SF百科図鑑 サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』


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1985.1.2「くだらない本」より

まず、訳がすばらしいといっておこう。

次に、主人公がすてきだといっておこう。

主人公は「学歴社会」の「いわゆる」おちこぼれだが、なぜおちこぼれたかというとあまりに自分に正直でありすぎるためにおちこぼれた。彼は正義感が強い。インチキなもの、いやらしいものを嫌い、「大人」の現実はインチキでいやらしいから嫌う。大人になることを夢みながら大人社会のつまらなさを十分みている主人公の人間像は「青い麦」のそれと酷似している。しかも主人公が語ってきかせるという形式のため感情移入しやすく、すぐ物語の中にひきこまれてしまう。すばらしいの一語に尽きる。ホールデン少年の語る一言一言が頭の中を反響し、脳裏にやきつく。周囲の「大人」社会はすべてホールデン式に変貌することによってその本性をさらけ出す。いってみればホールデン少年の周囲への反発は「大人」社会への彼なりの挑戦であり、これこそ現代に至るまでにこの本が多くの若者に読まれ、その人生を変えてきたゆえんであるといえる。

名作である。