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デイヴィッド・ブリン『スタータイド・ライジング(上・下)』ハヤカワ文庫SF

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2000年

2/1
(略)

ヒューゴー賞読みの方も最近停滞気味。ほんとうは「ハイペリオン」四部作の訳本が出そろったので、いよいよ読もうと思っているのだが、なにぶん大部のため買っても鞄に持ち歩けないので、躊躇している。原書なら持ち歩けるので、このまま当分文庫化されないなら、原書で我慢するしかないか。
「スタータイドライジング」「ドゥームズデイブック」「レッドマーズ」など読みさしの本は多数あるのだが、どれもぐいぐい引き込む力が弱く、難航している。
「スタータイド」は、時々魅力的なエイリアンが出てくるのだが(特に、「否定」のエネルギーで宇宙空間に穴をあけるエイリアンは最高!!)、何といっても「ストリーカー号」の肝心の乗組員たちが揃いも揃って魅力の乏しいいやな連中ばかりなので、今一つ入って行けない(読みながら、こいつら早く捕まればいいのに、とか思ってるし)。訳語も今いち。クライアントレースなんて、素直に<客族>とか訳した方が分りやすいのでは。<類族>と訳したからってイメージがより明確になるわけでもないし。

(略)

12/21
てなわけで、ブリン「知性化」シリーズに移る。「サンダイバー」から入るかどうか迷ったが、これを読まなければ2作目以後がわからないというわけでもなさそうだし、訳本も「スタータイドライジング」が先に出ていたようなので、いきなり「スタータイドライジング」から入る。まあ、すでに200ページぐらい読んでいたせいもあるけど。
で、やはり、読みにくいです。とにかくストリーカー号乗組員の数が多く、名前が覚えにくく、注意していないと誰が誰だか分からなくなる。ストーリーカー号を追ってくる「列強諸族」という舞台設定もいまいちよくわからない。視点も目まぐるしくかわり、複雑なのに文体が軽いので、なかなかストーリーが頭に入ってこない。キスラップ星における冒険の描写も、いまのところあまり必然性が感じられず、「何のためこんな描写をするの?」と気になって、ストーリーがなかなか進まないのでいらいらする。そして、字面を追っているうちに頭は他のことを考え始め、気がついたら何が書いてあるのか分からなくなっている。うーむ、どうもこの作品とは相性が悪いようだ。このシリーズについて、「面白くて気がついたら下巻に」という評が多いが、よくわからない(笑)。ぼくなんか上巻250ページに達するまでに1年かかって、未だにふうふういっているよ。カードのはあんなに面白かったのに。この作品のよさが分からないなんて、自分になにか人間として欠陥があるのだろうかと心配になり、なぜ人気があるのかと解説などを読みあさって調べたところ、「新しいタイプのスペースオペラ」なんだそうだ。そういえば、スペースオペラを面白いと思ったことがないので、要するにそのへんから既に僕自身の資質、能力に問題があったようだ。
いかん、スペースオペラが面白いと思えない人間なんて、人間失格と後ろ指をさされるに違いない。頭が悪いと思われるんじゃないか。こんなことではいかん、頑張って、この本の面白さが分かる、この本を読み始めて「気がついたら下巻に入っていた」というぐらいの能力とセンスを持った人間にならなければ、生きる資格がない(笑)。頑張って読もう。
冗談はさておき、この本に詰め込んだ細かいネタは確かにサービス満点で、「このネタだけを掘り下げて長篇にしたら面白いだろうに」という部分はけっこうあるが(さすがに短編ではアイデア中心のハードSFを得意とするブリンらしい)、そういう科学者/アイデア作家の資質とオーソドックスなスペースオペラのスタイル(ぼくにはここが苦手な部分と思う)を結合した新しさが受けたのだろう。
しかし、いちばん苦手なのは多分、「イルカ」だろう(笑)。類族の思考がどれもこれも人間っぽくて、しらじらしい感じがするところがひっかかるが、特に「イルカ」の思考が人間臭いのが馴染めない。まあ、人間に「知性化」されたんだから人間っぽくなるのは辻褄が合わなくもないが、やはり、ここまで思考だけでは人間と区別がつかない程に扱われてしまうと、「そんな馬鹿な」という気分が絶えずつきまとう。「スペースオペラ」だからこれでいい、という意見もあろうが、リアリティの点でついていけないものを感じてしまう。
また、キスラップでの描写は「スペースオペラ」というより単なる「海洋冒険小説」で、やや食い足りない感じがする。
と、この作品に入っていききれないいら立ちをまくしたててみたが、まだ諦めるのは早いので、もう一度チャレンジしてみよう。下巻になったら面白くなるかも知れないではないか! 「エンダーのゲーム」だって最後まで読まなければ傑作と思わなかっただろうのと同じように。

