SF百科図鑑
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SF百科図鑑
ja
2024-03-04T07:21:11+09:00
1709504471
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モナリザ・オーヴァドライヴ
https://w.atwiki.jp/brunner/pages/891.html
<table border="0" cellpadding="0" cellspacing="0" width="100%">
<tbody>
<tr>
<td width="100%"><span class="postdetails"><font size="1">ウィリアム・ギブスン「モナリザ・オーヴァドライヴ」ハヤカワ文</font></span></td>
<td nowrap="nowrap" valign="top"><a href="http://atbb.jp/silvering/posting.php?mode=quote&p=154"><font size="1"><img alt="引用返信" border="0" src="http://atbb.jp/_/templates2/subSilver/images/lang_japanese/icon_quote.gif" title="引用返信" /></font></a><a href="http://atbb.jp/silvering/posting.php?mode=editpost&p=154"><img alt="記事を編集/削除" border="0" src="http://atbb.jp/_/templates2/subSilver/images/lang_japanese/icon_edit.gif" title="記事を編集/削除" /></a><a href="http://atbb.jp/silvering/posting.php?mode=delete&p=154&sid=e52a27fda6635968381abe939075990d"><img alt="この記事を削除する" border="0" src="http://atbb.jp/_/templates2/subSilver/images/icon_delete.gif" title="この記事を削除する" /></a><a href="http://atbb.jp/silvering/modcp.php?mode=ip&p=154&t=79&sid=e52a27fda6635968381abe939075990d"><img alt="投稿者のIPアドレスを表示" border="0" src="http://atbb.jp/_/templates2/subSilver/images/lang_japanese/icon_ip.gif" title="投稿者のIPアドレスを表示" /></a></td>
</tr>
<tr>
<td colspan="2">
<hr /></td>
</tr>
<tr>
<td colspan="2"><span class="postbody"><font size="1">傑作。サイバーパンクの始祖であり不朽の作品である。<br />
テーマ性 ★★★★★<br />
奇想性 ★★★★★<br />
物語性 ★★★★★<br />
一般性 ★★★★★<br />
平均 5(満点)<br />
文体 ★★★★★<br />
意外な結末 ★★★★★<br />
感情移入 ★★★★★<br />
主観評価 ★★★★★(50/50)</font></span></td>
</tr>
</tbody>
</table>
2024-03-04T07:21:11+09:00
1709504471
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デイヴィッド・ブリン『知性化戦争(上下)』ハヤカワ文庫SF
https://w.atwiki.jp/brunner/pages/464.html
<p>1999年</p>
<p>10/15<br />
ブリン「知性化戦争」読み始めるものの、造語が何の説明もなくいきなり出てくるので読みにくい。巻頭に登場種族や言語のリストがあるのだが、いちいち参照するのもめんどくさく、また、ややこしい。しかも、「サンダイバー」「スタータイドライジング」を読まずいきなり3部作完結編(それぞれ話としては独立しているらしいけど)から読み始めているので、ますます分かりにくい。訳者によれば「一読、巻をおくあたわざる」なんていってるけど我ぼめしすぎなんじゃねえの。おれ、しょっちゅう投げ出してるよ。特にサルや異星人の視点から語られる章で、その種族について何の説明もせずいきなり心理描写(しかも、浅い)をされるのには参った。やはり、訳文は分かりやすいのが一番だと思った(最近の訳者は、横着して、横文字を横文字のままカタカナ表記する輩が多いから困る)。あと、擬音語が多いのもいやだな。--ゾオォォン&&って、何だよそれ。擬音語をやたら使う作家にろくな作家はいない。<br />
てなわけで、ブリン長編の第一印象は甚だ悪いのであった。下巻にかけて面白くなるのか? つまらなかったら、怒るぞほんと。<br />
前のホールドマンが、オールタイムベスト級だっただけにねぇ&&比べるのは可哀想な気もするけど。</p>
<p>10/16<br />
「知性化戦争」、読めない! そこに書かれていることに全く興味が持てない。何のために戦争をしているのかさっぱり分からないし、そういう戦争の不条理を描写しようという意図も見えない。つまり単なる娯楽のための戦争描写と思われるところ、致命的なことには、ちっとも面白くなく娯楽になっていない。このブリンという作家とはどうも相性が悪いようである。だいたいこの、やたら出てくる「ウサカルシン」というやつは何者だ? 人間じゃないやつを主人公にするなら、その分、読者は入りにくいのだから、そいつの生活背景や心理の動き(人間のそれとの違い)を克明に描写しないと駄目だよ。そこが浅いから、一覧表まで作ってティンプリー語の造語まで作ってもくだらない戯言にしか見えない。ほんとにこれがヒューゴー賞? っていいたくなる。前のがよかったための御祝儀票が入っているんじゃないのか?<br />
いずれにしてもやっぱり、前の2作を読まずにいきなりこの本は、きついようなので、横着をせず順番に読むことにしよう、あまりにも辛すぎる。多分前のを読んでないためにこの本の描写が不十分で浅く見え、くだらない三流スペースオペラにしか見えないのだ。そう思うことにしよう。(しかし、大体、「知性化」っていうアイデア自体、陳腐だよなぁ&&読んでて、周りの目が気になる(笑)&&こんなくだらないアイデアを表に出してきて、「知性化」シリーズなんて言っていること自体、阿呆さをさらけだしているようなもんじゃないか? それに、「知性化」された種族は、した種族の奴隷みたいなものになるっていう部分がまた、古臭い発想なんだよなぁ&&これって、ほとんど30、40年代の作品の発想なんじゃない、頭古すぎない? それにブリンのは短編もいまいちだったしなぁ&&「益病」だってさあ&&アイデア重視派のくせにアイデアがくだらないんだもん&&)<br />
あかん、ブリンが嫌いになりそう&&人間が主人公のやつから先に読むかな、「ポストマン」とか&&しかしこれもなんか話が陳腐そうだしなぁ&&ううむ。</p>
<p>
しょうがないので、短編集「別異」から読もうと思っているんですが。ただ、小説としてはおそらくくだらないものが大半だと思うので、英語の語彙を増やすのに使おうと。<br />
翻訳ソフトや辞書ソフト買ったけど、未知語のリスト/データベース化といういちばんやりたい作業がまだできないんだよなあ。それさえできれば別に機械翻訳しなくてもいいんだけど。小説の場合は手入力のほうがいいに決まっているし。<br />
何かいい方法はないだろうか。方法として考えられるのは、<br />
(1)本そのものにマーカーで線を引き、いちいち辞書で引いてデータベースに入れて行く(最もアナログなやり方。本が汚れる)<br />
(2)スキャナで読み込みOCRでテキスト化、機械翻訳の上、未知語だけコピーアンドペーストで単語データベースにコピーする。(結構アナログ)<br />
(3)クリックするだけでリスト化できるソフト(あるいはそのような機能のついた辞書ソフト)を入手する。<br />
私の希望は(3)なんですけど、ないのかなぁ。(略)かといって自分でプログラム書くのもおれの知識では時間かかるだろうし。店に行って市販のソフトを探すのも面倒だし。やはり、インターネットでフリーウェアを漁るしきゃないか。<br />
ちょっと覗いてくるので、中断。</p>
<p>* * *</p>
<p>10/17<br />
競馬全敗。<br />
京都新聞杯、トウカイテイオー産駒より総流しもアドマイヤ/ナリタの一番人気決着。府中牝馬も、マルカコマチから流すもエリモエクセル順当がち。<br />
結局、春G1シーズン終わってから、秋G1開幕まで、一勝もできなかった(笑)。非道すぎる。</p>
<p>ブリン「アザーネス」より「益病」単語整理。この本は完璧に英単語増強のためだけに使うつもり。<br />
ブリン「知性化」やはりつらく、中野でヴィンジ「雪の女王」チェリイ「ダウンビロウステーション」ゲーム「ペルソナ2」買ったついでに「スタータイドライジング」買う。しかし、やはり「サンダイバー」から読むのが順序なので、まだ読まずにおこう。<br />
「ダウンビロウ」「雪」のほうが面白そうなので多分先に読んでしまうと思う。<br />
あと、通販のイーガン「ディストレス」シルヴァーバーグ「レジェンド」届く。</p>
<p><br />
10/20<br />
今週は仕事が圧していてヘヴィーだった(頭が容量オーバー寸前で白痴化)ためか、読む本をいろいろ変えても集中できなかった。ブリンは「知性化」が読めず「スタータイド」に手を出したものの、やはり前作が気になって読めない。結局「サンダイバー」まで遡ってしまうのだろう(笑)。</p>
<p><br />
</p>
<p>(略)</p>
<p><br />
</p>
<p>2000年</p>
<p>12/25<br />
「知性化戦争」面白いじゃないの!<br />
やはり、「スタータイドライジング」で予備知識が身についた成果があったか。しかも、「スタータイド」の前半の一本調子と比べると、こちらは最初から変な鳥型エイリアンは出てくるわ、ネオチンプやティンブリーミーの行動は面白いわ、彼等から見た人間の描写は面白いわ、ストーリーもメインの戦争ネタに、舞台となる植民星の原住種族の謎解きも加わり、アクションSFとミステリーの面白さが加わって、飽きさせない。年末に向けて楽しめそうだわいとほくそ笑んでいる。ストリーカー号の話はちらりと背景に出てくるだけだが、「スタータイド」で楽しんだ分、こういった細かい言及も嬉しい。<br />
「スタータイド」も先に「サンダイバー」を読んでいれば、イルカとの掛け合いがもっと楽しめたのではなかったかという気もする。ストリーカー号のその後についての「知性化の嵐」新三部作も原書を注文しちゃったぜえ。</p>
<p>あう、(略)のカレー食いたい。</p>
<p>(略)</p>
<p>12/27<br />
「知性化戦争」面白いっす。</p>
<p>マーティン「ナイトフライヤー」★★★★<br />
まあまあだね。いろんなアイデアをぶち込んであるけど(テレキネシスで宇宙を航行する生命体、船のコンピュータに入り込んでテレキネシスを使う意識等)どれも甘い。また、ホラー色が極めて濃い。それなりに面白いが、いささか紋切り型の感じがする。やはり、マーティンは早熟作家なのか、初期の名作(これは認める)「ライアへの賛歌」を超える作品にいまだお目にかかったことがない。思弁性も乏しく、本作を読んでももともとホラー作家の資質だったのではという印象がある。SFマガジンに載った作品も、読者賞の投票では上位に入っていたけど、はっきりいっていまいちだったし。<br />
なお、短編集版は雑誌掲載版に加筆されているので読み比べるのも一興。</p>
<p>ホーガン「かくて光あり」★★★<br />
神々の天地創造を科学者の実験のごとく描いた小品。何のひねりもなく、はっきりいってあまり面白くない。アイデアの奇抜さとストーリイの平板さのギャップが何ともホーガンらしい。</p>
<p>12/28<br />
クリス・モリス「隠密天使」★★★★<br />
「地獄の反逆者」冒頭の編者夫作品。単なるテーマアンソロジーというより、作品の設定まで似通っている(=いわゆる「シェアードワールドもの」)のは「ワイルドカード」あたりに近いノリ。天国から、地獄に「希望」をもたらすために隠密行動を行う天使の話。地獄のサタンがまるでお役人のようなキャラなのが笑える。地獄社会にもいろいろな統治機構がありそれなりに秩序があるというわけだ。で、「悪が善」で法廷が「injustice
hall」。天使アルは「希望」をもたらそうとしたかどで逮捕され投獄される(笑)。隣の房にはヒットラーがいるわ、ラムセス二世が助けにくるわ。正直言って神話や歴史の予備知識があればもっと楽しめると思うのだが、特にラムセス二世のネタのところはいまいち分からなかった。再読ないし訳するときにはインターネット検索で調べた方がいいだろう。<br />
さて、この設定でいろんな作家が競演するこの本、目当てはシルヴァーバーグなのだが、実質共作のノリであり、他の作品も一通り目を通さないことにはシルヴァーバーグの作品も十二分に楽しめない。次はビル・カービーなる、またもや知らない作家。知っているのはシルヴァーバーグとチェリイだけ。さて、どうだろうか。</p>
<p>12/30<br />
「地獄」、結局シルヴァーバーグを先に読むことにする(リレー小説ではなく、各独立した作品のため)。ジャネットモリスのこの地獄シリーズは大半がチェリイとの共作で、彼女のビブリオグラフィの大部分を占めるらしい。アンソロジーとしてはこれが二冊目。同時発売の長篇もあるらしい。ただ、「エンサイクロペディア」によると今いちストーリー展開が型にはまっているらしい。<br />
で、その長篇シリーズの方は特に読む気もしないので、この本に入っている短編だけで十分と思う。<br />
シルヴァーバーグは、彼自身の「王ギルガメシュ」という歴史小説(!)の直接の続編である、と書いてあった。ただ続編とはいってもこちらは完全に死後の話であるので、毛色が異なる。<br />
で、内容も、何とロバート・E・ハワードとラヴクラフトがローヴァーに乗って登場(笑)、しかも、ハワードの代表作「コナン・ザ・グレート」のコナンまで登場(爆)。メタ・フィクション的な色彩を帯びてきた(というかパロディというか)。すぁて、当然ラヴクラフトの作中キャラとかも登場するんだろうな、面白くなってきたなり。</p>
<p>バッグジャックバロン、知性化新3部作、心の子ら届く、アマゾンジャパンは早いっす。</p>
<p>さあて、年賀状書きと背広のシミ取りをしないと。</p>
<p><br />
</p>
<p>2001年</p>
<p>1/3<br />
ぎゃはははははははは。<br />
この正月のヒットは宮本武蔵とチンパンジーだったぜ。<br />
(略)で、テレ東のめちゃくちゃなドラマを結局全部見てしまい、あまりに面白いので帰ってからインターネットで検索してみたら、いやあ面白いのなんの(笑)。中学生だかの女の子が作ったホームページまで出てくる始末で大爆笑。佐々木小次郎がほとんど吉川英治ら作家の創作だということもわかったし。しかし、面白いわ。吉川英治のと五輪の書ぐらいは読まんといかんな。<br />
宮本武蔵SF版! 絶対書いてみたいぞ。<br />
あと「知性化戦争」もストーリーより描かれているネオチンプの生態の方が面白くなってきて、「チンパンジー」で検索してみたら、あるわあるわ、くだらないホームページがいっぱい(笑)。いやあ、動物の方もはまってしまいそうだわい。<br />
しかし、「知性化戦争」読んでたら「動物の知性化」だけでは物足りなくなって、「人間の動物化」をしたらどうかと思っている。チンプとイルカとゴリラだけでは物足りない。いっそのこと世界中のいろんな動物の遺伝子をヒト遺伝子に組み込んでヒトの習性を動物化するというのはどうかね。で、動物ごとに集団に分かれてそれぞれ別の社会を形成するというネタは。短編でやると筒井っぽくなってしまいそうだが(「私説博物誌」というのがあったなあ)、それをあえて長篇でやってみようかと思っている。もっともらしく技術のディテールまで構築し、各動物ごとに統治機構、法律、経済、文化、家族、学校、性風俗まで綿密に構築する。「猫人」「犬人」「猿人」「狼人」「ゴキブリ人」「鼠人」「蜂人」「鶏人」「馬人」等など。「猫」「鳥」「馬」を擬人化して描いたものは過去あるが、「猫」「犬」等の精神的特性を人に植え込むことにより人の精神能力の特定の要素を強めるという技術は、それなりにもっともらしく構築できそうであり、ハードSFの体裁をとって描く作品は多分、結構珍しい。まあ、「知性化戦争」の裏バージョンではあるが、人と同じように思考しながら行動や心理に動物の名残りを残す類族を面白おかしく描く「知性化戦争」もいいけど、動物のように行動する見た目はふつうの人間というのはもっと面白そうで、読みたいし書きたくてしょうがない。自分の知っている人間とかを登場させればもっと面白いかも。例によって、名前とキャラクターはくじ引きで決める。「山田五郎」�疣猪人、とか(笑)。で、当然その行動とか、性交の特徴とかは動物学の本で綿密に調べて構築する。<br />
で、このネタ、ギャグ小説として書くのは易しい(筒井っぽく書く)と思うが、シリアスな社会学/ハードSFとしてあくまでも描くところに稀少価値がある。さっそく準備を始めよう。題名は・・・最後に決めようっと。<br />
さて、(略)。</p>
<p>1/4<br />
「知性化戦争」読み進む。しかし、長いのでだんだんだれてくる。ストーリーそのものは普通の活劇なので、ティンブリーミーとネオチンプの描写が浅くなるとやや食傷する。なんとか明日中には読み終わりたいが・・・。<br />
「ギルガメシュ」読む暇がない。<br />
今年は競馬、G1以外はなるべく買わないことにする。去年のあまりのつまらなさに、面白くなるまではやらない。いちおうレースはリサーチするが、ダイジェストで。いちいちつきあってらんないので、昼間は他のことをする。好きな馬が全然現役でいないので、全く良心が痛まない。今年も売り上げ激減だぜざまーみろ。悔しかったら海外遠征しろ! 以上。</p>
<p>1/6<br />
「知性化戦争」★★★★1/2<br />
終盤はほとんど時代劇のノリ。ファイベンと鉄の爪の果たし合いシーンなんか、ほとんどこないだの「宮本武蔵」を連想した(笑)。前作よりはプロットが複雑になり、テーマも深化して<知性化>の思想的側面が語られたりはするが、基本的には戦争/政治SF。ここまで長いと、好みの問題もあろうがさすがにだれる。また、異種族間の恋愛/コミュニケーションの面白さ(アサクレーナ/ロバート、ウサカルシン/コールト)も読みどころではあるが、それ自体は特に真新しいものではない。やはり、作者の特徴の一つであるオヤジギャグ寸前の悪趣味なユーモアが、ティンブリーミーという恰好の媒体を得たことで全面開花したことがこの作品の最大のセールスポイントだろうと個人的には思う。ゴリラとゲリラのだじゃれをひっぱるところといい、ウサカルシンのおおげさな悪戯の数々といい。特に、ウサカルシンの魅力的なキャラクターは、これ一作で終らせるには惜しい。新三部作はストリーカー号の話だそうだが、ウサカルシンの続編もぜひ書いてほしいところだ。</p>
<p>ということで、次は、なるべく未読作家を優先させることにし、ビジョルド「無限の境界」に入る。中編集。<br />
</p>
2011-06-22T23:33:05+09:00
1308753185
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英国SF協会賞
https://w.atwiki.jp/brunner/pages/742.html
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan; mso-outline-level: 2"
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<font size=
"1">英国SF作家協会賞受賞作リスト</font></span><span lang=
"EN-US" style=
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<p class="MsoNormal" style=
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align="left"><span lang="EN-US" style=
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<br></span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt"><font size="1">英国SF作家協会が英国内で出版されたSF作品から毎年選出する年間ベスト作品に授与される賞。当初は長篇賞のみだったが、次第に短編賞など、部門が増えて今に至る。</font></span><span lang="EN-US"
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"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
* 1970<br>
*</span> <span style=
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【</span><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
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"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Stand
on Zanzibar</span> <span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">
ジョン・ブラナー</span></font><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(JohnBrunner)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
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"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
* 1971<br>
*</span> <span style=
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【</span><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
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"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">The
Jagged Orbit</span> <span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">
ジョン・ブラナー</span></font><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(JohnBrunner)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
* 1972<br>
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
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"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
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"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*TheMomentofEclipse</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">ブライアン・W・オールディス</span></font><span lang="EN-US"
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"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(BrianW.Aldiss)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
* 1973<br>
*</span> <span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">
【</span><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">*
No Award<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
* 1974<br>
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">『宇宙のランデヴー』</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">RendezvouswithRama</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">アーサー・C・クラーク</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(ArthurC.Clarke)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
* 1975<br>
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">『逆転世界』</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">InvertedWorld</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">クリストファー・プリースト</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(ChristopherPriest)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
* 1976<br>
*</span> <span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">
【</span><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*
Orbitsville</span> <span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">
ボブ・ショウ</span></font><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(BobShaw)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
* 1977<br>
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">『ブロントメク』</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Brontomek!</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">マイクル・G・コーニイ</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(MichaelG.Coney)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
* 1978<br>
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">『ヨナ・キット』</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">TheJonahKit</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">イアン・ワトスン</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(IanWatson)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
* 1979<br>
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">『暗闇のスキャナー』</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">AScannerDarkly</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">フィリップ・K・ディック</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(PhilipK.Dick)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
* 1980<br>
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">『夢幻会社』</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">TheUnlimitedDreamCompany</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">J・G・バラード</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(J.G.Ballard)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">ShortFiction</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">「青ざめた逍遥」</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">PalelyLoitering</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">クリストファー・プリースト</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(ChristopherPriest)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
* 1981<br>
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">『タイムスケープ』</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Timescape</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">グレゴリイ・ベンフォード</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(GregoryBenford)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">ShortFiction</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">『いさましいちびのトースター』</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">TheBraveLittleToaster</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">トーマス・M・ディッシュ</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(ThomasM.Disch)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
* 1982<br>
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">『拷問者の影』</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">TheShadowoftheTorturer</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">ジーン・ウルフ</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(GeneWolfe)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">ShortFiction</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">『ミサゴの森</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">-</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">短編版』</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">MythagoWood</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">ロバート・ホールドストック</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(RobertHoldstock)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<font size="1">* 1983<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*HelliconiaSpring</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">ブライアン・W・オールディス</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(BrianW.Aldiss)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">ShortFiction</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">「カイトマスター」</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Kitemaster</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">キイス・ロバーツ</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(KeithRoberts)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<font size="1">* 1984<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*Tik-Tok</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">ジョン・スラデック</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(JohnSladek)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">ShortFiction</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*AfterImages</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">エドワーズ・マルコム</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(EdwardsMalcolm)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<font size="1">* 1985<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">『ミサゴの森』</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">MythagoWood</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">ロバート・ホールドストック</span></font><font size="1"><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">(RobertHoldstock)<br>
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">ShortFiction</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">「征たれざる国」</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">TheUnconqueredCountry</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">ジェフ・ライマン</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(GeoffRyman)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<font size="1">* 1986<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*HelliconiaWinter</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">ブライアン・W・オールディス</span></font><font size="1"><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">(BrianW.Aldiss)<br>
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
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"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">ShortFiction</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*CubeRoot</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">デイヴィッド・ラングフォード</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(DavidLangford)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<font size="1">* 1987<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
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"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
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"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*TheRaggedAstronauts</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">ボブ・ショウ</span></font><span lang="EN-US"
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"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(BobShaw)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
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"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">ShortFiction</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
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"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*KaetiandtheHangman</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">キース・ロバーツ</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(KeithRoberts)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<font size="1">* 1988<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
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"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
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"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*Grainne</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">キイス・ロバーツ</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(KeithRoberts)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
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"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">ShortFiction</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*LoveSickness</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">ジェフ・ライマン</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(GeoffRyman)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<br></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
<font size="1">* 1989<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">Novel</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*Lavondyss</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">ロバート・ホールドストック</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(RobertHoldstock)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
align="left"><font size="1"><span lang="EN-US" style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">
*</span><span style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">【</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">ShortFiction</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt">】</span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック"">*DarkNightinToyland</span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt"> </span><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><a href="http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/6.html"><span style="COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; TEXT-DECORATION: none; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; text-underline: none">翻訳</span></a></span><span style="FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: "MS Pゴシック"; mso-ascii-font-family: Arial; mso-hansi-font-family: Arial; mso-bidi-font-family: Arial; mso-font-kerning: 0pt"> ボブ・ショウ</span></font><span lang="EN-US"
style=
"FONT-SIZE: 10pt; COLOR: black; FONT-FAMILY: Arial; mso-font-kerning: 0pt; mso-fareast-font-family: "MS Pゴシック""><font size="1">(BobShaw)<br></font></span></p>
<p class="MsoNormal" style=
"MARGIN: 0mm 0mm 0pt; TEXT-ALIGN: left; mso-margin-top-alt: auto; mso-margin-bottom-alt: auto; mso-pagination: widow-orphan"
a
2006-05-08T14:18:31+09:00
1147065511
-
リスト
https://w.atwiki.jp/brunner/pages/732.html
<p>1 文学賞</p>
<p>ヒューゴー賞</p>
<p><a href=
"http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/906.html">ネビュラ賞</a></p>
<p><a href=
"http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/742.html">英国SF協会賞</a></p>
<p>国際幻想文学賞</p>
<p>世界幻想文学大賞</p>
<p>星雲賞</p>
<p>ローカス賞</p>
<p>英国幻想文学賞</p>
<p><a href=
"http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/759.html">ディトマー賞</a></p>
<p>オーロラ賞</p>
<p>アポロ賞</p>
<p>日本SF大賞</p>
<br>
<p>2 作品リスト</p>
<p><a href=
"http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/733.html">プリングルの100冊</a></p>
<p><a href=
"http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/864.html">SF短編名作リスト(インターネット投票)</a></p>
<p><a href=
"http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/865.html">SF長編1500(インターネット)</a></p>
<p><a href=
"http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/866.html">SF長編2500(インターネット)</a></p>
<p><a href=
"http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/867.html">SF長編3500(インターネット)</a></p>
<p><a href=
"http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/868.html">SF長編4500(インターネット)</a></p>
<p><a href=
"http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/869.html">インターネットブックリストSF</a></p>
<p><a href=
"http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/870.html">インターネットブックリストホラー</a></p>
<p><a href=
"http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/871.html">インターネットブックリストファンタジー</a></p>
<br>
<p>3 書誌引用作品リスト</p>
<p>十億年の宴・一兆年の宴</p>
<p>SF百科図鑑</p>
2006-05-08T13:42:26+09:00
1147063346
-
ネビュラ賞リスト
https://w.atwiki.jp/brunner/pages/906.html
<p>1965<br>
【長 編】『デューン砂の惑星』Duneフランク・ハーバート<br>
【ノヴェラ】 He
WhoShapes(長編化『ドリーム・マスター』)ロジャー・ゼラズニイ<br>
【ノヴェラ】「唾の樹」 The
SalivaTreeブライアン・W・オールディス<br>
【中 編】「その顔はあまたの扉、その口はあまたの灯」The
Doors ofHis Face, the Lamps of His Mouthロジャー・ゼラズニイ<br>
【短 編】「「悔い改めよ、ハーレクイン!」とチクタクマンはいった」'Repent,Harlequin!'
