SF百科図鑑

Ellen Datlow "A Whisper of Blood"

最終更新:

匿名ユーザー

- view
管理者のみ編集可

2005年12月10日

ed. Ellen Datlow "A Whisper of Blood"

血の囁き吸血鬼アンソロジー。ホールドストック&キルワースの"Ragthorn"のみ既読11 Introduction Ellen Datlow in
14 Now I Lay Me Down to Sleep Suzy McKee Charnas nv *
36 The Slug Karl Edward Wagner nv *
48 Warm Man Robert Silverberg ss F&SF May 57
61 Teratisms Kathe Koja ss *
71 M Is for the Many Things Elizabeth Massie ss *
82 Folly for Three Barry N. Malzberg ss *
91 The Impaler in Love Rick Wilber pm *
95 The Moose Church Jonathan Carroll ss *
104 Mrs. Rinaldis Angel Thomas Ligotti ss *
116 The Pool People Melissa Mia Hall ss *
131 A Week in the Unlife David J. Schow ss *
137 Lifeblood Jack Womack ss *
147 Requiem Melinda M. Snodgrass ss A Very Large Array, ed. Melinda M. Snodgrass, University of New Mexico Press, 1987
165 Infidel Thomas Tessier ss *
177 Do I Dare to Eat a Peach? Chelsea Quinn Yarbro nv Shadows #8, ed. Charles L. Grant, Doubleday, 1985
212 True Love K. W. Jeter ss *
227 Home by the Sea Pat Cadigan nv *
248 The Ragthorn Robert Holdstock & Garry Kilworth nv *
283 Contributors Notes Misc. Material bg
posted by brunner at 11:53| 東京 タイ、・ border=| Comment(5) | 読書
この記事へのコメント
14 Now I Lay Me Down to Sleep Suzy McKee Charnas nv * ★★★1/2
死んだ老女が天使の力を借り、蘇る。ただし、人血を吸わねばならない。娘や孫とともに生活するものの、娘たちの私生活に自分が居残り続けることに次第に不都合を感じ始める&&。なかなかいい。
36 The Slug Karl Edward Wagner nv * ★★★ みんなに嫌われているナメクジ男。塩をかけたら縮んでいった&&。数日前読んだホラー年刊アンソロジーの編者の作品は、結構面白かった。アンソロジストとしてよりも、作家の才能の方があるんじゃないの。
48 Warm Man Robert Silverberg ss F&SF May 57 ★★★
テレパスとエンパスの出会いは、予期せぬエンパスの死で終わる、というほろ苦い作品だが、これ、ポール・アンダースンの「旅路の果て」と酷似する。
61 Teratisms Kathe Koja ss * ★★
さぱーりわからんかった。短い作品で何か車に乗りながらしゃべってるなーと思いながら読んでたら何も起こらないまま終わっていた。サテンで隣の客がうるさかったせいかも、もう一回読んでみる。
71 M Is for the Many Things Elizabeth Massie ss * ★★★
マジでキモイ。死にかけている母親を家族ぐるみで看病し、呪術を行う迷信一家が、母親代わりにする女を拉致監禁しているという話。
82 Folly for Three Barry N. Malzberg ss *★★★
