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世界の果てへの旅

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<奴隷と自由人・第一部>

世界の果てへの旅 Walk to the EndoftheWorld スージー・マッキー・チャーナス

スティーヴンに


プロローグ

予期された大異変、いわゆる<大消尽>が訪れ、そして──表面上は──去った。環境汚染と、資源収奪と、あふれかえる貧民同士の不可避の戦争が、世界を荒廃させ、野草に委ねた。誰が生き残ったか?

一握りの高級官僚が、敵襲に備えて造られたシェルターへの権利を持っていた。中には、女を連れていくものもいた。女たちは既に自暴自棄になった時の政府から一掃されていた。理想主義者あるいはヒステリー患者扱いされ、自主退職あるいは追放されていた。外の世界が衰え、暗黒化するにつれ、男=人類は、助けた女たちの青白い顔に怒りの表情を見たり、女たちの声に非難の響きを聞いたりしたように思いこんだ。この女たちの大半は、大破滅の最中に子供を失った。

男=人類は自分のショックを受けた顔やかすれた声には気づかなかった。自分たちは責任を持って正しく行動できていると思っていた──そして全てを失った。自分たちが正気を失っていることすら理解していなかったのだ。

男=人類は、女たちに会議への参加を禁じ、常に目を伏せ口を閉じること、自分の仕事として子作りに専念することを命じた。

女たち同士においても、大半の女がそう考えろと教わったとおりに物を考えた。赤ちゃん以外何も考えないことこそが適切であり、安心できることだった。それに男たちが悲しみや罪悪感や無力感に気も狂わんばかりになるとき、必要なのは支えであって、敵意ではないのだ。女たちは互いに語りあった、とりあえず、男たちの言うとおりのことをしよう、と。

少数の女は、こう言って反対した、違うわ、もし私たちが言うなりになれば、男たちは私たちを奴隷にしてしまう。だってもう私たちしか、奴隷にできる相手はいないんだから! そうして何とか他の女を説得しようとした。

男=人類は聞いていた、そして、とうとう征服すべき敵を見つけたといって喜んだ。計画に従い、ある夜、男=人類は女たちを眠りから起こし、集合させ、こう説教した。お前たちが<大消尽>を起こしたことを忘れるな。ある黒人女性がバスの後部座席に座ることを拒んだのが、黒人の反乱に火をつけたのだ。東方戦争では東洋人の女がわが軍と戦った。女のテロリストが反逆したわれらの息子たちとともに、爆撃を行った。この息子たちは、母親によって半人間に仕立てあげられたのだ。あらゆる種類の害虫女どもが、何百万人の若者を繰り出し、われらの食料と生活空間を略奪した! 女ども自身が、世界の<大消尽>を引き起こしたのだ!

そして、棍棒や革紐で武装した男たちは、このことを二度と忘れてはならないぞ、と女たちに言い聞かせ、自らも確認した。

<レフュジー>から抜け出して、動物の生態系を失い資源の枯渇した世界を発見したのは、その子孫の男たちだった。かれらは、その種に特有の英雄崇拝的で開拓者精神に溢れた伝統を保持している。外へ出たいと主張する数少ない哀れなミュータントたちを殺す。峡谷や海岸のわずかな土地に生い茂る荒々しい草叢を刈り分け、新しい文明を築く。自らの土地を<ホールドファスト>、付着根と称するが、これは、海草が波の力に逆らい、岩に吸着する部分の名からとられている。

この新人類にとって、海草は重要な栄養源だ。麻も同様。これは古代人にとっては有害な草であったが、今や繊維にもなり、ヴィジョンを得るための薬にもなり、必要に迫られて発明の才がある新人類にとっては、食料にもなる主要耕作物である。レンガは土から作られ、機械の墓場が金属の産地だ。柔らかく油分の多い石炭の鉱脈が燃料を提供する。木材は、ホールドファストの境界線を越えた<荒地>のとげの多い低木林からとられる。満足に取れるものは何一つないが、それでも人は生きる。技術や文化を完全に忘れ去ってはいないし、可能な限り順応するのだ。

他に覚えていることはあるか? 邪悪な種族を覚えている。赤い肌、茶色の肌、黄色の肌、黒の肌、あらゆる種類の変色したての土の色の肌。白い肌を持つ真の人類である自分たちの、信用ならないただの模倣にしか見えなかった。

それから、父親のやり方を否定した若者たち。穀物を奪い、世界中の野生地帯で人々を待ち伏せしては殺した動物たち。そして何より、男たち自らが抱える、狡猾で欲深い女たち。これらの者たちが、男=人類の正当な統治を崩壊に導いた反逆者だった。男=人類は彼らを<非人>と呼んだ。そして全ての非人の中で、女と若者だけが、今なお男=人類の敵であった。
(つづく)

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