Said the Ticktockman ハーラン・エリスン</p>
<p>1966<br>
【長 編】『バベル-17』Babel-17
サミュエル・R・ディレイニー<br>
【長 編】『アルジャーノンに花束を』 Flowers
forAlgernonダニエル・キイス <br>
【ノヴェラ】「最後の城」 The LastCastleジャック・ヴァンス
<br>
【中 編】 <a href="http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/11.html">Call
Him Lord</a> ゴードン・R・ディクスン <br>
【短 編】「秘密の遊び場」The
SecretPlaceリチャード・マッケナ </p>
<p>1967<br>
【長 編】『アインシュタイン交点』EinsteinIntersectionサミュエル・R・ディレイニー<br>
【ノヴェラ】『この人を見よ』Behold
theManマイクル・ムアコック <br>
【中 編】「骨のダイスを転がそう」 Gonna Roll
theBonesフリッツ・ライバー <br>
【短 編】「然り、そしてゴモラ」Aye,
andGomorrahサミュエル・R・ディレイニー<br>
<br>
1968<br>
【長 編】『成長の儀式』Rite
ofPassageアレクセイ・パンシン <br>
【ノヴェラ】『竜の戦士』(第四部)Dragonriderアン・マキャフリイ <br>
【中 編】「世界の母」Mother in
theWorldリチャード・ウィルスン <br>
【短 編】「計画する人」(長編化『クルーイストン実験』)
ThePlannersケイト・ウィルヘイム </p>
<p>1969<br>
【長 編】『闇の左手』 The Left Hand
ofDarknessアーシュラ・K・ル・グィン<br>
【ノヴェラ】「少年と犬」 A Boy and
HisDogハーラン・エリスン <br>
【中 編】「時は準宝石の螺旋のように」 Time Consideredasa
Helix of Semi-PreciousStonesサミュエル・R・ディレイニー<br>
【短 編】「憑きもの」Passengersロバート・シルヴァーバーグ</p>
<p> 1970<br>
【長 編】『リングワールド』Ringworldラリイ・ニーヴン
<br>
【ノヴェラ】「凶運の都ランクマー」I'll Met in
Lankhmarフリッツ・ライバー <br>
【中 編】「時間のかかる彫刻」SlowSculptureシオドア・スタージョン
<br>
【短 編】 なし</p>
<p>1971<br>
【長 編】『禁じられた惑星』 A Time
ofChangesロバート・シルヴァーバーグ<br>
【ノヴェラ】「失踪した男」The
MissingManキャサリン・マクリーン <br>
【中 編】「空気と闇の女王」 The Queen of Air
andDarknessポール・アンダースン <br>
【短 編】「ヴァチカンからの吉報」 Good News fromtheVatican
ロバート・シルヴァーバーグ<br>
<br>
1972<br>
【長 編】『神々自身』 The
GodsThemselvesアイザック・アシモフ <br>
【ノヴェラ】「メデューサとの出会い」 A Meeting
WithMedusaアーサー・C・クラーク <br>
【中 編】「トラジェディ」
GoatSongポール・アンダースン <br>
【短 編】「変革のとき」 When
ItChangedジョアンナ・ラス <br>
1973<br>
【長 編】『宇宙のランデヴー』 Rendezvous
WithRamaアーサー・C・クラーク <br>
【ノヴェラ】「アイランド博士の死」 The Death of
DoctorIslandジーン・ウルフ <br>
【中 編】「霧と草と砂と」(長編化『夢の蛇』) Of
Mist, and Grass, andSandヴォンダ・N・マッキンタイア<br>
【短 編】「愛はさだめ、さだめは死」 Love Is the
Plan,thePlan is Death
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア <br>
<br>
1974<br>
【長 編】『所有せざる人々』
TheDispossessedアーシュラ・K・ル・グィン<br>
【ノヴェラ】「我ら死者とともに産まれる」Born With
theDeadロバート・シルヴァーバーグ <br>
【中 編】『もし星が神ならば』(第二部)If the
StarsAreGods
グレゴリイ・ベンフォード&ゴードン・エクランド <br>
【短 編】「革命前夜」The Day Before
theRevolutionアーシュラ・K・ル・グィン<br>
<br>
1975<br>
【長 編】『終りなき戦い』 The
ForeverWarジョー・ホールドマン <br>
【ノヴェラ】「ハングマンの帰還」(『わが名はレジオン』収録)
Home is theHangmanロジャー・ゼラズニイ <br>
【中 編】「サンディエゴ・ライトフット・スー」SanDiego
Lightfoot Sue トム・リーミイ <br>
【短 編】「あの飛行船をつかまえろ」Catch
ThatZeppelinフリッツ・ライバー <br>
<br>
1976<br>
【長 編】『マン・プラス』
ManPlusフレデリック・ポール <br>
【ノヴェラ】「ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?
」 Houston,Houston, Do You
Read?ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア<br>
【中 編】「バイセンテニアル・マン」 The
BicentennialManアイザック・アシモフ <br>
【短 編】「影の群れ」 A Crowd ofShadowsC・L・グラント
<br>
<br>
1977<br>
【長 編】『ゲイトウェイ』Gatewayフレデリック・ポール
<br>
【ノヴェラ】『スターダンス』(第一部)
Stardanceスパイダー& ジーン・ロビンスン<br>
【中 編】「ラセンウジバエ解決法」 The
ScrewflySolutionラクーナ・シェルドン(ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア)
<br>
【短 編】「ジェフティは五つ」 Jeffty
IsFiveハーラン・エリスン <br>
<br>
1978<br>
【長 編】『夢の蛇』Dreamsnakeヴォンダ・N・マッキンタイア
<br>
【ノヴェラ】「残像」 The Persistence
ofVisionジョン・ヴァーリイ <br>
【中 編】<a href="http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/840.html">A Glow
of Candles, A Unicorn'sEye</a>チャールズ・L・グラント <br>
【短 編】「石」 Stoneエドワード・ブライアント <br>
<br>
1979<br>
【長 編】『楽園の泉』The Fountains
ofParadiseアーサー・C・クラーク <br>
【ノヴェラ】「わが友なる敵」
EnemyMineバリー・B・ロングイヤー <br>
【中 編】「サンドキングス」Sandkingsジョージ・R・R・マーティン<br>
【短 編】「ジャイ-アント」giANTSエドワード・ブライアント
<br>
<br>
1980<br>
【長 編】『タイムスケープ』Timescapeグレゴリイ・ベンフォード
<br>
【ノヴェラ】<a href=
"http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/904.html">UnicornTapestry</a>
(長編Vampire
Tapestryに収録)スージー・マッキー・チャーナス<br>
【中 編】「みっともないニワトリ」 The
UglyChickensハワード・ウォルドロップ <br>
【短 編】「踊る鹿の洞窟」Grotto of the
DancingDeerクリフォード・D・シマック </p>
<p>1981<br>
【長 編】『調停者の鉤爪』The Claw of
theConciliatorジーン・ウルフ <br>
【ノヴェラ】<a href="http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/901.html">The
Saturn Game</a> ポール・アンダースン <br>
【中 編】「胎動」TheQuickeningマイクル・ビショップ<br>
【短 編】<a href="http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/834.html">The
Bone Flute</a> リサ・タトル<br>
<br>
1982<br>
【長 編】No EnemyButTime マイクル・ビショップ <br>
【ノヴェラ】「他の孤児」Another Orphanジョン・ケッセル
<br>
【中 編】「見張り」Fire Watchコニー・ウィリス <br>
【短 編】「クリアリー家への手紙」A Letter From
theClearysコニー・ウィリス <br>
<br>
1983<br>
【長 編】『スタータイド・ライジング』StartideRisingディヴィッド・ブリン
<br>
【ノヴェラ】「鏖戦」Hardfoughtグレッグ・ベア <br>
【中 編】BloodMusic(長編化『ブラッド・ミュージック』)グレッグ・ベア
<br>
【短 編】「調停者」ThePeacemakerガードナー・R・ドゾア <br>
<br>
1984<br>
【長 編】『ニューロマンサー』Neuromancerウイリアム・ギブスン
<br>
【ノヴェラ】「Press Enter■」 PressEnter[]ジョン・ヴァーリイ
<br>
【中 編】「血を分けた子供」Bloodchildオクティヴィア・E・バトラー <br>
【短 編】「モーニング・チャイルド」MorningChildガードナー・ドゾア <br>
<br>
1985<br>
【長 編】『エンダーのゲーム』
Ender'sGameオースン・スコット・カード <br>
【ノヴェラ】Sailing
toByzantiumロバート・シルヴァーバーグ<br>
【中 編】<a href=
"http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/828.html">Portraits of
HisChildren</a>ジョージ・R・R・マーティン<br>
【短 編】「彼方には輝く星々」 Out of All Them
BrightStarsナンシー・クレス<br>
<br>
1986<br>
【長 編】『死者の代弁者』Speaker for
theDeadオースン・スコット・カード <br>
【ノヴェラ】「R&R」(『戦時生活』第一部)R&Rルーシャス・シェパード <br>
【中 編】The Girl Who Fell Into theSkyケイト・ウィルヘイム
<br>
【短 編】「タンジェント」Tangentsグレッグ・ベア <br>
<br>
1987<br>
【長 編】『落ちゆく女』The
FallingWomanパット・マーフィー <br>
【ノヴェラ】The
BlindGeometerキム・スタンリー・ロビンスン<br>
【中 編】「恋するレイチェル」 Rachel
inLoveパット・マーフィー <br>
【短 編】「アンナへの手紙」 Forever
Yours,Annaケイト・ウィルヘイム <br>
<br>
1988<br>
【長 編】『自由軌道』FallingFreeロイス・マクマスター・ビジョルド<br>
【ノヴェラ】「最後のウィネベーゴ」The Last of the
Winnebagosコニー・ウィリス <br>
【中 編】「シュレーディンガーの子猫」Schrodinger'sKitten
ジョージ・アレック・エフィンジャー <br>
【短 編】「おとなの聖書の物語第17話ノアの箱舟」Bible
Stories for Adults, No. 17: TheDelugeジェイムズ・モロウ <br>
<br>
1989<br>
【長 編】『治療者の戦争』 The
Healer'sWarエリザベス・アン・スカボロー<br>
【ノヴェラ】「喪の山」 The Mountains
ofMourningロイス・マクマスター・ビジョルド<br>
【中 編】「リアルト・ホテルで」 At
theRialtoコニー・ウィリス <br>
【短 編】「デュラック海のさざなみ」Ripples in theDiracSea
ジェフリー・A・ランディス<br>
<br>
1990<br>
【長 編】『帰還 ゲド戦記最後の書』 Tehanu: The LastBookof
Earthsea アーシュラ・K・ル・グィン<br>
【ノヴェラ】『ヘミングウェイごっこ』 The
HemingwayHoaxジョー・ホールドマン <br>
【中 編】「バビロンの塔」Tower of Babylon
テッド・チャン <br>
【短 編】「熊が火を発見する」Bears
DiscoverFireテリー・ビッスン<br>
<br>
1991<br>
【長 編】『大潮の道』Stations of
theTideマイクル・ビショップ<br>
【ノヴェラ】Beggars in Spain ナンシー・クレス<br>
【中 編】「盲導犬」 Guide Dog マイク・コナー <br>
【短 編】 <a href=
"http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/846.html">MaQui</a>アラン・ブレナート<br>
<br>
1992<br>
【長 編】『ドゥームズデイ・ブック』DoomsdayBookコニー・ウィリス
<br>
【ノヴェラ】City of Truth ジェイムズ・モロウ<br>
【中 編】「ダニーの火星旅行」 Danny Goes
toMarsパメラ・サージェント<br>
【短 編】「女王様でも」Even
theQueenコニー・ウィリス <br>
<br>
1993<br>
【長 編】『レッド・マーズ』RedMarsキム・スタンリー・ロビンスン<br>
【ノヴェラ】「ぼくらがロード・ドッグを葬った夜」TheNight
We Buried Road Dog ジャック・ケイディ<br>
【中 編】「わが心のジョージア」Georgia on
MyMindチャールズ・シェフィールド <br>
【短 編】「死者登録」 Gravesジョー・ホールドマン
<br>
<br>
1994<br>
【長 編】『火星転移』 Moving Marsグレッグ・ベア <br>
【ノヴェラ】「オルドヴァイ峡谷七景」Seven Views
ofOlduvaiGorge マイク・レズニック <br>
【中 編】The Martian
Child デイヴィッド・ジェロルド <br>
【短 編】A Defense of the Social
Contracts マーサ・スーカップ<br>
<br>
1995<br>
【長 編】『ターミナル・エクスプリメント』TheTerminalExperiment
ロバート・J・ソウヤー<br>
【ノヴェラ】Last Summer at MarsHillエリザベス・ハンド <br>
【中 編】「孤独」Solitudeアーシュラ・K・ル・グィン<br>
【短 編】 Death and
theLibrarianエスター・M・フリーズナー<br>
<br>
1996<br>
【長 編】『スロー・リバー』
SlowRiverニコラ・グリフィス <br>
【ノヴェラ】Da Vinci Rising ジャック・ダン <br>
【中 編】Lifeboat on a Burning Sea
ブルース・オランド・ジョーンズ <br>
【短 編】「誕生日」ABirthdayエスター・M・フリーズナー<br>
<br>
1997<br>
【長 編】『太陽の王と月の妖獣』 The Moon and
theSunヴォンダ・N・マッキンタイア <br>
【ノヴェラ】Abandon in Place ジェリー・オルション <br>
【中 編】「密告者」 The Flowers of
AulitPrisonナンシー・クレス <br>
【短 編】Sister Emily's Lightship ジョイン・ヨーレン
<br>
<br>
1998<br>
【長 編】『終わりなき平和』ForeverPeaceジョー・ホールドマン
<br>
【ノヴェラ】Reading the Bones シェイラ・フィンチ <br>
【中 編】Lost Girls ジェイン・ヨーレン<br>
【短 編】Thirteen Ways to Water
ブルース・オランド・ジョーンズ <br>
<br>
1999<br>
【長 編】Parable of
theTalentsオクティヴィア・E・バトラー<br>
【ノヴェラ】「あなたの人生の物語」Story of
YourLifeテッド・チャン <br>
【中 編】Mars is No Place for Children
メアリ・A・ターツィロー <br>
【短 編】The Cost of Doing Business レスリー・ホワット
</p>
<p>2000<br>
【長 編】『ダーウィンの使者』
Darwin'sRadioグレッグ・ベア <br>
【ノヴェラ】Goddesses リンダ・ナガタ<br>
【中 編】Daddy'sWorld ウォルター・ジョン・ウイリアムス <br>
【短 編】「マックたち」macs テリー・ビッスン</p>
<p>2001<br>
【長 編】TheQuantum Rose キャサリン・アサロ<br>
【ノヴェラ】The Ultimate Earth ジャック・ウィリアムスン<br>
【中 編】「ルイーズのゴースト」Louise's
Ghost ケリー・リンク<br>
【短 編】The Cure for Everything スヴェルナ・パーク</p>
<p>2002<br>
【長 編】American Gods ニール・ゲイマン <br>
【ノヴェラ】Bronte's Egg リチャード・クウェディク<br>
【中 編】「地獄とは神の不在なり」 Hell Is the
AbsenceofGod テッド・チャン <br>
【短 編】Creature キャロル・エムシュウィラー</p>
<p>2003<br>
【長 編】『くらやみの速さはどれくらい』The Speed of
Dark エリザベス・ムーン<br>
【ノヴェラ】『コラライン』 Coraline ニール・ゲイマン<br>
【中 編】「アイスクリームの帝国」The Empire of Ice
Cream ジェフリー・フォード<br>
【短 編】What I Didn't
See カレン・ジョイ・ファウラー </p>
<p>2004<br>
【長 編】Paladin of
Souls ロイス・マクマスター・ビジョルド<br>
【ノヴェラ】The Green Leopard
Plague ウォルター・ジョン・ウィリアムス<br>
【中 編】Basement Magic エレン・クレイグス<br>
【短 編】「遺す言葉」Coming to
Terms アイリーン・ガン</p>
<p>2005<br>
【長 編】Camouflage ジョー・ホールドマン<br>
【ノヴェラ】<a href="http://www7.atwiki.jp/brunner/pages/898.html">Magic
for Beginners</a> ケリー・リンク<br>
【中 編】「妖精のハンドバッグ」The Faery
Handbag ケリー・リンク<br>
【短 編】I Live With
You キャロル・エムシュウィラー<br></p>
2006-05-08T13:39:10+09:00
1147063150
-
ネビュラ賞受賞未訳作をまとめて読むページ 1966-1980
https://w.atwiki.jp/brunner/pages/831.html
<p>一九六六年度 中篇部門受賞作<br>
<br>
王と呼ばれた少年 CallHimLord ゴードン・R・ディクスン</p>
<p>かれは私の名を呼び、命令した<br>
──それゆえに、私はかれを知った<br>
だがそののち、かれは私を失望させた、そして<br>
──それゆえに、私はかれを屠った!」<br>
「楯持つ者の歌」</p>
<p>
ケンタッキー・ヒルズに太陽が昇らないことはあり得ないが、同じように、カイル・アーナムが目覚めないこともありえなかった。日が昇っている時間は、あと11時間と40分。カイルは起きあがり、服を着、外に出て、芦毛の騙馬と白毛の牡馬に鞍を装着した。牡馬にまたがり、雪のように白い弓なりの首筋から、怒りのうなりが上がるのを待った。そして2頭の馬をキッチンの戸口まで従え、外につないだ。それから、朝食を取るため中に入った。<br>
1週間前に届いた手紙が、ベーコンエッグの皿の脇に置いてあった。妻のティーナがパン切り台の前に背を向けて立っていた。カイルは座って手紙を読み返しながら、食事を始めた。<br>
「──皇子は家督称号のひとつである<北部シリイ伯爵>の名を名乗って、忍びの旅をする予定である。<殿下>と呼ぶことのなきよう。<王>と呼ばれたい──」<br>
「なぜ、あなたでなければならないのです?」ティーナがきいた。<br>
カイルが顔を上げて見ると、妻は背中を向けたままだった。<br>
「ティーナ──」カイルは悲しそうに言った。<br>
「なぜです?」<br>
「私の先祖は、皇帝の護衛だったのだ──エイリアンを撃破したあの戦争の時代にな。おまえには、話したことがある」カイルは言った。「私の父祖は、前触れもなく皇帝が命を狙われた際、何度もその命を救った──ラク人の宇宙船がどこからともなく突然出現し、わが軍勢を狙い撃ちにしたことがある。旗艦までもが標的になったのだ。皇帝陛下自ら、命を賭して白兵戦にくわわった」<br>
「エイリアンは今や絶滅し、皇帝陛下は、100もの新しい領土を手に入れたではありませんか。皇子は、それらの世界を周遊すればよいのです! なぜ、地球にこなければなりませんの──しかもよりによって、あなたのところへ」<br>
「地球はひとつしかないからだ」<br>
「そして、あなたもひとりしかいないとおっしゃるの?」<br>
カイルはわざとため息をついて、説明をあきらめた。カイルは母亡き後、父親と叔父の手で育てられたが、ティーナと口論になったときには、いつも無力感を覚えるのだ。テーブルから立ち上がると、妻のそばへ行き、その体に両手をかけて、こちらへ向き直らせようとした。しかし、ティーナは拒んだ。<br>
カイルは心の中でもう一度ため息をつき、振り返って、武器キャビネットの前へ行った。弾の入ったスラグ・ピストル一丁を手に取ると、サイズの合った短めのホルスターに差し込み、ベルトのバックルの左側に留めた。その位置だと、垂れ下がったレザー・ジャケットの下に隠れるようになっている。次に刃渡り20センチのつかの黒いナイフを選び、前屈みになって、ブーツの上部内側に付いている鞘に滑り入れた。ズボンの裾の折り返しを元に戻し、ブーツの上部にかぶせ、立ち上がった。<br>
「皇子には、ここに来る権利などありません」ティーナがパン切り台に向かって、きつい口調で言っている。「旅行客は、博物館地区か、旅行客用のホテル内にいなければならないのに」<br>
「皇子はただの旅行客ではないんだ。それぐらいわかっているだろう」カイルは辛抱強く答えた。「皇帝の長男だし、祖母は地球の出身だ。皇子の妻も、恐らく地球の女性だろう。四世代ごとに、皇族は地球の血筋の者と結婚しなければならないことになっている。それが法律なのだ──いまだに」レザー・ジャケットを身につけ、スラグ・ガンのホルスターを隠すために一番下のボタンだけを留めると、ドアのほうを向きかけ──そして止まった。<br>
「ティーナ?」カイルはきく。<br>
妻は答えない。<br>
「ティーナ!」繰り返す。そして、妻の前に行き、両手を肩にかけて振り返らせようとした。またも妻は抵抗したが、今度ばかりはカイルもそれを許さなかった。<br>
カイルは大男ではなく、平均的な背丈で、丸顔、肩幅は広いとしても、ややなで肩気味で、特徴のない肩をしていた。だが力は非凡だった。片手で白馬のたてがみをつかみ、地面にひれ伏させることができた──そんなことのできた者は、いまだかつて他にいない。カイルはたやすく妻を自分の方に向かせた。<br>
「なあ、聞いてくれ──」カイルは説得を始めた。だが、全部話し終わる前に、妻のかたくなさは立ち消え、ふるえながらカイルにしがみついてきた。<br>
「皇子は、あなたをトラブルに巻き込みますわ──私には分かっています!」カイルの胸に顔を埋め、声をこもらせながら妻は言った。「カイル、行かないで! あなたが行かなければならない法はありません!」<br>
カイルは妻の柔らかな髪を撫でてやった。喉はこわばってからからだった。もう妻に言う言葉はなかった。妻の望みに従うのは不可能だ。太陽が男と女の頭上に等しく昇るようになってからというもの、こういう事態に際して妻たちは、夫にしがみつき、不可能な願いを口にしてきた。いつの時代も、夫はいまカイルがそうしているように──まるで理解が押しつけた体から体へなんらかの形で伝わるのだと言わんばかりに──妻を抱きしめ、そして何も言わない。言うべき言葉が何もないから。<br>
カイルは、もうしばらく妻を抱いていたが、やがて自分の背中に手を伸ばし、絡み合わせた妻の指を解き、その腕を背中からふりほどいた。そして、出発した。牡馬にまたがり、灰色の馬を引きながら、キッチンの窓越しに中を振り返ると、妻が先ほど置き去りにしたまさに同じ場所に立っているのが見えた。泣き声すら立てず、両腕をだらりと垂らし、頭を垂れて立ち、身動きしなかった。</p>
<p><br>
カイルは、ケンタッキー・ヒルズの脇にある森を通り抜けた。ホテルに着くまでに2時間以上を要した。谷沿いをホテルへ向かっていると、背の高いひげの男が見えた。男は、<より若き世界>の一部の住民が身に着けているローブをはおり、古さびた木造のホテルの中庭に通じる玄関口に立っていた。<br>
近づくにつれて、男は唇をかんでおり、そのひげが灰色を帯びているのが見えた。薄く直線的な鼻の上にある目は血走り、心配や睡眠不足でそうなったかのように、目の下には隈がはっている。<br>
「皇子は、中庭におる」カイルが進み寄ると、灰色ひげの男が言った。「わしは、家庭教師のモントラーヴェンじゃ。皇子はもう、出発の準備ができておりますぞ」暗い表情の目が、ほとんど懇願するようにカイルを見上げる。<br>
「馬の頭が通れるように、脇によけていただけますかな」カイルは言う。「それから、私を中庭の皇子のもとへ案内してください」<br>
「その馬は、皇子が乗るのではないのか──」後ろに下がり、不信に満ちた表情で牡馬を見ながら、モントラーヴェンは言った。<br>
「違います」カイルは言った。「皇子には、うしろの騙馬に乗ってもらいます」<br>
「しかし、皇子はその白い馬に乗りたがるじゃろう」<br>
「皇子は、この白い馬には乗れません」カイルは言った。「つまり、私が許したとしても、皇子にこの馬を乗りこなす力はありません。この馬を乗りこなせるのは、私ただひとりですからね。さあ、中に案内にしてください」<br>
教師は振り返り、草の茂った中庭へ先導して歩み入った。中庭はプールを囲み、三方のホテルの窓から見下ろせるようになっていた。プール脇のラウンジング・チェアに、10代後半の背の高い若い男が座っている。たてがみのような金髪。脇の草の上に、ぱんぱんのサドルバッグがふたつ。カイルと家庭教師が近づいていくと、若者は立ち上がった。<br>