ところで、「踊る鹿の洞窟」入ったSFM届いたぜ! ナイトフライヤーの前編も入っていたし、収穫なり。

12/22
ブリン「スタータイドライジング」読み進む。クライダイキー船長が船外作業で感電して意識不明になるあたりからようやく少し面白くなってきた。やはりこうでなくちゃ。相変わらず登場人物/登場イルカ/登場チンパンジー(笑)が入り乱れて分かりにくいが、根気よく登場人物/用語リストを調べながら読むと、何とかついてゆけそうな気がしてきた。やはり150ページで半年ぐらいほったらかしていたつけで、ストーリーを思い出すのに苦労している。難破船を調べて修理して<ライブラリー>を回収しているが、この船って何で落ちたんだっけ? ストリーカー号も故障してたようだけどそもそも何で故障したんだっけ? ドリル樹が穴を掘る金属島を調べているけど、何のために調べることになったんだっけ? 全然思い出せない。金属島の現住生物はどうやらたまたま見つけて、「列強諸族」に見つからないうちに地球へ連れ帰って知性化しようとしているらしいことがやっと分かってきたけど。んーむ、やはり最初から読み直した方がよかった、まあもう遅いけど。「雪の女王」も同じ理由で結構苦労してるし。
さて、やっと上巻読み終わりそうだ。結局上巻は<海洋冒険小説>のままで終りそうな雲行きだが、下巻こそは手に汗握る「宇宙活劇」になってくれることを切に希望する。せっかくSFなのに、最後まで海ばっかりじゃあねえ。

ところで(略)でフライング発売された(笑)「バラヤー動乱」即買い、ほくほく顔だぜ。SFMも2月号がフライング発売。まあ日本人作家特集なので買うつもりはないけど、海外SF情報だけは立ち読みしないと。

12/23
マキャモン「スワンソング」を(略)古本屋でget。

「スタータイドライジング」ようやく面白くなってきた。下巻に入り、遺伝子実験されたイルカが発狂して仲間割れをし殺しあう場面やストリーカー号の権力抗争などストーリーに動きが出てきたと思ったら、クライダイキーが甦り、地底の<声>の正体が明らかになり、ようやくSFらしいスケールの大きいストーリーのうねりと謎解きが始まった。あまり深みはないけど、この<始祖>や<先住種族>に関する謎解きはいちおう水準に達しており、評価できる。さて、この後、ストリーカー号はどうなるのか? さんざ引っ張られるけどようやく納得できる水準に持ち直してきたようだ。

しかし、今日は蓄積した疲労のせいか、最後まで読み終えるつもりが猛烈な睡魔に襲われ、寝床で10ページも進まぬうちに就寝。作品のせいだけではないと思うけど。

しかし、たんぱ賞のアグネスタキオンは強かった。ジャングルポケットが久々でなければもっと好勝負していたとは思うが。クロフネは化けの皮が剥がれた感じだ、朝日杯6着の馬に負けているし、低レベルメンバー相手のレコード駆けで人気をかぶり過ぎたようだ。朝日杯メンバーもレベルは高かったが、このアグネス、ジャングルはそれより上だし、アグネスが新馬で破った相手も相当のハイレベル、翌日に勝ち上がったフサイチゼノンの弟も同じぐらいの上がりで勝っている。中京で勝ち上がったナリタスターホープもNB産駒では今のところいちばん期待感があるし、重賞に出ていない組でもダンツフレーム、シャワーパーティーなどがいる。来年のクラシックは例年にない激戦になりそうで面白そうだ。ここ2年がつまらなかっただけに、よけいに期待が高まる。

