SF百科図鑑 ロバート・シェクリイ『明日を越える旅』ハヤカワ文庫SF


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February 06, 2005

ロバート・シェクリイ『明日を越える旅』ハヤカワ文庫SF

明日を越える旅プリングル100冊よりシェクリイの長編。シェクリイの短編は、我々より上の世代では基礎教養とされていたが、私がSFを読み始めた80年前後には既に代表作は絶版状態だったので、アンソロジイ収録短編を断片的に読んだだけだ。
本書もあまり期待せず読み始めたが、かなり面白い。未来人が過去の男の伝記を編纂するという構成からして興味を引くし、主人公の一人称ではなく、それを立場の違う複数の人間の観点から多視点的に描くという構成が斬新で面白い。先が楽しみだ。
silvering at 17:02 │Comments(2)TrackBack(0)読書

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この記事へのコメント

1. Posted by SLG   February 06, 2005 20:22
病的に面白い。風刺が効いている。刑務所の話最高。仮出獄違反ワロタ。
2. Posted by SLG   February 07, 2005 13:41
読了。大傑作だ。こういう発見があるから、新たな作家の開拓はやめられない。
作風が最も似ているのは私の知る範囲ではヴォネガットだろうが、あれよりも分かりやすいのが強みだ。また、さすがに短編の名手だけあって、とにかく挿入されている短いエピソードの一つ一つが凄く面白い。
本作は、ハインラインの「異星の客」的設定でアメリカ社会、人類文明を戯画化しながら、「猫のゆりかご」のように風刺とユーモアに富んだ文体とストーリーで短いエピソードを畳みかけ、滑稽な世界戦争で先進国文明が破滅し、太平洋の島々だけが生き残るという皮肉な結末に至る。そしてこの島々の遠い未来の子孫が先祖の伝記をまとめるという凝った作りになっている。
とにかく、抜群に面白く笑える。古くなっているのではと危惧したが、笑いの対象が当時の時事風俗といった刹那的な物ではなく人間の本質に向けられているため、全く古さを感じさせない。最後の最後までオチが効いていて、見事な出来だ。
こういった作品を書くSF作家は最近ではほとんどいなくなってしまった。もし今この本が新刊で出たら、多分、一般文学かミステリに分類されてしまうだろう。このあたりにSFというジャンルが衰退した一つの原因があるのではとも思える。シェクリイの他、テン、ブラウン、マシスンといった風刺SFの名手は50年代には大勢いたが、60年代のニューウェーヴ運動あたりと前後して一掃されてしまった感がある。残ったのは、大半が、偏屈な純文学の出来損ないと、頑迷な科学論文の出来損ないと、ルーチンワークで書き飛ばされた冒険小説の出来損ないに3極分化している。最も一般的で永続的な人気を獲得できるはずだった部分を冷遇し、純文学やミステリ、ホラーに美味しい部分を奪われてしまった。やはり、SFはもう自閉した老人のための文学なのかも知れない。
テーマ性  ★★★★
奇想性   ★★★★
物語性   ★★★★
一般性   ★★★★
平均    4点
文体    ★★★★
意外な結末 ★★★
感情移入力 ★★★
主観評価  ★★★1/2 (36/50点)