部分人 PartialPeople
テリー・ビッスン
不完全にしか見えなかったり、箱に入っていたり、ベンチの下にいたりする人間についての問題が発生しています。唇や目が、ベンチの下に貼り付いていたり、映画館の座席の下にガムのように貼り付いていたり、靴を履いた足が、玄関の前のむきだしの地面に落ちていたりします。
この謎は、次のように考えると、一発で説明できます。この人々は、部分人（partialpeople=通常は「不公平な人」「差別的な人」の意味）なのです。
部分人は、単独では完全でないのです。部分人は、われわれの関心を得ようと必死ですが、部分人ひとりひとりは、それに値しません。
部分人は、脚や脇腹やその他の重要部分が欠けているため、医療措置が必要に思われるかも知れません。しかしながら、部分人の部分的（partial＝差別的）性質（原文ママ）は、真正な医療条件を示すわけではありません。部分人は医療措置を必要とせず、仮に要るとしても、わずかです。
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部分人は、死にかけていると主張するかもしれません（きっとそう主張するでしょう！）が、そんなことがありうるものですか。昔ある賢人が言いました、部分的にしか生きていない者は、真の意味で死ぬことなどないと。
わたしの唇を読んでごらんなさい。これが部分人なのです。
部分人は、別の宇宙やパラレルワールドから来たのだという推測もありました。だが、科学はそうでないことを証明しました。仮に別の宇宙から来たのだとしても、重要性のある宇宙ではないでしょう。
食糧の問題が必然的に生じます。一般的には、部分人は既にたっぷり食べているのだと考えるのがいちばんいいでしょう。
外見が問題です。グロテスクで、人前に出せないこともしばしばある部分人の外見は、議論を巻き起こすかもしれません。とりわけ、醜いものなら何でも話題にしようと探しまわっている連中にとっては。その手の議論は必要最小限に留めるべきです。
交通。部分人が運転を引き受けることは滅多にありません。部分人にとっては、オートマチック車ですら、たとえ自動変速装置がついていたとしても（最近はたいていの車についている！）恐ろしいものなのかもしれません。レンタカーについては言うまでもないでしょう。
だが、そんな部分人ですら、交通渋滞を引き起こしうるのです。レスリー・R・・・が、M・・・市G・・・通りの車線を走っているとき、前方にある箱からとつぜん腕が出てきたため、この男性または女性は驚きました。ですが、この男性または女性は、箱の残りの部分の大きさから、その中に丸ごとひとりの人間が入っていることはありえないと判断したのです。それゆえ、スピードと方向をそのままで進行することができたのです。事故の可能性を恐れて、車線変更をすることはなかった。
早い話が、レスリーは狂ったように振りまわされる腕に惑わされることはなかったのです。そして箱を轢いた。
部分人は自分が五体満足な人間であるかのように振舞おうとするかも知れません。ときには、通常の人間の外観の全部あるいはほとんど全部を備えているかもしれません。欠けているのは内臓その他の内部で、目には見えないかもしれません（欠けているのは他ならぬ目かもしれません）。それゆえ、見知らぬ目ざわりな人間がいたら、部分人だと考えるのがいちばんです。
旅行。部分人も一般人の払う運賃を全額払わねばなりませんが、目的地まで行き着けるとは限りません。それゆえ旅行には限界があります。
警察の部分人対処に関しては明確な結論が出ていません。一般的には、部分人は殴る価値はあるが、逮捕するには値しないとされています。
人ごみの中で部分人は巧妙に三、四人が寄り集まって立ち、ひとりの完全な人間あるいは抱きあっている男女を装います。それゆえ、団体行動の能力には限界があります。
英訳すると＜partial people＞である部分人は、いかなる＜p＞も大文字で記すことがありません。
部分人も子供をほしがることがありますが、部分人の子供も部分人（部分子供）です。部分子供はほとんど遊びません。
部分人は軍人になりたいと主張するかもしれません。特に、肉体が醜かったり、欠けていたりする者は。
部分人は数えるのが難しいかもしれません（何と言っても、個々が一人より少ないのですから）。部分人の観念は、通常人の観念と矛盾するかもしれません。 部分人の演説は、文の断片やドグマへの無益な志向によって、謎めいているかもしれません。＜こんにちは＞の直後に声高な大演説が続くかもしれません。
部分人にとって、必死で手を振ることは友好的な挨拶ではありません。それは注意を引くための露骨な行動です。
どうか、自分のためにも社会のためにも、ご注意を。騙されてはなりません。部分人に＜ノー＞と言いましょう。
ご清聴ありがとうございました。
～完～
