SF百科図鑑

マイク・レズニック「オルドバイ渓谷七景」

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2001年

6/25
「オルドバイ」20ページ読みました。
遠未来のエイリアンが地球のオルドバイ渓谷を訪れ、物質に「同化」する能力を持つ「見る者」が人工物に同化して探る人類の歴史~キャラや文体がマンネリ気味なのは相変わらずですが、本作はそのスケールにおいて同じ作者の旧作を遥かに凌いでいると思います。人類の発祥、アフリカ原住民、植民地と順に3エピソードが語られ、それぞれ読み切りとなっており、エピソード間のエイリアンの皮肉な語りがレズニックらしさを醸し出しています。銀河を征服するに至った人類の謎を解くという設定で、人類の滑稽さを見事に描いています。例えば、「やつらは銀河系を征服して他のエイリアンを奴隷にするだけでなく、昔は自分の仲間を奴隷にしていたなんて!」と呆れ返る場面は爆笑を誘います。
最初に出てきた生き物って実は人間だったんでしょうかね?
さて、いよいよ第4エピソード。見る者は、今度はペン先に同化し、2103年の日記が登場します。

6/26
マーティンの「竜の血」が入っている「カルテット」が届きました。早速、「竜の血」少し読みましたが、いきなり、妹を売り飛ばす鬼畜な兄が出てきて、面白そうです(笑)。

「オルドバイ」第4エピソードは2103年の旅行記で、書き手がオルドバイ渓谷で絶滅種の鳥と熊を見つけ感動する話です(笑)。レズニックらしくやや散漫な感じがしますが、なかなかええ感じです。次はひと休みした後、宝石に同化して第5エピソードに入ります。

第5エピソードは、オルドバイに放射性廃棄物を投棄する多国籍企業に務めるマサイ族が悪夢に悩まされ、人の夢に入り込む男から宝石をもらい、夢を吸い込ませて捨てたら夢がやんだという話です。

その後、「生物学者」がオルドバイに行ったまま戻ってこず、語り手がカートリッジに同化し、第6エピソードを語ります。

第6エピソードは、放射能汚染の谷に住み続ける頑固なマサイ族の話です。はっきりいって馬鹿です(笑)。最後は妻子に捨てられ、放射能マスクや服も捨ててマサイ族らしい格好に戻り、放射能で死んでしまいます。要するにキチガイですね(苦笑)。いかにもレズニック節で、「キリンヤガ」とほとんどネタがかぶっています。いやぁ、笑った笑った。

そして第7エピソードは「今」。谷で見つかった骨が「生物学者」のものかどうかを誰も調べたがらないので語り手が調べ、「そうだった」と嘘をつき、地球を立ち去ることになりますが、実は嘘であれは原住民の臑の骨でした。原住民=放射能で変異した人類のなれの果て(最初に出てきた動物がそれ)で、互いに殺し合い、食べ合う動物となっています。で、他人の体の骨を武器に使っており、要するにこの骨は、「生物学者」を殴り殺すのに使われていたのです。「生物学者」は確かに食われていました。人類は滅んではおらず再び宇宙に思いを馳せている、という場面で終わります。これで読了。いやあ、疲れましたが、予想通りとはいえこのラストはうまく決まりましたね。
というわけで&&

レズニック「オルドバイ渓谷7景」★★★★★
地球探査に来た遠未来のエイリアンが語る人類の進化のヴィジョン&&オールディス、ステープルドンを彷佛とさせる長大な時間軸をめぐる幻想風景の数々&&アフリカ部族の扱いこそやや手垢のついたレズニック節になるものの、全体としては個々の異なる時点のしかし一本の軸に並んだ物語を巧みにつなぎ合わせる構成の妙、最外枠の物語のスタートリングな幻想風景と魅惑的なエイリアンのキャラクター、とレズニックの持てる力「以上」(笑)のものを注ぎ込んだ力作であり、現時点の単発中短編としてはレズニックの最高作でしょう(これ一編で「キリンヤガ」一冊にも匹敵するインパクトがあるといっていい)。ヒューゴー/ネビュラ両賞受賞は妥当なところです。

次は、ジェロルド「火星人の子供」です。
その後マーティン「竜の血」とタートルダヴ「底の世界」でっせ。

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