「殿下」二人が立ち止まると、家庭教師が言った。「こちらは、カイル・アーナム、これから3日間、ここで殿下の護衛を務めまする」<br>
「おはよう、護衛──いや、カイル」皇子はいたずらっぽく微笑んだ。「では、降りたまえ。僕が乗ろう」<br>
「あなたは騙馬にお乗りください、王」カイルは言った。<br>
皇子はカイルの顔をまじまじと見、ハンサムな顔を後ろに傾けて笑った。<br>
「僕は馬ぐらい乗れるよ、きみ!」皇子は言った。「乗馬は得意なんだ」<br>
「王、この馬ではありません」カイルは冷静な口調で言った。「この馬を乗りこなせるのは、私だけですから」<br>
皇子の目は丸く見開かれ、笑いは途切れたが──ふたたび笑い出した。<br>
「僕にどうしようがある?」広い肩をすくめる。「いつもいつも──僕は譲ってばかりなんだから。そう、ほとんどいつもだ」皇子はカイルを見上げた。唇は薄いが、正直だった。「よかろう」<br>
皇子は騙馬の方を向き──突然跳び上がって、鞍の上にいた。騙馬はその衝撃に鼻を鳴らし、後ろ肢を跳ね上げた。若者の長い指が巧みに手綱を引き、もう片方の手で灰色の首筋を叩くと、騙馬は落ち着いた。皇子は眉を上げてカイルのほうを見やったが、カイルは黙然と座ったままだった。<br>
「きみが、あの良兵カイルだね?」皇子はいたずらっぽく言った。「原住民が暴れ始めたら、僕を守ってくれるんだね?」<br>
「あなたの命は私の手の中ですよ、王」カイルは言った。そしてレザー・ジャケットの一番下のボタンをはずし、すそを垂らして開いた。一瞬、ホスルターの中のスラグ・ピストルが見えた。それからカイルはふたたび、一番下のボタンを留めた。<br>
「あの──」家庭教師は若者の膝に手をかけた。「坊ちゃま、無茶はなさらぬように。ここは地球ですぞ。ここの住民は、われわれのような階級も慣習も持ちませぬ。行動する前によくお考えになって──」<br>
「ああ、もうやめてくれ、マンティ!」皇子が制した。「僕は忍びで来ているんだぞ。他の人々と同じように、謙虚で古風な、自立した人間としてな。僕がものを覚えられないとでも思っているのか! どうせ父の皇帝が合流するまでの3日かそこらのことだ。さあ、もう僕を放してくれ!」<br>
皇子は急に顔をそむけ、鞍の上で前屈みになり、とつぜん騙馬を全力疾走させ、門のほうへ向かった。門をくぐってその姿が見えなくなると、カイルは牡馬の手綱を強く引いた。白馬は、皇子の後を追おうとして軽く跳ねた。<br>
「皇子のサドルバッグをください」カイルは言った。<br>
教師はかがんでバッグを取り、カイルに渡した。カイルはそれを、馬の両肩の隆起の間にある自分の荷物の上に固定した。見下ろすと、ひげの男の両目に涙が浮かぶのが見えた。<br>
「皇子は、素晴らしい少年じゃ。きっとおわかりになる。おわかりになるとも!」そりかえったモントラーヴェンの顔が、無言で訴えかけていた。<br>
「皇子が素晴らしい血筋であることは、私も心得ています」カイルはゆっくりと言った。「全力を尽くしましょう」そして、門をくぐり、騙馬の後を追った。</p>
<p><br>
カイルが門を出ると、皇子の姿は見あたらなかった。だが、凹んだ茶色の地面や踏み荒らされた草から、騙馬の通った跡をたどるのはたやすかった。こうして跡をたどって幾本かの松の木を通り過ぎると、とうとう草の茂った広い傾斜地に出た。皇子は鞍上に座ったまま、箱型の単眼鏡ごしに空を見上げていた。<br>
カイルが近づくと、皇子は単眼鏡をおろし、それを無言で手渡した。カイルはそれを目に当てて、空を見た。追跡装置がぶーんと音を立て、レンズ越しの視界に、地球を周回する3機の軌道発電ステーションのうちの1機が飛び込んできた。<br>
「返してくれ」皇子が言った。<br>
カイルが単眼鏡を返すと、皇子は続けて言った。「さっきは、見えなかった。見てみたかったんだ。わが帝国財務省からのかなり高価な贈り物だよ──これと、もうふたつの似たようなやつがね。この惑星がふたたび氷河期に戻ることがないようにするためのものだ。我々はその見返りに、何を得られるのかな?」<br>
「地球ですよ、王」カイルが答えた。「人類が宇宙に出て行く前と同じ姿の、地球です」<br>
「ああ、博物館地区なら、ステーションひとつと50万人の職員で維持できる」皇子が言った。「僕が言っているのは、もう2機と、それにたかって生きている、10億人かそこらの君たち住人のことだ。僕が即位するときには、その点を検討しなければならん。行こうか?」<br>
「お望みのままに、王」カイルは牡馬の手綱を引いた。乗り手を乗せた2頭の馬は、傾斜地を横切って走り去った。<br>
「──それから、もうひとつある」更に遠くにある松の木立に入ったとき、皇子は言った。「きみに誤解して欲しくはないからな──向こうでは、僕はモンティ爺さんを本当にとても好きだったんだ。ただ、ここに来ることなどまったく僕の本意でなかったというだけのことだ──僕を見ろ、護衛!」<br>
カイルは振り返り、皇族代々の青い目が自分をにらみつけるのを見た。それから思いがけなく、視線は和らいだ。皇子は笑いだした。<br>
「きみは簡単にはおびえないようだな、護衛──カイルだったっけ?」皇子は言った。「何だか結局、きみが気に入ってしまったようだよ。だが、僕と話すときは、僕の顔を見てくれ」<br>
「かしこまりました、王」<br>
「それでこそ、わが良兵カイルだ。ところで、この周遊旅行でここに来るなど、心外だったという説明をしていたところだったな。きみたちのような住人が、暗黒時代の生活と同じような生活を送っている、こんな古くて汚れた博物館世界に来たところで、何のメリットも見いだせない。だがな──僕の父の皇帝が、僕を説得して、ここに来させたのだ」<br>
「お父上が、王?」カイルは応じた。<br>
「そうだ。皇帝は賄賂を使ったと、きみならいうかも知れない」皇子は考え深げに言った。「皇帝はこの3日の間に、ここで僕と会うことになっていたんだ。そこへ今度は、少し遅れるという連絡が来た──だが、それはどうでもいい。要するに皇帝は、この地球が何か重要で価値の高い存在だと考える、老人の一派に属しているということさ。いまでは僕は、父を愛し、尊敬もしている。カイル、そのことは認めるね?」<br>
「はい、王」<br>
「そうだろうと思ったよ。そう、父は人類の中で僕が尊敬する唯一の人物だ。そして父を喜ばせるために、僕はこの地球旅行に来ているんだ。父を喜ばせるために──ただそれだけのためにだよ、カイル──僕はきみが自然の景勝地や温泉地、その他もろもろの場所を案内しやすいような、気さくな皇子の役を演じるつもりだ。さあ、これでわかったかね──僕のこと、そしてこの旅行をどう進めればいいかが」皇子はカイルをじっと見た。<br>
「よし、いいだろう」皇子はもう一度微笑した。「それじゃあ、この木々や鳥や動物たちについて、ありとあらゆることを教えてくれるかね? 僕は名前をすべて暗記して、父が来たときに喜ばせられるようにしたい。木の下に見かけるあの小鳥は何だね──てっぺんは茶色で、その下は白っぽいあれは? 例えば、あれみたいな──ほら、あれ!」<br>
「あれはツグミの一種で、ヴィアリといいます、王」カイルは言った。「深い森の中の静かな場所に住む鳥です。ほら、耳を澄ませて──」カイルは騙馬の手綱に手を伸ばし、2頭の馬を止めた。とつぜんの静寂の中、ずっと右側で銀色の鳥の声が抑揚を繰り返しながら次第に小さくなり、ついには沈黙するのが聞こえた。鳥の歌がやんでしばらくの間、皇子は座ったままカイルを見ていたが、やがてはっと気を取り直した様子だった。<br>
「面白い」皇子が言った。そしてカイルが手放した手綱を持ち上げると、馬たちはふたたび進み始めた。「もっと教えてくれ」</p>
<p><br>
太陽が天頂に向けて次第に昇る3時間以上の間、ふたりは馬で森に包まれた丘の間を乗り回し、カイルは、鳥や動物や虫や岩の名前を教えてやった。そしてその3時間の間、皇子は耳を傾けていた──その興味は突発的で瞬間的だったが、強いものだった。しかし、太陽が天頂に達する頃には、その興味も弱まっていた。<br>
「もういいよ」皇子は言った。「そろそろどこか、昼食に寄らないかね? カイル、この近辺に町はないのか?」<br>
「ございます、王」カイルは言った。「既にいくつか通り過ぎております」<br>
「いくつか?」皇子はまじまじとカイルを見た。「なら、ひとつも行き当たらなかったのはどうしてだね? きみは僕をどこへ連れて行くつもりなのだ?」<br>
「どこでもありません、王」カイルは言った。「王が先導しておられます。私はただ従っているだけです」<br>
「僕が?」皇子は言った。初めて皇子は、自分が騙馬の頭を常に牡馬よりも前に置こうとしてきたことに気づいたようだった。「もちろんだな。だが、もう食事の時間だよ」<br>
「はい、王」カイルは言った。「では、こちらへ」<br>
カイルは、牡馬の頭をいま横切っている丘の斜面の下方へ向け、皇子も騙馬で後を追った。<br>
「さて、それじゃあ聞いてくれ」追いつくと、皇子が言った。「間違いがないかどうか教えてほしい」そうして皇子は、カイルが言ったことのすべてを、ほぼ一字一句間違えずに暗唱し始めたので、カイルは驚いた。「これで全部かね? きみが言ったことのすべてかね?」<br>
「完璧です、王」カイルは言った。皇子はいたずらっぽい目でカイルを見た。<br>
「きみもできるね、カイル?」<br>
「はい」カイルは言った。「ですが、これが私の人生で知っているすべてです」<br>
「わかったかい?」皇子は微笑んだ。「これがきみと僕の違いだ、良兵カイルよ。きみは何かを学ぶことに人生を費やす──いっぽう僕は、たった数時間で、きみが知っているのと同じだけのことを知るんだ」<br>
「同じだけのことではありませんよ、王」カイルはゆっくり言った。<br>
皇子は目をしばたたいてカイルを見、拒否するように、半ば怒っているように、まるで何かを払いのけるかのように、手を動かした。<br>
「何かささいなことを見逃しているかも知れないが、大したことではないだろう」皇子は言った。<br>
ふたりは馬で斜面をくだり、曲がりくねった谷間をたどり、小さな村のはずれに出た。周りを取り囲む木々を抜けると、音楽の音色が耳に届いた。<br>
「なんだい、あれは?」皇子は鐙の上に立ち上がった。「なんと、向こうで踊りを踊っているぞ」<br>
「ビアガーデンですよ、王。それに、今日は土曜日──ここでは休日です」<br>
「よし。では、そこへ行って昼食を取ろう」<br>
ふたりは回り込んでビアガーデンまで行き、ダンスフロアからは奥まったところにある席を見つけた。若くて可愛いウェイトレスがやってきて、注文を取った。皇子が晴れやかにほほえみかけると、ウェイトレスはほほえみを返した──そして、軽く混乱したように、急いで去っていった。料理がくると皇子は飢えたように食べ始め、ビールを大ジョッキで1杯半も飲んだ。カイルのほうはもっと軽い量を食べ、コーヒーを飲んだ。<br>
「予想以上においしかった」椅子に背をもたせかけて、皇子は言った。「腹が減っていたからな──おや、あれを見ろ、カイル! ほら、あそこに5つ、6つ──7つのドリフターの発着場があるぞ。きみたちの全員が、馬に乗るわけではないんだな」<br>
「ええ」カイルは言った。「めいめいが好みの乗り物を選びます」<br>
「だが、ドリフターの発着場があるのなら、他にも文明化されたものがあるはずだろう?」<br>
「合うものもあれば、合わないものもありますから、王」カイルは答えた。皇子は笑った。<br>
「きみたちのこの古くさい生活様式に、文明を合わせようとしているということかい?」皇子は言った。「それは順番が逆じゃないのかね──」そして言いやめた。「あれは何をやっているんだね? 気に入ったよ。ああいうダンスなら、僕でも踊れるな」皇子は立ち上がった。「本当に踊ってこようと思うんだが」<br>
皇子は言葉を止めて、カイルを見下ろした。<br>
「やめろと忠告するつもりかい?」皇子はきいた。<br>
「いいえ、王」カイルは言った。「王が何をなさるかは、ご自身の問題ですから」</p>
<p><br>
若者はとつぜん振り返った。先ほど注文を取りに来たウェイトレスが脇をとおり、わずか数席向こうにいた。皇子は後を追い、ダンスフロアの柵の近くで追いついた。娘がいやがっているのが、カイルには見えた──だが、皇子は娘の上に立ちふさがり、微笑みながら、高い身長の上から見下ろしていた。すぐに娘はエプロンを取り、皇子とともにダンスフロアに出て、ダンスのステップを教え始めた。ポルカだった。<br>
皇子は素晴らしい速さで覚えた。すぐに皇子は他の客たちとともにウェイトレスの体を振り回して踊り、白い歯を輝かせながら音楽に合わせて足を踏みならしていた。やがて曲が終わり、バンドのメンバーは楽器を置いてステージを後にし始めた。<br>
皇子は娘の制止をふりほどき、バンドのリーダーのところへ行った。カイルはあわてて席を立ち、フロアへ向かった。<br>
バンド・リーダーは首を振った。とつぜんそっぽを向き、ゆっくり歩み去った。皇子は追いかけたが、娘が腕をつかみ、大変なことになるというようなことを言った。<br>
皇子は娘を払いのけ、娘は少しよろけた。ダンスフロアの反対側の客席の中にいた、皇子と年もそう変わらず背丈も同じぐらいの下げ膳係の男が、トレイを置き、レールを跳び越えて、つるつるの硬材の上に立った。そして皇子を追いかけ、腕をつかんで振り回した。<br>
「──ここでは、いけません」カイルが近づいていくと、下げ膳係がそういうのが聞こえた。皇子は黒豹のように──訓練されたボクサーのように──素早く、下げ膳係の顔面に、立て続けに3発の左パンチを繰り出した。皇子の肩が揺れ、一発一発に全身の体重をかけていた。<br>
下げ膳係は転倒した。たどり着いたカイルは、皇子を連れて柵の透き間を抜け、ダンスホールを出た。若者の顔は怒りに青ざめていた。人の波がダンスフロアに押し寄せる。<br>
「あいつは誰だ? 何という名だ?」食いしばった歯の間から、皇子が尋ねた。「やつは、僕に手をかけた! 見たか? 僕に手をかけたんだぞ、あやつは!」<br>
「もう殴り倒したじゃありませんか」カイルは言った。「これ以上何をしたいんです?」<br>
「あやつは、僕に暴力をふるったんだ──この僕にだ!」皇子はかみついた。「あいつが誰なのかを知りたい!」それ以上押しのけられまいとして、馬のつないである棒をつかんだ。「やつは、未来の皇帝に手をかけたんだと思い知ることになるぞ!」<br>
「誰も、あの男の名前を言いませんよ」カイルは言った。そして、その声の冷たい響きが、ようやく皇子の耳に届き、正気に返らせたようだった。皇子は、カイルを見つめた。<br>
「きみもか?」ついに皇子は言った。<br>
「私もです、王」カイルは言った。<br>
皇子は一瞬見つめた後、顔をそむけた。振り返り、騙馬の手綱を素早くほどくと、鞍に跳び乗った。そして、走り去った。カイルも馬に乗り、後を追った。<br>
ふたりは黙って森に入った。しばらくして、皇子は振り向きもせず話し出した。<br>
「それで、きみは自分が護衛だと言っている」最後に皇子は言った。<br>
「あなたの命は、私の手の中にあるのですよ、王」カイルは言った。皇子は恐ろしい顔でカイルを見た。<br>
「僕の命だけか?」皇子は言った。「やつらが僕を殺しさえしなければ、好き放題できると言うことか? きみが言いたいのはそういうことなのか?」<br>
カイルはしっかり視線を合わせた。<br>
「まったくその通りですとも、王」<br>
皇子は耳障りな口調で話し出した。<br>
「けっきょく僕は、きみのことが好きになれないようだ、カイル」皇子は言った。「きみが好きになれないよ」<br>
「あなたに好かれるためにここにいるわけではありませんよ、王」カイルは言った。<br>
「だろうな」皇子ははっきりした声で言った。「だが、僕はきみの名前を知っている!」<br>
ふたりは半時間ほどものあいだ、黙ったまま進み続けた。だが次第に、怒りにこわばっていた若者の肩がゆるみ、突っ張っていた顎の緊張も解けてきた。やがて、カイルの知らない言葉の歌を、ひとりごとのように歌い始めた。歌っているうちに、次第に機嫌が直ってきた。すぐに、まるでふたりの間に楽しいこと以外はなかったかのように、カイルに話しかけるようになった。<br>
<大洞窟>が近くにあったので、皇子はぜひ訪ねてみたいと言った。ふたりはそこへ行き、洞窟めぐりに少し時間を費やした。そのあと、馬で<緑の河>の左岸に沿って進んだ。皇子はビアガーデンでの出来事など忘れたかのように、行き会うすべての人に愛想を振りまいた。太陽がついに西に沈み、夕食の時間を告げるころ、ようやくふたりは河から離れた小さな村にたどり着いた。道路沿いのホテルが、脇の人工湖に自らの姿を映している。その背後は樫の木と松の木で守られていた。<br>
「いいホテルだな」皇子はいった。「カイル、ここに泊まろう」<br>
「かしこまりました、王」カイルは言った。</p>
<p><br>
ふたりは馬を止め、カイルは2頭を厩に連れて行った。それからホテルにはいると、皇子はもうダイニング・ルーム脇のバーカウンターに座り、ビールを飲みながら、ウェイトレスを誘惑していた。この娘は、ビアガーデンにいたウェイトレスよりも若かった。柔らかい髪を下ろした小柄な娘は、背が高くハンサムな若者にちょっかいを出され、茶色の目を丸くして、喜びをあらわにしていた。<br>
「いいね」ウェイトレスがカイルのコーヒーを取りに行った後、皇族の青い目の片隅でカイルを見ながら、皇子は言った。「ここはまさに、理想の場所だよ」<br>
「理想の場所?」カイルが言った。<br>
「ここの人たちをよく知るには、絶好の場所だ──なんだと思ったね、良兵カイル?」皇子が言って、笑いかけた。「僕がここで人を観察し、きみが説明をする──名案だと思わないか?」<br>
カイルは考え込むように皇子を見た。<br>
「説明できることなら、何でも説明しますよ、王」カイルは言った。<br>
ふたりは飲んだ──皇子はビール、カイルはコーヒー──そしてまもなく、夕食を食べにダイニング・ルームへ入った。バーで告げたとおり、皇子は見るものすべてについて、質問攻めにした──そして見えないものについてまでも。<br>
「──しかし、きみたちはみな、どうして過去に生き続けようとするのかね?」皇子はカイルにきいた。「博物館世界というものは、あっておかしくないと思う。だが、博物館人間などというものは──」皇子は言葉を止め、隣のバーの仕事を何とか切り上げてダイニング・ルームの給仕にやってきた、小柄な柔らかい髪のウェイトレスに向かって微笑むと、話しかけた。<br>
「博物館人間ではありません、王」カイルは言った。「生きた人間なのです。種族や文化を保存する唯一の方法は、生かし続けることです。だからこそ私たちは、この地球に私たちなりのやり方で生活しているのですよ。<より若き世界>の人々が自らを比較検討するための、生きた実例としてね」<br>
「魅力的だな──」皇子はつぶやいた。だがその視線はウェイトレスを追いかけていた。いまや混雑したダイニング・ルームの反対側から、娘はにこやかに微笑み返した。<br>
「魅力的ではありませんよ。必要なのです、王」カイルは言った。だが、この若者が聞いているとは信じていなかった。<br>
夕食後、ふたりはバーに戻った。皇子はもういくつかの質問をカイルに浴びせた後、バーに立っている他の人々の観察に戻っていった。カイルはしばらく見張っていた。大丈夫だと判断し、抜け出して馬の再点検をした後、ホテルのオーナーに明日の馬上用の昼食の手配を頼んだ。<br>
バーに戻ってみると、皇子は見あたらなかった。<br>
カイルはテーブルに座って待った。だが、皇子は戻らない。カイルの胸骨の下で、冷たく硬い不安の塊が大きくなった。とつぜんの悪い予感に襲われ、慌てて馬の点検に戻った。だが、2頭とも厩の中で静かに草をはんでいた。カイルが牡馬をのぞき込むと牡馬は低く鳴いて、白い頭でカイルを見返した。<br>
「何でもないよ、坊や」カイルは言って、ホテルに戻り、オーナーを捜した。<br>
だが、オーナーにも、皇子の行方は見当も付かなかった。<br>
「──馬が残っているのなら、遠くへは行っていないはずですな」オーナーは言った。「お連れ様が巻き込まれていそうないざこざは、この近辺では起こっていません。きっと森に散歩にでも出かけられたのでは。もし戻ってきたらよく見張っておくようにと、夜勤のスタッフに伝言しておきましょう。どちらへいらっしゃいます?」<br>
「閉店までは、バーにいます──その後は、部屋に」カイルは言った。<br>
そして、待つためにバーへ戻り、開いた窓の近くのブースに席を取った。時間は過ぎてゆき、次第に他の客の数も減り始めた。整理して並べられた酒瓶の上のバーの時計は、ほとんど夜中に近かった。とつぜん、窓の向こうの厩の方角から、怒った馬の遠いいななきがカイルの耳に届いた。<br>
カイルは立ち上がり、急いで外へ出た。外の暗闇を、厩まで走り、中にとび込んだ。厩舎内の夜間照明の薄明かりの中、馬房と馬房の間の通路の中央で騙馬におぼつかない手つきで鞍をはめようとしている、青白い顔の皇子の姿が見えた。牡馬の馬房の扉は開いていた。カイルが入っていくと、皇子は目をそらした。<br>
カイルは素早く三歩で開いたドアの前まで行き、中を見た。牡馬はまだつながれていたものの、耳は逆立ち、目は泳いでおり、鞍はといえば、すぐ脇の床に転がり落ちていた。<br>
「鞍をつけるんだ」通路からはっきりした声で皇子が言った。「出発するぞ」カイルは振り返って皇子を見た。<br>
「このホテルに部屋を取っていますよ」カイルは言った。<br>
「気にしなくていいよ。どうせ馬に乗っていくんだ。僕は少し頭をすっきりさせないと」若者は騙馬の鞍帯をきつく締めると、鐙をおろし、どっかと鞍に跳び乗った。そしてカイルを待たずに、厩舎から夜の中へと出て行った。<br>
「じゃあ、坊や──」カイルはなだめるように牡馬に言った。急いで、白い巨漢馬のひもを解き、鞍をつけ、皇子の後を追って外に出た。暗闇の中では、騙馬の通った跡は見分けられない。だが、前に身を乗り出し、牡馬の耳に息を吹きかけてやった。驚いた馬が抗議するようにいななくと、前方の登り坂の暗闇の中からカイルの右方へ向かって、騙馬の鳴き声が返ってきた。カイルはその方向へ進んだ。<br>
丘の頂上で皇子をつかまえた。若者は騙馬を歩かせ、手綱を緩め、声をひそめて歌っていた──以前に歌っていたのと同じ、聞き知れぬ言葉の歌だった。だがカイルに気が付くと、だらしなく笑い、よりはっきりした声で歌い始めた。初めてカイルは、理解できないその言葉に潜む、ある種の嘲るような力強い響きを聞き取ることができた。とつじょ、カイルは理解した。<br>
「あの娘は!」カイルは言った。「あの小柄なウェイトレス。あの娘はどこです?」<br>
皇子の顔から笑いが消え、ふたたびゆっくりと笑いが戻った。その笑いは、カイルに向けられていた。<br>
「なぜだね、どこにいると思う?」皇子はろれつが回っておらず、近づきながらカイルは、若者の息がとてもビール臭いのに気づいた。「自分の部屋で、幸せに眠っているよ。皇帝の息子の栄誉を受けて──もっとも、本人はそうとはつゆ知らないがね。そして、朝まで僕が一緒にいるのを夢見ているよ。だが、僕にその気はない。どうだね、良兵カイル?」<br>
「王、なぜそのようなことを?」カイルは静かにきいた。<br>
「なぜ?」月光の中で少し酔っぱらったように、皇子はカイルを見た。「カイル、僕の父は4人の息子がいる。僕には3人の弟がいるんだ。だが、僕こそが次の皇帝になるんだ。皇帝は質問に答える必要はない」<br>
カイルは何も言わない。皇子はカイルを見る。ふたりは黙ったまま数分間、進み続けた。<br>
「よかろう、なぜだか教えてやろう」しばらくして、沈黙がほんの一瞬だったかのような口ぶりで、更に声を張り上げて皇子が言った。「それはな、きみが僕の護衛ではないからだ。カイル。すべてお見通しなんだ、僕は。きみが誰の護衛なのか、僕は知っているんだぞ。きみは、やつらの護衛なんだ!」<br>
カイルは顎を引き締めた。だが、その動きは暗闇に隠れて見えない。<br>
「いいとも──」皇子は鞍の中でバランスを失いながらも、ゆっくりと手振りした。「それでけっこう。きみのやり方でやるがいいさ。僕は気にしないよ。つまり、僕たちは点取りゲームをしているのだ。ビアガーデンで僕に手をかけた田舎男がいた。だが、誰も名前を教えないだろうと、きみは言ったな。いいともさ、きみはどうにかあの男を守ったというわけだ。きみに1ポイントだな。だが今度は、あのホテルで、きみはあの娘を守ってやれなかった。僕に1ポイントだ。どちらが勝つだろうね、良兵カイル?」<br>
カイルは深く息を吸った。<br>
「王」カイルは言った。「いつの日か、あなたは地球出身の女と結婚する義務があります──」<br>
皇子は笑ってさえぎった。今度の笑い声には醜いひびきがあった。<br>
「きみたちは、うぬぼれが激しすぎるな」皇子は言った。それから強い口調になった。「それこそが、きみたちの問題なんだ──君たち地球人の──ひどいうぬぼれがな」<br>
ふたりは黙って進んだ。カイルはもはや何も言わなかったが、牡馬の頭が騙馬の肩の辺りに位置するようにして、若者を近くで見守った。しばらく皇子はうとうとしているようだった。頭ががくんと胸に落ち、騙馬があたりをうろうろし始めた。その後しばらくして、ふたたび頭を起こし、自動操縦のように巧みに動く騎手の指で手綱を引き、頭をめぐらせて、月光の中の景色を見渡した。<br>
「酒が欲しいぞ」皇子は言った。その声はもはや力がなかったが、平板で不機嫌そうだった。「どこか、ビールのあるところへ連れて行け、カイル」<br>
カイルは深く息を吸った。<br>
「わかりました、王」カイルは言った。<br>
そして、牡馬の首を右に向け、騙馬もこれに従った。ふたりは丘を越えて湖のほとりに出た。月光の中、黒い水がしぶきを上げ、対岸は暗くて見えない。湾曲した浜辺の木々を月光が照らしている。<br>
「あそこですよ、王」カイルが言った。「居酒屋つきの釣り宿です」<br>
ふたりは岸辺を回って釣り宿に着いた。カジュアルな低い建物が、浜辺に向かって立っていた。そこからドックが出ている。釣り船がいくつももやわれ、黒い水の上でかすかに揺れている。馬をつないでドアに向かうと、窓越しに室内の灯りが輝いていた。<br>
ふたりが入った酒場は、幅が広くがらんとしていた。真正面に見える長いバーカウンターの背後の壁には、板に据え付けた魚がいくつも並んでいた。その魚の下に3人の店員──中央にいるひとりは中年で、身に着けたエプロンはどことなく威厳を感じさせる。他の2人は若く、筋肉質だ。四角いテーブルのあちこちに散らばっている客、あるいはバーカウンターに立っている客の大半は男で、粗い生地の作業服や、同じぐらいカジュアルな行楽用の服を着ていた。<br>
皇子はバーから離れたテーブル席に座り、カイルもいっしょに座った。ウェイトレスが来ると、ふたりはビールとコーヒーを注文し、運ばれてくるやいなや、あっという間に皇子は大ジョッキ入りのビールを半分も飲み干した。ジョッキが空になるとすぐにウェイトレスに合図をした。<br>
「もう一杯だ」皇子は言った。今度は、ウェイトレスがお代わりのジョッキを持ってきたときに、皇子はほほえみかけた。だが、この店のウェイトレスは30女で、喜びはしたものの、皇子にちょっかいを出されたことで舞い上がったりはしなかった。軽くほほえみ返すと、先ほど同年代の男ふたりと話していたバーカウンターへと戻っていった。男のひとりはかなり背が高く、もうひとりはそれよりも背が低く、弾丸のような頭で、肉付きがよかった。<br>
皇子は飲んだ。ジョッキを置くと、ようやくカイルに気が付いた様子で、振り向いて見た。<br>
「きみはもしや、僕が酔っぱらったと思っているのかな?」皇子は言った。<br>
「いえ、まだ」カイルは言った。<br>
「そうだ」皇子は言った。「そのとおりだ。まだ酔っていない。だがおそらく、そのうち酔っぱらうだろう。そして、もし僕が酔っぱらおうと決めたなら、誰が止めるのだ?」<br>
「誰も止めませんよ、王」<br>
「そのとおりだとも」若者は言った。「まったく正しいぞ」そして、ジョッキが空になるまで頑張って一気飲みし、ウェイトレスにお代わりの合図をした。頬骨の高い両頬が紅く染まり始めた。「こんな悲惨でちっぽけな世界に、こんな悲惨でちっぽけな連中といる以上は──やあ、涼しい瞳のお嬢さん!」ウェイトレスがビールを持ってくると、皇子は話を中断した。女は笑って、仲間たちのもとへ戻った。「──何としてでも、自分を楽しませなければならないのさ」皇子はそう締めくくった。<br>
