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クリストファー・プリースト『ドリーム・マシン』(創元SF文庫)

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October 20, 2004

クリストファー・プリースト『ドリーム・マシン』(創元SF文庫)

ドリームマシンプリースト、一気に行きます。次の課題作はこれ。
silvering at 05:50 │Comments(4)TrackBack(0)読書

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この記事へのコメント

1. Posted by silvering   October 20, 2004 18:56
100ページほど読んでいるはずなのだが内容を全く覚えておらず、泣く泣く1ページから再読。

50ページ。

訳文が古くなっていてすこし読みにくい(中村保男)。特に会話文が、不自然というか平板で眠くなる。キャラクターに合わせて口調を変えた方がいいんじゃないの、せっかく表情豊かな日本語に直すんだから。「~ですわ」なんて、今時の20代の女性はいわないだろう。それこそ、クーンツの本でも読んで勉強した方がいいんじゃないか。この人、翻訳のハウツー本を結構書いているんだけど、本人の訳は&&クーンツと同じだな。

内容は、なんか変な女が投射プロジェクトとかいうのに参加していて、投射状態から出てこないハークマンという男を調査するために、恐らくVR世界に入って行く。ハークマンは、ウェセックス島の歴史に興味を抱いていて、その近辺に滞在している。サーフィンボードを探しにきたハークマンに、店員を装った?この女、ジューリアが近づくといったストーリー。
サーフィンショップの店員ならもっとあばずれなセリフにしてほしい。それに、今時「波乗り」なんて単語使う奴いねーよ。リアリティなさ過ぎ。
2. Posted by SILVERING   October 22, 2004 09:09
今んとこあんまおもんない。「魔法」みたいに尻上がりに面白くなるといいのだが。100ページ。
3. Posted by silvering   October 23, 2004 04:05
253ページ。非常に地味な展開。
男女の三角関係が実験上のVR世界に影響しそうな雰囲気。
ある意味、60年代ニューウェーヴの影響顕著な作品というべきか、バラードの破滅3部作あたりを髣髴とさせる普通小説的な心情描写が結構続く。
ジャンルSFから普通小説へ脱皮しようと模索してる時期の作品だからか、エンタテインメント的な筋立てやアクションシーンを意図的に抑えているという感じ。そのせいで非常に単調かつ冗長に感じる。作品のトーンは多分「魔法」に近い。アイデアはExtremesに最も近いのだが、サスペンス色の濃い面白小説だったExtremesに比し、男女間の葛藤が中心を占める本書は面白小説度は非常に低いと思う、今のところ。

これはこれで作者の意図した通りなのだろうからいいとしても、同じネタをクーンツの面白小説の書き方の公式にしたがって書き直してみたくなっている。
4. Posted by SILVERING   October 24, 2004 04:16
読了。

300ページ過ぎから急に展開が速くなって面白くなった。

ジューリアにつきまとうストーカー的な元恋人、ポール・メイスンが投射世界に介入することによって、投射世界は歪曲され、投射計画は大失敗に見舞われる。すべての被験者が、「過去を模した未来」への再(逆)投射によって戻された結果、全ての記憶が消され精神に損傷を被った状態で目覚め、その投射先の過去(現実の過去なのか投射された新しい過去なのかは不明だが、恐らく後者)で投射プロジェクトは中止の憂き目に遭う。ジューリアは損傷を受けずにその新過去へ投射されるも、再び元の未来ウェセックスへ投射する──ところが、ジューリアは、既にその世界に存在し投射キャビンに存在しているジューリアの肉体とは別個のジューリアとして実体化し、ハークマンと再会する。ハークマンも後を追って投射を試みたものの、既に未来ウェセックスに長期間滞在したことにより、過去へ帰還する暗示をかける鏡に対する免疫が形成され、ここから出られなくなっていたのだ。しかも、過去において(現実なのか投射により新たに生成された過去なのかはともかく)投射計画が中止されるなら、二人はもう戻る必要は無いのではないか。
しかも最後の章では当該ウェセックス世界が完全にハークマン本人の無意識、夢によって構成されているのではないかということが暗示される。そこにジューリアの自我も融合してしまったのか。ラストシーンで、回収員の示した鏡をハークマンが断り、ジューリアとともに歩み去るシーン。その後、露店の店員を務める恐らく別のジューリア(ジューリアが去っている間の未来ウェセックスでハートマンの無意識が作り上げた仮想ジューリア)が鏡を割るシーンがある。投射機が正しく機能すれば仮想ジューリアの自我と本来のジューリアの自我は統合されるはずであるが、既にメイソンの介入によって機能しなくなっているため、別個の存在となっているのであろう。しかも、時間にズレがあり、ジューリアはどうも出発したときより前の時点のウェセックスに戻ったということのようである(最終章がその前の章の続きであるという前提に立てばだが)。とはいえ、この部分は曖昧である。

オチはTHE EXTREMESに非常によく似ている。ただしTHE EXTREMESは、孤独な女主人公が自分一人の夢幻世界にはまり込んでしまうオチであったが。

さて、評価。アイデアは非常によい。バラード流ニューウェーヴSFの見本のような作品である(内宇宙と外宇宙が衝突する場所を克明にかつ理知的に描写分析している)。オチに至るまでかっちりまとまっている。
しかし、筋立てに工夫が無く特に前半が単調に過ぎる。秀作ではあるものの、エンタテインメント小説としての技術がまだ過渡期の作品であるといえる。
しかし、のちにTHE EXTREMESで再び同じテーマをとりあげているほか、三角関係は「魔法」でもモチーフとなっているように、ニュー・プリーストの原点ともいうべきアイデアがつまっているという点で、重要な位置を占める作品である。

テーマ性 ★★★★
奇想性  ★★
物語性  ★★
一般性  ★
平均   2.25点
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