SF百科図鑑 ルーシャス・シェパード『戦時生活』


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2001年


10/6

シェパードの「戦時生活」は予想通り、難航。とにかく、冗長で話が進まない。ディテールの書き込み(特に心理描写)がしつこ過ぎて&&。こってり系にもほどがある。こってりを持たせるためには、しっかりしたプロットの骨組みが必要だが、シェパードは読者を魅きつけるしっかりしたプロットの屋台骨に欠けるきらいがある。それに、もともと普通小説の作家の素養で、行き掛り上SFデビューしたに過ぎないから、発想が普通小説家的なんだよねえ。1編目の「R&R」はシェパードには珍しく、SF性が文体や素材の中に埋没しきらずに辛うじて生き残っている奇跡的な作品だったが、次の「良き兵士」は正直に言って、出来の悪い南米文学のようで視点が拡散し失敗している。娼婦との絡みを蜿蜒書かれてもねえ&&。SFとして評価できないのは当たり前(と言うか作者の眼目自体がそこにない)として、文学作品としてもあまりに空疎で、興味をかき立てる内容がない。まあ、単独中編としては成り立っていなくても、その失敗ぶりが長編全体のテーマ性を浮き立たせる反作用を持つ可能性はあるから、まだ全体評価はしないけど。残り3編、350ページ、あと何日かかるか&&。日本語で書かれているのにこれだけ読むのがだるくて、200ページ読むのに1週間以上かかる作家と言うのも珍しい。この日本語ははっきりいって、英語で読むのより苦痛です。これ以上面白くならないようだと、アマゾンコムで最低評価の書き込みしてやろうかな、腹いせに。

10/11
シェパード「戦時生活」★★★
ふぅ~、2週間かかってやっと読み終わった。最近読んだ本の中で最も面白くなかったかも知れない。難解すぎて&&その原因は主に、異常なまでのディテール比喩の多用にあろう。1行ですむ内容を5、6行かけて比喩を多用して描写する。この比喩によってかえってわかりにくくなっている。
スリップストリームの雄ともてはやされたのはわからなくもないが、この作家がSFでデビューしたのは、SFにとってもシェパードにとっても不幸だった。この作者の持ち味、長所(ねっとりとした人生に対する執拗な描写濃度等)は、SF読者が求めるものとは全く異質である。本作の文学的凄みは伝わってくるが、それがなぜSFとして出版されねばならないのか、ネビュラ賞をとらねばならないのかがわからない。SFアイデア(他人の精神に介入するテレパシスト)が戦闘行為の空虚さを浮き立たせたり、主人公とデボラの交流の触媒となったりといったプロット上の密接関連性を持っていることは認めるけど、SF的手法をわざわざ用いなくても可能な作業である。そういう意味で、私は、シェパードをSF作家と考えてはいけない、とすら考えている。
したがって本作の評価も難しい。読み込みを要する執拗な文体ゆえ、一読のみならず再読を積み重ねるメリットの大きいことは間違いはない。ただ、「SFでそんな作業が必要になるようならはじめから読まないほうがまし」という観点もありうるところだろう。
一言でいうなら、「ラーメンを食べたくてカレー屋に入る人はいない」。