そうして、ひとりで笑っていた。</p>
<p><br>
「父親や、モンティが──というか、みんなが──この惑星について、僕に語りきかせたことを思い出すと──」皇子は横目でカイルを見ながら、言った。「きみは知っているかね、かつて僕は本当に恐ろしかったんだということを──うーん、恐ろしかったというと語弊があるな、別に怖かったわけじゃない──不安だったといおうか──きっといつか、ここに来なければならないということがね」そして、また笑った。「心配だったんだ。自分が、きみたち地球人のレベルに見合った人間になれるのかどうか! カイル、きみは<より若き世界>のどこでもいいから行ったことがあるかね?」<br>
「ありません」とカイル。<br>
「そうだろうと思ったよ。きみたち最低人種に、一言いわせてくれ、良兵カイル、僕がここで見た誰よりも体が大きく、見た目がよく、頭もよく、あらゆる面で優れている人たちがいるんだよ。しかも、僕はな、カイル、僕は──次期皇帝の僕は──その誰よりも優れているのだ。その僕に、きみたち地球人がどんなふうに見えるか、考えてもみたまえ」皇子はカイルを見て、待った。「さて、答えてくれ、良兵カイル。真実を言うのだ。これは命令だぞ」<br>
「判断権は、あなたにはありませんよ、王」カイルは言う。<br>
「ない──? 僕にないと?」青い瞳が燃え上がった。「僕は皇帝になるんだぞ!」<br>
「それはいかなる単独の人間にも委ねられてはおりません、王」カイルは言った。「皇帝であろうとなかろうと。皇帝は、単に100の世界を統合する象徴として、必要なだけです。ですが、種にとって真に必要なことは、生き延びることですよ。この地球上に、生き延びる力のある知的生命が進化するのに、ほぼ100万年を要しています。そして、外宇宙の新しい世界では、人は変化を強いられます。もしそこで何か必要な要素が人類から失われるならば、それと入れ替えるために、この地にオリジナルの遺伝子プールを確保しておく必要があるのです」<br>
皇子の唇が野蛮な笑いにおし開かれた。<br>
「おお、いいぞ、カイル──いいぞ!」皇子は言った。「非常にいい演説だ。いかんせん、前にどこかで聞いたような話ばかりだがな。それに、僕にはとても信じられない。わかるだろう──いま僕は、お前たちがどういう人間なのかを見た。そして、きみたち地球人は、<より若き世界>のわれわれに比べて、優っているとはお世辞にも言えない。僕たちのほうこそ、きみたちに優っているのだ。きみたちの進歩が止まっている間に、われわれは日々進歩を続けてきたのだからな。そして、きみもそれを知ったというわけだ」<br>
若者は、ほとんどカイルの顔面に向けて、穏やかに笑い声を上げた。<br>
「きみたちが恐れていたのは、われわれにその事実を知られることだ。そして、僕はそれを知った」皇子はまた笑った。「僕はきみを一目見て、悟ったよ。僕のほうが背が高く、頭もよく、勇敢で優れている、この部屋の誰よりもな──なぜだかわかるかい? 僕が皇帝の子だからというだけじゃない。それが、まさに僕の中で生まれたからだよ! 肉体、頭脳、そのほかありとあらゆるものがな! 僕はここで、やりたいことが何でもできる。そしてこの惑星の誰ひとり、僕を止める能力がないんだ。見たまえ」<br>
皇子はとつぜん立ち上がった。<br>
「さて、僕はあのウェイトレスと一緒に飲んで酔っぱらいたい」皇子は言った。「しかも、今度は前もってきみに予告しているんだよ。きみは僕を止めるかね?」<br>
カイルは皇子を見上げた。ふたりの目が合った。<br>
「いいえ、王」カイルは言った。「あなたを止めることは、私の任務ではありませんので」<br>
皇子は笑った。<br>
「そう言うと思った」皇子は言った。そして振り返り、テーブルの間を抜け、バーカウンターへ向かった。そこでは、ウェイトレスがふたりの男とまだ話していた。皇子はウェイトレスから離れた場所に行き、中年のバーテンに大ジョッキのビールを1杯追加で注文した。ビールを受け取ると、振り返り、両肘をカウンターにかけ、後ろに寄りかかった。そして、ふたりの男のうち背の高い方が話しているのをさえぎり、ウェイトレスに話しかけた。</p>
<p><br>
「あなたと話がしたかったんだ」皇子が言うのがカイルに聞こえた。<br>
すこし驚き、ウェイトレスは振り返って皇子のほうを見た。微笑んだ。そして、誰であるかを認識し──その率直なアプローチに、すこしいい気分だったし、皇子の清潔な美貌がすこし気に入ってもいたし、その若さに対する寛容な気持ちも、すこしあった。<br>
「かまいませんね?」皇子は、ウェイトレスの向こうにいるふたりの男のうち、ちょうど話していた背の高い方をじっと見ながらいった。相手はこちらを見返し、皇子の目と数秒間にらみ合ったまま動かなかった。とつぜん、怒ったように男は肩をすくめ、背中を丸めて向こうを向いてしまった。<br>
「わかったね?」皇子はウェイトレスにほほえみかけた。「その男は、僕のほうこそが、きみが話をするにふさわしい相手だと認めたんだよ──」<br>
「おいおい、坊や。ちょっと待て」<br>
じゃまに入ったのは、こんどは背の低い、弾丸のような頭の男だった。皇子は一瞬驚きの表情を浮かべ、男を振り向いて見下ろした。だが男はすでに背の高い友達の方を向き、手をその腕にかけていた。<br>
「しっかりしろよ、ベン」背の低い男が言っていた。「このガキ、ちょっと酔っぱらっているだけだぜ」そして、皇子のほうを振り返った。「とっとと失せろ」男は言った。「クララは、おれたちと話してるんだぜ」<br>
皇子は茫然として、男を見つめた。あまりに皇子の目が据わっているので、背の低い男は目をそらし、友人とウェイトレスのほうを見た。そのとき、皇子ははっと目が覚めたようだった。<br>
「ちょっと待て──」今度は皇子が言った。<br>
皇子は弾丸頭の下の肉付きのいい肩の片方に手を伸ばした。男は振り向き、静かに手を払いのけた。それから、同じぐらい静かに、カウンターから皇子のビールが一杯に入ったジョッキを取り上げ、若者の顔に投げつけた。<br>
「失せな」男は冷静な声で言った。<br>
皇子は一瞬のあいだ、顔からビールを垂らしながら立っていた。それから皇子は、目をぬぐうために手を止めることすらなく、あのビアガーデンで披露済みの、見事にトレーニングされた左の拳を繰り出した。<br>
だが、この背の低い男は、最初見た瞬間にカイルが察したとおり、皇子がこてんぱんにのした、あの下げ膳係とは違っていた。この男は体重が30ポンドも重く、15年も余計に経験を積み、体格といい性格といい、生まれつきの酒場の闘士だった。だから、その場で突っ立ってみすみす殴られるのを待っているわけはなく、とっくに頭をかがめ、前に身を倒し、太い両腕を皇子の体に回していた。皇子のパンチは、丸い頭の上をかすって弾んだだけで、何らのダメージも与えずに終わり、ふたりの体は絡み合ったまま床をうち、椅子やテーブルの脚の間を転げ回った。<br>
カイルはすでにバーカウンターまで半分以上の距離に近付いていた。3人のバーテンは周りを取り囲んでいる木の柵を跳び越えていた。弾丸頭の男の背の高い友人は、二人の体の上に跳びかかり、目をぎらぎらさせ、ブーツの足を一歩引き、皇子の腎臓を蹴ってやろうと構えていた。カイルの鉄棒のような前腕が、この男の日に焼けた頚部に無駄なく炸裂した。<br>
男はむせかえって後ろへよろめいた。カイルはじっと立ったまま、両手を開いて下におろし、中年のバーテンを見た。<br>
「いいぞ」バーテンは言った。「だが、これ以上はやめてくれ」そして他のふたりの若いバーテンを振り向いた。「いいぞ。そいつを放り出せ!」<br>
若いエプロン姿の男ふたりは、かがみ込んで手際よく弾丸頭の男を羽交い締めにし、立ち上がった。男は身をもぎ離そうと一度激しくもがいたあと、静かに立っていた。<br>
「おれにそいつをやらせてくれ」男は言った。<br>
「ここではだめだ」年配のバーテンが言った。「外でやってくんな」</p>
<p><br>
テーブルの間をふらふらとよろけながら、皇子は立ち上がった。切れた額から血が流れていたが、その顔が溺れている人のように白いのは見て取れた。皇子は横に立っているカイルを見やった。そして、口を開いたが──出てきた声は、すすり泣きとも罵りともつかないものだった。<br>
「いいぞ」中年のバーテンが繰り返す。「ふたりとも外へ出ろ。外で決着をつけるんだ」<br>
部屋中の男たちがバーカウンターの周りに集まっていた。皇子は周囲を見回し、初めて人間の壁が自分を取り囲んでいるのを知った。そして視線をさまよわせながら、カイルの目を見た。<br>
「外で──?」皇子はむせながら、言った。<br>
「お前はここにいてはならん」カイルに代わり、年配のバーテンが答えていった。「おれは見ていたぞ。お前が全部始めたことだ。さあ、お前らのやりたいように決着をつければいい──だが、ふたりとも外に出るんだ。今すぐにだ! さあ、とっとと行け!」<br>
バーテンが皇子を押しやろうとしたが、皇子は抵抗し、片手でカイルのレザー・ジャケットにつかまった。<br>
「カイル──」<br>
「申し訳ないが、王」カイルは言った。「私は手助けできませんよ。これは、あなたの喧嘩なんです」<br>
「ここから出よう」弾丸頭の男が言った。<br>
皇子は、まるでこれまで存在することすら知らなかった奇妙な生物を初めて見つけたというように、周囲の人間をじろじろと見回した。<br>
「いや──」皇子は言った。<br>
そして、カイルのジャケットを手放した。思いがけず、その手がカイルの腹部のホルスターに差し込まれ、スラグ・ピストルを抜き取っていた。<br>
「下がれ!」金切り声で皇子は叫んだ。「僕に触るんじゃない!」<br>
皇子の声は言葉の最後でひび割れた。群衆の間から、ヤジともうめきともとれない奇妙な声がした。そして群衆はよろめきながら後ずさった。マネージャー、バーテン、野次馬──カイルと弾丸頭の男以外の全員が後ろに下がった。<br>
「この薄汚いチンコ野郎が──」弾丸頭の男がはっきりした声で言った。「お前が根性なしだと言うことぐらい、わかっていたぜ」<br>
「黙れ!」皇子の声は甲高くひび割れた。「黙れ! お前ら、誰ひとり僕についてくるんじゃないぞ!」<br>
そして、酒場の正面入り口へと退却した。部屋の中の人々はみな黙って見守り、カイルですら静かに立ったままだった。後退しながら、皇子は背筋を伸ばした。手に持った銃を上げた。ドアに着くと、立ち止まって左の袖で、両目から血をぬぐい去った。血まみれになった顔には、最初の傲慢さがいくぶん戻ってきたように見えた。<br>
「ブタが!」皇子は言った。<br>
そして、ドアを開け、後ずさりに外に出ると、ドアを閉めた。カイルは一歩踏みだし、弾丸頭の男と向き合った。ふたりの目が合い、さきほどカイルが弾丸男の中に戦士を見たのと同じように、弾丸頭の男も、カイルの中に戦士を認めたのがわかった。<br>
「私たちを追わないでくれ」カイルは言った。<br>
弾丸頭の男は答えなかった。だが、答える必要もなかった。男はじっと立っていた。</p>
<p><br>
カイルは振り向いてドアに走り、一方の脇に立って、ばたんとドアを開いた。何も起こらない。カイルはドアをくぐり抜けると、開いたドアめがけて発射される弾丸を避けようと右に跳び退った。<br>
だが、銃撃はなかった。一瞬、カイルは夜の闇に目がくらんでいた。しかし、やがて目が慣れてきた。視覚と触覚と記憶を頼りに、馬留めの場所へ向かった。そこに着く頃には、目が見えるようになっていた。<br>
皇子は騙馬のひもを解き、乗ろうとしていた。<br>
「王」カイルは言った。<br>
皇子は一瞬、鞍を放し、肩越しにカイルを見た。<br>
「僕に近寄るな」皇子ははっきりと言った。<br>
「王」カイルは低い声で懇願するように言った。「あなたは、あそこで自分を失ってしまわれた。誰でも同じことをしていたでしょう。だが、これ以上事態を悪化させるのはやめてください。銃を返してください、王」<br>
「きみに銃を返せだと?」<br>
若者はカイルをじろじろ見た──それから笑った。<br>
「きみに銃を返せだと?」また繰り返した。「誰かがまた僕をこてんぱんにやっつけるようにか? そうやって、僕の護衛を外すことができるわけだな?」<br>
「王」カイルは言った。「お願いです。あなた自身のためなのです──銃を返してください」<br>
「ここから出ていけ」皇子は強く言って、振り返り、騙馬にまたがった。「僕に銃弾を撃ち込まれないうちに、いなくなるんだ」<br>
カイルはゆっくり、悲しげに息を吸った。前に進み、皇子の肩を叩いた。<br>
「こちらを向いてください、王」カイルは言った。<br>
「警告したろうが──」叫びながら皇子は振り向いた。<br>
カイルが身をかがめたとき、皇子はこちらを振り返り、その手に持ったスラグ・ピストルが酒場の窓から漏れる光にきらめいた。カイルは前屈みになって、ズボンのすそを上げ、ブーツの鞘に差したナイフのつかに指を巻き付けた。そして、無駄なく、巧みに、若者のほぼ倍の速度で動き、若者の胸板に、ナイフを持つ手が肉と骨を覆う布にあたるほどに強く突き上げた。<br>
それはとつぜんの強烈で素早い、慈悲の一撃だった。ナイフの刃は、肋骨と肋骨の間をアンダーハンドで上向きに突き刺さり、心臓を深々と貫通した。皇子は肺から空気が吹き出す衝撃にうめいた。カイルがそのぐったりした体をレザー・ジャケットの腕で抱え上げたときには、すでに事切れていた。<br>
カイルは背の高い死体を騙馬の鞍に横向きに乗せ、縛り付けた。暗い地面の上に落ちたピストルを探し、ホルスターに戻した。それから、牡馬にまたがり、荷物を載せた騙馬を率いて、長い道のりを戻り始めた。</p>
<p><br>
24時間ほど前に皇子を迎えたホテルを見下ろす丘の上に立ったとき、夜明けの空が白み始めていた。カイルは中庭の門に向かって降り始めた。<br>
カイルが門を中庭にくぐると、その中で、夜明け前の薄明かりにぼんやりと、背の高い人影が待っていた。カイルが馬を近づけていくと、その人影は駆け寄ってきた。家庭教師のモントラーヴェンだった。そして、騙馬に駆け寄り、死体を固定している綱をまさぐりながら、泣き出した。<br>
「申し訳ありません──」そう自分が言うのをカイルは聞いていた。自分の声が死んだように遠く聞こえるのに、軽いショックを受けていた。「他に選択肢はありませんでした。明日の朝提出する報告書をお読みになれば、わかるでしょう──」<br>
そして言葉を止めた。もう一つ、もっと背の高い人影が、中庭に通ずるホテルのドアから現れた。カイルがそちらを向くと、この人影は数歩降りて草の上に立ち、こちらへ向かってきた。<br>
「王──」カイルは言った。そして、皇子の顔に似ているが、もっと年老いた、灰色の髪の下の顔を見下ろしていた。この男は教師のように泣きはしないが、その顔は鉄のように静まりかえっていた。<br>
「何が起こったのだ、カイル?」男は言った。<br>
「王」カイルは言った。「朝には報告書をお読みになれます──」<br>
「わしは知りたいのだ」背の高い男は言った。カイルの喉はからからにこわばっていた。唾を飲み込んだが、何ら効果はなかった。<br>
「王」カイルは言った。「あなたには他に3人の息子さんがいます。そのうちの一人は、世界をひとつに統合するための皇帝となることでしょう」<br>
「皇子は何をしたのだ? 誰を傷つけた? 教えてくれ!」背の高い男の声は、まさにその息子の声が酒場でそうなったように、ひび割れた。<br>
「何もしていませんし、誰も傷つけていません」カイルは喉のこわばるままに言った。「ただ、自分と年の変わらない少年を殴りました。へべれけに酔っぱらいました。ある娘をトラブルに巻き込もうとしました。それ以外の誰にも、そのようなことはしていません」カイルは唾を飲み込んだ。「明日までお待ちください、王、それから私の報告書をお読みになれば」<br>
「もうよい!」背の高い男は、カイルの鞍のサドルホーンをつかみ、それによって白馬が動きを抑えられるほどだった。「そなたの家系とわしの家系は、この件でかれこれ300年間もつながっておるのだ。わしの息子が地球に戻ってのこの試験に落ちたのは、いったいどんな欠点があったためなのだ? わしはそれが知りたいのだ!」<br>
カイルの喉は痛み、灰のように渇いていた。<br>
「王」カイルは答えた。「皇子は、臆病者でした」<br>
とつぜん力を失ってはじき飛ばされたかのように、サドルホーンをつかんでいた手が落ちた。そして、100の世界の皇帝は、乞食のごとく後ろ向きにはじかれ、土の中にころがった。<br>
カイルは手綱を持ちあげ、門をくぐって丘の斜面を森の中へ駆け去った。夜が明けようとしている。</p>
<p><br>
一九七
2006-05-07T23:16:53+09:00
1147011413
-
ユニコーン・タペストリィ Unicorn Tapestry スージー・マッキー・チャーナス
https://w.atwiki.jp/brunner/pages/904.html
<p>ユニコーン・タペストリィ Unicorn
Tapestry スージー・マッキー・チャーナス</p>
<p><br>
一</p>
<p>
「待って」フロリアは言った。「あなたの言いたいことは分かるわ。しばらくは新しい客はとらないことにしたのよ。でも私が話すまで待って──こんなこと信じないでしょうけど──まず電話をして、最初のアポを取って、それからあの男は自分の相談ごとを持ちこんできたの。『私は自分が吸血鬼だという妄想にとらわれてしまったようなんです』」<br>
「なんですって!」ルシールは面白そうに叫んだ。「電話でいきなりそんなことを?」<br>
「それでその、私は何とか、自信を取り戻すと、その男に言ったわ。明日初めて会う前までに、詳しいことを調べておきたいのでって」<br>
二人はクリニックのスタッフルームの外にある小さなテラスに座っていた。ウエストサイドの山の手にある家を改装した建物だ。フロリアは週に三日ここに勤めている。残る二日は、セントラルパーク南部にある自分のオフィスだ。そこでフロリアは、今回の患者のような個人客を診ている。ルシールはいつも大げさに反応する、フロリアの一番大事な仕事友達だ。フロリアのニュースが明らかに気に入ったようで、いすに座って熱心に身を乗り出し、コカコーラの瓶の底のような眼鏡ごしに目を見開いている。<br>
ルシールは言った。「その男は、自分が生き返った死体だと信じてると、あなたは思うのね?」<br>
眼下の道路の突き当たりで、二人の子供がスケボーに乗っているのがフロリアには見えた。そのそばにいる男は、五月の陽気だというのに、ウールのキャップと、重苦しいコートを着て、壁にもたれかかっている。今朝フロリアがクリニックに着いたときから、その男はそこにいた。もし死体が歩くなら、完全に生き返ることもないまま、あの男のように、ニューヨークを堂々と歩いている者もいるだろう。<br>
「どんな質問をするか、微妙なところまで詰めておかないと」フロリアは言った。<br>
「で、この〈吸血鬼〉さんは、どうやってあなたに回って来たの?」<br>
「その男は、北のほうの大学で働いているの。学生に教えたり、研究をしたり。そして、突然消えた──文字どおり、跡形もなく、消えたのよ。一ヵ月後、この町に現れた。大学の学長は私の知り合いで、男を私のところに送ってきたの」<br>
ルシールはずるい目で見た。「あはは、あなたは真に受けてるのね。親切に友人として言わせてもらうと、これは古典的で簡単な話。抑圧されたインテリが、ちょっとほらを吹いて、魅力的な女をものにしようとか、そういったことよ」<br>
「あなたは、私のことを知りすぎ」フロリアが、後悔の微笑みを浮かべながら言った。<br>
「おえっぷ」ルシールがげっぷをした。ひびの入った白いマグカップでジンジャーエールを飲んだのだ。「あたし、パニック状態の中年オヤジなんて、もうたくさんよ。辛気くさすぎるもん。そいつはやめといたほうがいいわ。魅力的には聞こえるけどね」<br>
出た、いつものお説教よ、とフロリアは思った。<br>
ルシールは立ち上がった。背が低く、体重が重い。何かの儀式で着るローブのようにばたばたする、ゆるい服を着るのがお似合いだ。歩くと、小さなテラスの縁に並ぶ植木鉢に咲き始めた花を、服の裾がこする。「ただでさえ過労気味なのに、こんな男にかかりあってたら、無駄な仕事を増やすだけ。この男はやめときなさい、気をつけるのよ」<br>
フロリアはため息をついた。「はいはい、分かった分かった。もっとゆっくりするって、みんなに約束したしね。でも一分ほど前に、あなた自身が言ったわ──友人として親切に言わせてもらうとって。私がどうなるって言うの? まさか、ドラキュラ伯爵だなんて言わないでね! もうやめて!」<br>
大きなポケットの中を手探りして、ルシールはつぶれたタバコのパッケージを出し、顔をしかめながら火をつけた。「あなたからのアドバイスを、私が真剣に考えることにしてるのは知ってるでしょ。冗談を言ってるんじゃないわ。フロリア、私、何を言えばいいっていうの? あなたが何ヶ月も苦しんでいるのを、ずっと聞いてきた。あなたに必要なのはプレッシャーのはけ口なんだと分かった。いやなことにはノーと言うようにすることだって──その矢先にまた、新しい症例だなんて言い出す。私の思っていることは分かるでしょ? あなたは、自分自身の問題を棚に上げて、他人の問題に逃げ込もうとしているだけ。<br>
分かった、分かった、そんなににらまないで。頑固なんだから。少なくとも、チャブスのことはもう乗り越えたんでしょ?」これは、フロリアがしばらく逃れたいと思っている、ケニーという厄介な担当患者に、フロリアが与えたコードネームだ。<br>
フロリアは首を振った。<br>
「何で? あの男はもう見捨てるって、何週間も前に誓ったじゃない? すべての人のために最善を尽くしていたら、疲れ果てて抜け殻になっちゃうわよ。あなた、絶対また体重が落ちたでしょう。目の周りの不自然な隈から見て、ちゃんと寝てもいないようね。まだ夢の内容を覚えられないの?」<br>
「ルシール、いじめないで。自分の健康の話はしたくない」<br>
「じゃあ、その男の健康はどうなの──ドラキュラさんの。あなたに会う前に、身体検査を指示したの? それに、何か心理的な問題が──」<br>
「あの男を医者送りにして、厄介払いしたほうがいいって言うんじゃないわよね」フロリアが辛辣に言った。「あの男、電話口で、投薬治療や入院の予定はないって言ってたわ」<br>
思わずフロリアは、通りの端を見ていた。ウールの帽子の男は、ビルのふもとの歩道で体を丸めている。寝ているのか、気を失っているのか、それとも死んでいるのか。都市には病気が満ちている。あの病的な男やそれに似た連中に比べれば、あの〈吸血鬼〉、あの文化的なバリトンの声、自制心のあるアプローチのどこが病的だというのか。<br>
「つまりあなたは、その男を他の人に渡す気はないわけね」ルシールは言った。<br>
「まあ、もう少し分かるまではね。ねえ、ルース──その男のせめてルックスぐらいは、知りたいと思わない?」<br>
ルシールは低い欄干でタバコをもみ消した。下の通りでは警官が歩きながら、駐禁切符を切っている。警官はビルの角で寝ている男に見向きもしない。二人は一言も発せずに警官が歩くのを見ていた。ルシールが言った。「そうねえ、あなたがドラキュラを手放す気がないのなら、私に経過報告してくれるかしら?」</p>
<p><br>
二</p>
<p>
男は正確に約束の時間にオフィスに入って来た。やつれてはいるが、優雅な姿だ。印象的。針金のような灰色の髪は、短くくたびれ、ずっしりした顔を目立たせている。あごは長く、頬骨は高く、花崗岩のようなほほは、冬の厳しい気候にさらされたように落ち窪んでいる。フロリアが前もって記入するように渡しておいた事前問診シートに書かれた名前は、エドワード・ルイス・ウェイランドだった。<br>
男は、吸血鬼事件の背景についててきぱきと話した。ケイスリン大学での生活について、皮肉っぽく説明した。学者同士の競争のプレッシャー。学部・学科間の醜い争い。学生の無関心。管理部門の不正。経歴について知っても、その有用性は限られていると、フロリアは知っている。記憶によってゆがめられてしまうからだ。だが、自分の病気について語るための準備的な説明をすることで気持ちが安らぐのであれば、そこから始めるのが一番だ。<br>
とうとう、男のエネルギーは衰え始めた。男は角張った体をがくんと椅子に沈め、あの恐るべき出来事へとおっかなびっくり説明を続けながら、その声は次第に平板で疲れた調子になっていった。睡眠研究所での夜の仕事について。夢の研究のためまどろんでいる若い被験者を見るうちに、血を吸う妄想を生じたこと。とうとう大学の同僚を使って、その妄想を実行しようとしたこと。男は拒絶された。それからパニックが起こった。うわさが漏れ、男は銃で撃たれ、永遠にブラックリスト入りした。男は逃げた。それから悪夢のような期間が過ぎた──男は詳しくは話さなかった。正気に返ったとき、男は恐れていた事態が自らの逃走によって招来されることを悟った。キャリアの崩壊。そこで男は学長に電話し、今、ここに来ている。<br>
この独演会の間中、フロリアは、オフィスに入って来たときの立派な学者が次第に消えて、恥と恐怖にさいなまれた男が椅子に背中を丸め、発作のように両手を引っ張りあうのを見ていた。<br>
「その手は何をしてるんですか?」フロリアはやさしくきいた。男はぽかんとしていた。質問を繰り返す。<br>
男は両手を見下ろす。「闘っているんです」<br>
「何と?」<br>
「最悪の事態と」男はつぶやく。「その最悪の事態についてはまだ話していません」フロリアはこの種の変化に耐性はない。長い指はジャケットのボタンをいじるのに忙しく、男はつらそうに、ケイスリン大学での攻撃対象が女性であったことを話した。若くはないが、美人で活発だったという。この女は、教授の退官を記念した講演会──名誉あるセミナー──が行われた年に初めて男の関心を引いた。<br>
終生独身の臆病なウェイランドが、この女のぬくもりを求め、その拒絶にあう姿が目に浮かぶ。フロリアは、この男を過去から引っ張り出し、今現在の時間と場所に連れて来なければならないと思った。だが男はあまりにも見事に自分の世界に入り込んでいるため、邪魔する気になれなかった。<br>
「このごろ、大学に出没している連続婦女暴行魔の話はしましたかな?」苦い口調で男は言った。「その男の本の一節を借用しました。この女は任意では応じないでしょうから、私は強引にでもこの女から取るつもりでした。つまり血液を取ろうとしたんです」床を見つめる。「これってどういう意味でしょう──他人の血を取るなんて?」<br>
「どういう意味だと思うんです?」<br>
落ち着きない指で引きねじられていたボタンが取れた。「エネルギーです」男はつぶやいた。「年老いた学者、歩く死体、吸血鬼──つまり私を、温めてくれる」<br>
沈黙、伏し目がちの目、丸めた肩、すべてが生命の危機によって追い詰められていることを示している。きっとこの男はセラピストが夢に見る理想の相談者、最近フロリア自身も極めて必要としているタイプになるだろう。知的で感受性豊かな相談者。専門家に同伴して聴いてもらえれば、すぐにこの男の心のわだかまりは解けるだろう。有望な出だしにうれしくなり、フロリアは先を急ぐのを抑えることにした。沈黙を我慢していると、やがて出し抜けに男が言った。「あなたは全然メモを取りませんね。テープにでも撮っているんですか?」<br>
パラノイアの兆候だと思った。珍しくはない。「あなたに知らせて同意を得ることもなく、テープに撮ることはありませんよ。同様に、かってにあなたの大学での記録を取り寄せることもありませんし。でも、自分なりの指針を立てて、ここで言ったりしたりすることに混乱が生じた場合の参考用に、セッションが終わったあとにはメモを作ります。メモを他人に見せたり、あなたのことを実名で他人に話したりすることはありません、約束します──もちろんケイスリン大学のシャープ学長は別ですけど。シャープ学長への報告だけはどうしても必要ですから──あなたが書面で許可した場合だけですよ、他の人に話していいのは。それでよろしいかしら?」<br>
「失礼なことをきいてすみません」男は言った。「あの──事件のせいで私は──ひどく神経質になってるんです。あなたの助けを借りて、何とかこの状態を乗り越えたい」<br>
