幼馴染ふたり

「頼みがある」
「断る」
帰り支度をしていた日向空は、考えるそぶりも見せず即答した。
服部がこういう頼み方をするときは絶対に良くない事が起る。
長年服部の幼馴染を務めてきた空にはその確信があった。
しかも隣りにはロボ娘、オオツキナミダまでいる。
何も無い方がおかしいというものだ。
さっさと帰ろう。空はスカートをひるがえし、教室を出て行った。



「何故だ…」
私は断ったはずなのに…。
連れて来られた校舎裏の雑木林で、空はつぶやいた。

空は幼い頃から服部の「忍術」という名の実験に付き合わされて来た。
水遁の術では穴も開けてない竹筒を渡されて溺れかけたし、分身の術では反復横飛びを6時間もやらされた。
多分、今日もそうだろう。
「今回の術はオオツキ君が持ってきた漫画からヒントを得たのだ」
やっぱりそうだった。
「これですよ!じゃーん!」
うれしそうに、ナミダは手にした本見せた。
タイトルは"炎のニンジャマン"。
とてつもなく嫌な予感がする。
「じゃじゃーん!!」
両手で本を開き、目的のページを見せつける。
"忍法・カラダ手裏剣"
腰を捻って四肢を曲げ、卍(まんじ)の形となった体を手裏剣とする大技だった。
「お前ら馬鹿だろ」
空の常識的な意見は届かない。
「拙者が試したところ、この術は一人では困難だと分かった。そこで二人がかりでやってみることにしたのだ。」
「私が投げる役で、ハットリさんはそれを外から見て調整する役です」
じゃあ自分は…
「日向は手裏剣になってくれ」
「ムリだから!絶対ムリだから!!」
全力でかぶりを振り、必死に抵抗する空。
それを意にも介さずあっさりと持ち上げるナミダ。
「まずはあの大木めがけていってみよう。」
「やめろーっ!!」
「じゃあ行きますよー」
「行くなああああああ!!!」
服部とナミダ、二人の声が重なり、叫ぶ。
「忍法!カラダ手裏剣!!」




病院。
ベッドに横たわる空を挟んで、服部とナミダが座る。

服部「う~む・・・何がいけなかったのだろうか。」
空「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
ナミダ「・・・・・回転が足りなかったんじゃないですかね?」
服部「それだ!」
空「死ね!!!!」




こうして"忍法カラダ手裏剣"は失敗に終った。
だが、これをヒントに服部は奥義"怨念手裏剣"を作り出したのだった。


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