないというふうになっておるんですが、この辺の御説明をお願いいたします。

○政府参考人(渡辺芳樹君) 社会保障協定、私ども、二つの大きなねらい、目的というものを持って締結をしていただいてきております。一つは、委員御指摘のありましたような両国間の年金制度における二重加入、二重負担の問題、それを解消すること。それから、第二に、両国の保険期間を通算することによって個々人の年金受給権の確立に資すること、こういう二面ございます。
 後者のお話について御指摘ございました。そのとおり、我が国として、イギリス、韓国との間の協定では年金通算に関する部分がございません。私どもといたしましては、交渉の過程ではこの年金通算についても協定に盛り込むべきではないかという観点で交渉に臨んでおったわけでございますが、イギリスとの協定締結に当たりましては、イギリス側が二重加入の防止に限った内容とするという方針で交渉に臨んでこられました。やはり、早期に二重加入の防止も実を上げたいという観点もあり、その範囲で協定を締結しております。
 また、直近では、韓国との間でもそういう結果になっておるわけでございますが、これも韓国側の御主張の中で、韓国の年金制度の歴史が浅く、平均加入期間が交渉当時まだ十二年ぐらいしかない、日本の年金制度は四十年加入を前提としておりますので、十二年ぐらいのまだ若さであるということから、現時点で期間通算をするという協定にいたしますと、利益が専ら日本の方に偏るのではないかという懸念も先方は持ち、それで、ともかく二重適用の回避という重要な目的を達成することができるのだから今回は協定に盛り込まないで合意をした、こういう経緯でございますが、この保険期間の通算につきましては、両国とも、今後その可能性について模索していくという意見を私どもとともにしているものと理解をしておりますので、今後とも意見交換を重ねてまいりたいと、こう考えている次第です。

○犬塚直史君 正にこの社会保障協定というのは、我が国自身の年金を理解するための鏡だというふうに言うことができると思います。今の御説明によると、韓国の年金、平均で十二年ですか、十二年間しか国民の皆さんが年金に加入をしていないというような状況の国々がたくさんあるという中で、我が国の年金制度はどうかと考えることができる、非常にこれ地味ですが大事な交渉だと私は思います。
 そうした中で、今回のベルギー、フランスのこの協定を見ますと、適用対象制度というところが年金だけではなく、医療保険、労災、雇用保険まで広がっているんですが、これはどうしてこうなっているのか、簡単に御説明お願いします。

○政府参考人(渡辺芳樹君) これまでのドイツ、イギリス、アメリカ、韓国につきましては、主として年金制度を対象に、そして一部の国によっては医療保険制度を加えて協定の協議のまないたにのり、その対象としてきたところでございますが、フランス、ベルギーの制度は、実は、年金、医療保険、労災が一体となって不可分の制度になっているフランス、さらには、それに加えて雇用保険の制度も一体不可分になっているベルギーの制度ということで、社会保障の仕組みが日本のようにそれぞれの制度が別の制度になっているというところではない事情がございました。そういう中で、年金とか医療保険だけに協定の対象範囲を絞ることが先方においては非常に困難であるということもございまして、話合いの結果、労災保険等について今回の協定の対象とする、先方に行ったときの処理についてはそのような形になりますが、先方が日本の労災保険の対象となるかという点については、逆に日本の労災保険の対象には入らないというような、ややそれぞれの扱いがそれぞれの制度によって違う形になったことですが、そういう形で合意をしておるところでございます。

○犬塚直史君 これはまた細かい話になりますが、フランスの場合に限っては、日本の派遣員の方が行かれた、五年働いた、それを更に延長しようと思ってもこれはなかなか延長されないということを聞いたんですが、その辺はどういうふうになっておるんでしょうか。

