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カート・ヴォネガット・ジュニア『猫のゆりかご』ハヤカワ文庫SF

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December 29, 2004

カート・ヴォネガット・ジュニア『猫のゆりかご』ハヤカワ文庫SF

猫のゆりかご並行してこの文庫本、これもプリングル100選。白状するがヴォネガットの長編を一度も読みきったことがない。それどころか短編を含めても、まともに最後まで読んだのは「バーンハウス効果」という短編だけだ。我ながら酷い。今度こそ決死の覚悟で最後まで読み通したい。この作品は自由国民社の名著総解説ダイヤルでも2~3ページの大見出しの扱いだったし、重要作品のはずだから。
silvering at 21:32 │Comments(3)TrackBack(0)読書

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この記事へのコメント

1. Posted by slg   December 31, 2004 18:34
ピアシーのがヘヴィな内容でCD整理の片手間に読めないので、こちらを先に読むことにしたが、いやさすが出世作だけあって、面白いね。長編なのだが短めの章のそれぞれにユーモラスなオチらしきものがあって、連作短編のように読める、非常にユニークな本だ。風刺の効いた内容がとてもいい。この本かなりいいかも。
2. Posted by SLG   January 10, 2005 06:49
中断していたが再び読み進む。ジョーナという語り手が原爆の父の本を書くため3人のこの取材を進めるうち、ボコノン教と呼ばれる宗教にハマっていく。これは人類が<カラース>というグループを構成し、<カンカン>という道具で互いに結びついていると考えている宗教で、教祖のボコノンは世界を小馬鹿にしたようなナンセンス風味の教義書を書いており、その引用が随所に出てくる。
まずボコノン教のあらましが語られたあと、語り手は取材の顛末を話し始める。
取材の過程で、主人公はハニカー博士の上司だったブリード博士から、水の融点を高め常温で固体となった水、「クラウドナイン」の話を聞く、これはどうも実在するらしかった。しかも恐ろしいことに、連鎖反応で世界中の水を氷にしてしまう力がある。
更に取材の過程で、博士の子供の一人、フランクリンが、サンロレンゾという小国にいることが分かる。ある日新聞の広告で偶然見かけたのだ。同じ広告に載っていた島の養女の美貌に語り手は一目惚れする。
そしてある日、取材で、この島へ行くことになり、語り手は飛行機に乗る──。
というところまで読んだ、ほぼ102ページ。

ショートショートのような短い、ユーモラスなオチのついた章に分かれていて、軽い文体なのですいすい読めるのだが、その分、大事なことをよ見落としてしまいそうな怖さもある。しかし、このスタイルは大発明だ。章ごとのテンポのいいオチで読ませることができる。作者が人気を博したのはこのスタイルの確立によるところが大きいだろう。
3. Posted by slg   January 10, 2005 10:47
読了。なるほど、これがヴォネガットか。

基本的には、人間の営みの空虚さを黒い笑いで包みながらも、それを温かく肯定的にとらえようという作風。本書ラストで人類はドタバタ喜劇の末に間抜けな終末を迎え、主人公を取り巻く人たちの多くが間抜けで悲しい死を迎えるのだが、そうでありつつどの人物もどこか憎めない。
そして、ラストで初めて登場するボコノンが書き付ける、ボコノンの書の結び──自分がもっと若ければ、人間の愚行の歴史を書き、アイスナインで彫像となる、天=神に向かって、(あざ笑うように)親指を鼻につけて手のひらを広げながら──が、ふるっている。冒頭の「本書には真実はいっさいない」「フォーマ(嘘)を生きるよるべとしなさい」という文句とあわせて、本書の超然とした諧謔味を高めている。
極めて強烈な個性を持った作家である。今更わたしが熱狂できるかはかなり微妙だが、ハマる人はハマるだろうなというのは理解できる。
軽い中に含蓄と重みを持った独特の作品で、各章に細かいオチやギャグが詰め込まれ凝っているので、再読、三読に耐えうる作品だと思う。

テーマ性   ★★★★★
奇想性    ★★★★
物語性    ★★★
一般性    ★★★
平均     3.75点
文体     ★★★
意外な結末  ★★
感情移入力  ★
主観評価   ★★1/2(28/50点)
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