女が酒場で知り合った男をホテルの部屋に連れ込むが、銃を持った取締の男?に踏み込まれるという話。今一意味不明でシュールな話なのが流石マルツバーグって感じ。作者あとがきによると、「結婚こそ吸血鬼である」というコンセプトを表して作品なのだとか。わかんねーっ。
91 The Impaler in Love Rick Wilber pm * ★★★ 
性的交歓をメタフォリカルに表現した詩。まあまあいい。
95 The Moose Church Jonathan Carroll ss * ★★1/2
夢が現実化する<明晰夢>ネタの小品。今日読んだ『天のろくろ』と偶然ネタがかぶった。
104 Mrs. Rinaldis Angel Thomas Ligotti ss * ★★★1/2
悪夢を止めるため霊媒師の治療を受けた少年が、ぶり返した悪夢によって霊媒師を殺してしまうという話。夢の持つ強烈な力がうまく表現されているし、話もわかりやすい。傑作。
ここまで読んだが、「吸血鬼」といっても文字通りの吸血鬼ではなく、もっと象徴的な意味合いにおいて使われている作品が多いのがユニークだ。
Posted by slg at 2005年12月12日 02:05
今のところなかなか高水準のアンソロジーだ。単純な吸血鬼小説が一編も入っていないのが好ましい。全作訳してもいいぐらい。訳したら、随時、百科の方に掲載する。
Posted by slg at 2005年12月12日 02:09
116 The Pool People Melissa Mia Hall ss * ★★★
プールの底に生活する人々を見る話、ファンタジー。
Posted by slg at 2005年12月12日 03:09
David J. Schow "A Week in the Unlife"★★
<ブラッドサッカー>(吸血鬼?のほか高利貸しの意味も)の疑いで捕えられた男の手記。何が面白いのかさっぱり。
***
Jack Womack "Lifeblood"
生命の血
「ラファエロ前派の詩人だったと思う、誰だったかは忘れたけど」と女は言った。「未発表の詩の原稿を、奥さんだかお姉さんだかが亡くなったとき、一緒に埋めたのよ。で、数年後、その詩を出版したくなったので、友達と一緒にお墓を掘り返し、原稿をとりだした。そのとき、もう一度埋める前に、奥さんだかお姉さんだかの髪を撫でてやった」
その男女は、日曜の午後にはいつもアムステルダム111番街のケーキショップで会う。この日は愛について語っていた。
「神学者ともあろうものがそんなにロマンティックだとはな」男は言う。
「もちろん、この話は今まで語られてこなかったわ」笑いながら女が言う。「でも、わたし、見つけるべくして見つけたのよ。というか、向こうがわたしを見つけたというべきかも」
ふたりはここ数年来の友達だ。
***
女は、年下の知人女性が最近亡くなり、葬式に出そびれたことを話す。この知人が恋に落ちたのは自分に責任があると。リアという名の女。友人アリスの隣人だった。リアは聡明な美人だったが、アリスによると手をナイフで切ったといって助けを求めたとき以来のつきあいらしい。三人は一緒に映画に行く仲になった。やがて、リアが指導教授とつきあい始めたのを知った。ある日映画に言ったとき、リアの袖が血に濡れているのを指摘すると、リアは隠そうとした。だがリアの傷口はまた開き、血が流れ出した。リアにはたくさんの切り傷があった。きっとリストカットの傷跡だ、と女は言った。
「なぜそんなことを?」
「さあ」
そして女は続きを語った。その夜、女はふたりを誘ってパーティに行った。そこで二重の意味での悲劇が起こった。一目ぼれの経験はあるか、と女はきき、男は否定する。
「一目ぼれした男女はお互いの魂が見えるというわ」女は言う。魂が互いに結びつきあうのが。その後、体をつなぐのはたやすい。だが、最後に最も困難な段階が待っている、という。「なんていえばいいの、あたしみたいな不信心者にいわせるなら、<インパネーション>? 三位一体? その段階になったときが問題」
「大学で習ったこととはずいぶん違うようだな」
「ロマンチストだといって頂戴。魂がとけあって世界を照らすこともあるでしょうし、それはそれでいいの。でも失敗すると地獄の業火に火をつけることになりかねない」
「男に会ったんだな?」
「うん。自分にすごく似た人に会ったらしい」
ヘンリーという男だった。ふたりはその夜一緒に消え、翌朝には離れられない仲になり、学校でもリアはうわの空。ふたりはしだいに顔も青白くなり、アリスは毎晩隣室の睦みごとに耳をそばだてた。