時間切れだ。男が帰ると、フロリアは外に出てヒルダに確認した。ヒルダは、このセントラルパーク南部のオフィスで四人のセラピストと共有している受付嬢だ。ヒルダはいつも待合室にたくさんの新規相談者を待たせている。<br>
今度の相談者について、ヒルダは言った。「あの男の人、本当にどこかおかしいんですか? 私、恋しちゃったみたいなんです」</p>
<p><br>
三</p>
<p>
水曜の夕方、オフィスで相談者が集まるのを待ちながら、フロリアは〈吸血鬼〉に関するメモを走り書きしていた。</p>
<p>
【相談者は、事件と背景を説明した。精神病歴なし。セラピーの経験なし。個人的な経歴は非常に平凡で、その空虚さにすら気づかないほどだ。ドイツ人移民の一人っ子。学歴は普通。人類学のフィールドワーク。ケイスリン大学の教授職へ。肉体は健康。経済的にも問題なし。仕事にも満足している。住宅も快適(現在はニューヨークのホテルに滞在中)。結婚歴なし。子供なし。家族なし。宗教なし。社会関係は仕事関係に限定されている。余暇には──本人いわくドライブ。酒に関する質問には反応があったが、アル中の兆候はない。肉体的には年齢(五〇歳以上)と身長の割に、動きが滑らか。猫のように警戒心が強い。途中で明らかに体が硬直していた──かすかに身を守るようにかがめる──これは中年の年齢に伴う緊張だろうか? パラノイア的な自衛本能? 声は快活で、かすかななまり(ドイツ語を話す家族あり)。仕事への復帰を考えてセラピーに参加。】</p>
<p>
安心した。フロリア自身はほとんど緊張を強いられることなく、作業を進められそうな条件だ。今や、〈吸血鬼〉のセラピーをするという決断に関して、ルシールの反論に防戦できる。<br>
結局ルシールは正しかった。フロリア自身、注意を要する問題を抱えている。主に、一年以上前の母の死に起因する不安や疲労だった。フロリアの結婚の失敗は、惨めな状態の原因にはなったが、ここまで終わりのない憂鬱はもたらさなかった。知的には問題状況は明らかだ。両親ともいなくなれば、フロリアが表面にさらされてしまうのだ。自分と避け得ぬ自分の死との間に入る人間は誰もいない。感情の原因を知っても何の役にも立たない。その原因となる感覚を変えることはできそうにない。<br>
水曜日のグループセラピーはまた失敗した。リサは再びヨーロッパの死のキャンプを体験し、誰もが泣き叫んだ。フロリアはリサを止めて、変えたかった。解放され輝きを帯びるリサの声の、震えるような恐怖を消し去りたかった。だがどうやったらいいか分からない。専門書に書いてあるテクニックの中から使える手法を引っ張り出してくるのが関の山だ──怒りに任せて踊りなさい。そのころの自分と話してみなさい──セラピストが参加している生きたプロセスの一部として独自に行われるのならば有効だが。本来本能的であるべき反応を頭で考えるようではうまくいかない。グループ全員の心痛がフロリアを麻痺させた。振り付け師のいないダンサーみたい。すべての動きを知ってはいても、この人たちが奏でる音楽に合わせられないのだ。<br>
機械的なぎこちない動きをするぐらいならば、引き下がるほうがましだ。何もせずに、罪悪感を感じているほうが。ああ神様。あのグループの利発で経験豊富な人たちは、私がいかにでくの棒か知っているに違いない。<br>
バスに乗って家路に就きながら、下町のオフィスを共用しているセラピストの一人に電話しようかと思った。この男は、学生に見学させながら、フロリアと合同でセラピーを行うことに興味を示していた。水曜日のセラピー・グループはこの案に興味を示すだろう。今度提案してみようかしら。パートナーがいれば、フロリアのプレッシャーは減り、グループはまた活性化するかも。フロリアがやめたくなっても、パートナーがあとを引き継いでくれそうだ。もちろん、あとを引き継いで、ついでにフロリアの得意客も持って行ってしまうだろう。<br>
ああ、なんて素敵、いったいパラノイアなのは誰よ? 素敵な同僚について考えるのはサイコー。神様、私、グループセラピー自体を終わらせたいと考えてるなんて気づきもしなかったわ。<br>
新しい相談者を得て、その〈吸血鬼〉話から逃げようとして、自分の逃避願望をあらわにしてしまったのかしら。相談者を助けようとして、逆にそこから助けを得るのは、これが最初ではないだろう。前の上司のリグビイが言った。そういう相互扶助こそが唯一の真のセラピーなんだって──それ以外は全部まがいもの。大した完璧主義者だったわ、あのリグビイという爺さんは。しかも、たくさんの若い理想主義者を輩出した。世界を救おうと熱心になれるような。<br>
熱心。でも有能とは限らない。ジェーン・フェナーマンもかつて俗世間で生きていた。フロリアはジェーンを救う能力がなかった。今夜のグループのメンバーなのに、欠席しているジェーンは、鍵のかかった病棟に逆戻りしている。病院の人が処方する沈静剤で意識が朦朧としていることだろう。<br>
何でいまさらジェーンのことなんか? 自分にきつく問いかける。バスが揺れながら止まるのに逆らって、体を支えながら。どんな相談者でも自由にグループセラピーをやめて、態度をはっきりさせる権利がある。フロリアのキャリアの中で、この種の出来事は初めてでもない。ただ今回に限って、結果としての憂鬱や罪悪感を振り払えずにいるというだけだ。<br>
でも、あれ以上ジェーンに何をしてやれたというのだ? いったいどうやったら、人生はジェーンが思うほど恐ろしくないと、ジェーンの恐怖には実体がないと、毎日が苦痛と危険の坩堝ではないのだと安心させてやることができたというのだろう? いや、できない。</p>
<p><br>
四</p>
<p>
フロリアは、相談者が予約をキャンセルした空き時間に、新しい本のためのメモを書いていた。本の内容は、サラリーマンと自営業者を比較した浮沈の分析だったが、新しい個所に入るたびにつまづいた。ぐるぐる回る気分を晴らすものがほしかった。<br>
ヒルダが、ケイスリン大学からの電話をつないだ。ドゥ・シャープ。ウェイランド博士を紹介した男だ。<br>
「ウェイランド博士はきみの有能なセラピーに入った。これで、博士はわれわれが〈温情休暇〉と呼ぶものを消化中なのですと説明すればすむよ」ドゥの声は長距離電話のせいか、遠く聞こえる。「何か、予備段階での意見は?」<br>
「状況判断には時間が必要です」<br>
ドゥは言う、「あまり時間をかけんでくれよ。今のところは、博士のポストに他の人間を就けろという圧力に耐えているが。博士の敵がここにはいる──ことにああいう舌鋒鋭いバスタード(やから)には敵が多い──ケイスリン・センターの人間研究部門の指導者職に適した人間を選ぶ調査委員会を作れといっておる」<br>
「民族研究部門ですわ」フロリアが反射的に訂正する。いつものように。「どういう意味ですの、〈バスタード〉って? ドゥ、あなた、ウェイランド博士が気に入っていらっしゃったのでは? 『頭がよく、礼儀正しく、古風な紳士を、フィニーやマギルに譲り渡せとおっしゃるのか?』あなたがおっしゃったんですよ」フィニーはチャックで締めた尻の穴のような口と、激しい闘争心を持ったフロイト主義者で、マギルはオフィスのジムでくだを巻いているような男だ。<br>
ドゥがペンか鉛筆で歯をたたく音が聞こえる。「そうだねえ、私は博士をたいへん尊敬しておる。時には、鼻持ちならないばか者をこき降ろしてくれるので、快哉を叫ぶこともある。だが、どうしようもなくいまいましい男で、一緒に働くのはたいへんだという評判を得ていることも否定できない。あまりに冷たく、自己充足的なんだよ」<br>
「うーん」フロリアは言った。「そのことにはまだ気づいていませんわ」<br>
ドゥは言う。「そのうち分かるよ。君自身はどうだね? 君の人生は?」<br>
「そうですね、いきなり美術学校に戻りたいと思ってるなんて言ったら、何て言います?」<br>
「私が何と言うかって? 馬鹿言うな、と言うに決まってるよ。せっかく得意なことを一五年も続けてきたのに、全部捨てて、大学の一〇一スタジオ以来指一本触れていない領域でやり直すって言うんだろ? もし神様がきみを絵描きにするつもりだったら、はじめから美術学校に入れていただろうよ」<br>
「あの当時は美術学校を考えていたんです」<br>
「重要なのは、今やっていることが君は得意だということだ。私は君の研究成果を取りまとめる立場だし、自分の言っていることは分かっている。ところで、私がいたグループのアニー・バーンズに関する新聞記事を読んだかね? あれは重要なポストだよ。アニーはきっとワシントンで働くことになると、私にはずっと分かっていた。君にはっきりさせておきたいのは、君の〈卒業生〉はとてもよくやっているから、君が辞めることを言いだすなんてとんでもないということだよ。ところで、モートンは何と言っておるんだ?」<br>
病理学者のモートは、フロリアの恋人だ。まだこのことは話しあっていない。ドゥにもそう言った。<br>
「喧嘩したわけじゃないんだろ?」<br>
「ダグラス、そんな話はやめてくださいよ。私の性生活には何の問題もありません。私にとって問題ないのはそれ以外のことなんです」<br>
「単なる詮索好きだよ」学長は答えた。「何のための友達だね」<br>
二人はもっと軽い話題に移った。だが、電話を切ったとき、フロリアは不機嫌だった。友人がこんな風に詮索して親切にアドバイスをするのなら、自分も考えていた以上におおっぴら且つ熱心に助けを求めなければならない。<br>
本の執筆ははかどらなかった。まるで自分の思考をさらすのをいやがっているみたいだ。あらかじめ考えられる反論に対処して、批判できないようにしなければ気がすまない。本も完全に行き詰まった──他のすべてと同じように。座ってそのことを気に病みながら、自分が書いている物までだめになったのは、いったい何がまずかったのだろうと考えた。すでに二冊のいい本を書いているのだ。三冊目が行き詰まったのは、どうしてだろう。</p>
<p><br>
五</p>
<p>
「でも、何を考えているんです?」ケニーが心配そうに言った。「それは、ぼくのやるべきことじゃないですか」<br>
「あなたはどう思う?」<br>
「さっき言ったとおり、混乱してますよ」<br>
「私の立場で考えて。私があなたにするようなアドバイスをして」<br>
ケニーは眉をしかめた。「それは言い逃れですよ。ぼくの中の一部は、あなたのように話しています。でもそのあと、多重人格のテレビ番組みたいに、自分と会話してるんです。それがぼくのやり方なんですよ。ぼくがそうしている間、あなたはただ、座ってるだけです。ぼくは、〈あなた〉からの助けがほしいんですよ」<br>
フロリアは書類キャビネットの上の時計を見た。もう二〇回目だ。今度は解放される。「ケニー、時間よ」<br>
ケニーは椅子から丸い不機嫌な体を上げた。「どうでもいいんですね。気にかけているふりをしているが、実際は──」<br>
「また今度よ、ケニー」<br>
ケニーはオフィスから出ていった。その跡に、フロリアを使って何とか決断の手伝いをさせるための撒き餌をばらまいているような気がする。ため息をついて、窓辺へ行き、公園を見渡し、春の終わりの新鮮な辺りいっぱいの緑で目と心を満たそうとする。憂鬱を感じる。二年間の治療過程で、ケニーとの関係は膠着状態だ。ケニーは自分の助けになるほかのセラピストのところへは行こうとしないし、フロリアもケニーを追いだせない。最後にはそうしなければならないと分かっているが。そのひ弱な横暴さが、ケニーの繊細なもろさを隠すことはできない──<br>
次の予約はウェイランド博士だ。フロリアは自分がウェイランドと会うのを喜んでいるのに気づく。これ以上ケニーと対照的な相談者は求めようがない。背が高く、痩せていて、思わず引き寄せたくなるような威厳のある顔、上質の服、素敵な大きい手──全体として、優れた外見の男だ。カジュアルなスラックスや軽いジャケットや、ノーネクタイのシャツなどを着ているが、その印象は、完璧なゆとりに満ちている。たいていの客が好むパッド入りの椅子よりも、木製の籐の椅子を好む。<br>
「こんにちは、ランドーアー先生」ウェイランドは重厚な声で言う。「私のケースについてのご判断をお聞かせ願えますか?」<br>
「私は自分を判断者とは考えていません」フロリアは言った。できれば、ファーストネームで呼びあうような親しい関係へ話を持っていこうと決めていた。この古風な男をいきなりファーストネームで呼ぶのは作為的な感じがするだろうが、寄席の演目の二人のキャラクターみたいに、お互いを〈ランドーアー先生〉、〈ウェイランド博士〉などと呼びあっている状態では、セラピー可能なほどに親しくなることはできまい。<br>
「エドワード、私の考えはこうよ」フロリアは続けた。「この吸血鬼事件について、知る必要があるわ──それがそのとき、あなたの自意識にどう結びついていたのか、それはいいことなのか悪いことなのか。あなたの人生を複雑にしてしまうような〈吸血鬼〉になりたいと、あなたを思わせるにいたったものは何なのか。知れば知るほど、この吸血鬼の概念が二度とあなたに必要なくなることを保証する方法に近づけるわ」<br>
「私を公式に相談者として受け入れてくれるという意味ですか?」ウェイランドは言った。<br>
単刀直入に思ったことを話している、と気づいた。問題はない。「そうよ」<br>
「それはよかった。私も、治療の目的を考えています。私はどこかで、ケイスリン大学で復職してもよいほどに精神の健康が回復しているというあなたの証明書が必要なんです」<br>
フロリアは首を振った。「それは保証できないわ。もちろん、そのためにがんばることは可能よ。あなたの精神状態がよくなることが、ここでの治療の目的なんだから」<br>
「それが当面の目的に対する答えだと思います」ウェイランドは言った。「その点はあとでまた話しましょう。正直言って、今日は作業を先に進めたいんです。あなたと話してから、すごく気分がよくなりました。今日あなたに話すことを、昨夜考えてきたんですよ」<br>
フロリアは、ウェイランドに操られているというはっきりした感覚を持った。コントロールしているという感覚が、この男にはどれぐらい重要なのだろうか、とフロリアは思った。そして言った。「エドワード、私のほうは、口頭での試問は十分役に立つぐらい行ったと感じているわ。今度は少し違ったことをしようと思っているの」<br>
ウェイランドは何も言わない。フロリアを見ている。夢の内容を覚えているかときくと、ウェイランドは首を振って否定した。<br>
フロリアは言った。「今度は、夢について語ってほしいと思うの、目覚めながら見る夢よ。目を閉じて、白昼夢を見てくれる? それからその話をきかせて」<br>
ウェイランドは目を閉じる。奇妙なことに、前よりも脆さがなくなったように見えた。より強く監視されることで心強くなったかのような。<br>
「今どんな気分?」フロリアは言う。<br>
「落ち着きません」まぶたが震えている。「目を閉じるのは嫌いです。目に見えないものが私を傷つける」<br>
「誰があなたを傷つけるの?」<br>
「もちろん、吸血鬼の敵です──たいまつを持って叫ぶ農夫の群」<br>
どう解釈すればいいか、と思う──若き博士号取得者たちが大学院からあふれだして、ウェイランドのような先輩学者のポストを狙っている? 「今時、農夫が?」<br>
「毎日何の仕事をしているにせよ、おろかで、暴力的で、信じやすくて、軽い頭で星占いを信じ、カルト宗教やその他を信じ、心理学のさまざまな学派を信じるような連中は、まだたくさんいますから」<br>
ウェイランドがフロリアをあざ笑っているのは間違いない。フロリアがウェイランドの希望に従うことを拒否したことを考慮すると、フロリアを馬鹿にしたいと思うウェイランドの欲求は健康だ。だが、今すぐ直接処理する必要がある。<br>
「エドワード、目を開いて、何が見えるかを言って」<br>
ウェイランドは従った。「四〇代前半の女性が見えます。賢そうな顔。黒髪は灰色が混じっています。骨格の割に、肉がついていません。病気か見栄のためでしょう。スラックスと、かなり皺の寄ったろうけつ染めのブラウス──〈農夫〉スタイルという言葉で表現できると思います──左側に食べ物のしみがあります」<br>
何よっ! 顔を赤らめてはだめ。「私のブラウスに、何か農夫を示すものがあるの?」<br>
「具体的にはありませんが、私に関して言えば、吸血鬼としての私について言えば、たいまつを持った農夫は、あなたがたやすく変わりうる存在ですから」<br>
「あなたは、妄想を振り払う助けをするのが私の仕事だと言ったけど、この作業はあなたには苦痛で恐ろしいものかもしれないわね」<br>
ウェイランドの表情に何かが光った──驚き、おそらくは警戒、再び手の届かない場所に消える前に、何とか手を触れたい存在。急いでフロリアは言った。「その瞬間に、あなたには自分の顔がどう感じられるの?」<br>
ウェイランドは眉をひそめる。「私の頭の前方にあるものとしてです。どうして?」<br>
自分に対する怒りの感情とともに、フロリアは隠された感情に手を伸ばすのに、間違った方法を選んでしまったと悟った。逆に敵意を呼び起こしてしまったのだ。フロリアは言った。「今あなたの顔は、私には、表現の道具というよりも、感情を隠すための仮面のように見えるわ」<br>
ウェイランドは椅子の中で落ちつかなげに動いた。全身の仕草がこわばり、防御的になった。「おっしゃる意味が分かりません」<br>
「触ってもいいかしら?」立ち上がって、フロリアは言った。<br>
椅子の腕をつかむウェイランドの手に力がこもった。椅子は鋭いきいという音で抗議した。ウェイランドは反論した。「これは、会話による治療だと思っていましたが」<br>
肉体への接触に対する強い抵抗──リラックスさせないと。「あなたの顔の筋肉を私がマッサージして緊張をほぐすのがいやなら、自分でやってみる?」<br>
「馬鹿にされるのは好きじゃありませんな」ウェイランドは立ち上がって、ドアに向かった。ドアはウェイランドの後ろでかちりと閉まった。<br>
フロリアは椅子にもたれかかった。扱いに失敗してしまった。比較的たやすい仕事だという最初の目算は明らかに間違っていたのだ。そのせいで、先を急ぎすぎてしまった。肉体接触を試みるには早すぎた。ウェイランドのよりやりやすい方法でやらせながら、しっかりした信頼関係を作っておくべきだった──つまり会話によって。<br>
ドアが開いた。ウェイランドが戻ってきて、静かにドアを閉めた。椅子には座らず、部屋をぐるぐる回って、窓辺に行き、くつろいだ。<br>
「今しがたの子供っぽい振る舞いを許してください」ウェイランドは言った。「あなたのこのゲームのせいで、ついつい」<br>
「慣れない、自分でコントロールできないゲームは、フラストレーションがたまるものよ」フロリアは言った。ウェイランドが答えないので、フロリアはなだめるような口調で続けた。「あなたを侮辱しているわけではないの、エドワード。あなたが乗せようとしている軌道から外れる必要があるの。あなたは、自分の古い安定を取り戻そうと必死になっているように感じるわ。<br>
でもそれは目的であって、出発点ではないの。目的に着く唯一の方法は、このやり方なのよ。治療のプロセスは、列車を運転するようにはいかないの。あなたはただプロセスの進行を助けるだけ。ちょうど木を育てるようにね」<br>
「このゲームもプロセスの一部ですか?」<br>
「ええ」<br>
「あなたも私も、ゲームをコントロールしないと?」<br>
「そのとおり」<br>
ウェイランドは考えた。「もし私がこのやり方に同意したら、私に何を求めます?」<br>
注意深くウェイランドを観察したが、もはや狂気から勇敢に回復しようと頑張る不安げな学者ではなかった。違った種類の男がいた──バリヤーを張り、計算している。この変化の意味するところは分からない。だが、自分が興奮し始めているのを感じた。つまり、フロリア自身も軌道に乗ったという意味だ──何かは分からないが。<br>
「思いついたことがあるわ」フロリアがゆっくり言う。「あなたのいうこの吸血鬼の話は、あなたの話以上に、あなたの過去にも食い込んでいるし、現在のあなたにも影響している気がする。まだあなたの中にあるのよ。私のセラピーのスタイルは、過去と同じように現在も扱うということ。もし吸血鬼の概念が現在の一部なら、その方針に従って処理するのが肝心」<br>
沈黙。<br>
「吸血鬼であるというのはどういうことか話して。今もそうなの?」<br>
「あなたは知りたくない」ウェイランドは言う。<br>
「エドワード、話して」<br>
ウェイランドは言う。「私は狩るんです」<br>
「どこで? どうやって? どういう種類の──獲物を?」<br>
ウェイランドは腕ぐみして、窓枠に背中をもたれた。「言いましょう、どうしてもというなら。夏にはこの都市に、たくさんの候補者がいます。エアコンも買えないほど貧乏で、屋根や非常口で寝ているような連中。でも分かったんです、そいつらの血は、酒やドラッグですっぱくなっていることが多いと。売春婦も同じです。バーには近づきやすい人がたくさんいますが、煙と騒音だらけです。それに血も汚れています。狩り場の選択は慎重さが必要なんです。私はよく、開店時の画廊や、夕刻のミュージアム・ショーや、夜のデパートなどに行きます──女性に近づきやすい場所に」<br>
そして楽しむのね、女性のほうもハントに来ているのなら、とフロリアは思った──男性のパートナーに近づくために。でも、この男は結婚したことがないと言った。ここをもう少し探ってみよう。「女性だけを?」<br>
ウェイランドはフロリアに皮肉な視線を投げた。まるで、フロリアが思ったよりも少しだけ利発な学生だと気づいたかのように。<br>
「女性を狩るのは、時間とお金がかかります。一番いい狩り場は、セントラルパークにある、〈ランブル〉と呼ばれる場所です。ホモの男性が相手を見つける場所ですよ。私も夜にそこを歩きます」<br>
フロリアは、待合室に会話と笑いのかすかな音をきいた。たぶん、次の相談者が来たのだろう、と、ためらいがちに時計を見ながら、悟った。「ごめんなさい、エドワード、でももう今日は時間──」<br>
「あとちょっと」ウェイランドは冷たく言った。「あなたがきいたんですよ。答えを最後まで言わせてください。ランブルで私は、酒やドラッグのにおいがしなくて、健康そうで、藪の中で〈それする〉のに固執しないような相手を探します。そういう男をホテルに誘うんです。少なくとも、相手は私を安全だと判断しますよ。自分よりも年上で、力が弱そうで、危険な狂人ではなさそうですからね。だから、私の部屋に着いてきます。そこで、相手の血をいただくんですよ。<br>
さて、もう時間切れのようですね」<br>
ウェイランドは出て行った。<br>
フロリアは、ウェイランドの今も続く妄想の中に受け入れられた喜びと、ウェイランドの状態がはじめ考えた以上にかなり悪いという落胆との間で引き裂かれて、座っていた。ウェイランドとともに安楽な時を過ごそうという希望は消え去った。ウェイランドのはじめの説明は、ただの──パフォーマンス、演技だったのだ。それを捨てることを余儀なくされたウェイランドは、すべての重荷をフロリアの上に投げ落としたのだ、あまりにも過大で──奇妙で──一度に理解することは不可能だ。<br>
次の相談者は、パッド付きの椅子を好む。ウェイランドがセッションの一時間の冒頭部分で座っていた木の椅子ではない。フロリアは木の椅子を後ろに下げた。アームレストがフロリアの手の中で外れた。<br>
フロリアは、ウェイランドに触れようという自分の提案に対し、ウェイランドが断固として抵抗したことを思い出した。ウェイランドの指の握力によって、アームレストの接続部が壊れ、そのシャフトは、ばらばらに外れて床に散らばっていた。</p>
<p><br>
六</p>
<p>
フロリアは、スタッフ会議のあと、クリニックのルシールの部屋に入った。ルシールは、両目の上に濡れた布をのせて、カウチの上に寝ていた。<br>
「あなた、今日は顔色が悪いと思うけど」フロリアが言った。「どこが悪いの?」<br>
「夕べひどい目にあったの」ルシールは陰気な声で言った。「チャブスとのセッションのあとで、あなたがどんな気分か分かる気がするわ。まだあの男から逃げられないの?」<br>
「ええ。先週、私の代わりにマーティに診てもらうように計らったんだけど、困ったことに、いつもの時間に来なかったのよ。だめだったのね。私が話したかったのは、ドラキュラのことなんだけどね」<br>
「ドラキュラがどうしたの?」<br>
「あの男は、思ったよりも頭がよくて、強くて、病んでいたわ。それにたぶん、私は自分が思うほど有能でもなかった。あの男はすでに一度、途中で帰ろうとしたわ──ほとんど私の手から離れかけた。私、モンスターを扱うコースなんて取ってないし」<br>
ルシールはうめいた。「いつかみんなモンスターになるわよ」こう言ったのはルシールだ。クリニックでは他の誰よりも長時間働いている。そのせいで夫は悲惨な思いをしている。ルシールは、布を持ち上げ、畳み直して、注意深く額の上に置く。「もし、相談者が途中退場するたびに一〇ドル払っていたら──実はね。その男のことで、あなたとマダムXをトレードしようと思うんだけど、どう? マダムX、覚えてる? ブレスレットをじゃらじゃらいわせて、目にはインコみたいな化粧をして、犬を怖がるあの女よ。今は、空から自分の上に何か落ちてくるのを恐れているわ。ちょっと待つだけでいい──きっとそのうち、三歳のとき通りかかった犬が頭上を飛んでいる鳩みたいに足におしっこをかけたのが原因だったと分かるんじゃないかしら。どう、いい取引でしょ?」<br>
「どうかしらね」フロリアは笑った。「でも、私最近、この件にはまってて──つまりね、自分のいわゆるスキルを磨くって意味でよ。グループ・セッションが邪魔なんだけど、あとは進まない本にない頭をひねったり、いろんなことで──あれがセラピーかどうか自信はないわ──吸血鬼なんて──ね、つまり、以前は、私の頭の中に、この種の案件でステップを間違えないような振り付け法が、たとえ間違いをしでかしてもいつでも修正できるようなパターンがあったのよ。でもそれがなくなったの。まるで自分がたくさんの機械仕掛けの行動をしているだけのような気分。自分がセラピストとして有用だと感じさせていたような感覚が、消え去ってしまった」<br>
うわっ、と、自分の声が陰鬱な自己憐憫の口調に陥るのを聞きながら思った。<br>
「ドラキュラに文句を言ってはだめよ」ルシールが言った。「あなたが自分で引き受けると言い出したんだから。少なくとも、本人はただあなたの手を煩わせるだけじゃなくて、彼自身の問題に集中してほしいと思ってるわ。始めた以上は、続けないとね──そのうち光が見えて来るわよ。さて、私はタイプライターのリボンを交換して、シルヴァーマンの自己萎縮に関する最新ベストセラーのレビューに戻らないとね。公平に評価できる気がしてるわ」元気よく立ち上がった。「私が気を失ってゴミ箱に倒れないように、気をつけててくれる?」<br>
「ルース、私、この件について書いてみたいのよ」<br>
「ドラキュラ?」ルシールは、書類留め、ペン、輪ゴム、古い口紅などでいっぱいになった机の引きだしをかき回した。<br>
「ドラキュラ。その研究論文──」<br>
「ああ、そのゲームなら知ってる。可能な限り多くのことを書き殴り、それを読み上げて、相談者との間で何が起こっているのかを調べる方法。運がよければ出版できる。いいじゃない! でも出版するつもりなら、汚い論文に書き殴ってはだめよ。本にしなさい。ほら、テーマができたじゃない。今まで時間を費やしてきた辛気くさい統計学の代わりに。これはほんと、エキサイティングよ──フロイトの狼人間に関する本の隣に並べるにふさわしい事例研究だわ、考えてみた?」<br>
フロリアは気に入った。「何て本かしらね──運はなくても名声にはなる。どっちかというと悪名でしょうけどね。どうやったら同僚たちに本物だと信じさせられるかしら? 最近は吸血鬼ものがあふれているし──ブロードウェイやテレビのドラマに始まって、いたるところにある本やら、映画やら。みんな、私がただ流行の尻馬に乗ろうとしてるだけだって言うわ」<br>
「いいえ、違うわ、あなたがやるのは、この男の妄想がいかに流行と関係しているか示すことよ。魅力的テーマだわ」リボンを見つけたルシールは、タイプライターの露出した内側に恐る恐る触れた。<br>
「もし小説化するなら、ペンネームを使うわ」フロリアは言う。「流行の波に乗って、自由に言いたいことを言っていけないわけがある?」<br>
