SF百科図鑑 オースン・スコット・カード『死者の代弁者(上下)』ハヤカワ文庫SF


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2000年


12/15
カード「エンダーのゲーム」★★★★★
最後まで読んでよかった。とにかくこの終盤のどんでん返しとエンディングの美しさ。前半ははっきりいってハインラインやホールドマンを子供でやってるだけ、という感じでえんえん続く戦争シミュレーションによる訓練の連続には不可解な印象を持ったが、すべてこのラストに持ち込むための必然性のある描写だった。短編を読んでいなかっただけに、このラストは全く予想外で、エンダーと一緒に見事に騙されていました。このメイントリック自体はむしろ短編向きとも思えるが、戦争SFにシミュレーションゲームのねたを持ち込んだところと(仮想現実が現実になる、というのがイマ風)、サイドストーリーであるエンダーの兄姉のインターネットを使った政治煽動/世論操作のネタの新しさ、の2点でオリジナリティがあり、長編化により深みを増したといえる。長く印象に残る作品だ。続編も期待できるし、最近邦訳が出た裏ストーリーの「エンダーズシャドウ」を読む楽しみも増した。「ゼノサイド」と、未訳の「精神の子ら」も必読。「遥かなる地平」収録の短編もあるし。近々、ピーターのストーリーも出るらしい。

というわけで、早速「死者の代弁者」にとりかかる。

「死者の代弁者」は、前作と一転して、筋金入りの人類学/ゼノロジーSF。冒頭のピギーの研究者集団の描写や研究者が殺害されるくだりはアンダースンの「肉の分かちあい」に似ている。カードらしさは、やはり子供が重要人物であるところと、キリスト教会が重要な存在になっているところ。「死者の代弁者」となったエンダーも登場して、異種族間のコミュニケーションと モルモン教的なモラルの探求の物語に発展しそうな雰囲気。個人的には、前作よりもとっつき易く、面白く読める。
しかしゼノロジーものはこれだけ向こうでは人気があるにもかかわらず、我が国ではテーマとしてあまりとりあげられず、冷遇されている。アンダースンの一連の短編の他、ルグイン、ビショップ、ホールドストックなどが代表的なところだろう(ワインボウムの短編集なんかも、出して欲しいなあ)。この作品もこの分野に新たな傑作を付け加えることになるのかどうかは読んでから判断したい。
アマゾンJPの5冊が届いた。世界幻想文学大賞受賞作3つと、エリスンの「怒りのキャンディ」と、バトラーの「イマーゴ」である。やはり、早くていい。送料も無料だし。

12/16
ibook購入。
この日記、アップルワークスに変換してみたが、日本語入力がメモリ不足でできなくなった。それで、アップルワークスでクラリスワークス4も動くようなので変換せずに使う。
データベースもアップルワークスではソートがうまくいかず、やはりクラリスワークスに戻した方がよさそうだ。
アップルワークス、こんなに性能が悪いようでは使い道があるのか。縦書き標準装備という以外に売りはない。無用な機能をつけ過ぎて肝心のワープロやデータベースの機能がおろそかになるようでは単なるゴミ。
もう一度、使用メモリを減らして日本語入力してみる。果たして?

データベースはやはりメモリを食うので、アップルワークスをデータベース専用にすることにした。

これで作ったファイルをiMacで読もうとしたら読めなかった。これで完全にiBookに移行した方がよさそう(インターネット以外は)。ネットワークでつないじゃえ。よってハブとコードを買ってくる。

12/18
イーサネットのクロスケーブル購入し接続成功。
但し、セレクタがふさがってしまうため、他方のマックを介してプリンタ等を利用したりすることはできないようだ。これは仕方がない。プリンタの切り替え機のようなものを探してくるしかないが、当分はUSBの差し換えでよいだろう。
また、TAのドライバを入れると日本語入力とコンフリクトしてしまうため、このiBookからインターネット等の利用もできない。これも仕方のないところだ。
クロスケーブル長めのものにしたので、iMacとつないだままベッドにねっ転がってiBookが使えるというのがいい。今、寝ながら打っている(笑)。
今、iBookからiMacのプログラムでiMacのファイルを操作してみたが、なかなか好調だ。
インターネットからとったエロ画像はiMacに入れておいて、イーサネットでつないでiBookから楽しむというのがよさそうだ。
後はプリンタ用のもっと長いUSBケーブルが必要だ。