12/24
有馬記念、つまらなかった。今年は本当につまらない年で、何度も競馬をやめようと思ったし、売り上げ/入場人員ともに減り続けているのも当たり前だと絶叫したくなる。まさかやらせではないとは思うが、テイエム古馬G1全勝というのはあまりにもでき過ぎているし、購買意欲を殺がれるのは仕方がない。他方で短距離、4歳、牝馬、ダートは一流馬が存在せず、トップの馬が数カ月おきに入れ代わり、一年を通じて活躍する馬がいない。面白くない。そこそこ強いと思われる馬がいて、その馬を負かせるかどうかという新興勢力が出てきて・・・というドラマがないと競馬は面白くないし、穴党だって荒れればいいという者ばかりではなく、「今まで軽視されていたけど実は強い馬」「展開次第では強い馬」を見抜くところに喜びがあり、それに配当がついてくれば喜びが倍増するので、単に金もうけだけのためにやっているのではない。金だけが目当てなら株やらに手を出した方がはるかにましである。要するに、「強いと思っているのに人気がない」から買いたくなるのであって、「弱い馬同士のどっちが勝つか」なんていうレースを見たい人間は誰もいないのだ、いくら荒れようとも、配当がつこうとも。
幸い現/新3歳世代は層が厚そうなので、来年は期待しているが、来年もダメなら、ほんとうにやめようかと思っている。まあ、JRAに何とかしてくれといっても、弱いものはしょうがないのかも知れないけれど。
また自分の成績的にも、仕事に追われてまともに馬券を買っていなかった去年に比べると、今年は多少余裕ができて持ち直したが、モバイルゲットが壊れてパソコン方式に変えた8月以後、的中ゼロ(モバイルゲットを使っていた時期は月平均3本の万馬券)のまま最終日まできてしまったので、後半戦はひどいものだった。やはり購入方式と成績には明らかな因果関係がある。まあ、後半、つまらないレースが多かったので興味が持てず、競馬よりSFの方に興味が移っていたために真面目に予想をしなかったせいもあるけど。
しかし、20世紀も終わりというのに、ほんとにすかっとしない終わり方だなあ、特に有馬。つまんねーっ。よくやめないよなあ、おれも。もうそろそろ限界だな。この閉塞感、たまらん。

「スタータイドライジング」★★★★1/2
面白かったですよ、後半、期待した通りの宇宙活劇になってくれた。前半のいらいらする海洋冒険のくだりで欲求不満が鬱積していただけに、「やっぱりこうでなくちゃ!」の印象が強かった。
ただし、熱狂はできない。「スターウォーズ」が受けるアメリカのお国柄で余計この作品の評価は高まったような気がするけど、前半のかったるい展開は許し難いし、後半も面白いけどしょせんスペオペの面白さ。思弁の深みはない、と断言させてもらう。肝心の<始祖>の秘密も、キスラップの地核に住む種族の秘密も結局次に持ち越し。当方としては、活劇なんかどうでもよくて、まさにその<秘密>にこそ興味があるんだけど、作者の眼目はそこにはないようだ。妙ちきりんなエイリアンがいっぱい出てくるのは加点事由だけど、クセのあるユーモアのセンスが、思弁の切れ味を殺いでいるような感じ。間に差し挟まれる俳句も悪趣味一歩手前のユーモアのつもりだと思うが、成功しているとはいい難い。とこれだけ不満点をいっぱい述べながら1/2しか減点しなかったのは、後半のストーリーテリングの力量は認めざるを得ないことと、<謎>の部分の解明が先に持ち越されたために、この<謎>解きの内容次第ではシリーズ全体の評価が上がりこの作品にも<プロローグ>としてそれ相応の評価が可能になると思われるため。つまり、たくさんの条件付きでの高評価であることを断っておきたい。
しかし、この本は、読むのに疲れた。

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