「ねえ、あなた、今まで小説なんて一語たりとも書いていないでしょ」ルシールは血走った目でじっと見た。「あなたがベストセラーを書けるという証拠はないわよ。むしろ、あなたは今までに、セラピーの経緯に関して正確に記録するための記憶力を訓練してきている。それを無駄にするのは馬鹿だわ。ガチガチの専門書こそふさわしい──この分野に生きるどんな女性にとっても、自慢の種になる。あなたのドラキュラの身元事項を調整するにあたって、著作権侵害にならないよう、法的助言をきちんと得ておいたほうがよくてよ」</p>
<p><br>
七</p>
<p>
籐の椅子は修理する価値がなかった。寝室にあるもうひとつの同じものを、代わりにオフィスに置いた。不思議だ。経歴からすると、ウェイランドは五二歳だ。外見からすると、筋肉質タイプではない。ドゥにきけばよかった──でも、正確には何と言って? 「ところで、ドゥ、ウェイランドは、サーカスのムキムキマンとか、鍛冶屋でもやってたことがあるのかしら? こっそりバーベルを上げてるとか?」本人にきいてみようっと──でもまだよ。<br>
クリニックの若いスタッフの何人かを小さなパーティに招待し、他の友人数人も呼んだ。素敵な夕べだった。あまり飲む人たちではない。つまり知的な会話が保証される。客たちは長いリビングを歩き回り、あるいは窓辺に二人三人と並んで話ながらウエストエンド通りを見下ろしている。<br>
モートが来て、部屋の雰囲気が温かくなった。アマチュアの室内音楽の仲間とのセッションを終えたばかりで、チェロを演奏した喜びにまだ輝いている。その声は、大柄な男にしては意外なほど軽い。時々フロリアは思う。チェロの深い音色こそが、本当の声ではないのかと。<br>
他の客と話しているフロリアの横にモートは立っていた。心地よいその巨体に寄りかかったり、手を腰に回してもらったりするまでもない。二人の関係は長い。お互いの存在にたやすく喜びを感じることをことさらにアピールする必要も隠す必要もない。<br>
モートは興味を音楽からたやすく次の好みの話題に移した。運動選手の力と技術についてである。<br>
「今書こうと思っている論文はこういう問題を扱っているの」フロリアが言った。「背か高くて痩せた男が、並外れて強いということがありうるのかしら?」<br>
モートは独特の考え深い顔で歩き回る。答えは否定のようだった。<br>
「でも、チンパンジーはどうです?」若いクリニックの職員が言った。「わたし、テレビで動物使いをしている男とつきあっていたんですよ。カレいわく、三歳のチンパンジーでも、強い男を倒すことができるとか」<br>
「すべては肉体的条件によるなあ」他の誰かが言った。「現代人は軟弱だから」<br>
モートはうなずいた。「一般的に人類は、他の動物に比べて脆弱にできている。筋肉の付着点(インサーション)の問題なんだ──筋肉が骨にどういう角度で付着しているのか。ある角度は他の角度よりもてこの力が強く働くんだ。そういうわけでヒョウは自分より大きな動物を倒せる。流線型の体型に、とてつもない力を与えるのは筋肉の構造なんだ」<br>
フロリアは言った。「もし人間の筋肉の付着点がヒョウと似ていたら、かなり普通と変わって見えるかしら?」<br>
「訓練した目でないと違いは分かるまいね」モートは言った。内なるビジョンに呆然としたような声だ。「なんということ、何という運動家なんだ──ヒョウ並に強い男がもし十種競技に出たら?」<br>
他の客が帰っても、たいていの場合と同じくモートだけ残った。筋肉であれ何であれ、付着点/挿入(インサーション)に関する冗談は、すぐに、より表現豊かで動物的な音へと変わったが、そのあとフロリアは、モートとここちよく寄り添って語り合っている気分ではなくなってしまった。肉体の動きが止まると、すぐさまフロリアの心は新しい相談者へと移っていた。あの男についてモートと議論する気にはなれない。そこでフロリアはできるだけ穏やかにモートを送り出すと、グラスにオレンジジュースを入れて、キッチンのテーブルに一人で座った。<br>
自分の人生を叩き壊してしまった、反抗的な吸血鬼の自我を備えた、あの切羽詰った灰色の髪の学者、ウェイランドの自我の再統合へと、いかにして近づくか?<br>
壊れた椅子について、木を壊したウェイランドの大きな手について考えた。もちろん、木が古く、糊も乾いていたせいだ。そうでないとあんなことはできない。何しろ、ウェイランドは人間であって、ヒョウではないのだから。</p>
<p><br>
八</p>
<p>
三度目のセッションの前日、ウェイランドは電話をよこし、ヒルダに伝言を残した。明日は予約した時刻にオフィスへは行けないが、もしよろしければ、ランドーアー先生にいつもの時刻に中央公園の動物園に来てほしい、という内容だった。<br>
わたし、あの男の言うがままに、ここから動物園くんだりまで行くのかしら? だめよ──でも、どうして断るの? あの男に自由にさせておいて、違った条件下で何が起こるかを見てみればいい。しかも今日はいいお天気。きっと五月の陽気はもう最後よ。蒸し暑い夏が始まる。フロリアは嬉々としてケニーのセッションを早々に切り上げ、動物園に歩いていくための時間を工面した。<br>
平日にしてはかなりの客が集まっていた。身なりのよい若妻が、ベビーカーで清潔な元気のいい赤ん坊を運んでいる。ウェイランドはすぐに見つかった。<br>
ウェイランドはアザラシの巣とにごった緑色の池を囲むレールによりかかっている。肩にかけたジャケットが、長い背中に優雅に垂れている。フロリアはウェイランドが粋でちょっと異国風に見えると思った。通り過ぎた女が振り返って見るのに気づいた。<br>
ウェイランドは道行くすべての人を見ていた。この男は私が背後から近づいているのに気づいている、という印象を持った。<br>
「オフィスから外に出ることは、いい気分転換ね、エドワード」フロリアは、ウェイランドの近くの柵へ近づきながら、言った。「でもこれは、ただいい空気を吸うだけのことじゃないわね」太ったアザラシが優雅な彫刻のように、コンクリートの上に寝ている。目を幸福に閉じ、毛皮は日光で乾いている。半透明の水彩の赤褐色だ。 <br>
ウェイランドは柵から体を起こす。二人は歩く。ウェイランドは動物を見ない。その目はひたすら群集を追っている。そして言う。「あなたのオフィスのあるビルで、誰かが私を見張っていました」<br>
「誰が?」<br>
「いくつかの可能性があります。うわっ、何てひどいにおいだ──同じような環境に閉じ込められた人間も似たようなにおいがしますがね」風船を取りあって、動物園から音楽時計の下へ向かいながら叫んでいる子供二人を、ウェイランドはよけた。<br>
二人は公園を北へ向かう登り坂の道を歩いた。歩幅を少し広げることで、フロリアは遅れずについて行けた。<br>
「それがたいまつを持った農夫?」フロリアは言った。「あなたを追ってるのは」<br>
ウェイランドは言う、「なんて子供っぽい発想」<br>
いいわよ、じゃあ他の手を考える。「あなたこないだ、ランブルで狩りをする話をしたわね。その話に戻っていい?」<br>
「お望みなら」ウェイランドは退屈したような口調だ──自己防衛? 間違いない──この読みは正しいという自信があった──そう、間違いない、この男の問題は、自分の受け入れがたい側面を〈吸血鬼〉の幻想に変容させてしまうところにある。この男の世代の人間にとって、ホモの衝動と向かい合うのは破滅的なことであり得る。<br>
「あなたがランブルで誰かを拾うときには、お金を払うの?」<br>
「大抵は」<br>
「お金を払うことについてはどう思うの?」怒らせるのを期待しての発言だ。<br>
ウェイランドは軽く肩をすくめる。「別に。パンを買うために人は働きますよ。実際、私だってすごく頑張って働きます。なぜ自分が生活するために、稼ぎを使っていけないんですか」<br>
なぜこの男は狙い通りの反応を示さないのだ。困惑して、フロリアは立ち止まり、噴水の水を飲んだ。それから歩き続けた。<br>
「一度獲物を捕まえたら、どうやって──」言葉を探す。<br>
「襲うのか?」ウェイランドがひょうひょうと言葉を継いだ。「首のここに、押すと脳への血流を妨げる点があるんです、そこを押すと意識を失う。そこまで近づくのは別に難しくはありませんよ」<br>
「性的な行為の前にするの、それともあとに?」<br>
「可能ならば前にです」淡々と言う、「そして性的行為の代わりに」振り向いて、歩いている道を見下ろす花崗岩の露出した場所へと続く坂道をゆっくり登って行った。そこに腰を降ろすと、今来た道を振り返った。今日スラックスで来てよかったと思いつつ、フロリアは横に座った。<br>
ウェイランドは大してショックを受けていない──その状態からは程遠い。もうひと押ししないと。このままクールな状態を保たせてはならない。「女性より男性を獲物にすることが多いの?」<br>
「その通り。一番簡単な手を使いますよ。男性のほうが女性よりも常に近づきやすい。女性は何かの賞品みたいに壁を作っているか、繰り返し子供を生んで、肉体的に衰え、不健康な獲物にしかならないことが多いからです。最近では状況が変わってきましたが、ゲイの男性が未だに最も近づきやすい獲物なんです」女性の歴史に関する予期せざるひどくゆがんだ認識に対する驚愕からフロリアが回復する間に、ウェイランドは快活に付け加えた。「あなたは本当に注意深く表情をコントロールしますな、ランドーナー先生──不満のそぶりすら見せない」<br>
自分が不満を持っているのにフロリアは気づいた。ウェイランドが性的に男性オンリーでなければいいのに、と思っている。ああ、何てこと。<br>
ウェイランドは続けた。「まだあなたが私を、すでに何かの犠牲になった相手を狙って、獲物にするだけだと思っているのは疑いありませんね。世の中はそういうものです。狼は群の端を歩いているものを狙います。ゲイの男性は、人間の群から保護を拒否され、同時に自らをアピールし近づきやすいようにすべく奨励されています。<br>
他方、狼と違って、私は殺さずに栄養を得ることができます。それに、私の選ぶ獲物たちは、殺さざるを得ないような脅威を私に与えることはありません。自分たち自身が外れ者ですから、私の真意が分かっても有効に非難することはできないのです」<br>
ああ、なんとうまく、完璧に、非情に、この男はホモのコミュニティから自分を遠ざけていることだろう!「で、どんな気分、エドワード、その人たちの目的に関しては──つまり、あなたに対する性的期待については?」<br>
「私が獲物に選んだ女性が抱く性的期待に対する感情と同じですよ。興味ありません。しかも、私の飢えが高まると、性的興奮は不可能になります。私の肉体が反応を示さないことに、誰も驚かないようですよ。灰色の髪の男は不能であたりまえだと思われているのは明らかです。私には願ってもないことですよ」<br>
下を子供たちがラジオを振りながら通りすぎた。ラジオのアンプで拡大されたずんずんいう音、泣き声や話し声が混じりあって耳に残る。フロリアは見るともなく子供たちの姿を目で追いながら、自分の不能を冷静な無関心の口調で話す男など聞いたことがないと思い、また驚いた。この男に自分の問題についてきちんと話をさせられるようになったのだ。最初のセッションのときと同じぐらい流暢に話しているが、今回は演技ではない。この男はフロリアが期待するよりも、それをいうなら吸血鬼について知りたいと思うよりも多くのことを話し、フロリアを圧倒する。何てことよ。フロリアは耳を傾け、理解したと思う──いったい何の役に立つ? いまは、ちょっとしたクールな真実を求める時だ、と思った。この男がこの信じがたい詳細をどこまで話せるのか見極めるのだ。全体構造を捉えるのだ。<br>
フロリアは言う。「ご存知だと確信するけど、簡単に体を許す人は性別にかかわらず、病気を持っていることが多いのよ。最後の健康診断はいつ?」<br>
「親愛なるランドーアー先生、私が健康診断を受けるとすれば、最初で最後のものになるでしょう。幸い私は大して必要を感じません。大半の深刻な病が──例えば、肝炎──私には、獲物の皮のにおいによって分かるのです。警戒して私は吸血を控えます。病気になることもよくありますが、私はそういうとき誰にも邪魔されない場所にひきこもって回復を待ちます。どんな病気よりも医者の関心のほうが私には危険なのですよ」<br>
下の通りを見ながら、ウェイランドは穏やかに続けた。「私を見るだけでは、私の個性的な体質の手がかりはまったく見つけられないでしょうな。でも信じてください、寝ぼけ眼の開業医がほんのちょっと詳しい検査をするだけで、私が普通とは違った驚くべき特質を備えていることが分かるのです。私は必死で健康を維持していますし、例外的に堅固な体を備えているのです」<br>
個性的であり、肉体的に卓抜しているという幻想。それがこの男を向こうの世界に追いやっている。
2006-05-07T23:05:33+09:00
1147010733
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占領軍 Occupation Force フランク・ハーバート
https://w.atwiki.jp/brunner/pages/903.html
<p>占領軍 Occupation Force フランク・ハーバート</p>
<p>
男が目を覚ますまでには長い時間がかかった。どこかでどんどんとたたく音がしている。ヘンリー・A・レウェリン将軍は慌てて目を開けた。寝室のドアに誰かいるらしい。今度は声がする。「将軍殿──将軍殿──将軍殿」部下の斥候兵だ。<br>
「もういいワトキンス、目は覚めている」<br>
ノックの音はやんだ。<br>
将軍はベッドから脚をぶらぶらさせながら、目覚まし時計の蛍光文字盤を見た──二時二五分。いったい何事だ? 将軍はローブをするりと身につけた。背が高く血色のいい男だ──統合参謀本部長会議の議長である。<br>
将軍がドアを開けるとワトキンスは敬礼した。「将軍殿、大統領閣下が緊急閣議を招集なさいました」斥候は、全部の単語が同時に聞こえるほどの早口で告げ始めた。「エリー湖並の大きさの地球外宇宙船が、地球の周りを回って、攻撃準備を進めているようなのです」<br>
将軍がその言葉の意味を理解するのに一秒もかからなかった。鼻を鳴らす。<br>
〈パルプ・マガジンにでも載りそうな戯言だわい!〉と将軍は思った。<br>
「将軍殿」ワトキンスが言った、「ホワイトハウスまでお連れするための参謀部の車が、下で待機しています」<br>
「着替えるから、コーヒーを一杯淹れてくれ」将軍は言った。</p>
<p>***</p>
<p>
五ヶ国の代表、全閣僚、九人の上院議員と一四人の下院議員、更には、FBI機密業務部局及び全軍事担当部局の代表者たちが、この会議に参加していた。ホワイトハウスの避爆シェルターにある会議室が会場である──壁いちめんに本物に似せて作られた窓があって、その奥に写真がはめ込まれている。レウェリン将軍は樫の会議テーブルを間に挟んで大統領の真向かいの席だった。大統領が木槌をたたくと、会議室のざわめきはぴたっとやんだ。補佐官が立ち上がって、最初に状況説明を行った。<br>
午後八時頃、シカゴ大学の天文学者が飛行物体を目撃した。その飛行物体は、おおよそオリオン座の三ツ星の方角から飛来した。他の観測者に知らせたところ、その一人が政府に通報しようと提案したのだった。<br>
その宇宙船は信じられない速度で矢のように訪れ、地球を一時間半で周回するように軌道を変えた。その時点では既に肉眼で見えるほどになっており、いうなればもう一つの月だった。だいたいの見当で大きさは全長一九マイル、幅一二マイル、ちょっと見には卵形である。<br>
分光分析機による分析では、屈折望遠鏡を使って調べたところ、炭素の痕跡が認められ、恐らくは水素イオン流を噴出して駆動しているのだろうと思われた。その侵略者はレーダーに引っかからず、通信にも応じなかった。<br>
大多数の意見は、地球制服のために派遣された敵意に満ちた宇宙船である、というものだったが、一部には少数ながら、宇宙からの〈注意深い〉訪問者だという意見もあった。<br>
周回軌道に入ってほぼ二時間後、くだんの宇宙船は五〇〇フィートの大きさの偵察機をボストンへ急降下させ、夜のバスを待っている労働者の中から、ウィリアム・R・ジョーンズという男をさらっていった。<br>
少数派の中には、多数派の意見に乗り替わるものもあった。大統領はしかし、宇宙船に攻撃をしようという意見をすべてはねのけた。他国の代表者たちは賛成した。そして、時々自国と連絡を取っていた。<br>
「あの大きさを考えても見たまえ」大統領は言った。「われわれの勝算は、一匹の蟻が、蟻並みの大きさの豆鉄砲で、象を撃って仕留める程度でしかないよ」<br>
「確かに、あの連中がただ用心深いだけだという可能性は常にあるでしょう」といったのは国務省の次官である。「でも、いくら私がどなたかの提案を信じてみたところで、連中が詳しく調べてみるためにボストンからあのジョーンズとかいう人を連れ去ったのだという証拠はどこにもないんですよ」<br>
「だいたいあの大きさからいって、平和的意図があるとはとても思えん」レウェリン将軍が発言した。「あれはもう、侵略軍に決まっています。われわれがなすべきことはただ一つ、ありったけの原子力戦闘機を展開させ、それでもってして──」<br>
大統領が手を振り、レウェリンを制した。<br>
レウェリン将軍は椅子に腰を沈めた。議論でのどがひりひりし、机をたたきすぎた手が痛い。<br>
午前八時に例の宇宙船は、ニュージャージー海岸の上空で一〇〇〇フィートの偵察機を出した。その偵察機は風に乗ってワシントンへ降下してきた。午前八時一八分、偵察機は完璧な英語でワシントン空港と交信し、着陸指令を求めた。仰天した管制塔の通信士は、空港から軍が撤退するまでは近寄らないようにと警告を出した。<br>
レウェリン将軍と消耗部隊の一団が侵略者を迎える役に抜擢された。将軍らは、八時五一分には空港のフィールドに立っていた。青白い駒鳥の卵のような偵察機が、酷くひび割れた滑走路に着陸した。小さなハッチが船の外面で開閉を始めた。長いロッドが出たり入ったりしている。十分後、入り口が開き、タラップが飛び出して地面に突き立った。ふたたび、静寂。<br>
軍に集められる限りのあらゆる武器がこの侵略者へと向けられていた。ジェット機の一団が上空を飛び過ぎる。そのはるか上空には、爆撃機が一機、ぐるぐる旋回している。その胴部には〈爆弾〉と書いてある。すべてが将軍の合図を待っているのだ。<br>
タラップの上の暗闇で、何かが動いた。入り口に四つの人の形が現れた。縞のズボンにモーニングコートを着て、きらきら光る黒い靴を履き、シルクハットをかぶっている。三人は書類鞄を持ち、もう一人が巻物のようなものを持っている。そして、タラップを降りてきた。<br>
レウェリン将軍と補佐役たちは、タラップへと歩き出した。<br>
〈連中は思ったよりも官僚じみて見えるな〉と将軍は思った。<br>
巻物を持った細面で黒髪の男が、最初に口を開いた。「私がクロリアから大使という栄誉を受けてやって来た、ルー・モガシビジャンツです」その英語には誤りがなかった。男は巻物を広げた。「これが信任状です」<br>
レウェリン将軍は、巻物を受け取ると言った。「私は将軍のヘンリー・A・レウェリン」──躊躇した──「地球の代表です」<br>
クロリア人は軽く頭を下げて礼をした。「私の参謀をご紹介しましょう」後ろを振り返った。「エイク・ターゴトキカラパ、ミン・シノバヤタガーキ、それにウィリアム・R・ジョーンズ、こちらは最近地球のボストンから連れて参りました」<br>
全朝刊の紙面を飾った例の顔写真の男を将軍ははっきり認めた。<br>
〈この男が、おれたちの太陽を初めて裏切ったとんでもない野郎だ〉将軍は内心思った。<br>
「着陸までに手間取って、大変申し訳なく思っております」とクロリア大使は詫びた。「植民計画ではたまに、予備段階から次の段階に移るまでに長期間を要せざるを得ないことがあるのです」<br>
〈植民計画!〉将軍は驚愕した。危うく兵士たちに合図を出すところだった。そうなれば、ここは死体で満ち溢れることになる。しかし大使は更に言葉を続けた。<br>
「着陸をだらだら遅延させたのは、怠るわけにはいかない用心のためだったんですよ」クロリア人はいった。「長い時間がたつうちに、私たちのデータは古びてしまいました。サンプリングの時間が必要だったのです。ジョーンズ氏と話したり、データをヴァージョンアップしたりするために」再び大使は慇懃に礼をした。<br>
いまや、レウェリン将軍の頭は混乱しきっていた。〈サンプリング──データだと──〉深呼吸をする。肩の上に、歴史の重圧がのしかかるのを感じつつ、将軍は言った。「われわれにはただ一つだけ、質問があります。大使殿、いったい、あなたがたは、友人として来られたのですか? それとも、征服者として来られたのですか?」<br>
クロリア人は目を少し見開いた。そして、傍らの地球人を振り返る。「私が予想したとおりになりましたな、ジョーンズさん」唇を薄く見えるほど噛みしめた。「あの植民局め! ろくなやつがいない! 能無しが! へまばかりしおってからに!」<br>
将軍は眉をひそめた。「よく分かりませんが」<br>
「いやいや、ごもっともです」大使は元の言葉遣いに戻った。「が、もしも植民局が接触を保ち続けたというのが確かならば──」かぶりを振る。「周りにいるあなたがたの星の人たちをご覧なさい、将軍殿」<br>
将軍はまず、大使の傍らに立っている数人を見た。明らかに人間だ。クロリア人から合図されて、将軍は自分の後ろにいる兵士を振り返り、それから空港のフェンスの向こうで怯えている市民たちを見やった。そして肩をすくめ、クロリア人を向き直った。「地球の人たちは、私の質問に対するあなたの回答を待っています。あなたがたは、友人としてやって来られたのか、それとも征服者としてですか?」<br>
大使は嘆息した。「実のところ、将軍殿、その質問には本当に答えようがないのですよ。あなたはもう気づかれているはずです、私たちが同じ種族だということに」<br>
将軍は次の言葉を待った。<br>
「きっともうお分かりですね」クロリア人は言った。「われわれがとっくの昔に地球を占領していたことを──七千年もの昔にですよ」<br>
~完~</p>
<p>
(一九八五年一月二日刊行「くだらない本」収録の翻訳を改訳)</p>
2006-05-03T01:08:28+09:00
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サターン・ゲーム The Saturn Game ポール・アンダースン
https://w.atwiki.jp/brunner/pages/901.html
<p>サターン・ゲーム The Saturn Game
ポール・アンダースン</p>
<p>1</p>
<p>
もしわたしたちが、何が起こったのかを理解し、未来に再びより悪い悲劇が起こるのを回避するために、何が大事かを理解するのなら、まずあらゆる非難を排除することから始めなければならない。あれは、誰の過失でもなかった。不合理な行動は一つもなかった。なぜなら、最終的な結末は誰にも予測できなかったし、事態の本質は手遅れになるまで理解できなかったからだ。あの悲劇を知り、それに立ち向かった人々が心の内外で発揮した根性こそ、もっと評価すべきものだ。悲劇の入口は現実の至る所に口を開けている、それが現実だ。そしてその向こう側の現実は、こちら側の現実と全く違うということも。時の化身クロノスが横切ったのはただの地獄ではない。人間の経験のとば口なのだ。<br>
──フランシス・L・ミナモト「土星の下の死・否定的観点」(アポロ大学通信、二〇五七年、ルナ、ライバーグ)</p>
<p>
「〈氷の市〉が地平線に見えてきたぞ」ケンドリックが言う。塔は青く輝いている。「ぼくのグリフィンは翼を広げて飛んでいる」その大きな虹色の輝く羽根に当たって、風がひゅうひゅう鳴る。マントは肩から後ろに舞い上がり、空気が首周りの鎖帷子をたたき、ケンドリックを寒気で包む。「ぼくは身を乗り出して、きみを目で探している」左手の槍で体のバランスを取る。ウェイランド・スミスが打ち込んだ鉄の兜が、月光を浴びて青白く光る。<br>
「ええ、グリフィンが見えるわ」リシアは言う。「高く遠く、中庭の壁の上に彗星のように浮かんでいる。わたしはもっとよく見るために、ポーチコの下から外に出たわ。門番がわたしを止めようとして、袖をつかんだけど、わたしは蜘蛛絹の布を破って外に駆け出した」妖精の城は彫刻の氷が溶けて蒸気に変わるように揺らめいている。情熱的にリシアは叫ぶ。「本当にあれはあなたなの、ダーリン?」<br>
「そこにとどまるんだ!」アルヴァーランが一万リーグ離れた神秘の洞窟から叫ぶ。「わたしの送るメッセージはこうだ。もしこいつが島のサー・ケンドリックだと王が疑えば、竜を使って襲わせるか、きみから救いのチャンスを奪うだろう。戻るのだ、マラノアの姫。そいつがただの鷹だと思い込んでいるふりをするのだ。きみの言葉に信念の魔法を授けよう」<br>
「ぼくはずっと空高くにいる」ケンドリックスが言う。「占いの水晶球を使わない限り、妖精の王はこの獣に乗り手がいるとは思うまい。ここからぼくは都市と城の様子を窺う」そしてそれから──? 先は分からない。ただ分かっているのは、姫を救わねばならない、さもなければ死ぬということだけだ。救出にいったいどれだけかかるだろう。あと何夜、姫は王の腕に抱かれるのか?<br>
「きみたちはヤペトゥスを見張る当番だったと思うが」マーク・ダンツィヒが遮った。<br>
その乾いた口調に他の三人は驚き、しらふに返った。ジャン・プロバーグはとまどいに、コリン・スコビーは苛立ちに顔を赤らめる。ルイ・ガルシラソは肩をすくめてにやりと笑い、シートベルトで固定した体の前にある操縦コンソールを見る。一瞬、沈黙と影と宇宙からの光が船室を充たす。<br>
観察を容易にするために、室内の灯りは、計器盤の薄暗い光を除き、すべて消されている。太陽側の船窓は目隠しを降ろしてある。他の窓はどれも星が充満しており、あまりにも数が多く明るいので、その間の暗闇は光に溺れてしまっているようだ。天の川は銀色の流れ。船窓の一つからは、土星の半球が見える。昼側の半球は、青白い金色と、輪の中央に位置する豪華な帯であり、夜側の半球は、雲を照らす星灯りと月光のかすかにちらつく光である。それは月にかかる地球と同じぐらいの大きさに見える。<br>
前方にヤペトゥスがある。宇宙船は衛星の周りを周回しながら、良好な視野を維持するために回転している。船は夜から朝に変わる線を既に越え、内側の半球の中央辺りに到達している。むきだしの穴ぼこだらけの地表を夜に置き去りにして通過し、いま、太陽に照らされた氷の国の上空を飛んでいる。まばゆいばかりの白さが、閃光や光のかけらを散らして輝き、天に向かって幻想的な形を解き放つ。圏谷、クレヴァス、青に縁取られた洞穴。<br>
「ごめんなさい」ジャン・ブロバーグは、小さな声で言う。「きれいね、信じられないぐらいきれい──ゲームで行って来た場所と同じぐらい──びっくりしたわ」<br>
「はん!」マーク・ダンチヒが言った。「君は来るべき冒険に多大なる期待を抱き、その結果、ゲームの中でそれとよく似た環境を作りあげたということさ。そうじゃないとは言わせないぞ。おれはこの八年、似たような行動を何度も見てきたんだから」<br>
コリン・スコビーは荒っぽいしぐさで答えた。回転による重力はあまりに小さく、感知できるほどの体重を与えてくれない。コリンの体は空中を飛んで、人でいっぱいの部屋を越え、化学者にぶつかる間際に、辛うじて取っ手をつかんで体を止めた。「あんたは、ジャンを嘘つき呼ばわりするのか?」うなるように言う。<br>
たいていの場合、この男は陽気にはったりをかます。たぶんだからこそ、この男の態度が突然恐ろしく感じられたのだ。コリンは三十代半ば、大柄で灰色の髪の男だ。着ているカバーオールもその下の筋肉を隠すことはできない。顔に寄った皺が、その顔の無骨さを引き立てている。<br>
「お願い!」ブロバーグが叫ぶ。「喧嘩はいやよ、コリン」<br>
地学者はジャン・ブロバーグを見返した。ジャンは細身で、繊細な容貌をしている。四十二歳という年齢と、長命措置にもかかわらず、肩に垂れかかる赤茶色の髪には白いものが縞のように混じり、灰色の目の周りには皺が刻まれている。「マークが正しいわ」ため息をつくように言う。「わたしたちはここへ科学のために来ているのであって、白昼夢を楽しみに来ているのではないのだから」手を前に伸ばしてスコビーの腕に触れ、恥ずかしそうに微笑んだ。「あなたはまだ、ケンドリックの性格がまったく抜けていないんじゃない?
