SF百科図鑑

グレゴリイ・ベンフォード『タイムスケープ(上下)』

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匿名ユーザー

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2001年

10/21
FF9終わる。★★★★1/2。ストーリー的には7に次いで良かった。前作が絵に凝り過ぎて話が薄っぺらかったので、いい方向だと思う。6以前や「タクティクス」などもまだあるが、とりあえず10からPS2に移行。やっと2が買える! 来週買いだな。

ベンフォード「タイムスケープ」面白くなってきた。いわゆるポストニューウェーヴの「普通小説のような」SFだが、コアにあるSFアイデア(タキオンによる通信と「宇宙内の閉じた宇宙」理論の結合)が非常に強固かつミステリアスなため、普通小説部分に負けていないのが良い。そして、普通小説部分も前半は冗長な感じがしたが、中盤に入り、60年代でタキオンを受信した学生が進級試験で落第させられるくだりなど、ストーリーが動いてきて、しかも、俗物科学者たちの迷走ぶりの描写にも迫力が出てきて、なかなかに読みごたえがある。この方向性が望ましいかどうかはともかく(正直にいうとあまり望ましくはないのだが)、非常にユニークな作品であることは間違いない。このままの勢いでラストまで突っ走るか?

菊は超スローで逃げ馬と早めに仕掛けたマンハッタンカフェで4万馬券。人気馬が3~5着で討ち死に、特に武のダンツフレームはしんがりから5着。何考えてんの? ともあれ、やっと面白くなってきた。天皇賞、JC、有馬と見ごたえがある。

10/23
ベンフォード「タイムスケープ」★★★★★
お見それしました。普通小説な中盤に煮え切らないいらだちを感じていたのも、このラストをより印象的にするための策だったか。普通小説部分にはバラードをはじめとするニューウェーヴの影響顕著なること作者自認するところだが、ここが下世話であればある分、SFならではの壮大なビジョンが開けるラストの感銘をより深める方向に作用している。この作品は、伝統的時間SFに宇宙の起源や構造論、素粒子理論、相対性理論、量子力学等を組み合わせた強固なハードSFが骨組みであり最大の魅力でもあるが、未来部分に破滅/終末SFの最良のエッセンスを含み、過去部分にノスタルジックな60年代の香りを漂わせ、「タキオンによる過去への干渉が新しい閉じた宇宙を生成する」というハードSFアイデアと結合して、90年代に大流行する改変歴史SFを先取りしている。タキオンによる過去への通信とそれをめぐる未来/過去の科学者たちの人間模様を対比して描く地味で単純な前半のプロット(その代わり人間模様の描写がしつこいぐらいに綿密でバラードっぽい)が、終盤で、未来からの通信/エイリアンからの通信、閉ざされた宇宙の生成、過去へ向かって収縮していく宇宙/タキオンとそれによるビッグバン、静止した時間/空間とうつろい行く物質、といったアイデアのるつぼへと徐々にボレロのごとく盛り上がっていく構成は実に見事。滅び行く未来と、その未来からのタキオン通信による干渉によってその未来から永遠に切り離され閉ざされてしまった過去。ラストにおけるこの対比が静かな深い余韻を残す。大人の鑑賞に堪える、それでいて胸踊るセンスオブワンダーに溢れたハードSFアイデアを兼ね備えた、希有な成功例として、異色でありながら歴史に名を残す作品と思います。

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