カード「死者の代弁者」読み進む。前作に比べてストーリー、登場人物、テーマと複雑になり、深みを増している。
また、シルヴァーバーグ「奥地のギルガメシュ」の入ったテーマアンソロジー「地獄の反逆者たち」読みはじめる。むろん、シルヴァーバーグのヒューゴー賞受賞作から。ギルガメシュというのはシルヴァーバーグ自身が以前に自作で取り扱っているらしいが、本作では、死後、地獄でのギルガメシュをテーマにしているようだ。ギルガメシュ以外にも様々な時代の独裁者たちが登場して繰り広げる物語は、ファーマーのリバーワールドや山田風太郎「神曲崩壊」などを思わせるが、本作はSFというよりもファンタジー色が濃い。地獄に落ちたギルガメシュは、地獄で新しい時代の独裁者たちと出会い、様々な近代兵器を目の当たりにしながらも、自らの時代の弓矢や刀といった原始的兵器による「狩り」こそスポーツとしての狩りにふさわしいと主張し、他の者達から笑われているが、頑として自説を曲げない。お笑い系か? 何にせよ、このアンソロジー、テーマ自体が変なので、相当の怪作揃いと期待できる。

さて、とりあえず「死者の代弁者」読み進むぞ。

12/19
「死者の代弁者」上巻読み終える。凄いぞ。多視点的な手法を用いて、ゼノバイオロジカルな謎ときの物語を軸に、宗教と倫理の問題、意識と感情を持ったコンピュータプログラム、家族の物語、連邦と惑星の政治的対立の物語などの複数のテーマを絡み合わせながら複雑で深遠な哲学的考察が展開していく。全体の構成は明らかにルグインの有名な2長篇をモデルにしていると思われるが、内容は遥かに様々なものを詰め込み、かつ、新しいアイデアもふんだんに盛り込まれている。
メインとなるピギーによる殺人の真相解明は、表面的にはアンダースンの一連の短編(「肉の分かち合い」「空気と闇の女王」「狩人の月」)とよく似ているが、細胞/微生物レベルの生物学的アイデアがどうも中心にあるらしく、ベア「ブラッドミュージック」あたりを意識しているのかも知れない(アンダースンの短編のアイデアは、これに比較するとかなり素朴だった)。まだ上巻を読んだだけの段階だが、僕の推理では、「殺し」「生け贄」そのものがピギーの生殖様式もしくはそれに深いかかわりがあるのではないか? という気がする。これ自体はアンダースンの短編のアイデアとそう変わりはないが、どうもピギーの場合はこれにある種の細菌ないし細胞内の物体がからんでいるようだ。解体した死体の中に植える苗もまたピギーの一形態なのでは? ピギーの本体は、全ての動植物に含まれる細菌ないし細胞内物体で、動植物はその一形態ないし体の部品のようなものなのか? ということになると前作「エンダ-のゲーム」のネタとかぶってしまうか。しかしこの謎ときは面白く、蜿蜒と解答を引き延ばされるにも関わらず、全く退屈しない。SFミステリとしても相当の傑作と思われる。
また、意識と感情を持ったコンピュータプログラムのネタは、当時としては新しく、最近ではイーガンあたりが好んで取り上げる題材を先取りしていたといえる。(その内容もかなり綿密詳細で、迫力がある。)
政治ネタは、前作「エンダーのゲーム」の延長線上にあるが、この作品の特徴は、執拗な宗教/倫理問題の掘り下げにある。エンダー自身のアイデンティティ探求の物語に、ゼノロジスト家族の物語や惑星のカトリック教団の物語などが絡んで、蜿蜒哲学的論議がかわされる。また、ピギー事件解明の問題も、当然、異種族間のコミュニケーションと許しの問題、人類の定義に関わる問題などの大きく深いテーマがからんでくる。
さて、いよいよエンダーがピギー事件の真相にたどりつき、下巻で謎が明らかになりそうである。この後どういう展開になるのか、早いところ下巻に入りたいところだ。