勇敢で防御的で──」言い止める。この早口のしゃべり方は、リシアの口調の面影があるどころではない。ジャンは唇を押え、赤面した。涙があふれ、空気に乗って流れ出す。無理に笑ってみせる。「でも、わたしはただの物理学者ブロバーグ。宇宙飛行士トムの妻、ジョニーとビリーの母親──」<br>
その視線が土星の方向に向かう。家族が待つ船を探すように。星ぼしの間を、太陽の光を帆に受けて走る星のような姿を、ジャンは実際に目で探したのかも知れない。だが、今その船は遠くにある。クロノス号ほどの巨体ですら裸眼には見えない。何百万キロのかなたでは。<br>
ルイ・ガルシラソは、操縦席からきいた。「おれたちのささやかな喜劇、コメディア・デラルテの何がいけないって言うんだ?」アリゾナなまりのまのびした口調が耳に心地好い。「着陸はまだだいぶ先だし、それまでは自動操縦でいくんだから」小柄で浅黒く器用なこの男はまだ二十代だ。<br>
ダンチヒは落ち着き払った革のような表情をしかめてみせた。節制と長命措置のおかげで、六十代の年齢にもかかわらず、小さな体にしなやかさを保持している。自らの顔の皺や後退する頭髪すらもギャグにしてしまう。だが今はユーモアを放棄している。<br>
「きみたちは、何が問題なのか分かってないということかね?」鷲鼻の先端が、拡大された衛星を映すスキャナーのスクリーンに突き出される。「全能の神!
おれたちが着陸しようとしているのは新しい世界なのだ──小さいけれども、世界には変わりない。しかも、おれたちの想像を越えた奇妙さがある。おれたちの前にここへ来たのは、無人の飛行探査艇一機と、着陸してすぐにデータを送るのを止めた着陸探査艇一機だけだ。計測器とカメラにだけ頼っているわけにはいかん。目と脳を使うべきだ」スコビーに向かって言った。「コリン、ほかの連中がだめでも、きみだけは骨の髄まで理解してなきゃならん。きみは地球だけでなく、月でも勤務していたんだから。人類があちこちに入植し、多くの研究を重ねてはいても、それを越える厄介な驚くべき経験をしたことがないわけではないだろう?」<br>
屈強な男は落ち着きを取り戻した。答えるときには、その声にアイダホの山々のような静けさが戻ってきていた。「そのとおりだ」スコビーは認めた。「地球をいったん離れたら、情報が多すぎるなどということはあり得ない。それを言うなら、情報が十分だということすらあり得ない」そこで言葉を切る。「とはいえ、臆病さは、せっかちさと同じぐらい危険なものだ──あんたが臆病だという意味ではないよ、マーク」慌ててつけ加える。「なにしろ、あんたとレイチェルは、そうしようと思えば、オニールの快適な家で優雅な年金生活だってできたんだから──」<br>
ダンチヒはくつろいで微笑んだ。「おおげさに聞こえるかも知れんが、これは挑戦なんだよ。同じぐらい、おれたちはここの探査が終わったら、故郷に帰りたい。〈バー・ミツバー〉に孫の一人や二人が生まれるのを見に行かないとな。そのためには、生きて帰るのが絶対条件だ」<br>
「おれが言いたいのは、あんたがあんまりびびってると、必要以上に悪い事態に陥るのがおちだってことだよ──あっ、気にしないでね。たぶん、あんたの言うことは正しいよ。おれたちは、夢遊びを始めるべきじゃなかったんだ。あの強烈なビジョンに、おれたちはちょっとばかり熱中し過ぎてしまった。もう金輪際止めような」<br>
だが、スコビーの目がふたたび氷河に戻ったときも、完全に科学者の冷静さをとり戻してはいなかった。ブロバーグやガルシラソも同様である。ダンチヒは手のひらを拳でたたいた。「あのゲームに──」ほかの誰にも聞き取れないほど低い声でつぶやく。「あのいまいましい子供だましのゲームに、正気のかけらもあるはずがないだろう?」</p>
<p><br>
2<br>
ひとびとは、今以上に正気になることはないのか?
きっとないだろう。<br>
その問いに答えるには、まず多少の歴史を学ぶべきだ。初期の産業宇宙開発計画が破滅から文明や地球を救う希望をもたらしたとき、姉妹惑星を開発することよりも、まずそれについて、より多くの知識を得ることが必要なのは明らかだった。そのための努力は、まず最も敵対性の少ない火星から始めなければならなかった。現地へ小さな有人宇宙船を送ることを、自然法則が禁じるわけではない。むしろそれをためらわせるのは、たかが三、四人の人間を一ヶ所に数日いさせるだけのために、多くの燃料や時間や努力を費やさねばならない馬鹿らしさゆえであった。</p>
<p>
J・ピーター・バユク号の建造には、更に多くの時間と費用を要したが、最終的に、事実上一個のコロニーが、巨大な日光帆を広げ、一〇〇〇人の人間を目的地へ、半年で比較的快適に運ぶ段階になって、ようやく利益を生んだ。その利益は、コロニーが衛星軌道から地球へ向けて、自らの目的のためには必要のないフォボスの有益な鉱物を送り出すと、圧倒的なものになった。むろんコロニー自体の目的は、本当に徹底的な時間をかけた火星の研究に向けられていた。それには、火星表面全体への予備探査船の着陸及び長期滞在も含んでいる。<br>
この程度述べれば思い出すには十分だろう。木星に至るまでの太陽系内縁全体について、同じような基本理念のもとに数かずの探査が成功を収めたことを、いちいちつまびらかにするまでもない。ウラジミル号の悲劇は、水星への再探査の理由となった──そして左翼的で政治的な形で、英米連合を〈クロノス〉計画に駆り立てた。<br>
その船の命名は思った以上に的を射ていた。土星への航程には八年かかるのだ。<br>
健康で生き生きした精神を保つ必要があるのは、科学者だけではない。船員や技術者や医師や警官、牧師、エンターティナー、コミュニティ全体を構成するあらゆる身分の者が正気でなければならない。全員が非常事態に備えて、二つ以上の技能を要求されたし、定期的で退屈な訓練でその技能を維持する必要があった。環境は制限的で、過酷だ。地球との交信はすぐにビーム経由となり、世界市民たちは、たかだか孤立した村落に過ぎないものに閉じ込められた。さて、何をすればいいだろう?<br>
決められた任務。市民計画の推進、特に船内環境の改善業務。調査、本の執筆、課題研究、スポーツ、趣味クラブ、手工芸作業、より私的な交渉──あるいは、広範なビデオテープのレパートリー。だが〈中央制御装置〉は、二四時間中、わずか三時間しか使用できない。だれも受動的習慣に身を委ねる勇気はない。<br>
ひとびとは不平を言い、口論をし、派閥を組んでは崩し、結婚やもっと曖昧な関係を結んでは別れ、時々子供を生んでは育て、尊敬し、嘲笑し、学び、恋いこがれ、大半の者は、人生にかなりの満足を見いだした。だが、才能のある者のかなりの割合を含む一部の者を悲劇へと導いたのは、〈心理ドラマ〉だった。
──ミナモト</p>
<p><br>
夜明けが氷を通りすぎ、岩の上に落ちた。光は薄暗い上に不安定だが、ガルシラソが着陸のために欲する最後のデータとしては十分だった。<br>
モーターのヒスノイズは消えた。衝撃が船体を揺り動かし、着陸ジャッキが船体を直立させると、静寂が降りた。船員たちはしばらく無言だった。窓の外のヤペトゥスをじっと眺めていた。<br>
船員たちのすぐ周囲は、
太陽系の大部分の領域を支配しているあの荒廃に満ちていた。ぼんやり見える平原は目に見えて湾曲しながら地平線で消えている。人間の頭の高さから見ても、三キロほどの距離までしか見えない。もっと高くにある船室からなら、更に遠くまで見えるだろう。だが、そうしても、かえって星ぼしの間で転がる小さな球の上にいるという感覚が強まるだけだ。地面は宇宙塵と砂利で薄く覆われている。ところどころに、小さなクレーターやとがった岩塊が、地表の岩盤から突き出し、長い、ナイフのような、真っ黒の影を投げている。光の反射に邪魔されて、目に見える星の数が減り、天は夜色のボウルをひっくり返したように見える。天頂と南中点の中間に見える土星の半球とその環が、美しい景観をもたらしている。<br>
氷河もまた同様に、景観に華を添えている──一つといわず複数の氷河が重なっているのかもしれないが、誰にもよくは分からない。ただひとつ分かっていることは、遠めに見るとこのヤペトゥスという星は、軌道の西端で明るく輝き、東端では光が鈍るということだ。というのも、この星の片面が白っぽい物質で覆われている一方で、他の面はそうではないからだ。その境界線は、この衛星が永遠に向き合っている惑星の、ほぼ真下を通っている。〈クロノス〉から放たれた複数の探査機は、この層が厚く、ところどころで変化する謎のスペクトルを持っていることを報告したほかは、たいした情報をもたらさなかった。<br>
いまこの時、四人の人間が、穴ぼこだらけの空虚な景観を見渡し、世界の縁の背後に隠れた驚異を目の当たりにしている。北から南へかけて、城壁、銃眼胸壁、尖塔、溝、峰、断崖、その輪郭や影が、無数の幻想風景を展開している。右方では土星が琥珀色のやわらかい光を投げかける。だが、その光は、東からのきらめきの中にほとんど埋もれかけている。そこでは、太陽が無数の星の一つほどの大きさに縮み上がっている。光の強さこそまぶしくて直視できないほどではあるが。山頂の真上に太陽はある。銀色のきらめきがまぶしく爆発し、ダイヤモンドのかけらのように光が砕け散り、寒々しい青と緑の色を散らしている。涙がにじむほどのめまいを感じながら、目は風景がちらつき揺らめくのを見る。まるでそこが夢の国、妖精の国との国境線のように見える。だがいかにこの眺めが繊細な複雑さに満ちていようとも、その下には寒気と荒々しい衛星の巨塊が感じられるだけだ。ここには〈氷の巨人〉も住んでいるのだ。<br>
始めて言葉を吐き出したのはブロバーグだった。「〈氷の市〉だ」<br>
「〈魔法だ〉」ガルシラソが低い声で言う。「〈おれの魂は永遠にわれを失い、彼の地をさまよう。それが望みに反するという確信もない。おれの洞窟は、こんなふうではない、こんなふうでは──〉」<br>
「ちょっと待て!」ダンチヒが警告の声をあげる。<br>
「ああ、そうだよ。想像力は抑えてくれ、頼むから」スコビーがすぐに正気に返って忠告したが、必要以上に冷たい口調に聞こえた。「探査機の送ってきたデータによれば、急坂は、その、グランドキャニオンに似ていることが判明している。そうだとも、おれたちが思ったよりも凄い地形なんだよ。だからこそ余計に謎めいているんだと思う」ブロバーグに向き直る。「こんなふうに氷や雪が刻まれているのを見るのは初めてだな。ジーン、きみはどうだ? カナダの少女時代に、たくさんの山や冬景色を見て歩いたと言っていなかったっけ?」<br>
物理学者は首を振る。「いいえ、一度もないわ。ありえない気がする。いったいどうやったらこんな景色に? ここには気候の変化はないはず──それとも、あるの?」<br>
「たぶん、この衛星の半分だけがむきだしになっているのも、同じ現象によるのだろうな」スコビーが言った。「直径一七〇〇キロメートルしかない物体が、気体を持っているはずがない。凍っていようがいまいがね。ただし、彗星のように、星が透過可能な物質でできた球なら話は別だが。そうでないことは既に分かっている」まるでみなに示そうとするかのように、スコビーは近くの道具箱からペンチ一丁を取り、ほうり投げ、ゆっくり落ちる途中でそれをつかんだ。スコビー自身の地球上では九〇キロに達する体重は、ここでは約七キロだ。このことから考えて、衛星は本質的に岩でできているに違いなかった。<br>
ガルシラソはこれ見よがしにいらだちを示した。「分かりきった事実や理屈をいまさら応酬するのはやめようや。いまは答えを探すべきときだよ」<br>
ブロバーグは歓喜にはじけた。「そうだよ、外に出るんだ。あそこへ行こう」<br>
「待て」ガルシラソとスコビーが熱心に同意する一方でダンチヒが反論する。「深刻な事態は避けるのだ。注意して、一つ一つ準備をーー」<br>
「いいえ、無理よ。こんな素晴らしい景色を前にしては」ブロバーグの声が震える。<br>
「そうとも、ぐずぐずしてる場合か」ガルシラソが言う。「少なくとも、今すぐ予備偵察が必要だ」<br>
ダンチヒの顔のしわが深くなる。「お前も行くという意味か、ルイス? しかし、お前はパイロットだ!」<br>
「地上でのおれは一般アシスタントですよ。あなたたち科学者のコック長であり、瓶洗い係です。目の前に探検の対象があるのに、おれが座ってさぼりたがるとでも思ったんですか?」ガルシラソは声を抑えた。「しかも、おれが悲惨なことになっても、誰かが船を飛ばし、クロノスからちょっと無線指示と、最終ランデヴーの遠隔操作を受ければすむ」<br>
「そいつは合理的だ、マーク」スコビーが言った。「執務規程に反するのは確かだが、規程はおれたちのためにあるんだ、その逆じゃない。移動距離は短いし、重力は低い。しかもおれたちは危険には注意を払う。重要なのは、あの氷がどういうものか分かるまで、このエリアでおれたちが注意しなけりゃならない悪魔の正体は分からない。いや、ともかく急いでやってみよう。戻ってからプランを練るんだ」<br>
ダンチヒがこわばる。「忘れるな。万が一のことがあったら、助けは一〇〇時間の彼方なんだぞ。こんな予備調査をしたところで、戻るのには大して役に立たんし、土星やタイタンから大きな船を出すのはもっとかかる」<br>
暗黙の侮辱にスコビーは顔を赤くする。「ならこのことも忘れるな。地上ではおれが隊長なんだぞ。おれは今すぐの調査が安全かつ有益だと言うよ。そうしたいなら残るがいい。実際、そういうやつは残らないとな。船を無人にしてはならないという限りでは、規程は正しい」ダンチヒは、数秒相手を見つめてからつぶやく。「ところで、ルイスは行くんだな?」<br>
「ああ!」ガルシラソは叫び、声が船室に響き渡る。<br>
ブロバーグは、ダンチヒの垂れ下がった手をたたく。「大丈夫よ、マーク」優しく言う。「あなたの研究のためのサンプルを持ち帰るわ。その後なら、どういう手順をあなたが最善と考えようが、わたしは驚かないわ」<br>
ダンチヒは首を振る。突然、すごく疲れた顔になる。「いいや」単調な声で言う。「そうはならん。分かってのとおり、わたしはこの探査を興味深い研究のチャンスと考えた頑固な産業化学者に過ぎない。宇宙を旅する間、わたしはひたすら雑事にかまけてきた。その中には、わたしが開発する時間をほしいと思っていた発明二つも含まれていることは知っておろう。きみたち若手三人、ロマンチストの三人は──」<br>
「おいおい、やめろよ、マーク」スコビーが笑おうとする。「たぶん、ジーンとルイスはそうかも知れんが、おれは違うよ。ハギス料理並みに接点がない」<br>
「きみたちは、年々ゲームに興じてきた。ついにはゲームがきむろん読みたいものの大半はみたちをもてあそぶようになった。今起こっているのはそれだよ。きみたちがどんなに動機を正当化しようがね」ダンチヒが友人の地学者を見る目からは、それまでの敵意が消え、意地悪い目つきに変わった。「きみはデリア・エイムスを呼び戻そうとしてるんだろう」<br>
スコビーが気色ばんだ。「デリアがどうした? デリアとおれの間の問題だ。ほかの連中に関係ない」<br>
「あとでデリアがレイチェルの肩に寄りかかって泣いたことと、わたしに秘密を漏らしたことを除けばな。心配無用、わたしは言いふらしはしないよ。とにかくデリアは乗り越えた。だがもしきみがデリアをきちんと思い出せば、三年前にすでに自分の身に起こったことを理解するだろう」<br>
スコビーはあごを引いた。ダンチヒは口の左端に笑いを浮かべた。「いいや、あんたには分かるまい」ダンチヒは続けた。「今のところはわたしにも分からんよ、それは認める。そのプロセスがどこまで進行したのかはね。少なくとも、外に出ている間は、夢想を控えてくれんかね? できるか?」</p>
<p>***</p>
<p>
五年にわたる旅程で、スコビーの部屋は意味論的にスコビー自身のものだった──おそらくいつも以上にそうだった。なぜなら、一度に数日間の夜番をするとき以上に、女を部屋に迎えることはめったにない独身男であり続けたから。家具の多くを自作した。クロノスの農業セクションが木材、皮革、繊維を、食料や空気と同様に製造する。その手工芸は大きなものから古風な彫刻装飾にまで及ぶ。むろん読みたいものの大半はデータバンクから抽出したものだが、棚にも数冊の古い本と、チルドの国境バラッド、一八世紀の家庭用聖書(懐疑主義者であるにもかかわらず)、ほとんどばらけかけているが著者のサインが書かれた〈自由機械〉一冊が入っている。その他さまざまな価値ある書。その上に帆船模型。その船でスコビーは北ヨーロッパの海を航海した。更に、この船に乗っていたときのハンドボール大会で得たトロフィ。隔壁の上には、フェンシングのサーベルとたくさんの写真がかかっている──両親や兄弟、地球上で訪れた荒地、よく行ったスコットランドの城や山や丘、月の地学研究チーム、トーマス・ジェファーソン、そしておそらく、ブルースのロバートの写真。<br>
だがスコビーはテレスクリーンの前のイブンウォッチに座っている。光は映像を十分に吟味できるように暗く抑えられている。予備調査艇は合同演習に出ており、二人の乗員はこの機会を利用して見たものの映像を送ってきている。<br>
何てすばらしい。星いっぱいの宇宙はクロノスからは聖杯のように見える。二つの大きな逆回りの円柱、リンクやポートやロックやシールド、コレクタ、トランスミッター、ドックなどの完全な複合体が、数百キロの距離から和風に輝いている。スクリーンの大部分を日光帆が占めている。回転する金の太陽の車輪のようだ。だが遠くからの眺めは、蜘蛛の巣のような複雑な構造を明らかにしている。それは高く伸び上がり、微妙に曲がっている。蜘蛛の糸よりも細いはず。ピラミッドよりも重労働で、染色体組み換えよりも精密。船はその上を土星へ向かって動く。土星は繊維の中の二番目に明るい光。<br>
ドアチャイムがスコビーを陶酔から引きずり出す。デッキを歩いていく途中、爪先がテーブルの脚に引っかかる。コリオリの力のせいだ。これほど大きな船体が回転し、地球並みの重さを与えているせいで軽く感じる。スコビーが長いこと適応しようとしてきたものだ。だが時々地上の習慣を復活させるものに興味を持つ。自分の不注意さを快活にののしる。楽しい時間を期待していたから。<br>
ドアを開けると、デリア・エイムスが一歩で部屋に入った。すぐ後ろ手に閉め、ドアの前に立って体を支えた。背の高い金髪女で、電子メンテナンスと多くの野外活動を行っていた。「やあ!」スコビーは言う。「どうしたんだい? きみはまるで──」軽い言葉を探す──「船の上にネズミや魚をあげたなら、猫が持ってきそうにないものだな」<br>
デリアは荒っぽく息を吸う。オーストラリア訛りは理解しがたいまでにきつくなる。「あたし──今日──たまたまジョージ・ハーディングと同じカフェにいたの」<br>
スコビーの体を不安が走る。ハーディングはエイムスの部で働いているが、スコビーとはもっと多くの共通点がある。二人とも同じグループに属しているが、ハーディングは同様にライオン殺しのヌクマのような先祖的役割をなんとなく果たしている。<br>
「何があった?」スコビーがきく。<br>
相手はスコビーをじっと見る。「言ってたわ──あなたとハーディングと、ほかのみんなで──今度の休みに一緒に──あなたの、あなたのあのいまいましい活動を、誰にも邪魔されずにやるんだって」<br>
「ああ、そうさ。右舷船体の新しい公園での仕事は、水道管用のリサイクル金属が十分手に入るまで延期だ。該当エリアには人がいない。おれの仲間が一週間の値打ちのある数日間を過ごせるよう手を打ってある──」<br>
「でも、あなたとわたしでアームストロング湖に行くはずだった!」<br>
「ああ、待ってくれ、ただそんな話をしただけだ、まだはっきりした計画はなかった。これはまたとない機会なんだよ──後で行こう、ハニー。すまない」デリアの手を取る。寒気を感じる。スコビーは微笑んでみせる。「さてと、豪華な夕食を作り、ともに、そうだなあ、くつろいだ静かな夕べをすごそうよ。でも手始めに、スクリーンに映ったこの完璧にゴージャスな催し物を──」<br>
デリアは手を振り払う。このしぐさで落ち着いたようだ。「いいえ結構」抑揚のない声で言う。「あなたがあのブロバーグとかいう女といるほうがいいなら、遠慮しとくわ。ただたまたま通りかかったから、あなたたち二人の邪魔はしないと個人的に告げに来ただけ」<br>
「何だと?」スコビーは後じさる。「いったい何をそんなに怒ってる?」<br>
「あなた、よくわかってるでしょ」<br>
「さっぱりわからんよ! ブロバーグとおれが? ブロバーグは幸せな結婚をして、二人の子供がいるし、おれより年上だ。ただの友達だよ。間違いないとも。おれたち二人の間に公にできないような秘密は何一つないし──」スコビーはつばを飲む。「きみはおれがブロバーグに気があると思ってるんだな、そうだろ?」<br>
エイムスは目をそらす。握り合わせた指がぎりぎりと鳴る。「あたし、あなたの単なる便利な存在でいるつもりはないの、コリン。あなたにはそういう女が多すぎる。わたしは望んでいたけど──でも間違ってた、これ以上ひどくなる前に、損を埋め合わせたいのよ」<br>
「でも──なあ、おれはきみ以外の誰にも気はないよ。誓うよ。それにきみは、おれにとってただの肉体じゃない。きみは素敵な女性だ──」デリアは立ったまま黙ってふさぎこんでいる。スコビーは唇をかみ、ようやく言った。「いいとも、認めよう。おれがこの船に志願した最大の理由は、地球での恋に敗れたからだ。プロジェクトに興味がないという意味じゃない。でもわかったんだよ、あれがおれの人生のいかに大きな部分を占めていたか。他のどんな女よりも、ディー、きみこそがこの状況の中で、いちばんおれを慰めてくれた」<br>
ディーは顔をしかめる。「でもあなたの心理ドラマには負けるんでしょ、ね?」<br>
「おいおい、きみはおれがあのゲームに取りつかれてると思ってるんだな。違うぞ。あれは娯楽だ──ああ、〈娯楽〉って言葉ではちょっと弱いかもな──<br>
だがともかくあれは、ごく少数の人が定期的に集まってやるゲームに過ぎん。フェンシングとかチェスのクラブとか、そういうものと変わらんのだよ」<br>
ディーは肩を怒らせる。「いいわ、なら」ディーはきく。「デートの約束を取り消して、わたしと一緒に休日を過ごしてくれる?」<br>
「それは、その、できないよ。この段階では。ケンドリックは今起こっているイベントの中では脇に引き下がれる立場にないんだ。ほかの全員と緊密に関係しているキャラクターだから。もしおれがいなければ、ほかのみんなが何もかも台無しにされてしまう」<br>
ディーの視線が注がれる。「結構よ。約束は約束、そういうことね。でも後で──そんなに怯えないでよ、別に罠じゃないから。そんなことしてもしょうがないでしょ? でも、わたしたちの関係をこれからも続けるなら、そのゲームを早目にやめてくれるかなあ?」<br>
「無理だ──」怒りにとらわれる。「絶対無理だ!」叫んだ。<br>
「なら、お別れね、コリン」ディーはそう言って去った。コリンはディーが後ろ手に閉めたドアを何分間も見つめていた。</p>
<p>***</p>
<p>
巨大なタイタンや土星周辺の探査隊と違い、空気のない衛星に降りるのは単純に改造された月・宇宙シャトルで、頼りにはなるが性能は限られていた。ブロックのような形が地平線に隠れると、ガルシラソが無線にいった。「マーク、船が見えなくなった。おかげで眺めがよくなったといわざるを得ない」軌道に展開した中継微小衛星の一つが言葉を伝えた。<br>
「ならば、通り道を火で焼いて跡をつけたほうがいいな」ダンチヒが注意を促す。<br>
「おやおや、あんたはまたずいぶん口うるさいな」だがガルシラソは腰の噴射銃を抜き、地面に色鮮やかな虹色の円を描いた。仲間が氷河にたどり着くまでは短い間隔で同じ印をつけるつもりだ。地表に塵が深く積もっている場所を除いては、低重力下で足跡は薄く、歩行者が岩の続く場所を通っている間はまったくつかない。<br>
歩行者だと? いいや、跳躍者といったほうがふさわしい。三人は、陽気に飛び跳ね、宇宙服や生命維持ユニット、道具食料パックにはほとんど邪魔されない。むき出しの地面は三人の足元を逃げるように過ぎ去り、より高く、はっきりと、輝かしく、氷が目の前に姿を現すのだ。<br>
そのさまを本当に描写することはできない。麓にある坂やその上の恐らくは百メートルほどある断崖について語ることはできる。そこには遥かに静寂な尖塔が聳え立っている。優雅に湾曲しながら丘を登る階段、レース模様の欄干、縦溝のついた岩山、驚異に満ちた洞窟へのアーチ型の入り口、溝の奥深くの謎めいた青色、透明の中を光が流れる緑色、輝きと影が曼荼羅を織り成す白色を貫く宝石のような光について語ることはできる──だが、どれだけそういった言葉を尽くしても、スコビーの先ほどの不適切とすら言っていいグランドキャニオンへのたとえほどにも真実を伝えられない。<br>
「止まって」こう言うのは十二回目だった。「写真を数枚撮りたい」<br>
