SF百科図鑑 ジョーン・D・ヴィンジ『琥珀のひとみ』創元SF文庫


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2000年

10/20

(略)

先にヴィンジ「琥珀のひとみ」に入る。こちらもあまり読書欲をそそらない内容だがアシモフよりはまし。旦那に比べると相当退屈そうだが(スペキュレイティヴでなさそうだよなあ、いかにも娯楽作家という感じで)、アシモフよりは多分まし。くり返すが、アシモフの後だからましに読めるだろう。その後がチェリイの「カッサンドラ」。なんか70年代後半はつまらないのばかり残っている(笑)。1編読むのに1週間とかかかりそう(笑)。

電子出版のサイトで受賞短編未入手作品を10ドル出して6編ほど買ったが、データをアクロバットで開いてみてショック! テキストコピーも、プリントアウトもできない。これなら本を買った方がまし。スキャナ読み込みもできないし、電車で持ち運んで読めないというのが何といっても最大の汚点。終わってる。10ドル返せ! 詐欺だ!!! カメラ買ってきて画面を撮影するとか、いろいろ方法を考えているけどいいアイデアが浮かばない。これではいつまでたってもまともに読めないよ。せっかく買ったのに。すげえ腹が立つ。

(略)

10/26
(略)

気を取り直して、「琥珀のひとみ」に入ろう・・・。あと2冊でノルマ達成(ほんとはティプトリー、ルグィン、マーティン(原書)、ヴァーリイ計6冊の短編集もあるのだが・・・。そろそろ長編読みたいので)。その前に、あれもあるな、アンダーソン「狩人の月」。ザンジバーも進めねば。
ヴィンジは「雪の女王」まあまあ面白そうなんだけど、パンチがなさそうなんだよなあ。短編の方はどうだろう。ウィルヘルムとかマッキンタイアなら食指をそそられるけど、ヴィンジはヴァーナーの方がいいなあ、どっちかというと。まあ、食わず嫌いをせず読んでみるか。

10/27
「琥珀のひとみ」★★★★★。さすがに受賞作だけあってよくできている。着想が斬新。タイタンの社会の描写はファンタジー的だが、アイデアそのものは純SF。タイタン人トウーピエのキャラが最高。

ヴィンジ他の作品は「雪の女王」といっしょに読むことにして、「タイムトラベラー」に入る。
スチャリトクル「しばし天の祝福より遠ざかり」★★★★
ありがちなねただが、そつなくまとめて水準作に仕上がっている。
チェリイ「カッサンドラ」★★★★★
素晴らしい。この作者、読むのは初めてだが、さすがヒューゴー賞ぼこぼこ取るだけあって巧い。時間ネタというより、予知能力ものなので本来、超能力ネタに分類すべきだろうが、いずれにせよ予知の心証風景を狂人の内面描写のごとく描いた筆致の秀逸さ、ショッキングなオチと、受賞作だけあって筆が冴えている。

さて、これで「狩人の月」以外は70年代完全制覇!
いよいよ80年代だ。あとは暇を見て、「ザンジバー」と「月無慈悲」も読むが。
まずは「狩人」だな。

10/28
「狩人の月」読み始める。またまたアンダースン御得意の異星文化人類学ものか? いきなり2つの太陽を持つ星の原住民が出てくる。人間?にもらった道具を使って狩をしている。と思ったら場面が変わり、また駐在する学者が出てきた。こうなると「肉の分かち合い」の系統か?と思ってしまう。まだ冒頭部分だけなので読む内に変わってくるかも。

そうそう、SFM10月号も少し。
マーティン「・・・ただ一日の昨日とひきかえに」★★★1/2。LDG代表格マーティンだが、この作品はあまりにも70年代っぽすぎて古い感じがする。大破壊後の話なのに、キースの歌う曲は70年代の曲ばかりだし。ミーアンドボビーマギーなんて当時は最先端だったのだろうけど、今から見ると、フランクシナトラとイメージ的にさしてかわらん(笑)。てなわけで70年代に青春を過ごした今40~50代ぐらいの人のみに特化された作品といえ、他の世代の人には楽しみにくい。良くも悪くも70年代。

「狩人の月」進む。アンダースンらしく異星原住民の文化に関する学術的議論が展開。メデア星(太陽も二重らしい)の原住民は2種類おり、一方を夫/他方を妻がmindscanを協力的な原住民につけさせて分析している。原住民に科学概念なく、scanされているという理解はないが、妻がscanerをつけさせ夫が遥か上空で受信分析するという方法をとっている。この2種族は、相互に「war」の状態にあり(但し人間の概念への比喩的表現)、一方が他方を攻撃/殺害して食べる。食べられる側は人類の入植地に出入りするが、食べる側は入植地には入らないためscanするためにその居住地まで赴く必要がある。食べる側の生理システムは、女性から男性、後性(postsexual)へと変態し、後性に変態すると風に乗って海を越え、極寒の<彼方の地>(Farside)へ行って死ぬ。
アンダースンはこのような生物学的にも文化的にも全く異なる2種族がいる惑星を仮設し、入植した研究者がその相互関係や文化的精神的本質の分析を行うという、同種のテーマを扱った「肉の分かち合い」と同じスタイルをとってミステリータッチでの思弁を展開する。「肉の分かち合い」では単純なオチをつけたために折角のハードで奥深いテーマが台なしになったが、この作品はどうだろうか? 三つの性を持つ種族など、アシモフ「神々自身」ヴィンジ「琥珀のひとみ」を思わせ、特に「琥珀のひとみ」とは設定等似通っているが、アンダースンの方がよりハードSF的である。今のところかなりの傑作の予感がある。もし傑作であれば是非全訳してみたい。

