(no title)

「突入、10分前になりました」
「白夜のやつは、うまくやってくれるんだろうか……」
「信じるんだ、白夜を信じろ」

 独裁国家「番長グループ」は、いまやキメラタンスの傀儡国家であった。
 世界の命運を背負い、学園中から集められた超一流の一般生徒。
 そのうちの一人、鮎坂百夜は、いま番長グループ最奥へと生徒会の皆を導くべく、決死の単独行を行っているはずだった。

「しかし、会長! いくら白夜でも……!」
「いや、信じるんだ。オレは、白夜を信じている。あいつはオレたちとは違う。何かオレたちとは全く別の世界を見ている男だ。オレは信じている。オレは、白夜を信じている……!」
「か、会長――!」
「あの会長が、白夜をそこまで買ってるなんて――!」
「会長! オレも白夜を信じるぜ! ウオオ、白夜カッコイイ!!!!」
「白夜、サイコーォッッ!!!!」
「白夜!!!! 白夜!!!! びゃ・く・や!!!!」
「白夜ァァァァァ!!!!!!」

 みなが白夜を称えた。
 白夜を称える皆の声が生徒会室にこだました。
 そして、白夜は学園全生徒からの無情の愛と信頼と尊敬と、それから大量の生活寄付金を受け取って、毎年バレンタインデーにはチョコレートを200個くらいもらうのであった。

 おしまい。


 ***

「ぐへ、ぐへへへ、オ、オレ、カッコイイ~~~~~!!!!!」

 購買でジャムパンを食べながら、一生懸命、自分の英雄譚を想像していた鮎坂百夜。おばちゃんたちも迷惑そうな顔で彼を見ている。と、そこに現われる一人の女子生徒。

「ちょっと、アンタ! まだそんなところにいたの!?」
「うぇっ……、は、範馬! ちょ、ちょっと、待ってくれ……! まだ、オレは、心の準備が……」
「ふざけんじゃないわよ! いつまで購買に閉じこもってンのよ、この引きこもりが! さっさと行きなさいよ、このボケナス! たたっきるわよ!」
「ヒ、ヒイイィ!!!」

 鮎坂百夜は範馬にケツを叩かれ、ビビリながら出て行った。範馬は思う。

 ――会長といい、白夜といい、立川といい、なんでウチはこんなのばかりなんだろう。もしかして、あたし一人が頑張ってるんじゃないだろうか……

 文化祭準備期間の委員長の気持ちが良く分かった範馬であった。


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