「ここに来たことのない人が見てわかるかしら?」ブロバーグがささやく。<br>
「まあ無理だな」同じく嗄れた声で、ガルシラソが言った。「多分おれたちだけだ」<br>
「それはどういう意味だ?」ダンチヒの声が答えを求める。<br>
「気にしなくていい」スコビーがぴしゃりと言う。<br>
「わかって──いる──と──思う」化学者は言う。「確かに、すばらしい眺望だろう。だが、そのせいで感覚が麻痺しているんじゃないかね」<br>
「そのつまらないおしゃべりをいい加減やめないと、こちらから回線を切ってしまうよ」スコビーが警告する。「おれたちは仕事があるんだから。お荷物にはならないでくれ」<br>
ダンチヒはため息。「悪い。あー、ところで、あれの性質についての手がかりはつかんだかね──あの物は?」<br>
スコビーはカメラをフォーカスする。「そうだねえ」少し声が和らいでいる。「影も素材も違っている。間違いなく形も違う。飛行探査艇が送ってきた反射スペクトルからの推測を裏付けているようだ。構成素材は混合物というか、ごた混ぜというか、その両方というか。いくつかの物質のね。それにところどころで変化しているよ。水の氷は明らかだが、二酸化炭素の氷もあるとおれは確信している。アンモニアやメタンもあるね。量は少ないがそのほかの物質もね」<br>
「メタン? 真空中の大気温度下で固体のままでいられるのか?」<br>
「確認しなければならないだろうさ。でもおれが推測するに、たいていの時間は十分に温度が低い。少なくともメタン組織が圧力のかかる内部に収縮する程度にはね」<br>
ヘルメットのヴィトリル球体の中で、ブロバーグの表情が輝く。「待って!」叫ぶ。「思いついたことがあるの──着陸した探査機に何が起こったのか」息を吸う。「氷河のほぼ麓に下りたのを思い出して。<br>
宇宙からあの砦の眺めは、雪崩で探査機が埋もれたことを示しているようだったわ。でもなぜ起こったのかはわからない。そうね、もしもメタンの層がまさに溶けてはいけない場所で溶けてしまったのだとしたら。ジェットの熱放射が暖めたのね、きっと。そのあとのレーダービームによる等高線マップサーチが最後に必要なわずかな駄目押しをした。氷層が流れて、その上に載っていた全てのものが崩れ落ちたのよ」<br>
「その可能性はあるね」スコビーが言う。「おめでとう、ジーン」<br>
「誰も前もってその可能性を考えていなかったって言うのか?」ガルシラソが嘲弄する。「大した優秀な科学者を連れてきたもんだよ」<br>
「土星に着いてからの仕事と、それ以上にデータ・インプットにみんな圧倒されているからな」スコビーが答える。「宇宙というのは誰もが考える以上に大きいんだよ、せっかちさん」<br>
「ああ、そうとも、反対はしないよ」ガルシラソの視線は氷に戻る。「そうとも、おれたちには謎が尽きることはないってか」<br>
「その通りよ」ブロバーグの目がぎょろっと光る。「物事の本質はいつも魔法のようよ。〈妖精の王〉が支配している──」<br>
スコビーはカメラをパウチに戻す。「無駄話はそれぐらいにして、先へ進もう」てきぱきと命じる。<br>
その目が一瞬ブロバーグを見つめる。おぞましく混じり合った光の中で、ブロバーグが青ざめるのがわかる。それから赤くなり、横を跳び離れる。<br>
【リチアはひとりで〈盛夏の夕べ〉に〈月の森〉へ行った。王はそこでリチアを見つけ、その望みどおり抱き寄せた。やがて引き離すと、エクスタシーは恐怖に変わった。だが、〈氷の市〉に未だとらわれていたリチアは、多くの短命人の間でひっそりと多くの時間を過ごし、多くの美と奇跡をたたえていた。師匠のアルヴァーランは、自らの魂を放ち、リチアを探した。そして自らも見出したものにとらわれた。意志の力によって、島のケンドリックス卿にリチアの場所を伝えた。自らリチアを解放すると誓いながら。<br>
ライオン殺しのヌクマ、東マーチのベラ、遠西部のカリナ、レディ・オーレリア、ハープ使い師オラフの誰一人、これが起こったときには居合わせなかった。】</p>
<p>***</p>
<p>
氷河(太陽系に対応する存在がないという意味で不適切な名称であるが)が平原を突然壁のようにさえぎっている。そこに立ってみると、三人にはどれぐらいの高さがあるのかわからない。だが、線条細工のようなてっぺんへとせり上がる坂道が滑らかでないことはわかる。無数の小さなクレーターには青い影がある。影を作るには十分な高さまで太陽が上がっている。ヤペトゥスの一日は地球の七九日よりも長い。<br>
イヤホンにダンチヒの問いかけが響き渡る。「さあ、もう満足かね? 新しい雪崩に飲み込まれる前に、戻ってくるんだろう?」<br>
「雪崩なんか起こらないよ」スコビーが答える。「おれたちは乗り物じゃないんだ。この地域の地形は何世紀以上の間安定していたことは明らかだよ。それに、誰も何も調べないんなら、有人探査をする意味がないだろう?」<br>
「おれが登ってみればわかるさ」ガルシラソが申し出た。<br>
「いや待て」スコビーが命じた。「おれは山や積雪の経験があるんだ、それに価値があるかどうかはともかくね。おれが最初に登攀ルートを試してみよう」<br>
「お前たち全員があの代物に登るというのか?」ダンチヒがすごい剣幕になった。「完全に頭がいかれたのか?」<br>
スコビーは眉と唇を結んだ。「マーク、また警告するが、あんたが感情を制御できないのなら、回線を切るよ。おれが安全だと判断した道をおれたちは行くんだ」<br>
低重力下を浮かぶように、スコビーは前後へ行ったり来たりしながら進んだ。そうしながらジェクルを調べた。はっきりした物質の層や塊が見える。妖精の石工が切り石をばらばらに置いたようだ──巨人が作業をしたに違いないと思えるほど大きくはない──小さなクレーター群は、〈氷の市〉の防御のための最低層の土手に設けられた前衛拠点だろう──<br>
最も活気のある男のガルシラソは、身動きもせず立ち、景色に見とれた。ブロバーグは膝をつき、地面を調べた。だがその目線は遠くをさまよった。<br>
やがてブロバーグはコリンを招いた。「ねえ来て、コリン。これは発見に違いないわ」<br>
スコビーが加わった。ブロバーグが立ち上がると、立っていた場所の地面のかけらから剥がした小さな黒い小片の集まりを片手いっぱいに持っている。手袋の端からそれが零れ落ちる。「氷の境界が鋭いのはこのせいじゃないかしら」ブロバーグはスコビーに言った。<br>
「何だい?」ダンチヒが遠くからきいた。答えは得られなかった。<br>
「先へ進みながら、塵がどんどん増えているのに気づいていたのよ」ブロバーグは説明を続けた。「これが凍った物質の本体から切り離されたかけらや塊の上に落ちて、覆ってしまったら、溶けるまで太陽熱を吸収するの。あるいはもっと可能性の高いのは、昇華してしまうまでね。水分子ですらこの弱い重力下では宇宙空間に逃げられるわ。氷塊本体は大きすぎて無理だけどね。立方体の法則。粉塵は単純に溶けて短い距離を流れ落ち、その上に落ちた周囲の物質に覆われる。そしてプロセスが止まる」<br>
「ふむ」ブロバーグは手を上げ、スコビーの顎を撫でようとして、ヘルメットに触れ、指で笑顔をなぞってみせる。「合理的に思えるね。だがそんなに多くの粉塵がどこから来たんだ──それを言うなら、氷もだよ」<br>
「わたしの考えでは──」ブロバーグの声は落ち、スコビーにはほとんど聞き取れないほどになる。ブロバーグの目がガルシラソのほうを見る。ガルシラソの目もスコビーをまだ見ていた。その姿が星にシルエットになっている。「あなたの彗星理論を裏付けると思うわ、コリン。彗星がヤペトゥスに衝突したの。彗星は土星に近づき過ぎて惑星の周りでヘアピンカーブの起動を描きながら、ヤペトゥスに近づいたのよ。巨大な彗星。氷がほぼ半球を覆っている。それ以上の水が蒸発してなくなったとは思うけど。粉塵の一部はそこから来てるわ。一部は、衝突の衝撃でできたのよ」<br>
スコビーは鎧をまとったブロバーグの肩をつかむ。「きみの理論だ、ジーン。彗星のことを言い出したのはぼくが最初じゃない。詳しいことを一緒に考えたのはきみが最初だ」<br>
ブロバーグは気づかなかったようだ。更にこうつぶやく。「粉塵は、あの美しい地形を作った浸食を説明するわ。そのせいで、地表の差別的な溶解や昇華を起因し、それは、粉塵が落ちたパターンや、それがくっついている氷の成分に従って決まった。最終的には押し流されるか、包嚢に包まれるかしたわ。上から見えた大きいのや小さいクレーターは、別々の、でも互いによく似た起源を持っているのよ。小隕石が──」<br>
「うぉあ、それなんだがね」スコビーが反論する。「どんな大きさであれ、小隕石は、地面全体の大半を蒸気に変えてしまうほどのエネルギーを発散するんだよ」<br>
「知ってるわ。ということは、彗星の衝突が最近だったことを示しているわ。一〇〇〇年もたってないわね。さもないと、今日この奇跡を見ることはできなかったでしょう。それ以来、大きなものは何もあたっていないのよ。わたしが考えているのは、土星の順行軌道を回っている小石とか、宇宙砂よ。順行なら衝突スピードは比較的遅くなるでしょ。大半は、ただ氷に小さな穴を作るだけ。でもそこに居座ることで、黒いから太陽熱を集めて、再放射して周囲を溶かすの。最後には沈み込んでしまう。その後に残った穴が、横方向の反射的な熱放射を行う。そうしてだんだん大きくなるの。ポットの穴効果よ。そして、氷が違えば成分も違うから、完全に滑らかなクレーターはできないの。その代わり、着陸前に見たようなすばらしいボウル状のクレーターになるのよ」<br>
「すごい!」スコビーはブロバーグを抱く。「きみは天才だぜ」<br>
ヘルメットとヘルメットが触れ、ブロバーグは微笑んで言った。「違う。これは明らかなことよ。自分で考えればおのずと分かるわ」抱き合ったまま、ブロバーグはしばらく沈黙した。「科学的直観が不思議なものだということは認める」やっと続きを話した。「この問題について考えながらも、自分の理性的精神についてはほとんど意識しなかったもの。わたしが考えたのは──〈氷の市〉。神が天から呼び寄せた〈星の石〉から作られているの──」<br>
「おおマリア!」ガルシラソが振り返って二人を見る。<br>
スコビーは女を放した。「さて、確認をしよう」心もとなげに言う。「きみも見たのを覚えているあの大きなクレーターの中へ数キロ入ってみようよ。表面は歩くのには安全に見える」<br>
「わたしはあのクレーターを、〈妖精の王の舞踏ホール〉と呼んでいるわ」ブロバーグが静かに言う。夢が戻ってきたかのように。<br>
「注意するのだ」ガルシラソがからから笑う。「あちらには巨大な医師がいる。王はただの後継者であり、この壁を作ったのは巨人だ。神のためにな」<br>
「ああ、でもおれは中に入る道を探さねば」スコビーが答える。<br>
「確かに」アルヴァーランが言う。「ここからお前を導くことはできぬ。わが魂は、短命人の目を通してしか見られぬのだ。だがお前の相談には答えよう。門に近づくまでは」<br>
「お前たち、またあの妖精話の中を夢遊病のようにさまよっとるのか?」ダンチヒが怒鳴る。「死ぬ前に戻ってくるのだ!」<br>
「黙ってくれないか」スコビーが噛み付く。「単なるおれたちの言葉のあやだよ。それが分からないなら、あんたは脳の使い方がおれたちよりも悪いってことさ」<br>
「なあ、聞くんだ。お前たちが気が狂ったとまではいっとらん。妄想とかそれに類するものは見ていないからな。ただ、お前たちがこの種の場所に幻想を持ち込み、現実がそれを強め、お前たちが自分でも気づかない緊張にさらされていると言っているだけだ。お前たちは宇宙のどこでもそんな風に向こう見ずにずんずん進むのか? 考えてくれ!」<br>
「いいよ。あんたがもうちっと礼儀をわきまえたときに、コンタクトを再開する」スコビーはメインの無線スイッチを切った。まだアクティブな回路は、至近通信の用途に供されているが、軌道中継に達するほどのパワーはない。仲間たちも同じことをした。<br>
三人は目の前の威容に向かい合った。「中に入れば、おれの姫探しを手伝ってもらえるな、アルヴァーラン」ケンドリックが言う。<br>
「できるし、そうするとも」魔法使いが言う。<br>
「待っているわ、最も頼りになる愛すべき人リチアがささやく。<br>
宇宙船に一人残されたダンチヒはすすり泣かんばかりだ。「ああ、あのくそったれのゲームめ!」その声はむなしく空虚の中に消えた。</p>
<p>3<br>
心理ドラマを非難することは、たとえそれが極端に拡張されたものに対する非難であるとしても、人間性を非難することに行き着く。<br>
それは子供時代に始まる。遊戯は未成熟な哺乳類に必要である。肉体や感覚や外世界を操る方法を学ぶ手段だ。若い人間は遊ぶ、遊ぶ必要がある、その頭脳をも用いて。子供が知的であればあるほど、その想像力は訓練を要する。活動性には段階がある。スクリーンの劇を見る受動的段階から、読書を経て、白昼夢、物語、そして心理ドラマへ──子供はそういった確たる呼び名を持たないが。<br>
この学習態度に関しては単純な説明はできない。その形態と過程は、無限に多くの変数に依存するからである。性別、年齢、文化、交友関係だけがもっとも顕著な特徴を示す。例えば、電子化される前の北アメリカの幼い少女は、よく〈おままごと〉遊びをした。一方、幼い少年は、〈カウボーイとインディアン〉ごっこか、〈警官と泥棒〉ごっこをした。今日ではその子孫たちの混在したグループが、〈いるか〉ごっこや、〈宇宙飛行士とエイリアン〉ごっこをする。要するに、小さな部族形態である。一人一人が演じるキャラクターを作り上げるか、小説から借用する。簡単な道具が使われる。例えばおもちゃの武器。棒のようなたまたま見つけた道具を、何かほかのもの、例えば金属のデテクター、あるいはまったく空想の何物かと宣言する。周囲の光景もほとんど常にそうであるのと同様に。そうして子供たちは心理劇を演じながらシナリオを組み上げていく。物理的にある行動を演じられない場合には、言葉で描写する。(「ぼくは本当に高く跳ぶ、火星で跳ぶように。そしてあの古きマリネリスの谷の縁を越え、あの盗賊を奇襲する」)きわめて多くのキャラクター、とりわけ悪役が、しばしば登場するように決定される。</p>
<p>
仲間内で最も想像力あふれるメンバーが、ゲームとストーリーラインの進行を支配する。とはいえ、かなり微妙な手法で、最も生き生きした可能性を提供することを通じてである。だが残りのメンバーは、普通の子供の平均よりも頭がいい。このよく発達した形態の心理ドラマは、誰にでもアピールするわけではないのだ。<br>
アピールする人間にとっては、その効果は有益で永久的だ。しかも心理ドラマの利用によって創造性を増進することを通じて、異なった大人の役割や経験を与える遊戯のヴァージョンを経験することを可能にする。そうやって子供たちは大人世界への洞察を身につけ始めるのだ。<br>
この遊戯は思春期前に終わらない場合でも、思春期が始まると終わる──だが、その形態においてはである。いつまでも同じ形態で行う必要はないのだ。大人たちは多くの夢ゲームを行う。これは自宅で簡単に見ることができる。例えば、爵位や、コスチュームや、儀式。だがどれもこれも同じように儀式だらけの大げさなものではないか? 英雄崇拝、犠牲、自己誇張のどれぐらいの部分が、われわれ人間が持っている人格の表現なのだろうか? 一部の思想家は、社会の側面を研究してこの要素を追跡しようとした。<br>
だが今ここでは、大人たちがおおっぴらに行う心理ドラマに興味がある。西洋文明では、二〇世紀中盤にまずそれなりに大規模に流行した。精神科医は、それを強力な診断および治療手法だと考えた。普通の人の間では、戦争やファンタジーのゲーム、その多くは、想像上あるいは歴史上のキャラクターを登場させていたのだが、こういったゲームがだんだん人気になった。一部においては、これは不幸な時代の制約や脅威からの明らかな逃避であったが、もっと大きな部分では、退屈な娯楽に対する精神の反乱であった。例えば有名なのはテレビである。テレビは当時、余暇を支配するようになっていた。<br>
〈混沌〉がこの動きを終わらせた。誰もがその最近の復活を知っていた──もっと健康的な理由で人は待ち望んだ。データバンクから三次元映像と適切な音声を投射して──あるいは、コンピュータによる統御を通じてそれを更に改良して──プレイヤーたちはリアリティの感覚を得た。それはプレイヤーたちの精神的、感情的な物語世界への没入を助けた。だが次々と、リアルタイムの年の進行と並行して、エピソードの連なる遊戯の中で、二人以上のプレイヤーが一緒に参加する場合はいつも、そういった付属物に対する依存心が薄らぐのを感じていた。練習を通じて、子供時代の生き生きした想像力を取り戻したような気分。そして何か、あるいは空気のような無そのものを、客観化し、望む世界に変えてしまうような気分。<br>
鳥瞰的視野で見るためには、明らかなことを繰り返すのが必要だと思った。土星からのニュースは、幅広い反発を巻き起こした。(なぜ? 恐怖を隠していた存在に触れたからか? これは行われる可能性のある重要な研究のテーマである。)一晩ののち、大人の心理ドラマは不人気となった。絶滅するかもしれない。多くの点でそれはあそこで起こったことよりも悲惨な悲劇だ。ゲームが地球上の正常な人の心を蝕んだという証拠はないのだ。むしろ逆である。疑いもなくそれは、宇宙飛行士が長く困難なミッションの間、正常で注意深くいることを可能にする。たとえ医学上の使い道がなくとも、それは心理療法が応用生化学の一部門になったためだ。<br>
そしてこの最後の事実、現代社会の狂気に対する経験の欠如は、起こったことの根底にある。正確な帰結は予見できなかったけれども、二一世紀の精神科医は、反対していたのだ。八年という前例のない長期にわたり、クロノスのような異常な環境の中で暮らすということに。あらゆる努力にもかかわらず、それは間違いなく奇妙な生活だった──制限的で、完全に人間に制御され、地球上の進化がわたしたちを形作った無数の手がかりをまったく欠いている環境だ。地球外植民者は、この段階で、シミュレーションや心の慰めをいくらでも手に入れることができた。その中では、地球との十分かつ近接した接触と頻繁な訪問の機会が得られるのが恐らく最も重要なことだった。木星への航行時間は長い。だが、それでも土星へのそれの半分に過ぎない。かてて加えて、自分たちのほうが先だったので、〈ゼウス〉の科学者は途中で没頭する研究がたくさんあった。それは後の旅行者がまねするには役に立つまい。そのころまでには、二つの巨大な惑星の間の惑星間通信には、大した驚きはなくなっているだろう。<br>
同時代の心理学者はこれに気づいていた。最もひどい影響を受けるのは、最も知的で想像力にあふれ、活動的な人だろうと理解していた──任務の目的である土星での新発見を担う人たちであろうと。先人ほどそこにある迷宮に慣れていないがために、あらゆる人間の意識の下に隠れたミノタウロスに取りつかれて、乗員たちが心理ドラマから純粋な善意の効果を生み出すだろうと、心理学者たちは考えていた。 ──ミナモト</p>
<p>
チームへの割り当ては出発の前には決定されていなかった。職業能力の発揮と成長を旅の過程に委ねるのが合理的だった。個人的な関係も同様である。究極的にはそういった要素を盛り込むことによって、各個人があらゆる課題に対して行うべきあらゆる訓練を提供することになる。プレイヤーの集団に長期間所属することで、通常は望ましい友情の絆を形成することができる。メンバーにそれ以外の能力がないとしても。<br>
実生活では、スコビーはいつもブロバーグに厳格な礼節を示していた。魅力的だが単婚主義者であり、スコビーとしては、ブロバーグと疎遠になりたくはなかった。しかもその夫が好きだった。(トムはゲームには参加しなかった。宇宙飛行士として、楽しく注意を払うべきことがたくさんあったのだ。)スコビーとブロバーグは二年ほどゲームを続けていた。そのグループは、環境も人物も複雑になりつつある物語の中に、できるだけ多くのものを投入していた。スコビーとブロバーグが親密に話すようになったのはその後だった。<br>
そのとき既にスコビーらの演じるストーリーは複雑化していたため、二人が余暇時間に会ったのはまったく偶然ではなかっただろう。回転軸の無重力レクリエーション・エリアだった。二人は空中を飛び転がりながら、叫び、笑い、快適に疲れ、クラブハウスに行き、ウイングスーツを脱ぎ、シャワーを浴びた。二人はお互いの裸を見たことはなかった。どちらも一言もなかった。だがスコビーは相手の裸を見るのを楽しんでいることを隠しはしなかった。ブロバーグは赤面し、できるだけうまく目をそらした。その後、また服をつけ、家に戻る前に飲むことにした。そしてラウンジを探した。<br>
夕刻監視から夜間監視に変わろうとしている時間だったので、ちょうどいい場所が見つかった。バーでスコビーはスコッチのチケットを買い、ブロバーグは〈ピノ・シャードネー〉にした。機械から飲み物をもらい、バルコニー席に運んだ。テーブルにつくと、広い景色を見回した。クラブハウスは月面重力レベルの支持フレームに造られている。その上には自分たちが鳥のように飛んでいた空がある。その空は、幅広い蜘蛛の巣のようなガーダーで縁取られているというよりも、数個の漂う雲で縁取られているようにしか見えない。その向こう、真正面の反対側のデッキは、いろいろな塊や形が混じり合っている。そこはこの時間帯には光が乏しく、謎めいて見える。その影の間で、人間
2006-05-02T20:20:34+09:00
1146568834
-
マイクル・スワンウィック『グリュフォンの卵』ハヤカワ文庫SF
https://w.atwiki.jp/brunner/pages/900.html
<table cellspacing="0" cellpadding="0" width="100%" border="0">
<tbody>
<tr>
<td width="100%"><span class="postdetails"><nobr><font size="1">時間:
2006年4月22日(土) 23:22 題名:
マイクル・スワンウィック『グリュフォンの卵』ハヤカワ文庫SF</font></nobr></span></td>
<td valign="top" nowrap="nowrap"><a href=
"http://atbb.jp/silvering/posting.php?mode=quote&p=172"><font size=
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"投稿者のIPアドレスを表示" src=
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border="0"></a></td>
</tr>
<tr>
<td colspan="2">
<hr></td>
</tr>
<tr>
<td colspan="2"><span class="postbody"><font size=
"1">短編集、一気に読了<br>
やはり既読のヒューゴー賞受賞の5編の出来がいい。ファンが選ぶ賞だけあって、分かり易いエンターテインメント作品ばかり。<br>
初読は以下の5編。<br>
「ギヌンガガップ」★★★<br>
処女作にしてネビュラ賞候補作らしい。ヴァーリイ的なオーソドックスな宇宙SF。<br>
「クロウ」★★★1/2<br>
一転して、文芸ネタを織り込んだ洒落た時間ものピカレスク小説。<br>
「グリュフォンの卵」★★★<br>
月を舞台にした重厚なパニック小説、力作だがストーリーはやや単調かも。少し難解だった。<br>
「世界の縁にて」★★★1/2<br>
シュールな終末小説の佳作。これもけっこう難しい。<br>
「ウォールデン・スリー」★★★1/2<br>
コロニーものの宇宙SFにして社会科学SF。面白い。<br>
既読ヒューゴー賞受賞5編もバラエティ豊か。ユーモラスなピカレスクものの「犬がワンワンと言った」★★★1/2、クラークばりの宇宙サバイバル+ファーストコンタクトのハードSF2編(「スロー・ライフ」★★★★、「死者の声」★★★★1/2)、作者得意の時間SF2編(ただし作風は全く違い、オーソドックスなタイムパラドックスものの「ティラノサウルスのスケルツォ」★★★1/2と、チェンジウォーシリーズや「永遠の終わり」などへのオマージュと思しきコミカルな形而上ワイドスクリーンバロック風の「時の軍勢」★★★1/2)の5編。<br>
新しさはないが、一定以上のクオリティであらゆるジャンルの作品を書き分ける職人芸は、ディレーニイやゼラズニイよりも、むしろシルヴァーバーグを思わせると思う。充実の1冊。<br>
総合評価★★★★</font></span></td>
</tr>
</tbody>
</table>
2006-04-22T23:15:30+09:00
1145715330