SF百科図鑑

ジョン・ケッセル「他の孤児」

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匿名ユーザー

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2000年

11/12
ケッセル「他の孤児」★★★★★
凄い! 「白鯨」の世界に迷い込むという発想自体はさほど真新しいわけではないだろうが、この作品の凄さは、そのリアリティと、前の世界と後の世界を対比させつつどっちが夢でどっちが現実だか分からないままの進行、主人公の人生と心理の純文学的なまでの突っ込み、結末部の哲学的なまでの議論と見事なラスト、とたくさんあり、完成度も極めて高い。F&SF誌掲載作品というからF&SFはばかにできない。ネビュラ賞受賞作。ヒューゴー賞向きではないのもうなずける。知らない作家でもこんな名作がゴロゴロしているから80年代はすごい。F&SFも賞に縁はなくてもこの手の傑作は結構埋もれていそうだ。またサブスクライブしようか、そういえばアシモフ誌、全然送ってこないなあ。ああそうそう、この作品読んだらメルヴィル作品読みたくなってきた。
また、ケッセル作品も全部読みたい。
短編「責任はない! 駐車してロックしろ!」
長編「自由の浜辺」「外宇宙からの吉報」
などが事典に載っている作品で、特に「外宇宙からの吉報」が代表作とされ、高い文学性が売り、とのこと。おれ好み。ディックっぽいとも書いてある。そういえば「他の孤児」のテーマもディック的(文体は全然違うが)。今んとこ80年代作家中、1位。後はエドワードブライアントだな。
「外宇宙からの吉報」は『ミレニアム・ヘッドライン』の題でハヤカワ文庫収録。しかし、たぶん、絶版である。

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