10/29
天皇賞はテイエム。固い。フサイチソニックが無事だったらなぁ・・・。今後も国内馬で止めそうな馬も他に見当たらず、盛り上がりに欠ける。これでは売り上げ減も仕方がないのでは? 4歳馬の台頭もなさそうだし・・・。ああつまらない。アドマイヤボス、トーホウシデンあたりがJCに出てきて、一矢報いて欲しいところ。あ、トウカイオーザでもいいけど、当分条件戦使いそうだしな。
あと興味が持てそうなのは3歳戦ぐらい。今年はBT産駒の調子がいいし・・・。

ヴィンジ「猫に鈴を」★★★★1/2。傑作! 「雪の女王」とかのイメージと違って、短編は異星生物とのコミュニケーションを突き詰めて描くものが多く、思弁性かなり高い。この作品の異星生物のアイデアなんて、ほとんど旦那のヴァーナーが書いたのではというぐらい凄い。多分、旦那の助言を受けて書いてはいると思うが・・・。嬉しい誤算。ラストが少し食いたリないので満点にはしなかったが。これで長編を書いたら大傑作になるのでは。短編にしとくのが惜しいぐらい、いいアイデアだ。

10/31
「高所からの眺め」★★★★★
「メディア・マン」★★★★★
ヴィンジ凄い。アイデア、キャラクター、文体、ストーリーとどれをとっても完成度が高い。誰だ、サイエンスファンタジーなんていった奴ぁ! やっぱり凄い旦那がついているだけに、屑がない。「高所から・・・」の克明な心理描写、心理の変遷過程はまさにスペキュレイティヴ・フィクションだし、マスメディア批判の社会的モチーフを持ち込みつつ「大いなる善のための小悪」を耐え忍ぶ主人公の緊迫感溢れる心理戦を描いた「メディアマン」といい、とびきり垢抜けている。男性的な図抜けたアイデアと女性らしい微妙な心理描写の巧みさの結合が、この作者の売り。思弁性も一般的イメージに反し、極めて高い。評価します。
次の「水晶の船」も、まず空中に不動に浮かぶ「水晶の船」と「地上都市」の絵だけでも既に素晴らしく、この美しい、どこか退廃して幻想的な情景の中でミステリタッチに物語が進む。なかなかいいぞ、これも。ただ文章が良いので読み飛ばすことができず、味わいながら読むため読むのに異常に時間がかかるけど。
あまりに予想に反して良いのでヴィンジの作品リストを見たら、中短編10編あるかないか、長編も同じぐらいの数しかない。これだけ質の高い作品ばかり書いていると流石に寡作にならざるを得ないのだろう。長編では「雪の女王」の続編で「世界の果て」「夏の女王」が出ている。前者は訳されていたかも知れないが、後者は未訳のはず。こうなったら、未訳も含めて全作品読みたくなる。むろん旦那のヴァーナーも完読要する。

11/2
「水晶の船」★★★★★
「錫の兵隊」★★★★★
名作2編。「水晶」予想通りの素晴らしさ。集中最も複雑なプロット(というより、次第に明らかになる世界像)を持ちやや難解だが、<月影>の素晴らしいキャラクター、次第に明らかになる世界像の描写の秀逸さ、感動的なエンディング、コミュニケーションに関する斬新なアイデア。美点がいっぱいある。物質転送機のアイデアは、その後、そのまんま「恐竜たちの方程式」でケリーにパクられることになる(笑)。
「錫の兵隊」処女作にしてはというか、処女作ゆえなのか、シンプルで力強いプロット、予想通りの少し物悲しいハッピーエンドと、小説の魅力が充満している。反不死のサイボーグのバーテンとウラシマ効果の女宇宙飛行士の美しい恋愛SF、というだけでも斬新(もっとも両方ともウラシマ効果の宇宙戦士というのは「終わりなき戦い」がある)だが、また書き方が巧い。恋愛SFのアンソロジーを編むとすれば、「ライアへの讃歌」や「ブルーシャンペン」と並んで当確だろう。あとエリスンの「少年と犬」か「プリティマギーマネーアイズ」、はちょっと変わり種だけど入れたい。

それにしてもこのヴィンジの短編集はレベルが高かった。★★★★★だ、文句なく。一編だけ満点にしなかったのが悔やまれるぐらい粒ぞろいだった。むろん、長編も全部必読だろうが、個人的にはもっと中短編を読んでみたい作家だ。もっとも、ヴァーナーと離婚後、人気にかげりがみえ、作品数も減っているのが残念。その後ヴァーナー人気が90年代にブレイクし、ミレニアムヒューゴー長編賞もゲットしているから皮肉といえば皮肉。

次、ロングイヤー「わが友なる敵」に入る。(70年代作品だということが分かったため先に読む)