ついつい、4作目で未訳の「心の子ら」もスピンラッドの「バッグジャックバロン」といっしょに注文しちゃったぜ! あとは「ゼノサイド」「エンダーズシャドウ」を入手し、来年1月に出るピーターの物語を出次第ゲットすることだ。いやー、エンダーシリーズ、はまっちゃったぜ。

待ち望んでいたイーガンの短編集が遂に出たので即買い。ただ、残念なのは日本オリジナル編集だったこと。この本に代表作のほとんどが収録されているのはよいとしても、心配なのは、収録されなかったマイナーな作品が訳されないまま、あるいは訳されても雑誌止まりで終わってしまうのではないかということ。やはり、イーガンぐらいの有望作家の短編は、いいとこどりではなく、全作品を向こうの短編集と同じ構成/配列で読めるようにしてほしいところだ。また、今までに出た2作の長篇も(順列都市はまだ完読していないが)イーガンの作品中では習作レベルの位置付けに留まるもの。もちろん、その異彩を放つ才能は十分にあらわれているが、瀬名が本書解説で触れているように小説作法としては未熟で、要するに抜群のアイデアを支え切るだけのリアリティ構築や人間模様の肉付け、複線的なストーリーの組み合わせといった長篇作りの力量がまだ備わっていない。「宇宙消失」を手放しで傑作と呼べないのも、アイデアの凄さとプロットの単純さ、未熟さの落差が大きいせいだ。より成熟した長篇群の紹介がまだ先になりそうな分、短編ぐらいは「原書通りに全部訳して出版」するという形をとってほしかった。まあ、自分で原書を買って読めばいいんだけど。

ついでに麻耶「烏有もの」の第四作が出ていたので購入(ミステリは久々だ)。「痾」が出た後、弟の話や単発長篇などを書いていたが、以前の眩惑的な迫力が感じられず、化けの皮がはがれたような印象を持っていただけに、この続編で持ち直しているかどうかが気になるところだ。もともと文章力はなく、人物造型などもかなりぎこちなく、率直に「下手だなあ」と思っているので、めちゃくちゃなようでいて納まるところに納まるようなわけの分からないプロットとペダントリイの織り成す迫力がどれだけ出せるかで、作品の出来が決まる作家といえる。多分、構成力に問題があるから逆にあの迫力が出るのだと思うが、理由はどうあれ、あの迫力は余人に真似のできるものではないので、変に小奇麗にまとめようなどとせず、出たとこ任せにアイデアをぶち込んでいくやり方の方が傑作を書けるのではないかと思う。

12/20
カード「死者の代弁者」★★★★★
凄い! 多分、ここ数年で読んだ本の中でもジャンルを問わず5本の指に入る程の作品だ。やや難しく複雑な内容のせいか「エンダーのゲーム」より人気は低いようだが、ぼくはこちらのほうをとる。上巻でさんざ気を持たされたが、下巻では感動的なシーンの連続で、どっぷりはまってしまい、一気に読み終えた。ピギーの秘密はほぼ推理通りの内容だったが、それでもこのメインアイデアは魅力的だ。ルジタニア植民地の人々が「反逆」を決意するに至るまでのくだりや、ノヴィーニャの秘密の暴露、ミロとオウアンダの悲恋、条約締結の場面(特にエンダーがヒューマンを「植える」くだり)、障害者となったミロの物語、中年女性となったヴァレンタインとのアンシブルを通じた再会の場面等、見どころがいっぱい、ドラマがいっぱいで飽きさせない。
ラストでバガー復活、いっぽう、連邦の軍が「第2次ゼノサイド」を遂行せんとルジタニアに向かってくる--いったい続きはどうなるのか? と思わせつつこの作品は、罪にも終わってしまう。これでは続編を読まざるを得ないではないか! 「ゼノサイド」が楽しみです。しかし、ヒューゴー賞受賞作読破計画が終わるまでは我慢!(ううっ、つらい)