○政府参考人(小松一郎君) この協定上の原則は、就労をしている国の強制加入の法律を適用すると、つまり日本の方がフランスで働く場合にはフランスの法律を適用するというのが原則でございますが、非常に短期に、例えば駐在員等でいらっしゃる方についてはむしろ派遣国、日本の方がフランスにいらっしゃる場合に日本の法律だけを適用しようと、これは原則に対する例外であるわけでございますが、それを五年ということで主張しておりますのは、この実態の問題として、フランスに、日本からフランスに派遣されておられる方々、これは厚生労働省の平成十四年に実施された実態調査によりますと、大体七割以上の方がそういう実態であるということで、一時派遣の期間を五年とするということを主張をいたしまして、更にそれの延長を認めるということを主張をしたわけでございます。
 これに対しまして、フランス側は、そもそもフランスがほかの国と締結をしておりますこの社会保障協定の多くで、この派遣期間については一年とか二年というようなことになっているので、そういうことに日本との関係でもしたいということを主張いたしました。その双方の立場に開きがあったわけでございますけれども、交渉を重ねました結果、フランス側は最終的には派遣期間を五年以下とすることを受け入れたわけでございますが、この派遣期間の延長につきましてそれを協定に明示的に書くということにつきましては、当初の立場との関係もございまして、これを受け入れることに強い難色を示したということがございます。
 以上が交渉経緯でございますが、他方、この派遣の期間の延長というものが全くできないかというと、そういうことにはなってございませんで、両国の当局が合意すれば個別の申請に基づいてこの延長を認めるなど法令の適用について調整を行うということが合意されまして、具体的には協定の九条でございますが、そこで両締約国の権限のある当局はこの第五条から八条までの規定の例外を認めることについて合意することができると。この六条にこの五年ということが書いてあるわけでございますけれども、その例外を認めることができるということが協定九条に書かれているわけでございます。

日本の二重国籍に関する取り組みについて

○犬塚直史君 今のお話も大変細かいんですが、大事なお話だったわけです。
 EU圏においては、特にフランスではEU圏内あるいはフランス語圏内に特派員を派遣する、あるいは仕事をしに行くというケースが多いんですが、これはどうしても一年以内のケースが多いそうですね。そうした相手方の常識がある。日本側としては五年送る、また延長があり得るという、そういう常識のずれというものがやっぱりこういうところに出てきておるんだと思います。
 そうした中で、これがずっと進んでまいりますと、私は最終的には資格の相互認証からすべての社会整備の基盤までを共有していこうという努力をしていく中で、私、これは我が党の請願にも出ておるんですが、最終的には二重国籍も認めていくという方向になるのが世の中の流れだと思うんですね。
 個人的な話で申し訳ないんですが、私の娘は三つパスポートを持っております。父親の国籍と母親の国籍が違う、出生地主義であると、二つのパスポートがあると、そしてそうした子供が出生地主義のアメリカで生まれた場合は、これは当然のことながら、三つのパスポートになるわけですね。そうしたときに、二十二歳になったときには必ず国籍を選択しなければならないという今の日本の規定では、非常に子供に負担を与えることになるということになるんですが。
 非常に簡単で結構ですけれども、一言で結構です、法務の方、日本の二重国籍に関するお取組を御説明ください。

○政府参考人(深山卓也君) 御指摘のとおり、我が国の国籍法は原則として二重国籍を認めておりません。これは国籍法が国籍唯一の原則という理念を採用しているからです。
 二重国籍を容認しますと、例えば同じ個人について外交保護権が衝突をして国際的な摩擦を生ずるおそれがあると、あるいは各国で別々の名前で登録することができますので、それぞれの国で別人と例えば結婚をして重婚を生じるなどの身分的な関係の混乱を来すおそれがあると、こういうようなことが国籍唯一の原則を国籍法が取っている根拠でございます。

○犬塚直史君 ありがとうございました。今後の課題としてよろしくお願いします。
 これで時間が来ましたんで、質問終わりにしますが、外務大臣、これ、これですね、EUで今度EU憲法が発行され、リファレンダム、これがそうなんですが、現物なんですけれども、全フランス国民に配られているんです、百九十ページ、非常に細かい文字でもうびっちり書いてあるんです。これだけの今まで目に見えない今の社会保障制度の話のような議論を積み重ねてきた結果がここにあるわけですね。やはり、今二重国籍の話もそうですが、こうした地道な努力を続けていって、東アジアの共同体に将来持っていくような外務大臣のリーダーシップをお願いしまして、私の質問を終わりたいと思います。

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最終更新:2009年01月12日 12:56
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