だがある日、女は泣き腫らしたリアを見かけ、相談に乗った。前の彼氏がヘンリーとの仲に気付き、破談を迫っているというのだ。リアの脚は痩せこけて生傷だらけだった。しかも、生理(ピリオド)が、とリアが言うので、止まったの?ときくと、「始まったの」と答えた、「何か力になれることがあるかな?」とききながら手を握ると、ありえないぐらい冷たい。そしてリアはヘンリーに会いに行った。
女がメキシコ旅行に行き、帰ったときには、事件の後だった。
アリスによると、リアはクリスマスイブに留守だったが、ヘンリーと出かけているのではないとぴんときたという。暮れが押し迫ったころにヘンリーがリアを訪ねてきて、アリスは用事で外出したが、帰ってみると警察がいた。ヘンリーはバスタブで死んでいた。リアは手首の傷を包み隠すようにして放心状態で座っていた。事件は自殺で処理され、リアにおとがめはなかったが、学校には出てこなくなった。自分に関する噂をきいたのだろう。次に見かけたのはこのケーキショップで。幽霊のように影が薄く、女に気付かなかった。それが最後だったという。
間もなくリアはウイルス感染で亡くなった。「ヘンリーはとっくにリアの魂を抜き取っていたのね。残ったリアの体は抜けがらに過ぎなかった。落ちつくべきところに落ちついたのだわ。リアはヘンリーの隣に埋葬された」
~完~
***
いまいち意味が分からんが(傷は単なるリストカット? 吸血鬼とは関係ない?)吸血鬼・吸魂鬼のメタファーと恋愛をうまくからめた、佳作。★★★
Posted by slg at 2005年12月12日 21:47
***
Melinda M. Snodgrass "Requiem" ★★
鎮魂歌 
下のホールでは、誰かがフランス悲喜劇の最後の場面を演じている。(たぶん、マーティン・フレッチャーだな)漏出を回避するため、<分流レベル>に切り替え、バーナビーはぼんやり思った。(あいつらの趣味ときたら、すぐにくだらないほうに行っちまう)
***
バーナビーはふたりの娼婦とことを終え、外に出る。バーナビーはバンド仲間のピーター、パトリシアと会う。彼らと演奏の練習をする。バーナビーは家に帰らず行きつけの飲み屋で一杯飲む。バーナビーは家に帰り、妻の冷たさに失望する。バーナビーは妻との関係修復に気をとられ、楽団仲間に迷惑をかける。バーナビーは妻との関係に悩みつつ、製作中のレクイエムを仕上げようと頑張る。バーナビーはレクイエムを仕上げピーターに誉められる。<バック>にも曲が作れるのを証明したと。そこへ、<ソムナ>がやってくる。<バック>の人間たちは浮遊する<ソムナ>に絶えず監視され調べられているのだった。
~完~
全く意味の分からない話だった。SFなのか? ソムナとバックの成り立ちがさっぱり分からなかった。
***
Thomas Tessier "Infidel"★★1/2
夢に誘われローマの聖堂を訪れた図書館司書の女が、マニの魂と会い、合一する。意味不明でいまいち。
***
Chelsea Quinn Yarbro "Do I Dare to Eat a Peach?"★★1/2
敵国に拉致させたらしき男が薬物によって記憶錯乱に陥り、偽の記憶を植えられ、実験台にされた上で、執拗な尋問を受ける。かれはカウンセラーの問診を受けながら自分の正体について想いをめぐらせるものの、結局、薬物によって完全な実験台になることを承知する、不完全な誤った記憶よりも忘却のほうがましであると。
テーマはよいのだが単調で無駄に長く、質は低い。
***
K. W. Jeter "True Love"★★1/2
吸血鬼の父を生かすために子供を誘拐しつづける女の話。単純で深みがなく、レベル的にどうか。
***
Pat Cadigan "Home by the Sea"★★★
恒星爆発に飲みこまれて終末が迫る地球に、隠れていた吸血鬼一族が幅をきかす話。まあまあだが、ストーリーがのっぺりしすぎていて、読む者を引きこむ力はない。
***
以上、SF作家以外の作品のほうが面白かった。ふだん読みつけていない作風の作品が多いからか。
総括すると、
テーマ性  ★★★
奇想性   ★★★
物語性   ★★★
一般性   ★★★
平均     3
(以下は平均値)
文体     ★★★
意外な結末 ★★★
感情移入  ★★★
主観評価  ★★★(30/50)
Posted by slg at 2005年12月12日 21:47
記事メニュー
目安箱バナー